網元の長女と許嫁(仮)みたいなんだが!?   作:次郎鉄拳

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ダイヤさんの誕生日と新年を祝って連続投稿です。


お気持ちだけでも

「それじゃあみんな! コップを掲げて~!」

「カドセン! 乾杯の音頭よろしく!」

「はいはい……それじゃあ、今年最後もあとわずかになりましたね。新年の前祝いではありますが、あまり羽目を外しs―― 「シラカドせんせーながーい!」 「先生、もういいんじゃないかしら!」 ――わかったよせっかちな奴らめ! はいカンパーイ!!」

『カンパーイ!!』

 

 

全員がそれぞれ好みのジュースを注いだコップを手に、上に掲げる。

音頭をとったらあとは飲む。コップをくっつけ合う必要はないからな。

 

――ここは、黒澤家の敷地内にある別邸。

一年最後の日である大晦日を、Aqoursみんなで過ごして新年を迎えたい。

というダイヤ、ルビィ、マルちゃんたちからプロデュースされたスクールアイドル部忘年会兼新年会。

夜通し女子高生だけで集うのに、男の俺がいたらダメじゃねとは考えたが――

 

――別にカドセンだったら大丈夫だと思うよ? カドセンだってAqoursのメンバーでしょ? それに、女子だけで一晩過ごすより先生のような大人がいたほうが安心できるし。なによりカドセンなら大丈夫だからね! ダイヤがいるし!――

 

と、松浦に大丈夫を二回繰り返して言われたのもあり、こうしてスクールアイドル部の顧問という立場で参加することとなった。

 

参加にあたって、1/1がダイヤの誕生日だということで誕生会もやろうぜと俺から企画もした。

アイツいつも誕生日祝っていたのが両親とルビィくらいだったらしいし、こうして友達に祝われるなんて新鮮な体験なんじゃなかろうか。

どうやら各々趣向を凝らした誕生日プレゼントも用意してくれたらしいし、時間を超える瞬間が楽しみで仕方がない。

 

 

「いやぁー! 今年も一年色々あったねー! あーミカンジュースが旨い!」

「千歌ちゃんオヤジ臭いよ……」

「でもまぁ、確かにこの一年はいろいろあったよねぇ……梨子ちゃんの転校とか、先生とかね」

 

「そうだねぇ、まさか私たちがスクールアイドルだなんて……今でも夢みたいだよ」

「そうですわね、千歌さんたちはともかく、わたくしや鞠莉さんが参加するなんて思ってもみなかったですわ」

「Truth is stranger than fiction。ね! なんだか、渡米するのがLonesomeだわ……」

 

「よしこちゃん……鞠莉さんは何て言ったの……?」

「『事実は小説より奇なり』って言ったの。あとは、アメリカに進学したくない……とは違うけど、ここを離れるのが寂しいっていう感じかしら――あとヨハネよ」

「そういえば鞠莉さんはめりけんの大学に行くっていってたずら……めりけんって、名前がこわいずら……」

 

九人全員がそれぞれ好き好きに組み合わさり会話を開始する。

ルビィ達一年組は小原の進学の話に感化されたかアメリカについての情報を共有し始めた。

だがマルちゃん、めりけんとは今時うちの教授ですら言わないぞ?

 

高海率いる二年生三人組は今年一年の振り返りから始まって、来年自分たちがその身に置かれることとなる進路のことを話し始めた。

おいおい……いつもはこういう時気分を吹き飛ばす高海の方が一番雰囲気沈んでるんだが……もしかしたら来年は一番目にかけてやった方がいい生徒なのかもしれないなぁ……

東京での件といい、意外と撃たれ弱いのがあの三人の特徴だ。

 

三年生三人は進路が決まった者同士だんだんと将来の話が濃くなり始めて――なんだ、なんで小原は俺に向かって手で招いてるんだ。

 

 

