…とまあ、お待たせしすぎてすみません。それでは本編、どうぞお楽しみくださいm(_ _)m
チコ村を遠巻きに囲むような形で急ごしらえされたかがり火に、イーオスの群れが明々と照らしだされる。
俺たちの持ち場に現れた群れの総数は十頭ほど。他のモンスターと違い、火を恐れる様子は全くない。深紅に染まっているはずの鱗が、赤黒い不気味なまだら模様に彩られている。自分のものではない血で、口のまわりを染めているものも数頭いた。
俺たちを獲物と認識したのだろう。若干ふらつきながらゆっくりと、しかし確実に俺たちに迫ってくる。
「来るぞ」
背負った41式対飛竜大剣の柄に手をかけ、傍らにいるジルに声をかけた。
「怖いですにゃあ……」
ジルの不安げな声が足元から返ってくる。
「なあに、教えた通りにすれば大丈夫だ。さあ行くぞ」
ジルを励ますようにそう言うと、俺は手近な一頭に向かって駆けた。斬撃の効果を最大限に発揮するために、イーオスの小さな鱗の一枚一枚がくっきりと見えるまで接近する。
「おらあ!」
裂帛の気合いとともに抜刀、目の前のイーオスの頭を41式の刀身で叩き割り、すぐさま横凪ぎに振るった。
マカライト鋼の重く頑丈な刃は、横にいたもう一頭の横腹に命中し、鳥竜種特有のしなやかな体を宙高く舞わせた。
イーオスの吹き飛んでいった方向から、重い物が木に叩きつけられる音と、何かが潰れる音が聞こえてくる。
「ギャアァ!」
その音を合図にするかのように、正面から別のイーオスが飛びかかってきた。
とっさに刀身を盾替わりにしてガード。うっそうと茂るジャングルの中に、爪と金属が擦れる甲高い音が響きわたる。
俺の目の前に着地し、大きく裂けた口を開けて俺に食らいつこうとするイーオス。その口を横に割るようにして、41式の刃先を強引にねじ込む。紫がかった色の生温い血とそれ以外の何かが、41式と俺のハプルシリーズの防具に奇妙な模様を描いた。
「にゃあっ!」
横目で見ると、どんぐりネコシリーズの防具に身を包んだジルが別のイーオス相手に奮闘していた。
小さな手に真新しいアイアンネコソードを握り、自分よりも大きいイーオスに果敢に挑みかかるその表情には、どこか吹っ切れたようなものがある。
イーオスの群れは着実に数を減らしていた。遠くから、散発的にボウガンの銃声や狩猟笛をかき鳴らす音色が聞こえてくる。
空はうっすらと白みがかり、夜明けが近いことを知らせていた。
* * *
事の始まりは、その日の夕刻にさかのぼる。
小さな船体一杯にアイルーを乗せたギルドの気球が、チコ村に着陸した。ほとんど擱座するような格好での着陸だったにもかかわらず、深刻な怪我人が出なかったのは不幸中の幸いだろう。
気球の操縦士や観測員が血相を変えて語ったのは、恐るべきことだった。
「悪夢だよ、あれは……何人も死んだ。ハンターも歯が立たなかった……」
操縦士の話によれば、調査隊のハンターにも犠牲者がいるという。その話を聞いた時、エドとルーカスの顔が俺の脳裏をよぎった。
すぐにでも救助隊を派遣すべきだという声もあったが、別の理由でそれは叶わなかった。
気球の到着と前後する形で、狂竜化イーオスの群れや、イビルジョーによって縄張りを追われた大型モンスターの目撃報告が村の近くで入ったのだ。
ギルド支部は、ハンターやオトモアイルーによる防衛隊を編成した。街からの増援が見込めない以上、いるかどうかも分からない生存者の捜索より村の防衛が最優先と考えたのだ。チコ村と街との距離の開きがマイナスに働いた。
エドとルーカスの安否は心配だが、捜索隊を編成すればその分村の防備が手薄になる。ギルドの判断は妥当なものだろう。
俺はやりきれない思いを抱えながら、ジルとともに防衛隊に加わることになった。
* * *
「レツさん、大丈夫ですかにゃ?」
岩に腰掛けて小休止を取っていた俺の顔を覗き込むようにして、ジルが心配そうに声をかけてきた。
「あ、ああ……大丈夫だよ。ありがとう」
考えを読まれたような気がして、思わず声が上ずった。
ジルは怪訝そうな表情になったが、それ以上追求しようとはしなかった。ただ「あまり無理はしないでくださいにゃ」とだけ言って、食事をとりに仮設キャンプへと向かっていった。
ついこの間まで心配する側だったはずの俺が、いつのまにか心配される側になっている。少し情けない気分になってしまい、あわててかぶりを振る。俺の情けない姿を、これ以上ジルに見られる訳にはいかない。
「エドがいたら、笑われるなぁ……」
自嘲気味に呟いたその声は、力のないものになった。
今年もあと数分で終わりですね。
twitterでも書きましたが、年内の目標はひとまず達成しました。しましたよぉ!(滝汗)
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