『リリなの』の世界、その可能性の一つを書いてみた。 作:帆金 焔
皆はこんな都市伝説があるのは知っているだろうか?
男性は女性との性行為を行わず、つまり童貞のままで三十路を迎えると『魔法使い』になる。
‥‥‥いやいや、有り得んがな。
『魔法使い』なんてものは人間が作り出した空想の産物の一つ、実際には存在しない。
俺だって男だ。剣と魔法の世界やら、それに類するものに興味が無くはない。
でも、ちゃんと現実との区別はつけている。ああいうのは二次元だからこそ良いのであり、現実と混同してはいけない。
現実を生きる人間はちゃんと現実を理解して受け入れ、ファンタジーの世界は『実在しない空想』だと理解するべきなんだ。
と───、
───そう思っていた時期が俺にもありました‥‥。
予兆があったというわけではない。
誰かに指摘されたわけでもない。
四月某日。
俺、紺條 琥珀(こんじょう こはく)は三十路の誕生日を迎え、
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥マジか」
朝、普通に目が覚めた時には既に自覚があった。
あぁ‥‥‥‥‥俺は本当に『魔法使い』になってしまったんだな、と‥‥‥。
○○○
「‥‥よしっ、やってみっか」
さて、魔法使いになってしまったものは仕方がない。
幸いにして、今日はバイトも休みであり時間に余裕がある。
自分が魔法使いとして『何』を『どの程度』出来るのか確かめるため、俺は街から離れた山の中へと足を運んだ。
「右良し‥‥左良し‥‥前良し‥‥後ろ良し‥‥。360度、人の気配は無しっと‥‥」
とりあえず、結界ぐらいは張っておいた方が良いだろう。‥‥‥って言っても、具体的にどうすりゃ良いのか分からないんだが。
「とにかく‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぁっ!!」
ドーム型に広げるイメージで魔力を解放してみる。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
えっと‥‥‥‥‥‥‥‥‥多分、成功‥‥したんだよな‥‥?
よ、よしっ‥‥!そんじゃあ、気を取り直して始めますかね。
「まずは基本の一つ、『移動』から」
体内で魔力を練り、それをゆっくりと両脚に移動させて、
「ふぅ~‥‥‥‥‥‥『我が身 大気を駆ける疾風の如く』‥‥」
足の裏から地面に叩きつけるような感覚で、
「『駆けよ!』」
魔力を一気に解放する!
シュンッ!
数mの距離を一瞬で移動。
よっしゃ!成功!──したかに思われたが‥‥、
「──へっ‥‥!?ちょっ!?待っ──!?」
ズシャンッ!!
ブレーキが上手く出来ず、茂みの中に突っ込んでしまった。
「痛ぇ~~‥‥!?で、出来たことには出来たけど‥‥改善の余地有りだな、これ‥‥」
その後も色々と試した結果、自分の魔法使いとしての『程度』が分かった。
一つ・魔力を武器として具現化させることは出来ない。
一つ・魔力を銃弾、または砲撃のように飛ばし、対象物の破壊などは出来ない。
一つ・魔力による身体能力の強化は可能である。
一つ・自分を守るための障壁としての魔力展開は可能である。
と、まぁ、こんなところだろうか。
「しかし‥‥‥」
改めて考えると、自分の身に起きた非常識には驚かされる。
だって魔法だぞ?実在なんてしない空想の産物であるはずの力をよもや、自分が手に入れることになるなんて‥‥。
‥‥そう言えば。
二次創作の小説なんかじゃ、こういう展開ってあるよな。
それまで魔法に全く関わりを持ってなかった主人公。ある日突然、『力』に目覚めて──
「───‥‥‥ハッ!?!」
気づいてしまった‥‥。俺はある『とてつもなく重要な事』に気づいてしまった‥‥‥!!
二次創作の主人公達に会って、現実の俺には無いもの‥‥!
とてつもない違い‥‥!
それは‥‥!
「お‥‥俺には‥‥‥‥‥!?」
──ヒロインが居ないっ!?
「おぅ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥orz 」
ファンタジーな物語にはヒロインが居て当然だけど‥‥‥‥俺には今更、そんなこと無理じゃん!?
今日まで全く出逢いの欠片も無かったからこそ、童貞のままで三十路になってしまい‥‥。
今から恋愛しようにも、年下を狙おうものなら犯罪臭しかしねぇ!?
同世代の女性であっても、童貞な上にそれで魔法使いになったって知られたら、ドン引きは確実‥‥!
「そ、それに‥‥‥魔法使いになっても、肝心の『魔法を使う機会』が無けりゃ意味ねぇ~‥‥」
現実はやっぱ、何があろうとも『現実』ってことッスか‥‥‥orz
??side
《誰か‥‥‥僕の声が聞こえるなら‥‥お願い‥‥‥‥‥力を貸して‥‥‥!》
sideout
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残りも今日中に投稿するつもりです。
感想については、酷評は控えてほしい‥‥かな。