「スミト! ちょっと聞きたいことがあるからCome on!」

「はいはい……で、何を聞きたいんだ?」

「もうダイヤとCoupleになって二年過ぎてるけど――どこまでMoveしたのかしら?」

「「――ブッ!?」」

「もー、汚いよ二人とも?……で、実際どうなの? 私も知りたいかなぁ」

 

 

突如の質問にそろって口に含んだジュースを噴出した俺たち。

小原と松浦はニヤニヤ……ではなく、ニタニタとした意地の悪い笑みを浮かべながら『どうなの、どう?』と追撃をしてくる。

どこまで進んだって……そんなこと聞かれてもなぁ……

 

 

「何々―? シラカドせんせーがダイヤさんと結婚式するのー?」

「ようやくですね! おめでとうございますダイヤさん!」

「式はいつなんですか? それまでにピアノで一曲作ってきます!」

「ふっ……二人はこの堕天使ヨハネが悪魔の祝福を送ってあげる……!」

「ちっ――違いますわ!? まだわたくしと角人は式を挙げる以前に書類すら届けていないのですわよ!? 皆さま気が早すぎます!」

 

 

ダイヤの否定も空しく、ワイワイとみんなの勘違いがヒートアップしていく中、ここまで話から一歩引いていたルビィからの静かな一言が、空気を凍らせた。

 

 

「――お姉ちゃんと角人さんは、まだキスも、できてないよ?」

 

『なっなんだってー!?』

「「ブーッッ!?」」

「どういうことダイヤ!? あれだけ私たちにのろけといて肝心のキスすらまだなの!?」

「のろけた覚えはありませんわ!!」

 

「それどころか告白、プロポーズもまだずら」

「What!? スミトは本当にChickenだったの!? この意気地なし!」

「うるせぇなんで俺が責められてるんだ!?」

「自分の胸に聞きなさい鈍感!」

 

 

 

***

 

 

 

あれからやいのやいのと詰られ続けたのだが、

『夜も遅くなってきたということでひとまず風呂に入ろう』という高海の唐突な切り替えによって皆は一時鎮火。

別邸に風呂は一つしかないので、俺は一人本邸まで風呂に入りに行くこととなった。

皆の後に入ればいい? 勘弁してくれ、なんかどことなく気まずいじゃないか。

ダイヤが睨んできてたんだぞ? 『わかってるわよね?』って目で訴えてきたんだから、従っただけだ。当然のことをしたまでで俺は悪くない。

 

そんな誰にも届かない言い訳をつらつらとつぶやきながら寒空の下を湯冷めしないようにせかせか走る。

――こりゃあ寝る前にもう一回入り直しだな。さすがに入りなおすときは別邸の風呂に入ろう。

 

別邸に入り、もう風呂も上がっているであろうダイヤたちのいる部屋の前に行くと何やら騒がしい音がする。

ドッタンバッタンとあわただしく部屋の中を動き回っている音がするのだが――なにか変なこと企んでないだろうな、と障子に手をかけたとき。その手を神居さんがやんわりとつかんだ。

 

 

「坊ちゃま、もう少々お待ちくださいませ」

「ん? 神居さんが止めるって珍しいよな、なんだ、余計に気になってきた」

「お気持ちはわかりますが、女性たちの頑張りを素知らぬ顔で待ち続けるのがいい男かと」

 

 

はて、どういうことなのだろうか。

よくわからないけれども、待ち続ければいい。ということだろうか。

 

そうしてしばし部屋の前で突っ立ってると、スーッと障子が開き、正座をした着物姿のダイヤが目の前にいた。

……はて、ここはどこだったか。ああ、別荘だ、今は確か忘年会兼新年会中だった。

じゃあなぜダイヤは着物なんだろうか、わからん。いや、着物であるだけなら別にいいが、なぜ正座?

