ある日、小さな町に突如として現れたブラックバード
スナイパー加賀さんは週に2回、この恐るべき敵と人知れず戦う
※後書きに物語の詳細を載せました
よろしくお願いします
加賀さんの朝は早い
いやいまだ夜のとばりの中にある
まだ町が奥ゆかしく寝静まる中、加賀さんは目を覚ますと両親と姉に気付かれないようひっそりと家の1階へ降りていく
その姿は情熱を示す赤いジャージである
加賀さんはどちらかというと青が好きなのだが、これは姉のおさがりである
キィと引き戸を開けると、コンプレッサを365日休むことなく回し続けるモーター音が耳に入る
加賀さんは足音を立てないよう、体育の柔道の経験を最大限に発揮し、音の方へすり足で近づく
手が伸びる
そして冷蔵庫を開け、牛乳を飲む
白い液体を嚥下する。なんと!!!加賀さんの体に活力がみなぎってくるではないか!!!
そして少女にあるまじきことに、直接ごくごくと紙パックのまま遠慮なしに飲んでいる
刹那、加賀さんに衝撃が走る!!!
あと十ミリリットル
あとたったそれだけあれば加賀さんの牛乳パワーは完全に充電されるのだが、なんと残酷なことか牛乳がなくなってしまった
飲み口から中を覗くもやはり無い!!!
加賀さんはシュンとする
でも今日も1日頑張ろう、胸に手を当てそう自分に言い聞かせる
空になった紙パックをテーブルの上に置く
そして2階の自分の部屋に戻り、ラジオ体操を始める
しかしそこにラジオはなく、心の中で新しい朝が来たの部分から歌う
「イッチニ、サンシ」
加賀さんはどちらかというと体は固い方だ
「ゴーロクシチハチ」
だからこそこうして毎日の修練を決して怠らない
こうして全ての出撃準備は整った
1階の玄関へ向かい足に艤装を付けようとした瞬間、加賀さんに電撃が走る!!!
忘れ物をしているではないか!!!
出鼻をくじかれた加賀さんはシュンとする
靴を棚に戻し、そして大人しく2階の自分の部屋に戻る
「かが」と刺繍されたガマ口の財布をポケットへ押し込む
こうして全ての出撃準備は整った
加賀さんは玄関の鍵を開け、暗闇に飛び出していく前にしっかり施錠する
ここは譲れません
外の空気はひんやりとしている
朧月夜がきれいね
さてこの時間に年頃の娘が1人外出するなど危険極まる
けしからん!!!
そうおっしゃる諸兄もいると思われるが
両親にはジョギングをしていると説明している
防犯ブザーととてもキケンなスプレーを携帯することで許しを得ている
なにより、この小さな町に悪を成そうという人間は存在しない
そう、今日は木曜日なのね、それなりに期待しているわ
経験から木曜日に敵の出現確率が最も高い、加賀さんはそれを知っている
敵が出現する前にこちらから出向く
加賀さんはフェンスを開けると、人の気配がないことを確認し、暗闇へと消えていった
そしてコンビニで2時間ほど立ち読みをしてから牛乳を買って、帰ってきた
戸を開け玄関にビニール袋を降ろし、「ふう」と額の汗をぬぐう
レシートは財布の中にちゃんと入れたから、あとでお母さんに見せてお金をもらおう、そう考えていた
突如!!!背後から敵の声が聞こえた
加賀さんは一目散に家の外へ飛び出し、眼前の光景に目を見開く
するとそこには既に憎むべき敵、ブラックバードの姿があるではないか!!!
ブラックバードは加賀さんの家の3軒となりで罪もない路上に横たわるソレに襲い掛かっていた
ソレは悲鳴を上げるでもなく、じっとこらえている
やられました
加賀さんは思う
本来なら機先をして戦うべき相手なのだが今日は後手に回った
ブラックバードは互いに声帯から発せられる空気の振動で連携を取りながら、ソレを容赦なく痛めつけている
ブラックバードの機動性・敏捷性には目を見張るものがある、艦載機を操作するときの勉強になるなと注視するも、やがて飽きたのか
加賀さんは手近にあった石を拾い、ブラックバードへ向かって投げつける
命中こそしなかったものの、敵は怯み、嬌声を上げる
当然の如し敵はこちらの存在に気付き、襲い掛かってきた
加賀さんに走馬燈めいた何かがよぎる
加賀さんは両親と姉の顔を思い出す、ここで倒れるわけにはいかない
母の顔が浮かぶ、奥ゆかしくいつも笑顔の優しい母
姉の顔が浮かぶ、口数が少なくいつも誤解されていた私をかばい、いつも守ってくれる姉
なんと残酷なことか、父の顔を浮かべる余裕はすでに加賀さんには無かった
でも来週は父の日だから姉と一緒にお金を出し合って、何か買ってあげよう
無難にネクタイが候補に浮かぶ!!!
現実が頭に来襲する
眼前に迫るブラックバード!!!
普通の人間であれば、この敵とはあえて戦おうとは思わない
現在の状況は多勢に無勢、まさにこの言葉がふさわしい
そう、今夜の勝負は引くに引けない、女心よね
胸に秘めた思いは1つ
そう心の中心から沸々と湧き上がってきたその思い、それは
もう家に帰りたい
もうこんなことは散々だわ
そう思っているとなんと、背後から車が忍び寄ってくるではないか
ブラックバードは翼をひるがえし、一目散に逃げだす。苦し紛れに言い訳の声を口にする
加賀さんは自身の役目が終わったことに安堵した
ごみ収集車が作業を開始すると加賀さんは誰に気付かれることなく帰宅する
次にブラックバードの来襲があるのは来週の月曜日
さあ朝食が待っている
気分が高揚します
ありがとうございました!
下記に物語の詳細を示します。
牛乳→特に意味はありません
ラジオ体操→特に意味はありません
姉→赤城
父母→特定の人物ではありません
ブラックバード→カラス
ソレ→集積所のごみ
月曜、木曜→ごみの収集日
スナイパー加賀→石を投げました
また、タグのSR-71はミスリードのつもりでした
ここにお詫びします
よろしくお願い致します。