街灯が暗い夜道を照らし住宅地の家々の明かりが暖かさを醸し出す
そんな住宅地を少し抜けると田んぼや畑が広がりさきほどの都会ぶりとはうってかわり郊外に出てきた感じとなる
そんな田んぼや畑に囲まれた家が僕の家だ
幼い頃から田んぼや畑に囲まれて過ごしたお陰なのかもしれないが農家の人と仲が良かったりカエルや虫を抵抗なく触れる
ここら一帯は街灯の間隔が広がり辺りが暗くなる
転々と照らし出している光とその間に広がる夜の闇がなんとも言えない夜の怖さを漂わせている
そういえば小学校の頃街灯の明かりに当たっていない暗い部分にはお化けが出ると聞いて街灯の下へ下へと間の夜道を走っていた記憶がある、本当に怖かった
今も何か出てもおかしくない気がする
そんな道を歩いているとぼんやりと見えてくる我が家、伊従家
三階建て、白とオレンジ中心の見た目は明るい洋風の家である
その家の小さな門を横にスライドさせ玄関の扉を引いて開ける
家の靴を見るとどうやら全員いるようで乱雑に靴が散らばっている
はぁ、とため息をつきながら足で大体靴を揃え空いたところに適当に靴を置いておいた
全くもう少し綺麗にできないのかね?
家のダイニングには新聞を読む父と食事の片付けなのか台所からにいる母が見えた
父はこちらに気づき新聞を見ながらテーブルを指差した、テーブルにはご飯や味噌汁、トンカツがラップで被されていた
どうやら今日のご飯はトンカツらしい、まぁ好きではあるけどカレーが食べたかったなぁ
そう思いながら自分の夕食を電子レンジに運び入れあたためた
ピッとなるといつもの電子レンジの音が聞こえてきた
待ってる間に台所からコップを取りやかんのお茶を入れ飲み干した
母さんが手を洗ってから、小さく小突いたがいつものことだ
ダイニングで新聞を読み終えたのだろう父さんがこちらに例の言葉を投げかけた
「そろそろだな、どんな感じだ?」
「あ、あぁ....まぁ」
父さんは俗に言う天然だ、昔からよく転んだり初歩的なミスをする
それ故なのだろうか、某国立有名大学を出て弁護士だというのにそうに見えない
顔を頑固な顔とは正反対のやんわりとした丸顔で表情筋もゆるゆるだ
仕事柄ハッキリと言うこともあり昔から相手のことをあまり考えない
これは僕が悪いのは知ってるがもう少し察してほしい
これは天然と言うより無神経なのだろう
僕も将来のことはちゃんと危惧している、だから急かされると頭で考えてしまう
そろそろ就職しないと申し訳ない
けどどこに就職しようか?
そもそも就職できるのか?