 

 

「特に意味はありません」

「ないのかよっ! ってかまた心読んでるんじゃない!」

「貴方の言いたいことなど大体わかるわ。そ れ よ り、今日が何の日かわかっているの?」

「大晦日だろ。そろそろ晩飯の時間だが、蕎麦がいいのか?」

「そ う で は な い の よ!?」

 

 

なんという騒がしい、荒ぶるごとにだんだんと立ち上がり、詰めてくるのだが形相が怖い。

はて、俺はまた何かやらかしたんだろうか?

 

 

「貴方って人は……肝心な時に限って本ッ当に鈍感ね!」

「だから何なんだってば、今日って言えば大晦日以外だと俺の誕生日くらいしかn―― 「だから! それよ! それなのよバカ!!」――はっ?」

「もうじれったい、入りなさい!」

 

 

ダイヤは立ち上がり、勢いよく俺を部屋の中に引っ張り込む。

勢いに反射で目をつぶり、部屋の中に勢いがまま飛び込んだのだが――

同時にパパパン! と発砲音に近いような音と、火薬の匂いが漂ってくる。

ん? 火薬?

 

 

「え? なんで火薬が――」

「それじゃあみんな! せーのっ!」

『白岡先生! 誕生日おめでとうございます!』

 

 

恐る恐る目を開けると、満面の笑顔な生徒たちが拍手をしながら、俺の誕生日を……

え……祝われたの? 俺今祝われたの?

 

 

「シラカドせんせーどうしたの?」

「あ、えっと、その……」

「ちょっと先生泣き始めちゃったよ!? ダイヤさん!」

「カドセン段々この状況を飲み込めてきたのかな、良かった良かった」

「角人お兄ちゃんは、涙もろいから……」

 

 

なんか、また涙が、目が熱い。

まさか祝ってもらえるとは思ってなかった。

当日に祝われるのは家族でもしていなくて、初めての体験で、とても、ビックリだし、凄い。

 

 

「まったく、貴方は本当に涙もろいのね。でも、存分に泣きなさい。今この場はあなたが泣いても、誰も笑う人はいないのだから」

「うん……うん……」

 

「なーんかダイヤに美味しいところFullに持っていかれちゃった」

「ふっ、あの二人は冥府から続く縁(えにし)によるもの。当然持っていかれるだろうけど……なんか納得いかなーい!」

「あれでまだ本格的な婚約をしていないというのが驚きだよねー……」

「実は、お姉ちゃんが卒業したら結婚か、白紙かになるそうです」

「それ、あの二人にとって選択肢ないよね……」

 

 

 

***

 

 

 

恥ずかしい姿を見せてしまったのだが、皆はダイヤの言う通り笑うことなく改めて祝いなおしてくれた。

なんともいい教え子に出合えたのだろう、教師生活一年目にしてこれは恵まれすぎている気がする。

 

 

「せんせー、これプレゼントだよ! 三人で考えたんだ!」

「お、おう、そうなのかありがとうな高海。開けてもいいか?」

「うん! どうぞ!」

「あはは……」

「うふふ……」

 

 

なんだか高海の後ろで色々と苦労しているような表情を浮かべる渡辺と桜内に疑念はあるが。

とりあえずもらったプレゼントの包みを開封してみる。

中に入っていたのは――ブリーフ。

そう、まごうことなきブリーフだった。しかも白、真っ白だ。

 

 

「高海……これは?」

「ブリーフ! 下着だったら実用性があっていいかなって!」

「……そうか、うん、ありがとう」

 

 

――トランクスにしなかったのはなんでだ? とは絶対に言わない。

困惑はするが、もらって困るものではないから、まぁ、いいのだ。

こんなにニコニコ笑顔の高海を傷つけるのはなんだか気が引けるもんだしな!

