網元の長女と許嫁(仮)みたいなんだが!?   作:次郎鉄拳

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恋になりたいLIBRARY

浦の星女学院では毎年中間と期末の間に各教科の復習テストというものが存在している。

一応小テストという扱いではあるが、小テストをちまちまとやるよりも授業をしっかり受けたかどうかを確認するには充分だとか、なんだとかはよくわからないが、とりあえずそんなものをやることになっている。

俺は新任一年目という立場ゆえに、テスト製作には一切関与しておらずで、放課後のこの時期はもはや暇でしかない。

 

 

まぁそんなわけで教育主任からは――

『貴方の仕事は生徒たちが学業にいそしんでいるかをしっかり見回ることです。遊んでいる者たちがいれば注意するように、と・く・に! 双葉心継さんのことをしっかりと監視するように!』

――と言われたために俺は図書室に向かっている。

 

 

……なぜ今の話の流れで図書室か?

それは、双葉がマルちゃんに勉強を教えてあげるという話を、俺がルビィから聞いたからだ。

まぁ双葉は成績優良だからなぁ、マルちゃんが彼に教えてもらうという選択をするのも間違いではない。

実際俺が教えてもいいのかどうかまでは俺も把握できていないし。

マルちゃんの家とかでなら存分に教えられるんだけど、あくまで学校内だからなぁ……出来ることならば教師らしいことをしたいもんである……

 

 

そうして徒然と歩いているうちに、気付けば図書室についたから図書室のドアをガラガラと開く。

双葉がしっかり勉強を教えられているのかという不安が胸をよぎるがまぁ大丈夫だろうと、期待して開かれた先には――

 

 

 

「出来れば! 早くッ! 勉強をッ!! 教えて下さぁいッッ!!」

「シーッ――ちょっ、はっ花丸ちゃん! ここ図書室だから! 図書室だから!」

「俺の期待は全無視ですかコノヤロー」

 

 

 

――声を荒げて双葉に抗議するマルちゃんと、その様子からして明らかに勉強を教えていなかったであろう双葉がそこにはいた。

……直後、双葉の様子がおかしくなった。

ピクリとも動かなくなり、呼吸をしているのかすら怪し――ってそれまずいじゃん!?

慌てて双葉に駆け寄って強めに体を揺さぶる。もしコイツが何かしらの原因でショック死なんて話になったら、俺はコイツの親御さんに一生を捧げて償わなければならない。

大事な生徒を、こんなところで死なせるわけにはいかないんだ!

 

 

 

「双葉ッ! 大丈夫か、おい、返事しろ!」

「角t――白岡先生、どうしてここにいるずら!?」

「説明は後だマルちゃん、とにかくまずは双葉を――」

「――――はっ、いけない。ごめんね花丸ちゃん、ちょっとばかり呼吸が止まって、眼に光が――って白岡センセ、どうしてこんなところに?」

 

 

 

突如頭を振って双葉が意識を取り戻す。

俺がここにいることについて問うてくるその顔はいつも通りで且つ俺の焦った顔に面白がっているのか、少しだけにやけていて……

つまり俺の苦労は骨折り損のくたびれ儲けというのだろうか……マジかよ……

 

 

 

「……お前等がちゃんと勉強しているのか見に来たんだよ……驚かせやがって……」

「あー、ゴメンなさいですセンセ。あ、これからやるつもりだったんですよ。センセはいいところに来てくれました!」

「……と、言うと?」

「センセの事情考えればここに来たのも、僕の監視でしょう? センセも一緒に花丸ちゃんに教えてくれると助かるかなって!」

 

 

 

――なるほど、理に適ってる。

何度も言っていることだが、双葉はとても優秀だ。

素行不良生ながらに大学生レベルのテストさえも簡単に基準を抜ける頭の出来。

ぶっちゃけ俺が勉強を監督したところで教えられることはほとんどない、よっぽど【家庭教師】という名の親族は優秀な人物らしい。

そんな双葉と共にマルちゃんに勉強を教えることで【監視】という仕事と、【教師らしい】俺の望む行いが両立できる。

双葉とマルちゃんは本来の目的である【勉強会】に、俺という【教師】を加えることで状況の信頼を得ることができるため利害は一致していると見てもいい。

 

 

 

「わかった、俺も混ざろう。だが双葉、並行して生活指導も行うのでそのつもりでな」

「うげぇ……毎度思うんですけれど生活指導をされるなら、女性教師に優しく叱られたいと思っているんですよね、センセそこらへんどうにかなりません?」

「そんなんどうにかできるならどうにかしてるわ阿呆。俺も生活指導するならお前みたいにデキる問題児よりもデキない女子生徒にしてやりたいわ」

 

 

 

双葉の言葉に茶化し返したその時、俺の隣――マルちゃんの方から何やら重々しく、冷ややかな視線が俺に向かって飛ぶ。

はて、俺は今何かマズイことでも言ったのだろうか?