「就職先でいいところあったか?」
ニコニコしながら言うので怒っているわけではないがただいつもの質問のように気軽に言ってるのだろう
返す言葉がすぐに思いつかない....黙ったままも悪い
「うん、まぁ色々見てるよ.....」
父さんはそうかそうかとうなづきリモコンでテレビをつけお笑い番組を見始めた
チーン、電子レンジのあたためが終わった
トンカツを箸で掴み口に入れる
サクサクの衣はさすが母さんだ、料理が上手だ
味噌汁を一気に飲み干しトンカツの最後の一切れをからしにつけて食べた
「一緒に飲むか?」
ちょうど完食したこちらを見計らってかビールを差し出し横にすわる父さん
それを受け取り一気にプルトップを引いて開ける
プシュっと毎度の音を立てているその缶ビールを一気に飲む
口に広がる旨味が体に染み渡る
「俺も就職で悩んだよ....弁護士になろうなんて思ってなかったし」
「そうなんだ」
父さんの昔話が唐突に始まった
それを聞きながら窓を見る
星が綺麗だ、帰りの空も良かったが今も中々だ
「なんで弁護士なんだろうな?気づけばなっていた」
気づけばなっていたというのも本当にあるものだ
気づけば大学入学を果たし、大学卒業を終えてた
その期間のことは鮮明に覚えているのにまるでタイムジャンプしたような感覚だ
「でも今の仕事はとても充実してる、大変だけど」
充実している
十六夜さんも会話の中でそう言っていたな
遊び以外で楽しんだ記憶は本当にない
勉強でいい点を取った達成感や、中学時代の習い事で体操が県下二位になった時はとても嬉しいのは覚えている
しかしそれは楽しいという感情とは別の感情だ、それに過程がまた別のつらい、大変、忍耐というものだ
ゲームやカラオケ、飲み会は楽しいがバイトは嫌だ
しかしこれも我が儘だと最近思い始めた
誰も誰もが自分の好きなことで食っていけるわけはない
僕は運がなかったのだ、仕方ないことなのだ
「だから、やりがいのある仕事を選べ...玲司」
「いや、もうやめた」
心で決めたことを洗いざらい吐くつもりだ
酒の力を借りて自分の思いをしっかり伝えよう
「そんな我が儘言ってられないよ、もう取り敢えず就活してみるよ」
「でも、玲司」
「いいんだ、二年も待ってもらってこれじゃあ見つからないのかもしれないね....それにやっていくうちに仕事に愛着を感じるのかもしれないし」
父さんは僕を見て何か言いたげであったがそのままうつむき黙った
その二人を見てか母さんがこちらに近づきビールを僕の前のテーブルに置き
「就職するんだったらスーツクリーニングしないと」
そう言って頭を撫でてきた
それを振り払いビールに手を取り開けた
テレビを見ながら黙って父さんと晩酌を楽しんだ
そうしてそのまま自分の部屋に戻り寝た
朝になりいつものように8時に起きて歯を磨き朝ごはんを食べて自室に戻った、今日の12時に十六夜さんとの約束がある、
なぜか胸が高鳴っていた、何かが起こると
胸の高鳴りを抑えいつものように歩いてバイト先に向かった
「あざしたー」
ぺこりとお辞儀してはいるが客の方を見ていない
今日どんな客が来たのかあまり覚えていない
約束しか頭にないのだろう、気づけばもうこんな時間か
上の空状態だったが何も言われていないということは特に問題は起こしていないということだろう
「はやくおわんないかなー」
独り言のように小さく呟きレジにきた客にいつものように頭を下げた
こんなことを繰り返していたらいつの間にかバイトは終わっていた
缶コーヒーを握りしめ住宅地道を歩く
その流れでいつもの帰りのように公園に立ち寄った
しかし十六夜さんはいない
まぁ、約束の時間までここで待ってるというのもあれだ、一度帰るか
そう思い公園を立ち去った
家に着くとそのまま寝た
12時というのもあれだが疲れた
晩飯も食わずにスマホのタイマーをセットしてベットに潜り込んだ
タイマーの電子音が鳴る
その音にうんざりしながら頭を起こし目を擦る
時計を見ると11時45分、しっかり起きれたか
時間通り起きれたことに安堵したことと同時にはやく着替えないといけないことを思い出し急いだ
上下ジャージを着用しサイフ携帯をカバンに突っ込み一階に下りる
父さんと母さんはもう寝ているのだろうダイニングにはいなかった
いってきますと小さく言うと家を出て行った
公園の入り口あたりで時計を確認する
12時2分だ
間に合わなかったか....ゆっくり歩いているからか
時間に間に合わなかった申し訳なさでいっぱいになりながらもベンチの方へ歩く
ベンチにはだれもおらず人の気配もない
どうやら十六夜さんも遅れているらしい
まぁ待ってみるか、ベンチに座りスマホのロック画面を操作しようとすると
「遅い!遅刻だ人間」
聞きなれない声、幼さが残る高い声だった
うしろから聞こえたので振り向くと十六夜さんがいた
しかしその横には見慣れない格好の女の子
ピンクのドレスを身にまとい髪は青髪、眼は赤色と日本人離れしている、いや世間離れしている
コスプレの枠内にとどまっていればいいがこれが普段着だというのであれば痛い子となる
コスプレでもここらあたりを歩けばいやでも目に入る
「私を待たせるとはいい度胸だ」
どうやら怒っているようだが外見も相まってそうに見えない
しかし十六夜さんの関係者というのは明白なので遅刻したことは素直に詫びなければならない
「すいません遅刻しました」
ベンチから立ち上がり頭を下げた
「土下座だ」
な、土下座!?ちょちょ!
