※当作品は、原作者様、スタッフ、関係者の方々とは、全く関係ありません。
パシュッ
白銀の唯々、白い世界。
反対に真っ暗な世界で、響いた静かな音。
それはすべてが終わる音。何もかも、終わらせてくれた音だった。
生々しい朱い血が、ぼたぼたと落ちる。
「灰…ばら…」
真っ赤に濡れた小さな子供の手が、私を求める。
ジンが放った凶弾が、私の脇腹をかすり、私は倒れて。
「死に花を咲かせてやる」
そんな言葉を吐いて、彼女に銃口を向けた、ジン。それすらも罠だったのか。
無茶な彼の心に火をつけて。
ジョディが負わせた左腹部の傷。赤井が隣のビルから撃った一発で致命傷を負い。銃口を私の頭に当てたジンの最期の弾丸は、空砲だった。とっさにとったジンの虚勢。私の身を案じて暗闇で身動きした彼、コナンに当たったのは、別の人物、ジンとコルンの仕掛けた罠。隣のビルから射撃のタイミングを図っていた、コルンの最後の一発だった。
その弾は、工藤くんの心臓近くを撃ち抜いた。
「大丈夫だ…奴らの銃はワルサ―だった……恐らくもう残りはねぇ…よ」
彼の最後の言葉はそれだった。
ザクッ
肌に刺さる、カッター。
そのまま、もっと深く刺そうとして。歯を食いしばった。
しかし――。
バンッ
誰かがカッターを叩き落とした。見上げてみると、居たのは服部だった。
コナンが死んで、もう一年が経つ。
組織を追い詰め、FBIと共にジンたちを撃ち、ボスを倒すことになった。
ボスからの連絡、コナンたちにかかってきた一本の電話を逆探知し、その間、警戒を強めていた筈の灰原を隙をついて人質にとられた。赤井が得意の狙撃で打ち抜いたキール、ベルモットの脳幹。二人とも喋ることなく息絶えた。
「その銃は、総じて八発式。キールに一発ぶち込んで、残りは一発ってとこか…」
口から零すのは、雑言と戯言。
そして、温かい血。
喋るたびに彼の口から流れ出る血が、意識の朦朧とする灰原の貌にぼたぼたと落ちてくる。
ジンが抱きかかえる灰原のその頭に銃口を突き付け、笑った。
廃ビルの六階。
光りの当たらない暗闇で、ベルモットに呼び出された灰原を探しに、予想しえる場所をFBIと二手に分かれて赤井とコナンは探しに来た。
当たっていたのは赤井とコナンの方だった。
蜘蛛の巣と埃が舞う、甚だ悪意の見える忌々しい場所に、ジンは最期の虚勢を張っていた。
「もう、逃げられねぇ、ジン…灰原にまだ執念でもあんのか?」
コナンが、どこか掠れがすれ、そうして吐き捨てるように言った。
キールに撃たれた膝が、痛むのだ。コナンの構える銃の手元が震えているのは、窓の外で舞う牡丹雪の、冬の寒さだけが原因ではないのかもしれない。
もう、誰も死んでほしくはなかった。
「それが時世の言葉か?」
瞳孔をピクリとも動かすことなく、灰原を抱きかかえたまま壁にもたれかかり座るジンの頭に、赤井は銃を向けて言った。
「さぁな…」
にっと笑うジンは、血を吐きながら尚も喋り続ける。口の横から血が滴る。
「これは提案だ…てめぇらの大事なシェリーの脳天に風穴を開ける前に、雇ってやろうと言ってるんだ。なぁ、赤井よ……もう一度俺と組織を作ってみないか?」
赤井は目を僅かに細める。撃つ気配はない。ぎりぎりまで、何かを待っているようだった。
「俺が…――」
身動きをして、ゆっくりとジンは銃口の先を、灰原の頭から頬に変えた。頭に向けて傾け、セーフティーをかちり、という音と共に外した。薄暗い中、灰原の驚いた目が開くのが見えた。
「――そんな顔をするな…」
赤井が小さく呟いたのが聞こえて、コナンが一瞬赤井の方を気にしたのが、灰原には分かった。
だが、もう遅い。
その動きに合わせて、赤井は同じように引き金を際まで引く。
「言葉を出せなくなる前に聞きたい。お前の――悲鳴をな。…死に花を咲かせてやる…」
―― ダメよ、秀。
―― ジンは生け捕りにするの。日本警察以外にも奴らの犯行実績は重いわ。FBIがどれだけ総力を挙げて彼らを血眼で探したかあなた自身分かってる筈でしょ?
パシュッ
パリン
パシュッ!
静かなサイレンサーの銃声と共に、ジンの左腕もだらりと下に落ちた。銃声は二発だった。
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