ではでは、第九話をどうぞ!
#09 ある違和感
俺は、41式を降り下ろした。
それはイーオスを縦に両断し、俺の防具に血と肉片、その他もろもろを盛大に吹き付けた。
特にそれを気にする訳でも無く、そのまま刀身の背の方を横に軽く振り回すと、空気を切る妙に心地よい音と共に、数匹のイーオスがボールのように吹き飛ばされ、遠く離れた所に落ち、少し痙攣してそれきりピクリとも動かなくなった。
「おーい、そっちの調子はどうだ、エド?」
俺は、少し離れた所にいるエドに声をかけた。
「悪くない。本体が重い分、撃ちやすくなってるからな!」
そこでは、エドが新調した后妃竜砲【桜花】に装填した散弾で、機械的にイーオスを狩っている。
まだ使い始めて間もないはずのそれを、まるで昔から使っていたかのように手際良く扱い、時折再装填する手つきはうっかりすると見逃しそうなほど速い。
「んで、あっちの方はいいのか、レツ?」
エドが、撃ちながら俺に聞いてきた。
「まあ、大丈夫だろ。見たとこまだやられそうにもないし、な!」
後ろから飛び掛かってきたイーオスを、盛大にバッティングしながら、俺は答えた。
一方、エドの言う『あっち』では…
「ふにゃああ!!来るにゃあ!あっち行くにゃあ!」
ジルがオトモ用の武器である、『肉球ネコぱんち』通称『にゃんにゃん棒』をぶん回し、イーオスを叩いていた。先端にモンスターの爪が仕込まれたそれは、可愛いようでかなりの攻撃力を誇る。
ジルはそれをただ滅茶苦茶に振り回している。
しかし、イーオス達にはかえってそれが厄介なようだ。時折飛び掛かってはいるものの、それらはもれなくジルの反撃(?)を受けて手傷を負っている。
「ま、初めてにしてはいい方だけどな…しかし…」
ぼやく俺の横から、また別のイーオスが飛び掛かってきた。
「いくらなんでも、多すぎるだろこれ!?」
それを叩き切りながら、俺はこのクエストを依頼してきた人物、即ち団長に対する文句をぶちまけた。
「ぼやくなぼやくな。親父の依頼の大抵がロクな物じゃ無いことくらい、お前も知ってるだろ」
エドが后妃竜砲【桜花】に新しい弾倉を叩き込みながら言った。
団長ことエドの親父の依頼、それはイーオスのボスであるドスイーオスを含めた群れの掃討だった。
何でも、交易をする予定だったアイルーの集落までの道のりである狩猟区に、突如この群れが出現し、以来集落との連絡が途絶えたらしい。それだけなら俺達にとっては簡単なクエストだ。
しかし、俺はクエスト中、いつもとは違ういくつかの違和感を持っていた。
まず通常、イーオスはこんな大規模な群れを成さない。五、六頭から成る小さな群れをいくつも作るのがこいつらの本来の習性だ。
さらに、探せど探せど、ドスイーオスの姿が見当たらない。普通ならとっくに遭遇してもおかしくないはずだ。
そして、俺が抱いた最大の違和感、それは…
「エド、ちょっといいか?」
付近のイーオスを殲滅したのを確認して、俺は納刀しながら、エドに再び声をかけた。
「何だ?」付近の警戒を緩めないまま、エドが答える。
「こいつらの様子、何か少しおかしくなかったか?何と言うか…その…」
「旦那さん、ちょっといいかにゃ?」
いつの間にか俺の近くに寄って来たジルが、割り込むように言った。どうやらこいつも無事イーオスを倒すことが出来たらしい。
しかし、ジルはそのまま、とんでもない事を言った。
「何だかこのモンスター達、何かから逃げてきたみたいにゃ」
* * *
一瞬の間、俺とエドは彫像のように沈黙した。
ジルが言ったその言葉は、俺とエドにはあまりにも理解し難いことだったからだ。
確かに、長い間ハンターをやっていれば、次にモンスターがどのような行動をするか、怯えているのか、興奮しているのかなどが解るようになってくる。
しかし、ジルははっきりと、『逃げてきたようだ』と言った。それは、俺やエドが全く気付いていないことだった。
もしかすると、そう思えるのは、アイルーもまたモンスターの一種だからかも知れない。最も、俺は普段から少しもその事を気にしないが。
「『逃げてきた』?…どういう事だ…?第一、なんでそう思うんだ?」
ジルの言葉の意味をいまいち飲み込めないのか、エドがジルに尋ねた。
「それは…」
ジルが話そうとしたその時だった。
エドの頭上、切り立った崖の上の茂みが少し動いたのを、俺は見た。そこから覗く、赤いモンスターの体も。
「エド、上!何かいる!」
俺が叫ぶのとエドが反射的に后妃竜砲【桜花】を上に向けるのは、ほぼ同時だった。その直後、崖の上から赤い何かが飛び掛かってきた。
エドが引き金を引く。ボウガン後部の弦がハンマーを弾き、それが弾の後部の雷管を叩いて、弾丸がー
出なかった。
何万分の一の確率で起こる、ましてや丹念に整備されたエドのボウガンならまずあり得ないもの、不発だった。
「くそっ!」
毒づきながら、エドは素早く回避行動に入った。
しかし、その前に、赤いモンスター、ドスイーオスの強靭な脚がエドを捉えた。
彼はたまらずふっ飛び、地面に強く体を打ち付け、動かなくなった。それでも彼の苦渋に満ちた表情から、どうやら生きていることは分かる。攻撃を喰らった時に思わず手放したのだろう。エドのボウガンは、彼から随分離れた所に転がっていた。
「エド!」
俺はエドを救出すべく、41式を抜刀し、ドスイーオスに斬りかかろうとした。
ドスイーオスは俺に気づいたらしく、俺の方を向きー
毒液を吐きつけてきた。
斬りかかる体勢だった俺は、ガードもできないままそれをまともに浴びた。しかし、それだけなら体力が削られて行くだけで、まだ動くことはできる。
が、体に急に力が入らなくなり、何故か俺はそのままつんのめるように倒れた。そしてその直後、俺はあることに気が付いた。
これはただの毒液ではない。何か、体を蝕むような別のものが混じった毒液だ…
俺は思うように動かない体で、頭だけを持ち上げてドスイーオスを見た。
ドスイーオスの目は血走って真っ赤になり、赤い鱗は、紫色の何かで染まっていた。口元からは黒紫色の障気が出ている。紛れもなく、それは狂竜ウィルスに感染した個体だった。
その瞬間、俺は全てを悟った。イーオスが何故大量に現れたのか、何故ジルが『逃げてきた』という言葉を使ったのか。
全てはこのドスイーオスが原因だったのだ。ウィルスに感染し、同族を襲いだしたドスイーオスからイーオス達は逃げ出して来た。しかし、群れの統率をするドスイーオスがいなくなり、イーオス達が寄り集まった結果、あのような大規模な群れが出来上がったのだ。
「ちくしょう…」
俺は腰のポーチに手を伸ばそうとした。中には解毒薬とウチケシの実が入っている。
だが、それは叶わず、俺の意識はゆっくりと闇ににじんでいった…
もしかして、文章力落ちてきたかなぁ…(-""-;)
と、最近書いてる途中に思ってしまいます。
タイミングもいいし、そろそろ『アレ』を物語に投入するかな…