少し早いお年玉と言う名のただの一発ネタ。

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どうしてもやりたかった一発ネタ


帰ってきた超人

「そういえば、これから迎えに行く人って、どんな人なんですか?」

「あ?あいつがどんなのって?」

 

 糸目の少年は葉巻をふかしている銀髪褐色の男に尋ねた。

 彼らは所属している組織の仕事の関係でここHL(ヘルサレムズ・ロット)のターミナルに訪れていた。時刻は午前10時半。朝の通勤ラッシュや登校が一段落した時間帯であり、ターミナルは静かで人通りもまばらだ。週末ならば、もう少し人通りも多かっただろうが、あいにく今日は平日の月曜日。

 

「そうですよ、ザップさん。俺も入ってから会ったことなかったし、知っておきたいじゃないですか。朝早くから来てるわけだし」

「かぁーっ!これだから陰毛糸目は!もうちょっと頭働かせろよ?それともなんだ?本当に石頭ですってか?ええ?」

 

 銀髪褐色の男はぷくく、と言わんばかりのニヤニヤした表情で糸目の少年の無知を煽る。

 額をとんとんと葉巻でつつく様子はまるで少年のほうから見れば、口が裂けたかのように見え、そこから除く舌をちろちろと蛇のように動かしている。黙っていれば整った顔立ちということもあるし、いい感じなのは間違いないと少年は思うが初対面から変わらない青年の行動に正直慣れつつあった少年だった。石頭も癖っ毛気味なのも認めるが、いくらなんでも、その言い方はあんまりではなかろうか。

 

 ……まぁ、自分の所属している『組織』の濃い面々のことを考えれば、細かいことを気にしていると『組織』でやってられないのだが。

 

「言い方ってモンがあるでしょ!?ザップさん!」

「うるせい。寝てねーから先輩に大人しく弄られやがれレオ」

 

 銀髪褐色の青年――ザップはぷはぁーっと紫煙を糸目の少年、レオに吹きかける。それを手で団扇のように払いながら、レオは食って掛かった。これはいつもの彼らの光景である。

 

 ここ、HL(ヘルサレムズ・ロット)はかつてはアメリカの紐育(ニューヨーク)と呼ばれた場所だ。三年前、大崩落と呼ばれる事件が起こったことで人界と異界(ビヨンド)が入り混じって人外跋扈する場所へと変貌した。異界と混ざり合ったことによって技術がもたらされてはいるものの、HLから漏れると世界の均衡のバランスが崩れる危険性、それに加えて混乱が起こることも予想される。さらには血界の眷属(ブラッドブリード)と呼ばれる存在も懸念されており、そういった者や世界の均衡の為に暗躍しているのが構成員の名簿という断片的情報であっても裏社会で高額に取引されると言うのが秘密結社ライブラであり、レオことレオナルド・ウォッチやザップ・レンフロが所属している組織だ。

 

「またそんなこといって。どうせまた不埒なことでもしてたんでしょ?」

「不埒なことってなんだ、不埒なことって。いいか、レオ?愛を育む為に必要な行為でな……」

「はいはい、いつか背中から刺されないようにしてくださいね?で、どんな人なんですか?迎えに来てる人って」

「言うようになったな、お前……」

 

 もっとも、その心配をザップにするのは間違っているような気もするけれど。

 ザップ・レンフロは(ひきつぼし)血法(けっぽう)カグツチと言う血液を炎にする流派の伝承者であり、それにかけての技量はまさに天才と言っても過言ではないだろう。しかし、女癖の悪さもあってイマイチ尊敬していいのか迷うところがあるが。

後輩(レオ)の吐いた毒舌に苛立ちを感じたが、ここは先輩として大人の余裕と言うやつを見せてやろうと思ったザップは改めて気分を切り替えた。不機嫌な表情を浮かべたまま、愛する女性(モノ)達の元に帰るのはザップには許せなかったからである。

 

「まぁ、そうだな……。アイツはまず、デカい」

「デカいって?サイズが?」

「ああ。ブローディ&ハマーって分かるよな?」

「はい。確か、死刑囚の血液を持ってるからって刑務所にいるメンバーの一人でしたっけ?」

「そうだ」

 

