黄金の獣と魔弾の姫   作:神ショー

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バスジャック事件は次回になります。





第8話

 

 

 

 

「というわけで、あんたのことを全部教えなさい!」

 

「いいだろう。その変わりと言っては何だが、卿の体を――」

 

 

とラインハルトが言った瞬間、アリアは後退りキンジの後ろに隠れるが、その必要は無かった。

 

 

「話が進みません、大人しくしなさい」

 

「は、はい」

 

 

レキが何処からか出してきたドラグノフの銃剣を突き付けられ、ラインハルトは大人しくなる。

 

それを見たアリアは意外そうな顔をし、キンジは本当だったろ?みたいな顔をアリアに向けている。

 

現在の時刻は7時、空は暗くなり、夜となった時間帯。

 

その時間、ラインハルトの部屋には少し賑やかなお客さんが来ていた。

 

アリアとキンジがラインハルトの部屋に来ているのだ。

 

 

「それでアリアさん、ラインハルトさんに聞きたいことを一つ一つどうぞ」

 

「あ、そ、そうね」

 

 

アリアは少し警戒しながらラインハルトの前に行く。

 

ラインハルトはソファーに座り、横に座っているレキがラインハルトを抑えている。

 

 

「ねぇ、なんでアンタはラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒと同じ名前なの?」

 

「む?ああ、それのことか」

 

 

アリアが直球で質問すると、ラインハルトは少し意外そうな顔をして答える。

 

 

「私の両親が勝手に付けたものだ。なんでも、私を見たときに曾祖父の再来だと感じたらしい」

 

「――そう。じゃあ次の質問。アンタの武器って...」

 

「少し待っていたまえ」

 

 

ラインハルトはアリアの質問に即答すると、手袋を寝室に取りに行く。

 

直ぐに戻ってくると、アリアたちの前に黒い模様が施された白い手袋が置かれる。

 

 

「…変わった模様ね」

 

「私の旧友からの贈り物でね。防弾のためにT(ツイスト)N(・ナノ・)K(ケブラー)ワイヤーを使い、更に防刃仕様にもしている」

 

「うわっ、それは俺も初耳だぞ?やけに頑丈なものとは思ってたけど」

 

 

ラインハルトの言葉にアリアではなくキンジが驚く。

 

1年生の頃からラインハルトと友人だったのだが、流石にただの手袋だと思ってたものがそこまでとは思って無かったのだろう。

 

 

「手袋は見せて貰ったわ、じゃあ槍は?」

 

「――それもかね?」

 

「当たり前よ!」

 

「はぁ、仕方無いか」

 

 

アリアが槍を見せろと言うのに、ラインハルトはため息をして見せるために立ち上がる。

 

その時、ちゃっかりレキのお尻を触ろうとしたのだが、手をつねられることで断念される。

 

手を前にかざして、黄金の神槍を顕現させた。

 

 

「形成

 Yetzirah―

 

 ここに神の子 顕現せり

 Vere filius Dei erat iste

 

 聖約・運命の神槍

 Longinuslanze Testament」

 

 

槍が現れ、アリアたちの前にあるテーブルに置くと、ラインハルトはまたソファーに座る。

 

アリアたちを見ると、何故か唖然としていた。

 

 

「アンタ、もしかしてとは思ってたけど超能力(ステルス)持ちなのね?」

 

「無論そうだが、これは超能力とは違う。私以外に行うことは出来んものだ」

 

 

その説明を聞きながら、アリアはラインハルトの武器に手を伸ばすが、その手をレキが止める。

 

 

「なんで止めるのよレキ?」

 

「この武器はラインハルトさん以外に触れないそうです。何が起こるか分からないので、無闇に触らないほうが」

 

「因みに、私以外に許可無く勝手に触れると、魂ごと蒸発させられるので気を付けろ」

 

 

それを聞いたアリアは伸ばしていた手を一気に下げる。

 

それを見たキンジは、少し疑うような表情をしてラインハルトに聞く。

 

 

「魂ごとって、流石に言い過ぎだろ?」

 

「いや、過言ではないぞキンジ。実は幼少の頃、私が消し忘れていたこの槍を、強盗が持っていこうとしたのだが――」

 

「だ、だが?」

 

「さて、次の質問に入ろうか」

 

「ちょっ!メッチャ気になるだろ続き!」

 

 

ラインハルトは言葉の途中で次の質問に移ると、キンジは身を乗り出してしまうほど続きが気になるらしい。

 

 

「キンジさん」

 

「ん?なんだレキ」

 

 

ラインハルトはキンジの言葉を受け流していると、レキが不意にキンジに声をかける。

 

 

「世の中には知らなくても良いことがあるんです」

 

「マジか!?やっぱさっきの実話か!?」

 

 

と、キンジがわめいている間に、アリアが次の質問に移っていた。

 

 

「じゃあ次の質問、武器の名前ってあるの?特にこの槍とか」

 

「気になるのかね?」

 

「まぁ、一応ね」

 

 

質問されたラインハルトは、まず断罪者を手に取り説明をする。

 

 

「この手袋は見ての通り只の手袋だ。私の友人からの贈り物のな」

 