 

高海が『ね! 先生は絶対喜んでくれるって言ったでしょ!』

という姿は微笑ましいのだが……やっぱり何とも言えない顔をする桜内達を見ていると、高海ってまだまだ幼いのかなと感じるものだ。

 

 

「角人さん、マルたちからはこれずら!」

「ん? おお、おお! これ、香辛料セットか!」

「意外にも善子ちゃんのチョイスずら」

「まじか、津島意外に良いチョイスするんだな。助かるよ、作りたいスイーツがこれで何とかなりそうだ」

「べ……別に……そう?」

 

 

津島の方を見てみると、気恥ずかしそうな顔で目をそらした。

素直に褒められることは慣れないのだろうか。

だがこういうセンスというのは持っている方がいい、津島は趣味が周りに受け入れられるような環境になれば人気者になったのかもしれないな。

 

 

「フッフッフ……マリーたちからは後でPresentよ!」

「そっか、小原たちも用意してくれたのか、ありがとうな」

「どういたしまして、カドセンには色々と千歌たちがお世話になったからね」

 

 

ダイヤの誕生日プレゼントの方で色々頑張ってくれたとか松浦から聞いているので、小原たちもまさか用意しているとは思わなかった。

本当に恵まれている、やばい、また涙出てきた。

 

 

「あとはルビィとダイヤからね!」

「そういえば、ルビィの姿が見えないな……」

 

 

気づけば部屋からルビィの気配がない。

神居さんがいるから何かに巻き込まれたとは考え難いが……

 

 

「オッス! 姉御、おもちしやした!」

「時間ピッタリですわ、でかしたわよ!」

「――は?」

 

 

突如部屋の中に入ってきたのは、昔の映画とかで見るような刀匠姿をしたルビィ。

……刀匠姿?

 

 

「一級品の刃っす、兄貴の手にもきっとよくなじむと!」

「ええ、ええ、いいわよ、素晴らしいわ!」

「待って」

 

 

思わずツッコミを入れてしまった。

だが言わずに言われないんだ。分かるだろ?

 

 

「どうしやしたか兄貴、あっしになにか?」

「いやいやいやいや! 何から何までおかしいだろ!? なんだよその衣装、なんだよその口調! ルビィどうしたんだ!?」

「あっしはいつもどおりでっせ!」

「いつも通りじゃないんだからびっくりしてるんだよぉ!?」

 

 

――そんなわけで、ダイヤたちからのプレゼントは新しい包丁でした。

前に買い物に行ったとき真剣に見ていたのはそういうことだったんだな……

あと、ルビィのコスプレとかはクリスマスパーティーにやっていたらしい、何やってるんだお前ら。

 

 

 

***

 

 

 

忘年会も大詰め、晩飯代わりの年越しそばを食し、夕方から始まった年末恒例の歌番組を全員で鑑賞する。

 

 

「今年もあの事務所最初と最後なんだねー」

「あ! 今年もT-E-A出てるー!」

「そういえばスクールアイドル枠ってないよね」

「やろうとはしていたのよ。But、Youngな芸能人が多すぎて入りきらなかったの」

「あー、年齢的に放送してすぐにやらなきゃいけないもんねー」

「それと、来年すぐにラブライブの本選が行われるから運営委員の協力は難しいんだって」

「そういえば私たちも出るもんねー……」

「本当に、あんなことやってもまだ出られるってすごいのよ?」

「反省してます! 次こそはしません!」

 

 

話題はどんどんと年始後に行われるラブライブ冬大会本選へとずれ込んでいく。

 

夏のラブライブは高海が中部地域大会で、大会史上でも起こることがそうそうない『観客の誘導』、『観客に席を立たせる』、『観客にステージ乱入を行わせる』、『所有時間大幅超過』などなどといった数々の規約違反を犯したことによって当然失格。

冬の大会は出場が無理だろうと思ったのだが、Aqoursの実力自体は破格のものであるということで、ラストチャンスを設けられたのである。

……その代わり、運営委員会からはこっぴどく俺が叱られ、要指導ということまで言われちまったのだがな……

 

 

「ん、わりぃ電話だ、ちょっと出てくる」

「行ってらっしゃーい!」

「先生、除夜の鐘が鳴り終わるまでには帰ってきてくださいね」

「さすがにそこまで遅くはならねぇよ。気を付けるけど」

 