いやいや待て待てそれはダメだ
慌てて首を横に振り後ずさる
「お嬢様、さすがにそこまでは....」
十六夜さんが女の子にそう言った
女の子はわかっていると返しベンチにすわりこちらを見る
「お前だな、伊従という男は」
「はぁ、そうですけど」
明らかに目上の人には見えないが何故か敬語になってしまった
何故なのかはわからないが流れでそうなってしまったのだろう
別に怒られてないのでこのままで行こうと思う
「私はレミリア・スカーレット、スカーレット家当主よ」
「どうも伊従 玲司と言います、伊従家の次男です」
何をどう返せば良いのかわからないが一応自己紹介
相手は名前を知っていたが名乗るのは礼儀だから
「咲夜とは随分親しげなようね」
「そうですね、話し相手として仲良くやらせてもらってます」
相手の発言に色々質問したかったがやめておいた
取り敢えず相手の言いたいことを聞いてからにしよう
「なるほどね、確かにちょっと違う気配を感じる」
「はぁ、」
こちらを上から下までじっくりと見られる
かく言う僕は何か重圧的なものを感じた
蛇に睨まれたカエルと言ったところだろう
目の前のレミリアという女の子からすごい何かを感じ取っていた
言葉では表現しにくい力というものか
「そこまで固まらなくても....にしても面白いのは確か、気に入った」
気に入られた
何かよくわからないが気に入られた
ただただ困惑するこちらを見てか十六夜さんが近づき一礼して話し始めた
「本日は来ていただきありがとうございます、今回お話しする話は少し信じられないと思いますが聞いていただけますか?」
「わかりました、聞きましょう」
十六夜さんは話し始めた
話は要約するとこうだ
女の子、レミリア・スカーレットはスカーレット家当主であり幻想郷というある意味別の世界の紅魔館という屋敷に住んでいるようだ
そのスカーレット家に仕えているのが従者、十六夜咲夜
レミリアは吸血鬼であり年は500歳ほどらしい
吸血鬼のため日に当たれず夜に活動しているとのこと
この話を聞いた僕は厨二病ではない
だから信じられないし信じようともしない
しかしまるでアニメのようなその話を大真面目にする十六夜さんを見ているとそう思うのも思えなくなる
ここでまさかそのホラを吹きに来るような人ではないことも知ってる
しかし信じられない
「なんというか、その....さすがにすぐには信じられないです」
「そうですよね、聞いていただきありがとうございます」
一礼し後ろに下がった
この女の子が吸血鬼ねぇ
ジロジロ見てしまったのかあちらも気づき目を細めてこちらを見る
それにビビってしまい顔を背けてしまった
情けないがレミリアが吸血鬼というのが本物なら僕などイチコロだ
まさか人間より弱いということもあるはずがない
しかしここでビビってばかりじゃダメだ
話は終わったんだ、ここから質問してしていく
「単刀直入に言いますが、それで僕になんのようなんですか?」
結局何をしにきたのかわからない
仮にそれが全部本当だとしてもじゃあ僕に会いに来た理由が知りたかった
「そんなの決まってるじゃない」
レミリアの堂々とした声
「紅魔館で働きなさい、私に仕えなさい」
ある意味ここから始まった