「防弾防刃の手袋がただの手袋なわけないでしょ!」

 

「さて、次にこの槍のことだが」

 

「無視するな!」

 

 

ラインハルトはアリアの言葉を無視して、手袋を置いてから槍を手に取る。

 

これはキンジも気になるのか、アリアと一緒に聞いている。

 

 

「この槍の名は聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)という」

 

「「は?」」

 

 

ラインハルトの口にした槍の名前に、アリアとキンジは同時に固まった。

 

何故なら、その槍の名前は、ゲームなどでもよく使われ、キリスト教徒たちにとっても政治家にとっても、喉から手が出るほど欲するだろうものだったからだ。

 

 

「いわゆるロンギヌスの槍、ですね」

 

「マジか!?」

 

「嘘!?デタラメ言ってんじゃ無いわよ!?」

 

「いやいや、本物だとも」

 

 

レキが分かりやすく言い換えると、それによって再起動したキンジとアリアが偽者ではないかと言い張るが、ラインハルトはバカを見る顔で二人に言う。

 

 

「まぁ、少し言い伝えとは違うのだがね。私の神槍は」

 

「ほら見なさいよ!やっぱり偽者なのよ!」

 

「槍の素材にはすべての聖遺物が使われている。柄には聖十字架が、装飾には聖杯が、刀身の中心には聖釘が、それを固定するために聖骸布が使われている」

 

「――ほぇ?」

 

「それに加えて、聖遺物の加工には聖人たちの血が使用されているぞ」

 

「うわ、化け物クラスだな」

 

 

ラインハルトの衝撃発言に、アリアは呆けてキンジは呆れる。

 

レキは何故かラインハルトに鋭い視線を向けており、それにラインハルトは気付いていない。

 

 

「そ、それ本当なの?」

 

「ああ、嘘偽りは無い」

 

「お前、キリスト教徒全員に喧嘩売ったな」

 

「皆返り討ちにしてくれよう」

 

 

アリアはまだ信じられないようで、キンジはもう耐性が付いたようだ。

 

 

「さて、次の質問は?」

 

「………」

 

「アリア、もう良いだろ?」

 

 

ラインハルトは次の質問を聞こうとするが、ショックが大きすぎたのか固まっており、キンジが何とか覚まそうとしている。

 

 

「はっ!そ、そうね。質問はもう良いわ」

 

「む?そうか。他にもプロフィールなどを聞かれるかと思ったのだがな」

 

「そういうのはキンジに聞いたから大丈夫よ」

 

「キンジ、もしや卿は私のストーカ――」

 

「そんなわけ無いでしょう」

 

「ブフッ!」

 

 

ラインハルトが変なことを言おうとした瞬間、レキが肘打ちをして黙らせる。

 

アリアはキンジの言っていたストッパーというのが、物理的だと知ってまた驚いていた。

 

 

「なんか、疲れたわ」

 

「付き合ってればそのうち慣れるって」

 

「もう帰るのですか?」

 

 

帰ろうと席を立った二人に、レキが送ろうと席を立つ。

 

 

「ではラインハルトさん、私はお二人を送って来ますので、此処で大人しく待っていてください」

 

「了解した」

 

 

と言って、レキは二人を送るために一緒に玄関へと向かって行った。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「しもしもし、カールか?」

 

『普通に電話に出られないのかね君は』

 

 

レキが居なくなった後のラインハルトの部屋。

 

そこでソファーに座っているラインハルトは、携帯電話を使ってメルクリウスに電話をしていた。

 

座にいるメルクリウスに、携帯電話で繋がるなんてこと、普通に考えて無理である。

 

 

『それで、用事は何かね?獣殿』

 

「ああ、最近私はようやく自分の女神を見つけたのでね。近々そちらに行くことになる、と蓮たちにも伝えておいてほしいのだ」

 

『――な、に?』

 

 

ラインハルトの発言に、電話の中でメルクリウスは分かりやすく狼狽えた。

 

 

『そ、それは本当なのかね?妄想や幻覚などでは無く』

 

「当たり前だカール。それに卿は私のことを何だと思っているのか」

 

『ロリコン』

 

「その通りだ」

 

 

端から見なくても可笑しい受け答えに、誰もツッコむ者はいない。

 

 

『それで、いつ頃来るのだね?それによってはサプライズを息子たちに掛けようと思うのだが』

 

「ふむ、では1週間後にそちらに赴くとしよう」

 

『心得た、ではその時に再び――』

 

「ああ、その時に再び――」

 

 

二人は互いに言葉を区切り、宣言するかのように声を合わせる。

 

 

「『また手合わせをしよう』」

 

 

この二人は、互いに拮抗し会う存在のため、どうやっても相討ちになってしまう。

 

いかにメルクリウスの自滅因子(アポトーシス)たるラインハルトが強かろうと、それに合わせてメルクリウスが強くなるのだ。

 

本来は逆なのだが、バランスが傾き過ぎているため、バランスが崩壊しているのだ。

 

この二人が合間見える時は近い。

 

 

 





だいたい武偵殺し編が終わったあたりにメルクリウスたちの座に行く予定です。

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