黄金の獣と魔弾の姫   作:神ショー

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バスジャックです。

少々味気ないかもしれません。





第9話

 

 

 

「あたしはキンジに連絡する。アンタたちはそこで待機してなさい」

 

「了解した」

 

 

現在、朝の8時頃。

 

ラインハルトとレキは、アリアに呼ばれて女子寮の屋上に来ていた。

 

何も説明は受けておらず、正直なぜこんな朝っぱらから呼ばれ、しかも登校時間に集合しなければならないのか不思議に思っている。

 

 

「なあレキよ。我らは何故呼ばれたのだろうな」

 

「分かりません。ですが、朝からラインハルトさんとラブラブ出来ないのは残念です」

 

「――――」

 

「?」

 

 

レキは珍しく反応しないラインハルトに疑問を感じ、ラインハルトを見てみると、そこには此方を見ながら固まっているラインハルトの姿。

 

 

「どうしたんですか?バカがバカみたいな顔をして」

 

「レ、レキが――デレた、だと...ッ!?」

 

 

ラインハルトとレキが付き合って以来、レキがラインハルトに対してデレたことは数えられる程しかない。

 

それ故に、ラインハルトはこれほどまでに驚いているのだ。

 

 

「失礼ですね、毎日デレてるじゃないですか」

 

「まぁそうなのだがな。だが、今回のとはまた別な感覚なのだよ――ということで、もう一回言ってくれないだろうか?」

 

「ラインハルトさん、私は武偵法9条をこの場で破ってしまいそうです。牢獄に入ったらどうしましょう?」

 

「愚問だな、私が世界を相手にしてでも助けに行こう」

 

 

レキが顔を影を作りながら危ない眼でラインハルトに言うと、ラインハルトはわりと真剣な顔でレキに返す。

 

するとどうだろうか、以外な返答を聞いたレキは、一瞬ホケッとしたあと、ポンッと顔を赤くして狼狽える。

 

 

「ぇ、あ、あの...そ、そんな..堂々と...ッ///」

 

「ん?どうしたレキ?熱があるならば至急熱サマシートを――」

 

「い、いりません!必要無いですから止めてください!」

 

「む?そうか」

 

 

レキがアワアワしながら顔を赤くしているため、ラインハルトが額で熱を測ろうと髪を上げると、瞬時にそれを理解したレキは慌てて止める。

 

渋りながら引き下がったラインハルトだが、まだ心配なのか横目でレキを見詰めている。

 

 

「ラインハルト!アナタ早く武装して!」

 

「では、何が起こっているのかを教えてほしいな」

 

「バスジャックよ!しかも爆弾が仕掛けられてる、だからこれは『武偵殺し』の仕業よ!」

 

 

アリアが切羽詰まったような剣幕でラインハルトに言うが、ラインハルトは冷静な態度でそれを宥めようとする。

 

 

「了解した。だがアリア、少し落ち着きたまえ」

 

「落ち着いてなんかいられないわ!時間は刻一刻と迫ってるんだから!」

 

「卿がそんなに焦っていると、肝心な時に対応できなくなるのだぞ?」

 

「そんなものは臨機応変に出来るわ!一々指図しないで!」

 

 

ラインハルトが落ち着かせようとしても、(かえ)ってそれはアリアに火をつけていく。

 

どんどん冷静さを失っていくアリアを前に、ラインハルトは考えていた。

 

 

「(一体なにが卿をそこまで焦らせるのか。それにすでに捕まったはずの『武偵殺し』がまだ存在していると断言している。その『武偵殺し』が模倣犯だとも言ってはいないあたり、今捕まっている『武偵殺し』は偽者だとも証言しているようなもの。冤罪で逮捕された『武偵殺し』が“そうなるよう”に仕組まれていて、アリアはそれに気付いている――――ッ!?そうか!そういうことか!)」

 

「ラインハルトさん?」

 