 

別邸の庭先に出て、着信に応答する。

見たことの無い電話番号だが、なんとなく、誰だかは見当がつく――

 

 

「おう、英司か?」

『大正解! じゃあ問題、俺は今どこにいるでしょう!』

「年がら年中世界飛び回っているお前の居場所なぞわかるか! で、どこにいるんだ?」

『君の家の前――冗談だよ走って門の前まで行こうとしなくてもいいから』

「なんでお前は俺のしようとしたことがわかるんだ」

『俺たちの付き合いじゃないか、大体わかるよ』

 

 

――幼馴染の日野英司。

あの世界ウロウロしているバカは何の用でかけてきたのか。

 

 

『とりあえずは、誕生日おめでとう。今年もそろそろ一年終わるね』

「……お、おう。そうか、英司も祝ってくれるのか」

『ダイヤちゃんたちには祝ってもらえたようだね、まだ続いていたようでよかったよかった』

「なんだよ……で、今どこにいるんだ」

『俺はね、今父さんの家にいるよ。何年ぶりだろうね』

 

 

言葉が出なかった。

大喧嘩して家を出て行った英司が、『もう二度とあの人と顔を合わせたくはない』とまで怒っていた英司が。

今、彼自身の親とともにいる、その事実は大変衝撃的だった。

 

 

『俺さ、どうやらニュースで映っていたらしいんだ、偶然なんだけどね。でね、父さんがそれを見たらしくて、鴻上さんを通じて連絡を取ってきたんだ』

 

 

鴻上――英司の海外活動のスポンサーで、英司とは個人的に親しい大富豪。

彼の会社である鴻上ファウンデーションの海外支援部門に英司を実質的に所属させ、英司の身の安全を保障している人だ。

鴻上さんは政界にも顔が広い、英司の親父さんからの連絡が来るのは確かにありうるだろう。

 

 

『最初はもちろん渋ったけどさ、俺も変わらなきゃ。って思ったんだ』

「変わる……?」

『角人は許嫁ができて教師もやって、淳は都議会に進出する計画が進んでて、そんな中で俺がこのまま父さんに意地張ってたら情けないなって思って、会ったんだ』

 

 

『あの人が出合い頭に頭下げてきたのは驚いたけどね』と笑う英司。

――そっか、英司も前に進んだのか。

 

 

「そうか、良かったな」

『うん。そうそう、角人はいつダイヤちゃんと式を挙げるの?』

「……はい?」

『いや、鴻上さんから一年位日本で働けって言われちゃって、来年いっぱいまでは日本にいるから式を挙げるなら出席できるなぁって』

 

 

式……結婚か……

 

 

『角人、今時夫婦別姓は珍しくないんだから、嫁入り婿入り関係なしに角人はどうしたいかだけでいいんじゃない?』

「まてまてまてまて、英司、話が進みすぎだ」

『そうは言うけど、角人のことだからきっとこのまま放って置いたら台無しになりそうじゃないか』

「そういう英司はどうなんだよ!?」

『あ、報告しなきゃね。俺も、鴻上さんの紹介で彼女出来ました』

 

 

――俺は英司からの言葉に何も言い返せなくなった。

 

 

 

***

 

 

 

「結婚……結婚かぁ……」

 

 

英司との通話も終わり、しかしあんなことをいろいろ言われた後だとどうしても帰ってダイヤの顔を見る気にもなれずに一人浜辺で黄昏ることとなった俺。

悩むのは当然のごとく英司から念押しされた結婚のこと。

 

――角人は結婚したいけどできない人たちと違ってお金はあるし、将来も一応安定しているし、相性もいいし、問題ないって! 自信を持ちなよ!