……と、ここまで考えてすぐに俺は自分の発言の過ちに気付いた。

直後、マルちゃんから死刑宣告に等しい言葉が、俺に投げかけられる。

 

 

 

「角人さん、今の言葉はダイヤさんと、そしてルビィちゃんにも聞かせてもいいずら?」

「まっことに申し訳ありませんでしたマル様、みじめな私の謝罪に免じて記憶から忘れていただけると!」

「おおう、あのセンセが一瞬で平身低頭するだなんて花丸ちゃんやるなぁ……」

 

 

 

必死に頭を下げることでマルちゃんに許しを請う俺。

教師として威厳も何も合ったものじゃあないけど、これは【浦の星女学院教師白岡角人】ではなく【()()()()()()白岡角人】として、なんとかダイヤやルビィへの漏洩は防がなければならない。

理由は単純で、ダイヤに怒鳴るように怒られるのも、ルビィに静かに怒られるのも、どっちも勘弁したいのだ。

 

 

 

「……仕方ないなぁ……」

「ありがとうマルちゃん! やっぱりマルちゃんは優しい子だ、こんな良い子と友達だなんて鼻が高いよ!」

「センセ、すっごくナチュラルに口説いてますよ。アレですか、天然ジゴロですかセンセ!」

「くっ、くどっ、口説かれっ!? オラって今口説かれてるずら!?」

「失敬な、俺はそんな節操なく口説いた覚えはない、素直な感想しか言った覚えがないぞ!?」

「それが天然ジゴロの特徴ですよ!」

 

 

 

双葉の大暴投極まりない言葉のピッチングによって、マルちゃんは一気に顔が真っ赤になってアタフタしだす。

マルちゃんの誤解を解くために双葉を諌めると、今度はマルちゃんの顔がまた難しくなってゆく。

マルちゃん百面相か……ダイヤもルビィもそうだが、なんか俺が悪いみたいな視線が轟々にとくるから納得いかない。

そして原因の双葉は、そのマルちゃんの様子にウンウンとうなずき、ポツリと一言漏らす。

 

 

 

「うん、花丸ちゃんはやっぱりかわいいなぁ」

「あ、双葉も分かるか?」

「当然ですよセンセ、こんなに僕が妙なことを言っても花丸ちゃんはこの席から離れようとせずに、あまつさえ僕に構ってくれる。そんな女の子を可愛いと思わないで一体僕はどんな女の子を可愛いと思えばいいんですか!」

 

 

 

妙なことを言ってる自覚があるならまずそこを治そうとか思わないのだろうか。

……いや、治すわけがないな。もし治すと言ったときは、迷わずコイツを病院に連行する自信が俺にはある。

たぶん治すつもりなんて微塵もなく、『【双葉心継】という人間はこんなものだ』と、いう再確認を込めて言っているようにも思える。

それと、マルちゃんは可愛いということをただ言いたかっただけなんだろう。

 

 

 

「るっ、ルビィちゃんとか? そう、ルビィちゃんとかどうずら? もうすっごく可愛いと思う、それこそマルなんかよ――」

「ストップだマルちゃん」

「ハイ駄目ー!」

 

 

 

俺と双葉は同時にマルちゃんの言葉を遮る。

考えることも、言いたいこともきっと俺たちは同じなんだろう。

 

 

 

「そういうなんかーとかって言ったら自分の価値を下げるんだよ? もっと胸を張って空を仰ぐ!」

「俺はルビィもマルちゃんも可愛いと思っている。二人の()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな魅力が互いにはあるんだよ」

「白岡センセの言う通り、女の子は()()()可愛いんじゃなくて、()()()可愛いんだ!」

 

 

 

迫真の表情で語る双葉の、その言葉の意味にいまいち気付けない――いや、()()()()()()()()()()()マルちゃんは呆けた顔をする。

そんなマルちゃんをちらりと見つつ双葉は一息ついて、マルちゃんの教科書をパラパラとめくり始める。

――そういえば忘れてしまっていたがもともとはマルちゃんへ勉強を教えるためにここにいるのだったっけな。

しっかし双葉よ、そのパラパラだけで教科書の内容が覚えられるならば俺はマジ要らない存在じゃないかな?