「レキよ、私はアリアが焦らせる理由が分かった」

 

 

心配そうに声を掛けたレキに放たれたラインハルトの言葉に、レキは目を丸くする。

 

あれだけ圧倒的に情報が少ない中で、たったこれだけの情報を元に、この数秒だけで答えに近付いたというラインハルトに、レキは驚いていた。

 

 

「そう、なんですか」

 

「おや?もう少し反応すると思っていたのだが」

 

「あまり人の事情には首を突っ込まないようにしているだけです」

 

「――そうか」

 

 

二人は何も言わない。

 

だがそれでも、二人は隣に立ちながら決して離れることはない。

 

 

「すまん、遅くなったな」

 

「キンジ、遅い!」

 

 

すると、そこに丁度キンジがやってくる。

 

強化プラスチック製の面あて(フェイスガード)付きヘルメット、武偵高の校章が入った無線インカムにフィンガーレスグローブ、全身のあちこちに食い込むほど締めたベルトには、拳銃のホルスターと予備のマガジンが四本ある。

 

これは武偵がいわゆる『出入り』の際に着込む、攻撃的な装備で、C装備というものに身を固めていた。

 

恐らくアリアに言われたのだろう。

 

 

「それで、なにが起こってんだよ?」

 

「バスジャックよ。第3男子寮に7時58分に停車したやつ」

 

「ッ!?武藤たちが乗ってるやつじゃねぇか!?」

 

 

どうやらキンジはそれに乗り遅れたのだろう。

 

だが、そのお陰で今回は人数が増えたことになる。

 

 

「でも、バスジャックって...武偵殺しは逮捕されたはずだろ?また模倣犯が――」

 

「それは本物じゃないわ!真犯人は別にいる!」

 

「なんでそんなことが分かるんだよ!?」

 

「うるさい!今はそんなのを説明してる暇なんてないわ!時間が惜しいの!!」

 

 

恐らく、これがレキが言っていたアリアの本質なのだろうと、ラインハルトは思っていた。

 

他人に“合わせられない”のではなく、端から他人に“合わせない”。

 

自分が全ての基準であり、それを満たさなければ問答無用で放り出す。

 

故に“独奏曲(アリア)”。

 

 

「卿ら、揃いも揃って落ち着きたまえよ。レキを見習いたまえ。この何事にも動じない完璧な落ち着き――今回のような時間に追われる作戦において最も重要なものだ」

 

「うるさいっての!落ち着いてる時間(ひま)なんか無いわ!」

 

「ならば落ち着け。卿は焦りすぎだ。冷静さが欠けた人間は、本来の半分の能力しか生かせなくなる――だろう?レキよ」

 

「その通りです。アリアさん、まずは落ち着いてください」

 

 

ラインハルトの説得に、遂にレキもが加わる。

 

それでも尚、冷静にならないアリアに、キンジも説得することにした。

 

 

「そうだぞアリア、まずは落ち着いてくれよ」

 

「~~ッ!?うるさいっ!!このチームのリーダーはあたしよ!黙ってあたしに従いなさい!」

 

 

そこでキンジは何かを言おうとしたが、直後にヘリが降りてきたために聞こえなかった。

 

4人はそのままヘリに乗り込み、目的地へ向かって飛んでいく。

 

アリアもキンジもレキも銃の点検をしているのを見たラインハルトは、自身もポケットから手袋を取り出し、両手にはめ始めた。

 

 

「作戦を伝えるわよ。まずあたしとキンジがバスに降下、あたしは車体の下に、キンジは車内に移った後にラインハルトが降下して屋根で待機。レキはヘリで待機して、ラインハルトを援護してちょうだい」

 

「分かったよ」

 

「了解した」

 

「了解しました」

 

 

そして、ヘリがある一定のところに来たあたりで、窓を覗いていたレキが声を漏らす。

 

 

「見えました」

 

「どこだ?」

 