 

 

「とは言われたんだがなぁ……」

 

 

ダイヤはどうなんだろうか。

許嫁から夫婦として変わって、やっていけるのだろうか。

まず、許嫁から関係が変わるとどうなるのかさえも分からないのに――

 

 

「私の背を押したときとはまるで真逆ですね坊ちゃま」

「……神居さん、家族サービスはいいの?」

「翡翠様のご厚意で家族もみな本邸の方で祝わせていただいていますので」

 

 

神居さんが珍しく、俺の横に腰を下ろす。

 

 

「坊ちゃま、私が結婚について悩んでいた時、なんといって背中を押してくださったか、貴方は覚えていらっしゃいますか?」

「なんだったっけ」

「≪神居さんがうちの使用人をやめないっていうなら、帰宅時間は午後五時で、休みについては病気や不調を除き前日までの受付として、ボーナスありきで待遇改善するよ? もちろん育休産休その他諸々都合漬けるし。環境については問題なし、あとは神居さんの気持ちだけだね≫と。今思えばなかなかに坊ちゃまもおせっかいなお方でした」

 

 

――ああ、確かに、そんなおせっかい焼いたなぁ。

神居さんが『気になる人がいる』という相談をしてくれて、そこからおせっかいを焼いた結果見事結ばれて、そして数年後は年なんだけど結婚をしてもよいのかどうかと悩んでいたのでそんな感じの言葉で『よしいけ!』ってやってたっけ……

 

 

「今だからこそ告白しますが、正直鬱陶しかったです」

「まぁですよね! ごめんね!?」

「ですが、坊ちゃまがああいってくださったからこそ、私も腹を決めることができたのも事実。そこについては大変感謝をしています」

 

 

『ですから』と、彼は一息つく。

 

 

「坊ちゃまにその言葉を丸々お返しします。後は貴方の気持ちだけですよ、ダイヤお嬢様とこの先一緒にいたいか、いたくないか。その想いに素直になるだけでよいかと」

「神居さん……」

「お嬢様も貴方を拒むつもりは毛頭なさそうですからね」

 

「――角人!」

 

 

声が聞こえた。

聞き間違えるわけもない、ダイヤの声だ。

 

 

「角人! 戻らないと思ったら浜辺まで出て何をしているの!」

「……みりゃわかるだろ、海見てるんだわ」

「そんな薄い格好で海を見てて風邪をひいたらどうするの! ほら、戻るわよ、これを上に着なさい! まったく、持ってきておいて正解だったわね」

 

 

強引に上着を着せられる。

丈が全然あってない、柄とか見るに……これはダイヤの上着だろうか。

ダイヤの方に視線を向けると、相当雑な服の着方をしている。

急いで出てきたのだろうか、息も荒れている。

 

 

「なぁ、ダイヤ」

「なんですの角人、貴方気づいていないようですけどもう鐘は鳴っているのよ? 早く戻らないと皆さんを待たせてしまうわ」

「……あ、ああ、そうだな。それはすまなかった。それと……ありがとな、呼びに来てくれて」

 

 

『しっかりなさい!』とせかせか別邸に戻るダイヤを見て、夫婦というよりも親と子供みたいだなと思ってしまった。

もちろん、この場合だと俺が子供だろう。

 

――そうか、除夜の鐘か、ということは……

 

 

 

「先生遅いですよ!」

「まさか除夜のBellが鳴り終わるくらいに本当にReturnするなんて思わなかったよ!」

「いや、すまん。悪いとは思ってる」

「はい、せんせークラッカー」

「サンキュー高海、準備は万端か?」

「もう0:00過ぎたよ?」

 

「やべぇ! 皆クラッカー持ったか! 行くぞ!」

『明けまして、おめでとうございまーす!』

 

 

クラッカーの破裂音とともに、紙テープが空に舞う。

その直後、ダイヤ以外の全員が新しいクラッカーを取り出す。

突然のことにポカンとするダイヤを見て、『やり返してやったぜ』いう表情を浮かべつつ若干かすれ気味な声を張る。

 

