◆◇ 2 ◇◆
壊れた蛍光灯が火花を飛び散らせ、部屋をチカチカと照らしている。
そこはあるマフィアのたまり場になっていたバーだった。数時間前まではいつも通り、今日までの悪事をつまみに男達が酒を飲んでいた。
「お、俺の知っていることはこれで全部だ……」
ミキサーでかき回したように、ぐちゃぐちゃになった店内の隅で男が震えた声でしゃべった。
男の体は見るも無残に――つまり拷問された後だった。五本あった指の内二本と左の耳はナイフに刈り取られた。足と腕の自由がきかないのはそれぞれの四肢に一発ずつ銃弾を穿たれたからだ。
「た、助け――」
男を見下ろしていた青年が引き金を絞る。弾薬排出後の空薬莢が床に落ち、命乞いをしていた男の頭部後ろの半分が吹き飛んだ。即死だ――鮮血が円状に飛び散り、吹き飛んだ脳が壁に巻き散った。
「ふぅ……」
愛銃sw1911を左脇のホルスターにしまった黒髪の青年は確かな手ごたえを感じていた。
店内で唯一壊れていない椅子を見つけると、ため息をつきながら腰掛ける。改めて見回した部屋の惨状は筆舌に尽くし難い。白色だった壁紙は荒れくれ共の血で赤く染まり、バーのカウンターに並べられていた酒瓶は粉々に砕け、中身が床に垂れ流れている。S&W(スミス アンド ウェッソン)社の改良銃であるsw1911の口径は45インチ――木製の机やテーブルでは青年の銃弾を防ぐことは出来ない。故に、青年がこの場を制圧するのに数分もかからなかった。
「帰るか……」
足元に散らばる肢体を避けながら、青年は店を後にした。
◇
海鳴市を簡単に説明するなら、中心部はビルが立ち並ぶが、周辺を海や山に囲まれ自然も多く残っているそんな中途半端な街だ。郊外に出れば、温泉やプールもあるので娯楽にも困らない。ハラオウン家からそう遠くないところにスーパーもあり、終夜はそこで夕飯の材料を買ってちょうど戻るところだった。
「あっ、終夜君」
「……高町か」
「なにその残念そうな反応、失礼だよ。私に失礼だよ」
スーパーの出口で声をかけられた終夜が振り向くと、フェイトの友人である高町なのはが寄ってきた。なのはの右手には終夜も両手に持っているスーパーのビニール袋。どうやら彼女も夕飯の買い出しに来ていたようだ。
高町なのは。聖祥大学附属中学校所属。細い黒のリボンで長い茶髪をサイドで一つに纏めている。学校帰りなのか、なのはの服装は中学校の制服だった。
「――ってか、寄り道かよ。怒られんぞ」
「大丈夫だよ~、スーパーくらい」
そう言って肩を並べるなのはに、終夜は肩をすくめた。
なのははフェイトと同じ管理局と言う組織に努めている。五年前、管理局にその才能を認められてフェイトのお母さん――リンディから勧誘を受けたらしい。その時のきっかけがフェイトとのガチンコバトルだというから笑える。三年前にもう魔導師としては再起できないとまで言われた大怪我を負ったみたいだが……、笑顔で足を並べるなのはにもうその面影はない。だが、それがきっかけで彼女が教導隊に入ったというのだから本当の話なのだろう。
「そう言えば、こんど手伝いに来てって、お母さんが言ってたよ」
「桃子さんが? あ~、でも俺、恭也さん苦手なんだよなぁ……」
桃子はなのはの母親で、恭也はなのはの兄だ。桃子さんは終夜に料理を教えてくれたりしていて、二人の仲は円滑と言って良い――が、兄の恭也は超が付くほどのシスコンで、高町家を訪れるたびに終夜は彼から殺気を感じていた。厄介なのは「永全不動八門一派・御神真刀小太刀二刀流」という古武術の師範代だということだ。並の人間ではない。裏の稼業に足を踏み入れたことのある家系に、終夜はあまりかかわりを持ちたくなかった。
「お兄ちゃんには私がしっかり言っておくから」
――というか、居ないときに呼んでほしい……
なのはからのお誘いは正直終夜にとっても嬉しい。桃子さんからは学ぶことが多いし、女子中学生と気兼ねなく会話できる特権は贅沢と言ってもいい。
「……まぁ、機会があればな」
結局、適当に流してその場をやり過ごすしかなかった。
――log-out……
タイトルが大変なことになっていました。
教えてくださり、感謝の限りです。
ぐわっ、はずかしい……。