魔法少女リリカルなのは Another   作:Avell

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第一話

 

 

 

 

◆◇ 1 ◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってきて終夜はある異変に気が付いた。玄関に置いてある靴の数が一番の証拠だった。因みに家とはいっても彼は居候のみで、自宅と言うわけではない。

 「ただいまぁ……」と、誰に言うまでもなく小さな声であいさつしながら、終夜はリビングを目指した。誰かが既にいるのか明かりがついている。

ゆっくりと扉を開けるとそこには一人の少女がソファーに座ってテレビを見ていた。

 

「あ、おかえり、終夜」

 

 終夜の気配に気付いたのか、少女――フェイト・T・ハラオウンは終夜に振り向いた。

フェイトはこの家の家族の一人だ。長い金髪を友人からもらった白いリボンでツインテールにまとめている。顔立ちはまるで名工に作られた人形のように整っていて、彼女が務める管理局でもその可愛さは話題を呼んでた。

 

「あぁ……、今帰ってきたのか?」

 

「うん。母さんとお兄ちゃんは遅くなるって」

 

 フェイトの返答を半ば虚ろに聞いていた終夜は「そうか……」と相槌を打ってからダイニングに足を運んだ。この家の炊事当番は彼の担当だからだ。フェイトは今帰ってきたと言っているので、食事はまだなのだろう。リビングルームで終夜を待っていたのが何よりの証拠だ。

 

「あ~、ってことは、今夜は俺とフェイトの二人きり……」

 

「そんなわけないだろ」

 

 終夜が幸せそうな顔をしていると足元からそれを否定する声が上がった。

 だよなぁ……、とため息をつきながら視線を床に降ろすとオレンジ色の毛並みをもった。ぬいぐるみのような、いや一見すればぬいぐるみに見間違う子犬が終夜を見上げていた。

 

「リンディがあんたとフェイトを二人きりなんかにするわけないよー」

 

「幸せな妄想をぶち壊してくれてありがとう、アルフ」

 

 終夜はしゃがみながら、声の主である小さな犬――アルフに嫌味を零した。アルフはフェイトの使い魔で付き合いはかなり長い。小さな犬と言ったが、ここで訂正しておくとアルフは犬ではなく狼だ。今は魔力を抑えて小型化しているが、本来は一メートルを超す大きな狼なのだ。しかも、人間の姿になれるというのだからハイスペック狼だった。

 一般人は自分と同等の大きさを持つ獣とまともに戦えないし、敵いっこない。

 

「それより、今日の夕飯はなんだい?」

 

「……人間の姿になって食べるのか?」

 

 食欲旺盛な狼に終夜はたじろぎつつ、適当な質問を返しておいた。

 

「ん~、合わせるよ」

 

 どうやら食事優先のようだ。これ以上待てないと言わんばかりに尻尾を振るアルフに苦笑しつつ、終夜は夕飯の準備をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「管理局って、楽しいか?」

 

「え……?」

 

 足元で子犬化したアルフがせわしく食事をするなか、対面に座わるフェイトに終夜が質問をした。スープを飲んでいたフェイトは、一瞬思考を停止してからようやく言葉をつないだ。信じられないものを見ているといったところだろうか、フェイトは食事を一度中断していた。

 

「管理局に入るの? 終夜が?」

 

「なんで、そんな目で俺を見る……いや、入るつもりはないけど」

 

 終夜の返答を聞いて安心したのか、いつものやさしい表情にフェイトが戻った。

 

「そうだよね。終夜が仕事なんて……」

 

「失礼な、まぁ、いいや……で、どうなんだよ」

 

 食事を再開したフェイトを見て、終夜も牛肉のワイン煮込みを頬張った。

 今日のハラオウン家の夕食は手軽なフランスコースを真似たものだ。前菜のサラダにスープとパン、それからメインディッシュのワイン煮込みだった。終夜は生きてきた半生を一人暮らしで済ませてきたので、いつの間にか料理は得意になっていた。

 

「普通だよ。執務官になってから少し仕事がハードになったけど、でも……」

 

言葉を切り、フェイトは顔を曇らせた。

テンションの緩急に疑問を持った終夜が「どうした?」と尋ねると、フェイトは渋りながら口を開いた。

 

「最近、犯罪者グループの抗争が激しいらしくて。後片付けが大変なんだ」

 

「……せいぜい、巻き込まれないようにな」

 

 先に食事の終わった終夜が席を立った。それを見たフェイトも食事にラストスパートをかけて、出されたものを完食しきった。

 

 

「ごちそうさま。おいしかったよ、終夜」

 

 わざわざ厨房に回ってきて食器を返すところが律儀なフェイトらしい。

 

「急いで食べると太るぞ」

 

 そう言って終夜がフェイトの横腹をつまむ。

 

「ひゃんっ――!!」

 

 肩を跳ね上げながら奇声をあげたフェイトは、頬を赤くしながら終夜を睨み付けた。目尻には僅かながら光るものも溜まっている。

 

「デ、デリカシーがないよっ、終夜!!」

 

 怒るフェイトが訴えるも、終夜は全く反省の色を見せていなく、むしろ

 

「ははっ……2キロくらい太った?」

 

拍車がかかっていた。

 

「もう!!」

 

 ハラオウン家における暁終夜はいつもの調子だ。

 平穏で、バカらしくて……とてもじゃないが凄腕の殺し屋には見えない。

 

 

 

 

 

――log-out……

 

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