 

 

 

「……今じゃなくても良い。だけど、いつかは僕の言葉の意味を分かって欲しいな。皆、必ずどこかに可愛い所があるんだって」

「――――」

「……ふふっ」

 

 

 

突然双葉が、いつもとは違う、優しくそれでいて強い意志を示しながらも押し付けきらないような声音で告げた言葉に、俺は声を失った。

誰もが可愛い、ということ自体は易いけれども、ここまで重みのあるこの言葉を言えるものは――俺の親友に一人だけいた。

淳――俺たち三人の中で一番モテていた彼も、女性の優劣を付けたがるような男ではなかった。

 

 

『ただ怠惰に自分を磨かない人は優劣以前で評価すらできない』

『だけど、何かしら磨こうとする人は必ず何かが輝いて見える』

『たとえそれが小さな輝きでも輝き方がずれていたとしても、輝いていることに違いはないんだ』

『だからこそ、俺は真っ先に相手の輝きを探す』

『その人の()()を見つけることがその人のためであり――俺のためにもなるからね』

 

 

――淳は女性のほかにも、何かを高めようと臨む人みんなの味方であろうとした。

自身の良さに気付けない人の相談などに乗って、ずれた磨き方を是正しようと心掛けていた。

……なるほど、そりゃあ双葉のスタンスを咎めきれないわけだ。

だって、親友見てるみたいな、そんな感覚がしてしまうのだから。

 

 

 

「花丸ちゃん、センセがまた思考の海に沈んじゃったよ。地球の本棚にでも籠ってるのかな、深層世界で虚と対話してるのかな?」

「ホシ……のなんとかだとか、ほろうがどうとかはわからないけれど、角人さんの癖のようなものだから気にしたら負けです」

「そっかぁ、センセ少しこのままにして、勉強始めようか?」

「あ、お願いします」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「――あっ、勉強!」

「あ、センセようやく帰ってきた。気分はどうですかセンセ、もう一人のセンセと会話とかしてましたか?」

「もう一人の俺って何だそれ、気分はそれなりに快調だ」

「角人さん、学校でも考えにふけるのはやりすぎずら……今日の授業でもやっていましたよ?」

 

 

 

俺がいつもの悪癖から意識を取り戻した時にはある程度二人の勉強は進んでいた。

マルちゃんの苦言で今日の授業での失態を思い出してしまい、思わず苦笑いがこぼれる。

――ポツリと『だからダイヤは嫁入りだとあれほど』だなんて呟いていたのは不覚だった。

と、そんな後悔に悩まされている俺を横目に、双葉は自身の鞄より何かを取り出す。

――その時、マルちゃんの目の色が変わる。

 

 

 

「ふ、双葉先輩……こ、これは……!?」

「お目が高いね花丸ちゃん! 敢えて包みを普通のコンビニ袋と入れ替えていたというのにさぁ!」

「いや、普通に買った袋に入れとけよ」

 

 

 

双葉の取り出した袋の中身はアンパン。

よくよく見るとこれは俺のホームタウン【三島】にある人気店の限定アンパンではないか。

それを取り出した双葉に対する俺のツッコミはむなしく響き、マルちゃんの興奮はヒートアップ。

 

 

 

「そんなものでこの輝きは隠しきれないずら! これは隣町の店で限定販売しているあんぱぁん!?」

「イエッス! どうよ? ねえ、どうよ? これ瞬殺で有名なんだよね!」

「知らない訳がないずら! マルも何回か買いに行ったけど絶対売り切れるんだぁ!」

「えっ、これそんな興奮するものなの? この店の店主と仲いいから言ってくれればいつでも用意したのに」

 

 

 

そういえばマルちゃんはあんこが好きだったな、そりゃああんこをふんだんに使ったアンパンも好きか。

というかあのアンパン、俺はいつも店主から直接受け取るから忘れていたが、めっちゃ並んですぐ売り切れるんだったっけ。

『いつも御贔屓ありがとうございます』って俺に渡してきたときの周りの客の視線は確かにきつかったような――

変なところで自分の家がお金持ちだと認識させられるから、双葉との会話は毎回が墓穴祭りだ。

 

 

 

「なんでセンセはうなだれてるんですか。まるで真っ白になったかのようになっちゃって」

「いや、俺の目を背けたい事実を今の会話の中で思う存分見せつけられたんだ……」

「角人さんは変なところでコンプレックスを持ちすぎずら……」

 

 

 

二人の呆れるような視線を受けながらさらに心が沈む俺。

いや、もうなんかつらい。

 

 

 

「――と、いうことで花丸ちゃんにはこれをあげよう!」

「なっ何が『ということで』かはわからないけれど……へ?」

 

 

 

