就職先は紅魔館 〜主人は吸血鬼〜   作:紅の赤

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第3話

目の前の女の子、レミリア・スカーレットが放った言葉が飲み込めなかった、頭で理解できなかった

紅魔館で働け?どういうことだ?

レミリアは僕にうちで働かないかと聞いているようにも聞こえる

しかし後ろに私に仕えろと命令形が来ているのでこれは勧誘ではないのは確かだ

 

「どうなの?」

 

こちらが黙ったままなのを見て待ちきれない様子で返事を急かす

一応選択肢はあるようだが....なんというか今はわからない

現状が飲み込めていないのにすぐ縦に首を振ることは出来ない

 

「嫌なの?いいの?」

 

「断ったら?」

 

おずおずと質問をする

質問に対しての返事はとてもシンプルで簡単だった

 

「口封じ」

 

ニヤッと悪役のごとく笑いこちらを見る

その眼は有言実行するぞと言わんばかりだった

 

これはなんだろう、人生で今一番ピンチではないだろうか?

よくわからない二人の女子に囲まれて信じられない話を大真面目にされ今その信じられない世界で働けと言われている

僕には今決めろと言われても到底無理だ

イライラし始めたのかせわしなく足を動かすレミリア

ダメだ怒ってる、早く決めなければ....

 

「あの、提案なんですが」

 

おずおずと僕とレミリアの間に割り込む十六夜さん

レミリアの方をまず向き何かヒソヒソと小声で話している

それを聞いたレミリアはしぶしぶ納得したのか首を小さく縦に振った

それを確認した十六夜さんはこちらを向きある提案をした

 

「一度いらしては如何でしょうか?」

 

「....なるほどね、職場体験ってやつですね」

 

勝手に自己解釈

面接...ではなく信じられない世界に触れる

信じられない職場で働く為の視察に来ないかというお誘いだ

それなら首を横にふる事もない

 

「それならばお願いします」

 

頭をゆっくり下げてお願いする

仮に本当に幻想郷なるものが存在していたならば行ってみたいと思うし見てみたいと思った

そこに住めとなると急には決められないが

そうだ親に連絡しておかないと

携帯を鞄から取り出し無料通話アプリで一言

「ちょっと就活してくる」と打っておいた

あながち間違ってはないだろう

 

「わかりました、では向かいましょう....幻想郷へ」

 

十六夜さんが言い終わった瞬間目の前が真っ暗になった

 

 

 

 

 

鳥の囀りが聞こえない、太陽が眩しくない

こんなに目覚めの悪いのは久しぶりだ、太陽が出てないからかもしれない

腰掛けているベットから立ち上がりあたりを見渡す

紅に塗りたくられた部屋の壁が目を刺激する

部屋の中央に丸机と椅子が一つずつあり丸机には何も乗ってない

ふと窓を見ると真っ暗で星や月が綺麗に見える

その綺麗さは都会なんて目じゃない、まさしく輝いている

星たちが自分を見ろと言わんばかりの自己主張のぶつけ合いをしている

それを見てふと思ったがそれ以外に明かりがないこと

森の木々や湖が星や月の明かりで見えるが人工的な光や火の明かりがない

ぼーっと見つめていたが今は先に考えることがある

ここはどこだ?

目をさますと知らない天井だった

いつの間にかベットで寝ていたようでご丁寧にベットの近くに靴がきっちり揃えられて置かれていた

あの時十六夜さんの声が聞こえて、それから....

気づいたらこうなったって感じになる

ダメだ、扉の鍵も閉まってるから出られない

かと言って窓をぶち破り出て行くのもまだ早い気がする

....騙されたんじゃないか?

そんな考えが頭をよぎったがこんな男を拉致しても労力の無駄だ

もっといい人間を拉致するべきだ、だからこれはない

鞄も無くなっていることに気づく、スマホがないから連絡も取れない

腕時計に目をやると12時14分を指して止まっていた

まさか会ってから寝ていた今までで10分ほどしか経ってないというのもあり得ない

これは多分あの時に故障したのかもしれない

まぁ安物だから別にいいんだけど....

 

「はぁ、どうしたらいいんだよ....」

 

頭を抱えてベットにダイブする

ふわふわで柔らかいベットはその衝撃を殺して僕を受け止めてくれた

うつ伏せになりながら考える

ここはその幻想郷なのか?なぜ気づけばここにいたのか?

それも十六夜さん達の、幻想郷の住人の力なのだろうか?

