就職先は紅魔館 〜主人は吸血鬼〜   作:紅の赤

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設定がゴリ押しっぽい


序章 フリーターの就職活動
第1話


コンビニの菓子パンを手に取りバーコードを専用のあのピッと鳴る機械で読み取る

次の炭酸飲料、そしておにぎりも慣れた手つきで通していく

無表情な彼は客の方に顔を向けずに金額を告げる

高校生らしき青年はそんな様子を気にとめることもなくピッタリの金額を財布から取り出し乱雑に店員の前に差し出した

店員はそのお金をレジに素早く入れ商品を袋に詰めそのまま青年に渡した

青年がそれを受け取り暗くなった街へと出て行った

 

「あざしたー」

 

彼は顔を変えず感謝の言葉を言っているにもかかわらず感謝が感じられない、そんな調子の声でいつも通りの定型文を青年の背中に投げかけた

 

 

「はぁ」

 

暗くなった空を仰いでいると自然とため息が出た

空の星が綺麗に出ている、春だというのに肌寒い

こんな綺麗な夜なのに、俺の心はどうしてこうも.....

どうしようもない思いが胸の中で行き場をなくし溜まっている

明日もバイト、同じ時間に同じ様に....

家までの足取りが重い、こうなるのも仕方ないか

最近働き詰めだから疲労が溜まってるのも一因かもしれない

そろそろ休みを取ろう、いつにしようか

そんな暗い気持ちのまま大通りを抜けいつもの住宅街へと向かった

 

閑散としている住宅街

家の明かりが辺りを照らし街灯無しでも十分前が見える

歩いている人など自分くらいである、そんなに遅い時間でもないのに

ふとそんな疑問を抱きながらいつもの様にとある小さな公園を見る

ここは特別な場所だ

一ヶ月ほど前から、ここは一種の楽しみとなった

公園の明かりの下のベンチに一つの影

整った銀髪の落ち着いた様子の彼女

見つけた途端走り出しそのベンチへと急いだ

 

「お久しぶりです、十六夜さん」

 

「お久しぶりですね、伊従さん」

 

こちらに気づいたのでこちらから軽く頭を下げながら久しく話す知り合いに声をかけた

それに返してベンチから立ち上がり頭を下げながら挨拶をした彼女、十六夜さん

彼女とは一ヶ月前からこの公園で知り合いとなった

キッカケは覚えてないが自動販売機で飲み物を買おうとたまたま公園に立ち寄り、そこにいた彼女と何故か話す様になった

時々不定期にこの公園でこうして1人でいるのでバイトの帰りにこうして公園に立ち寄る様にしている

因みに僕が知っている彼女の事なんて名前くらいである

彼女がどの様な仕事をしていて年が何歳なのか、どこに住んでいるのかさえ知らない

そんな正体不明な人と知り合いとなりこうして会っている僕も僕だが彼女も彼女だ

夜にメイド服で出歩いているのだ、最近は何かと物騒なので心配である

そもそも何故メイド服なのかという疑問が湧いてくるだろう

疑問がわかないはずがない、それで前に一度聞いてみたことがある

しかし記憶にないことは上手くはぐらかされたのだろう

なんともおしゃべりが上手な事だ

 

「いやー、一週間ぶりですかね?」

 

「そうですね、それくらいだった気がします」

 

こんな風にたわいもない会話をするだけだ

しかしこんな可愛い子と話せるのだから男冥利に尽きるものだ

彼女が腰掛けるベンチに同じく腰をかける

変に思われない様にやや間を取り端っこに腰掛け、手の缶コーヒーをその間に置く

これで変に出来たスペースをなんとも思わないはずだ

こんな夜に公園で二人きりだの近所の人や通行人がどう思うか

僕もそんな二人を見ればその関係なのだろうと思う

なのでこうして間隔を取っているのだ

別に女子と話すと赤面するとかそもそも話すのが苦手なコミュ障という事ではない

それならここに来ないだろうしわざわざやや遠いルートを辿って帰る必要もない

 

十六夜さんはやや肌寒いこの夜にメイド服だけなのだから中々寒さには強いのだろう、なんてふと思った

僕はこうして少しづつ発見をする

そして彼女がどの様な人間なのかを自分なりに形成していく

聞き役がとても上手で大人の落ち着きのある女性だ

全体的にクールな印象を受ける、そしてその印象通りだ

横目で見ながら考えに浸っていたこちらに気付いたのか視線を返す

顔も中々の美人だ、いやこれは知っている

 

「どうかしました?」

 

「いえ、特に」

 

慌てて顔を彼女から背ける

そんな慌てぶりを見てか十六夜さんはクスッと小さく笑った

そうだ、彼女の事が知りたい

これには変な意味合いなどついていない

純粋に思っただけなので心に留意していただきたい

今まではぐらかされた事を今回はしっかり聞こう

そうら決意しいつものバイトの愚痴などを話し始めた

 

十六夜さんはこの会話の聞き役だ

僕のバイトの愚痴をしっかり聞いてくれて尚且つアドバイスもしてくれる

かなり仕事のできる人だ

しかしいつも思う事がある、彼女は自分の事をあまり話したがらない

これが僕が彼女の事を知らない一端でもある

それにたまに会話に違和感がある

仕事に役立つアドバイスをくれる一方それ以外の話はかなり積極的に聞いてくる

こちらの話す事を聞いて質問してきたり話を広げたりと

まぁ話すのはどっちかというと好きだし僕としては苦ではないのだが

これを会話、会って話すというのだろうか?