二人が何かやり取りをしてるが少し静かにしてほしい。

俺は今すごくコンプレックスの克服方法に悩んでいるんだ。

今、家出という方法を言ったやつは表に出ろ、親父殿と母上を棄てるだなんて俺にはできないんだ。

 

 

 

「是非ともお願いします! むしろ花丸ちゃんが食べてくれるなら謝金を出すことも厭わない! いや、お金払わせてくださいお願いします!」

「うるさいぞ双葉、教職権限でお前停学にするか?」

「なんて横暴! でも今の僕の心はそれすらスタイリッシュドゥエリストみたいに通り抜けてく感じがする!」

 

 

 

双葉の大声で意識を引き戻された俺は、ついついキツイ一言を彼に投げかけてしまった。

しかし、どことなく涙を流しているように見える彼はとってもさわやかな笑顔をしているようにも見える。

状況を整理するために周りを見ると、マルちゃんは双葉から受け取ったのかあのアンパンを両手で持ってじっと見ている。

ああ――なるほど、最初からマルちゃんにプレゼントするために買ったのかお前は。

そして、アンパンを持っていたマルちゃんは何かを覚悟するかのような目をしてそれを一口、頬張った。

……そんな一世一代の清水飛び降りをするかのような目をしなくてもいいのに。

 

 

 

「……」

「ど、どう花丸ちゃん?」

「…………」

「言葉がうまく出ないくらい美味かったのか?」

「――!!」

「あ、よかったぁ……」

 

 

 

よっぽど件のアンパンは美味しいのか、アンパンをほおばった口をモゴモゴとさせたままブンブンと首を上下に激しく振るマルちゃん。

その反応に買ってきた双葉は深く安堵の息を吐く。

――今度店行ったら店主にこの二人の反応でも伝えてみるか、自分のパンについてのリアルな反応をいつも欲しがってたし。

 

 

 

「……あの、双葉先輩」

「どしたの?」

「ほんとに、その、美味しかったです。ありがとうございます」

 

 

 

双葉へとお礼を述べるマルちゃん。

どんなに変なこと言ってても、こうやって【不純で純粋な】好意でプレゼントも、今回のような勉強会も行ってくれる彼は、不思議と憎めないやつで。

それをわかってるからこそ、マルちゃんも彼を拒絶はしないし、ダイヤも――彼を排除しようと強く動くことはない。

こうやって彼と直接言葉を交わしたものだからこそわかる魅力があるのだろう……既にちらほらと彼を狙っている飢えた生徒の話は聞いているからな。

何故知ってるかって? 双葉の生活指導担当だからと俺に直接相談してくる生徒がいるからだよ、なんて羨ましいやつだ。

 

 

 

「――――付き合ってください」

「あ、それとこれとは話が違ってきますので」

「おい双葉、教師である俺の前で堂々と不純異性交遊のお誘いとはなかなか肝が据わってるなぁ?」

「うわぁい! だよねぇ! そうだよねぇ! キメ顔しちゃった僕が恥ずかしぃ! あとセンセ、今回は見逃してくださぁい!」

 

 

 

――だがマルちゃんを俺の目の前で口説くことは許さん、気分は彼女の兄のような、そんな気持ちで双葉を諌める。

マルちゃんにも真顔でフラれた双葉はオーバーに顔を伏せて軽く悶える。

……ふと思うのだが、コイツ三年の小原だとか松浦だとかに、良い様に揶揄われてるんじゃないだろうな? 時々心配になってくる。

だってアイツら、特に小原が俺を揶揄う標的にしてくるんだもん、家に帰ってからダイヤが不機嫌になるから機嫌とるの大変なんだよ分かれ。

 

 

 

「大体双葉先輩は軽薄すぎるずら! 何でそうすぐに女の子に告白しようとするのかが分からないずら! まずは普通、友達から始まると思うんですけど!」

「じゃあまずは友達からお願いしていい?」

「――?」

 

 

 

真剣な表情でマルちゃんに握手を求めるような手を伸ばす双葉。

マルちゃんはポカンとしているが――俺は一つだけ今のやり取りに引っかかる部分があった。

そう、それは――

 

 

 

「お前ら、まだ友達じゃなかったのか」

「えっ?」

「へ?」

「いや、だって放課後に勉強会頼めるような関係だし、てっきりマルちゃんに新しい友達ができたな。とか思ってたんだが……」

 

 

 

――そんな俺の疑問に『そうか!』と納得したかのような顔をする双葉と、状況がよく分かっておらず困惑気味のマルちゃん。

いや、双葉ってばダイヤやルビィともそれなりの会話してるとこ見るし、アイツらとも友達になってたんだなぁとか考えてたんだけど……違うのか?