考えれば考えるほどわからなくなってきた

もうやだ疲れた、ちょっと寝よう

布団に潜り込み目を閉じて二度寝した

 

二度寝はとても気持ちよいもので三度目の誘惑も出てくる

眠たい目をこすりながら目をさますと朝日が窓から刺していた

うわぁぐっすり寝てしまった、こんな状況でよく寝られたものだ

ん?何か音が響いている、それに気づき耳を傾けると

コツコツコツコツ...どうやら足音のようだ

こちらに近づいているようだ、音が大きくなってきている

やや身構え扉の方を向き近づいてくる人物を待つ

かなり近くなったところで音が止まる、扉の前あたりだろうか

トントンとノックをしたようだ、その場から動かず小さくはい、と返事をする

 

「失礼します」

 

そう言い扉を開けた人物は十六夜さんだった

そのまま部屋に入り僕の前まで来ると一礼して微笑みかけてくれた

その笑みを見て少し安心した、どうやら拉致られたないようだ...いや可能性は低かったけど

 

「食事の準備ができました」

 

食事とははて?確かにお腹が減っているが今はそれどころではない

色々説明してほしいことがある、今はその幻想郷というところにいるのか?幻想郷のここはどこだ?てか携帯どこ?

様々な疑問が頭に浮かんでは消えていく、何を先に聞けばいいんだろうか?.....そんな時

ぐ〜、僕のお腹が鳴った...十六夜さんはクスっと口元を押さえながら小さく笑った

 

「まず食事をしませんか?その時にご一緒に質問に答えますので」

 

なんとも情けない、恥ずかしい

 

 

部屋を出て見えた廊下はどこの城だよ、とツッコミたくなるような気品に満ちた廊下で紅のカーペットが敷かれていてまるでどこぞの国のレッドカーペットを歩いている気分だ、照明がろうそくなのがまた雰囲気を出している、日本人からすれば慣れない光景である

そんな廊下を見て落ち着いていられるわけもなくキョロキョロと見渡しながら歩いていた

そのまま案内されてきた部屋はかなり大きく宴会場か何かだと思った

この部屋で食べるんだ、きっと大人数でワイワイと

そう思っていたがそんなことはなかった

いたのは見覚えのあるフリフリのピンクドレスを身に纏った少女

レミリアさんだった

 

「あら?起きたのね」

 

部屋の一番奥の椅子に座る彼女

椅子が机を挟み向き合うように配置している中でただ一つ奥の椅子はこちらの扉の方を向き置いてある、そこに彼女が座っている

ここを人は誕生日会の主役席と言う

 

「ああ、おはようございます.....って!」

 

自然に挨拶されたので返したが今は呑気に挨拶している場合じゃない!

彼女に近寄りハッキリとストレートに聞いた

いま聞きたいことは山ほどある、思わず早口になる

 

「ここはどこだ?幻想郷か?あと鞄は?てか幻想郷って本当にあるのか?なぜ気づいたら寝てたんだ?あとあ「落ち着きなさい」

 

スパッと僕の質問攻めにメスを入れうざったらしく切った

確かに一片に聞きすぎた、落ち着かねば....

一呼吸おいて彼女に質問する

 

「ここは本当に幻想郷....なのか?」

 

「ええ、そうよ」

 

どうやら本当らしい、いまいち実感が持てない

まだ外を見てないからだろう、自分で納得し次の質問をする

 

「僕の鞄は?」

 

「咲夜」

 

一言そう言われても分からない

そもそも十六夜さんは鞄を持っていなかった筈だ

見ていた限りそう見えたが

考えながら十六夜さんの方を向くと

 

「これでございます」

 

「あ、ありがと...ございます」

 

気づいた時には持っていた

先ほどまで持っていなかったのに、不思議だとても気になる

僕とレミリアさんの会話の間にとってきたのだろうか?

いや、無理だ...扉を開けた時点で音でわかる

この部屋の扉は大きいのでかなりの音がした、鳴らさず部屋を出るのは不可能だ

考えても答えが出なかったが鞄が戻ってきたのでまず中を確認

携帯ある、財布あるっと全部ある

 

「で?終わりなの?早く朝食にしましょ」

 

レミリアは朝食が待ちきれないようで足をバタバタさせている

先ほどの威圧感とは裏腹に子供っぽい仕草を見てややニヤける

おおっと、隠さないとバレてしまう

ニヤついた顔を見せないようレミリアさんに背を向け顔を隠した

背を向けると十六夜さんが見える筈だが見えなかった

あれ?いない?先ほどまでここにいた筈なのに

辺りを見渡していたその時

 

「準備が整いました」

 

その声が聞こえた時には見えていたものが違っていた

何もなかった机には洋風の朝食が並びスプーンとフォークもお皿と一緒に並べられていていまからでも食べられる

そして今十六夜さんはレミリアさんの隣で料理を盛り付けていた

流石にここまで来ると思考が停止した

え?何これ?