 ブローディ&ハマー。

 それぞれをデルドロ・ブローディ、ドグ・ハマーと言う。凶悪な犯罪者であるデルドロの血液をハマーが持っているので、それだけで彼も一緒に刑務所に入っていると言う風変わりな男だ。何度かレオは顔を合わせたことがあるが、残虐なデルドロに反してハマーは明るくて無邪気なところがあり、人懐こい性格をした青年だ。第一印象も悪くなかった。

 

 他に取り立てて特徴とする点があるとすれば、血液(ブローディ)を纏ってハマーの鎧とする血殖装甲(エグゾクリムゾン)と呼ばれる異能だろうか。強面のライブラのリーダー、クラウス・V・ラインヘルツもかなりの巨体を誇るし、副官のスティーブン・A・スターフェイズや待合用のシートで寛いでいる先輩もなかなかに長身でハマー本人もそうだが、血殖装甲(エグゾクリムゾン)を纏ったハマーはかなりの巨体だったはずだ。

 ライブラのメンバーは皆、超人的な何かしらの能力を持っているので迎えに来ている人物もまた同様になんらかの力を持っているのだろう。自分(レオ)だってそうなのだから。

 

「アイツはそのハマー達よりデカい」

「ええーっ!?」

「ざっと大きさでは四十メートル、デケェ血界の眷属を相手にする際にアイツがいるときはよく出動してたな」

「もしかして、ハマーさんみたいに……?」

「いや、アイツは(ちげ)ェよ。アイツは道具を使う。俺がライター使うみたいにな」

 

 人を見かけでは判断してはいけない、ということがHLに来て深く理解できるようになったレオだがザップに質問したのには意味がある。ハマーのように理由があるとはいえ、他者の血液を自分の身体の中で流し、共存している人物なのかと。

 最も、レオはHLにおいて種族による差別がある中で比較的にそれらを好まない部類にある。むしろ、嫌うほうだ。種族を問わずに分け隔てなく接するのがレオの長所であり、事実、この街で人間(ヒューマー)以外にも友人が出来た。

 

「こう、カァーッ!って。使ってるモンも使ってるモンだからさァ、ガキかよってなっちまってよ」

「ザップさん、ザップさん……」

「なんだ、お前はそういう風に俺を思っているのか」

「おうよ。そのダセェのなんの……」

 

 ザップはその異能を使う様を再現するかのように手で形作り、己の顔の上に作りながら腰を振る。どう見ても煽っているようにしか思えなかった。ふと背後からスーツケースを引き、テンガロンハットを被ったカウボーイ風の青年がやってきたので大慌てで伝えようとするが、ザップはまだ青年が視界に入っていないので気づくことはない。

 

 見上げてみると、青年はザップほどの背丈に黒髪を短く切りそろえており、まるで軍人のように目つきは鋭い。しかし、その目はレオの存在に気づくと優しさを帯びた。

 

「……って、げぇっ!?おい、レオ!頼んだわ!」

「ちょ、待ってくださいよ!ザップさん!?」

 

 ザップがようやく気づいたかと思えば、青年が視界に入ると大慌てで逃げ出した。過去に彼と何かあったんだろうが、レオの見解では間違いなくザップのせいであろうと睨んでいる。

 

「えっと、俺達、先輩と……、あの逃げてった人なんですけど待ち合わせしてて……」

「ああ、ザップだろう?知っている。君は見ない顔だね?もしかして新入りかい?」

「はい!レオナルド・ウォッチ、レオと呼んでください。貴方は……?」

 

 青年はレオの自己紹介を聞くと、微笑を浮かべてレオに手を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして、レオ。今日戻ってきた、君達と所属する組織を同じくする者だ。そうだな……、ダンと呼んでくれ」

 

 青年の首からは紐で吊るされた紅いSFチックなデザインの眼鏡が提げられていた。




エグゾクリムゾンは40mもないと踏んでいるので、たぶんダンさんが一番ライブラで変身すれば大きいと思う。

ウルトラアイ(仮)でセブンに変身し、使う血法はエメリウム転血身とか?


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