 

 

 

「決してあり得ないわ」

「お前はなんで人の考えてること読んでるんだよ」

「だって角人、あなたの顔がとっても良くそれについて物語っているじゃない?」

 

 

 

俺の内心の疑問に真っ先の否定を示したのは今までこの場にいなかった俺の許嫁(仮)――ダイヤだ。

彼女の顔は『わたくし、あきれています!』と言わんばかりの表情で飾り付けられていて、その眼光は主に俺だけに対して向けられている。

彼女の後ろからひょっこりとルビィの顔が見えていて、勉強道具を持っていたということは二人も勉強をしていたのだろうか?

 

 

 

「当然よ、でもどこぞの三人組が騒ぎ立てていて勉強どころではなかったから注意しに来たの」

「だからなんでお前は俺の心と会話してるんだっつーの」

「角人――いえ、白岡先生、監督するのであれば図書室のマナーもしっかり監督してほしいものですわ?」

「きk――いえ、なんでもございません。わたくしがわるぅ御座いました黒澤さん」

「それと、国木田さんを交えて先ほどのオハナシについて、じっくりと……聴かせてもらいますわよ?」

 

 

 

バッとマルちゃんの方を向くと青ざめた顔をしながら首を横に、ブンブンと振る。

双葉に顔を向けるとそこに彼の姿はなく、代わりにメモが一枚置いてあるだけだった。

 

 

『巻き込まれたくないのでお先に失礼しますねセンセ! ダイヤさんによろしく伝えてください!』

 

 

――と書かれたソレを見て、怒りではなく危機感がこみ上げる。

そう、双葉がいないということはダイヤからの怒りはすべて、100%が俺に飛んでくるということ……

ダイヤは俺が発した失言(という名の茶化し返し)も何処かで聴いていたみたいで、間違いなく今夜の夕食が無くなるコースでしかない。

 

 

 

「さぁ白岡先生、そろそろお時間ですし、帰りましょう?」

「まっ待ってくれ、話し合おう、色々と話し合わないかお互いの為に」

「角人さん、諦めるずら……こうなってしまったら、オラたちには受け入れるしか道がないと思う……ずら」

「そうね、花丸さんの言う通り、角人も日本男児であるならば、覚悟を決めてちょうだい。さぁ、行くわよ」

 

 

 

静かに死刑宣告をし、右手を振りかぶるダイヤ。

俺は今更逃げ出した双葉に怒りを抱き、彼女のビンタを自身の頬で受け止めるのであった――

 





・アンパン
角人のお家の力がよくわかってしまうシーンだった。
とはいっても角人自身が好んで当店のパンを買っていたこともあり、【白岡家】よりも【白岡角人】自身が店からも贔屓にされていた。


・オハナシ
角人の『生活指導するならデキる問題児よりデキない女子生徒にしたい』という発言について。
ダイヤさん的にはやきもちみたいな感じでもあるが、どことなく気が立っているためあんな感じに……


・花丸
コラボ今回および相手作である【君達のこころは輝いているかい?】第八話でのメインヒロイン。
ひたすら角人と心継より褒め倒されたり、すごくおいしいアンパンを食べた直後ダイヤの修羅の顔を見たりとどの時間軸でも苦労人ポジを着々と歩み続けている。
割とザックリ物を言うので心継にしろ角人にしろ彼女の言葉に倒れることがある模様。
今回の話で心継とは既に友達であったという認識が角人によって築かれた。


・ダイヤ
今作でのラスボス。相手作でもほぼ皆勤のヒロインである。
コラボ章では角人のほうに狙いを絞って起こる模様。
後日心継は彼女に捕まり、説教されたという。
本人は否定しているが心継とは友達な関係に近い。
同じ学年の小原鞠莉や松浦果南はよく角人を揶揄うため注意人物としてマークしている。


・角人
思考の海にふけった揚句、失言というのかうっかりというのか内心を漏らしてしまう男。
ちなみにだが『ダイヤは嫁入り』発言の顛末は、【生徒会長黒澤ダイヤが実は既に白岡ダイヤだった】という噂に発展するのだが、それはまた別の話。


・淳
ハイスペック系親友。
女性男性かかわらず真摯に向き合う姿勢が人気な友人。
心継の心構えなどに、角人は親友の姿を見たのだろう。


・心継
やっぱり変な発言している自覚があるコラボキャラクター。
アニメやゲームネタを少しずつほおり込んでいくが、角人達の反応が薄いため少し頬をふくらませる姿もあるかもしれない。
今回ダイヤから逃げた後は相手作九話の後半の話へと続いていく予定。
角人の懸念通り小原鞠莉や松浦果南にからかわれたりしている模様。
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