「ホテル日航の前を右折しているバスです。その中に武偵高の制服を着た生徒が見えます」

 

「――見えないわ。レキ、あんた視力どれだけ?」

 

「左右ともに6.0です」

 

 

その驚愕の事実にアリアとキンジは絶句した。

 

それならばスナイパーライフルを扱うにしても、スコープなんてものを覗かなくても精密射撃が可能なほどなのだから。

 

 

「兎に角、位置も距離も特定出来たのだから、降下の準備を始めよう」

 

 

ラインハルトの発言にハッとなったアリアとキンジは、パッパと降下準備を進めていく。

 

丁度準備が終わった辺りになってから、ヘリはバスの真上に着いた。

 

 

「キンジ!降りるわよ!」

 

「わかってんよ!」

 

 

と言って降りていくアリアとキンジ。

 

バスの屋根に着地したが、雨が降っているために足を滑らせてバランスを崩したところをアリアに救われているキンジ。

 

そのあと直ぐにアリアは車体の下に、キンジは車内に移ったので、今度はラインハルトが降下する番となった。

 

 

「では、何時ものように頼んだぞレキ」

 

「はい、任せてください」

 

 

レキの返事を聞いてから、ラインハルトはバスに向けて降下する。

 

そして降下しながら聖槍も顕現させたラインハルトは、綺麗にバスの屋根に着地した。

 

 

「こちらラインハルト。バスに到着した。車内に爆弾はあったか?」

 

『いや、車内には何処にも無かった』

 

「そうか、了解した。では車体の下には?」

 

『あったわよ!カジンスキーβ型のプラスチック爆弾、武偵殺しの十八番(おはこ)よ!見えるだけでも3500立方センチはあるわ!』

 

『なっ!?マジかよ!?』

 

 

アリアが伝えた爆弾の量に、キンジが声をあげて驚く。

 

 

『ラインハルトさん、後ろから車が3台バスに近付いています』

 

「ああ、こちらも肉眼で確認した」

 

 

ラインハルトは後ろから向かってくる青いルノーを見ながらレキに返事をする。

 

それから槍を構えながら、今度はキンジとアリアに通信をした。

 

 

「キンジ、生徒たちを全員伏せらせろ。アリアはそのまま爆弾の解体に集中してくれ――なに、心配はいらんよ」

 

 

ラインハルトが言っている傍から、ルノーの座席部分よりサブマシンガンが出てくるが、その瞬間にラインハルトが空気を殴って弾丸とし、破壊する。

 

他の2台にも同じように対応し、タイヤを撃ち砕いてスリップさせて破壊することも忘れない。

 

 

『ダメッ!あたしの腕じゃ届かない!』

 

「レキ、頼んだぞ!アリアは直ぐに上がってきたまえ!」

 

 

アリアは指示通りに直ぐに待避体勢に入っており、レキはヘリの中でうつ伏せになりドラグノフを構えている。

 

 

『ここは暗闇の中』

 

 

すると、通信を介してレキの呟きが聞こえてくる。

 

恐らくアリアとキンジも聞いているのだろう。

 

 

『暗闇には一筋の光の道がある 光の外には何も見えず、何もない』

 

 

それはラインハルトの真の恋人となって以降に変化した自己暗示にも似たセリフ。

 

レキが対象を絶対に仕留める際に呟く“必殺”の言葉。

 

 

『――私は光のなかを駆けるもの』

 

 

セリフが終わると同時に発射された弾丸は、寸分の狂い無くバスの下にあった爆弾を撃ち落とした。

 

ラインハルトが直ぐ様爆弾を狙い撃って海に落とすと、直ぐに振動と共に大きな水柱が上がる。

 

こうして、武偵殺しの事件が本格的に動き出したバスジャック事件は、負傷者数名という結果を残して終了することとなった。

 

 

 

 

 





アリア怪我しなくて良かったですね。

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