もはや考えようとせず疑問詞ばかりが思いつく

 

「何をしているの伊従?席に着きなさい」

 

ボーとしていたのでその言葉が数秒頭に入ってこなかった

レミリアさんと一つ席を空けて座った

 

 

朝食は修学旅行で高そうなホテルに泊まった時の料理を思い出した

美味しかったなー、あれは

それが今目の前にある、パンはサクサクでスープは濃厚

美味しいが美味しい、しかし今はそれどころじゃない

気づいた時にはいなくなっていてふと気づけば料理を運び終えた十六夜さん....

まるで瞬間移動したみたいだ、そうじゃないと説明がつかない

 

「ねぇ?聞いてるの?ねぇ!!」

 

誕生日会の主役席に座っているレミリアさんが大きな声でこちらを呼びかけていた

気づかなかった、すいません

そう座りながら小さく頭を下げまた先ほどの疑問を考えようとした時

 

「咲夜のこと....かしら?」

 

その言葉には素早く反応してしまった

僕の行動は想定内と言わんばかりにふふんと鼻を鳴らし得意げに腕を組む

 

「突然現れ突然料理を持って出てきた、それで驚いてるんでしょう?」

 

まるで心を読んでいるかのようだ、それまた自分が顔に出やすいか

教えてもらえるなら教えて欲しい、このまま考えていても自分では答えが出ないからだ

 

「はい、そうです」

 

「やはりね、咲夜!自分のことは自分で話すといいわ」

 

わかりましたと返事をしてこちらを向く十六夜さん

その言葉を待った

 

「私は....時を止める程度の能力という能力がありまして、その能力で時を止め従依さんの鞄をとってきたり料理を運んできたりしました」

 

....ダメだ、頭が追いつかない

時を止める程度の能力?どこだ程度なんだ?

まずツッコむところが違うような気がするが頭に浮かんだ順にツッコむことにした

え?時を止める?どこの吸血鬼なんだよ

って主人が吸血鬼なのか.....ややこしい

能力保持者?厨二じゃなくて本当に?え、なにそれ怖い

じゃあ本当に時を止めたのか?そうなら先ほどの事も説明がつく

幻想郷ってこんなのがいるのか?そうならスゴくないか?

 

「伊従様、料理が冷めてしまいますよ」

 

あぁ、そう返事すると取り敢えず料理に手をつけ始めた

しかし上の空だったのだろう、記憶が朧げで何を食べてどんな味がしたのか後々思い出しても分からない

 

 

 

食べ終わった後もしばらく立てなかった

どうやらとんでもないところに気ちゃったぞ、自分

この先にどんなことが起こるのやら....

 

「伊従、今日は仕事しなくていいわ....近所を見てきてらっしゃい、でもあまり遠くへはダメよ」

 

食べ終えたレミリアさんがこちらに近寄り命令口調で言う

まだ貴方の部下になった記憶はないが?そう面と言えない反論を心の中で返すが確かに外を見たい

近所程度なら大丈夫だろう、ここの空気を吸ってみたい

 

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

鞄を手に取り立ち上がる

十六夜さんが玄関まで案内するとのこと

確かに自分の力で玄関に行ける自信がない、それほど広い家だった

外に出るため十六夜さんに玄関付近に案内してもらった

玄関扉は大きく立派だった

 

「では行ってきます、夕方には帰ります」

 

迷ってもグー◯ルマップあるし迷っても帰ってこれるだろう

 

「お気をつけて」

 

玄関扉を開け外に出た

 

 

 

 

「本当によろしかったのでしょうか?何も言わずに」

 

十六夜咲夜は主人のレミリアスカーレットに確認を取る

平然を装っているが心の中ではとても心配している

幻想郷には人を襲う妖怪がいるとのこと

もし襲われでもすれば普通の人間である彼は....

 

「いいの咲夜、この程度で死ねばこの先役に立つはずがない」

 

「分かっています....」

 

わかってはいることだったがやはり心配だ

彼は大丈夫なのだろうか?

不安が胸を渦巻く中料理の後片付けを始めた

 

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