 

「Happy Birthdayだ、ダイヤァ!」

『おめでとー!』

「……皆さん……フフッ、角人を祝った時、もしかしたらと期待しましたけど……実際にされると存外にも嬉しさが大きいようですわね……!」

「ダイヤさん! ちゃんとプレゼントは用意してあるよ!」

「私たちみんなからはこれ! HotelオハラがプロデュースするHoneymoonプラン! 実際に行けるのはMarchだけど、今のうちに予約しておこうと思って!」

「ゴッフゥ!?」

 

 

話題がピンポイントすぎてむせる。

何はともあれ、なるほど、確かにあとは俺の気持ち次第だ。

――三月までには、自分で言えるようにならなきゃな……

 

 

「スミトは何を用意したの?」

「あっああ、俺? 俺は……ダイヤが最近料理をよく学んでるから、その……エプロンと、髪留めなんだよ」

「キャー兎さんだー!」

「ダイヤいいなぁ、旦那さんからのエプロンって新妻って感じがするよねぇ」

「果南さん! 恥ずかしいのでからかわないでください! それと角人! その……ありがとうございます」

「お……おう」

 

 

ダイヤの言葉に照れくさくなった。

そんな空気は、高海の一言によってとんでもないこととなる。

 

 

「それじゃあここで祝いのキスを――」

「まって千歌ちゃん、唐突すぎて意味わからない」

「いいIdeaよチカ! ここはスミトにガツンと男になってもらいましょう!」

「二人はここで仮初の契約を交わすのね……!」

「仮初は仮初でも、(仮)が取れる方の契約だけどね」

 

 

どうしよう。

ダイヤの顔を盗み見るが、こっちもこっちで高海の言葉を反芻し終えて混乱しているところだ。

――どうしよう?

 

ふと、神居さんや英司、淳たちが口々に背中を蹴っ飛ばすような応援をする声が聞こえた。

――気持ちに素直になれっていうけど、ここは絶対に違うと思う。

 

 

「す……角人?」

「あー、どうする?」

「角人は……嫌ではないの?」

 

 

ダイヤがやたらとしおらしい。

それと、質問の答えならわかりきっている。

 

 

「俺はダイヤなら別に嫌じゃない。ただ、お前が無理してまですることじゃないだろ?」

 

 

ダイヤの顔が百面相を始めた。

気づけばみんなからのキスコールが挙がっている。

――さすがにちょっと叱るか。

そう思ってダイヤに一言声をかけようとしたとき――

 

 

「――――?」

 

 

首あたりの布地をつかまれた感覚、そして気づいたらダイヤの顔が俺の視界いっぱいに――あっ。

 

 

「こここここれで希望には答えましたわよ千歌さん!」

「ダイヤー、カドセンが電池切れたロボットみたいに動かないよー?」

「角人! 惚けてないで、起きなさいバカ!」

 

 

――くそう、いつでもいいから、俺からキスして、プロポーズしてやるんだからな……!

 




・ブリーフ
チョイス理由は『テレビで男性が履いてるから男性の履物ってこれが一番喜ばれるんじゃあないかな』という圧倒的勘違い。
でも千歌ならやりそう。という安心感もあった。

・香辛料セット
ヨハネのことだから黒魔術風雑貨とかでそれっぽいビンに入ってたら買ってるだろうと思う。

・刀匠
スクフェスコラボシングルのドラマパートより。
半年ぶりのドラマパートがあんな内容だと誰が想うだろうか。
珍しく果南がボケまくった作品でしたね。

・ラブライブ
第二期の内容を予想していくスタイル。
間違いなく夏の大会は失格負けしかないだろうと思っている。

・英司
鴻上共々元ネタは仮面ライダーオーズ。もちろん恋人はあの子をイメージしている。
英司は尻に敷かれそうだ(物理的に)

・キス
この作品は角人が自分からキスしに行ったところで最終回です(壁を殴りながら
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