会話というより質疑応答となっているようにも思える

 

「それでですねー、その客が肉まんの大きいやつをくれ!ってさわいでですね」

 

話しながら彼女をもう一度凝視する

整った顔立ち、銀髪、メイド服

まさかこんな風に公園でメイド服の美人さんに愚痴を聞いてもらえるとは思わなかった

運命とはよくわからないものだ....

 

話が終わったので置いていた缶コーヒーを手に取り一気に飲み干す

微糖の甘いような苦いような味が口いっぱいに広がる

十六夜さんはというと時計を見ている

時間が決まっているのだ、確か30分程だったような

今は9時45分....もうそろそろ時間だ

彼女もわかっていたのかベンチから立ち上がりこちらに一礼して

 

「お時間となりました、今日もお話をありがとうございます」

 

丁寧な言葉かつ会社の面接に来た学生のように改まって言った

次はいつ会えるのだろうか?

もしかしたらもう会えないのではないだろうか?

そんな不安が頭をよぎる

もしそうならば聞いておきたい事が山ほどある

今聞くしかない!

 

「十六夜さんの事を教えてください、仕事や何処らへんに住んでいる方なのか」

 

「少し...困りましたね」

 

本当に困っているのか頭を抱える

正直こんな聞き方で良かったのかわからなかったが何処らへんに住んでいるのか、という聞き方はやや不味かったのではないだろうかという後悔はあった

この質問を切り「帰ります」と言われればなんとも言えなかったが

ちゃんと聞いてくれたのは良かった、一安心

 

「そうですね....では少し」

 

そう言うと彼女は話し始めた

 

「わたしは十六夜 咲夜と申します、仕事はとある当主様に使える従者となります」

 

従者?なんだそれ?

そんな仕事初めて聞いた、少なくとも身近にある職業でもなさそうだ

そして当主様?誰だそれ?

人物だということくらいしかわからない

 

「住んでいる場所は....すいません」

 

それは仕方ないかな、プライバシーの問題ですから

いえいえ、と返事を返しさきほどの内容の質問をする

 

「従者?当主様?すいませんよくわからないのですが」

 

「身の回りのお世話をするのが従者であり、お世話する人を当主様と言います」

 

身の回りのお世話か

そんなすごい所で仕事していたのか

だから仕事のアドバイスが的確だったのか

にしても中身がもっと気になり始めた

僕は彼女の時間を忘れ質問を上げ始めた

彼女もそれにしっかり受け答え、返してくれた

 

この時彼女はとても嬉しそうだった

いつもの会話とは逆の立場となった

僕が聞き役もとい質問側、十六夜さんが話役もとい応答側

そしてなにより仕事に対する熱意とやりがいを感じられた

仕事に対する熱意とやりがい

僕は大学時代したいことが見つからなかった

厳密には見つからなかったと言えば嘘だ、見つけなかったのだ

目の前の事に没頭していた、友達と遊んだり和気藹々とした合コン

いずれ見つかる、周りのように大学四年間の間に見つかるさと思っていた、高校時代も兎に角今行ける一番頭のいい大学へと進んだ

大学がよければ良いほど就職で有利になったり道が開けると思っていたからだ

実際嘘ではなく就職も有利になるしいろんな体験が出来た

しかし、夢が見つからなかった

親も心配しているだろう

大学卒業後やりたい事を見つけたいと思い親に頼んで2年のフリーターを許してもらった

しかしその期限も過ぎようとしている

もう手当たり次第会社の面接を受けるか

そう思っていたこの頃

こんな風になりたかったという憧れや嫉妬、様々なものが溢れ出てきた

 

「あれ、どうして涙が?」

 

「大丈夫ですか?」

 

どうやら泣いていたらしい

涙が頬を伝わり地面へ落ちる

情けない、大人が公園で泣くなんて

急いで拭いて大丈夫ですと返事をする

しかしお見通しだったのか

 

「話してみてもらえませんか?今なぜ泣いたのか?」

 

どうやら心配されているようだ

いやしかしこんな事を赤裸々に告白してもどうだろうか?

された側も困るのではないだろうか?

しかしここでそんな事はもう言えないでいた

話してみれば意外とスッキリするのかもしれない

そうして今までの事や今の胸中を明かした

 

 

 

 

「そうですか、わかりました...お話いただきありがとうございます」

 

「いえいえ、なんかすいません」

 

頭をかきながら深くお辞儀をしてそのまま感謝の意を表した

そんな僕をみて十六夜さんは頭を上げてくださいと何度も言ってきた

流石に何度も言ってもらうのはこちらとしても失礼なので頭を上げた

十六夜さんは何かを決意するような目でこちらを見ながら言った

 

「明日、真夜中にここに来られるでしょうか?」

 

「あ、大丈夫です」

 

「そうでしたら明日12時にこの公園で待っています」

 

約束された

こんな事初めてだ

不思議に思いなぜなのか理由を問おうとしたところいなくなっていた

気付いた頃には居なくなる

これもまた彼女の知らないところ

幻か何かなのだろうか?

いや、信じよう....僕は家に向かって走り出した

 




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