これも温暖化の影響ですかねー。( ;´・ω・`)
バルバレ―
夜遅く、人気の無くなった移動式集会所の中で、年老いたギルドマスターがパイプを燻らせながら一通の手紙を読んでいた。
その手紙には、このような事が書かれていた―
発 古龍観測所 生態調査部 宛 ハンターズギルド最高責任者殿―
近日原生林狩猟区近辺において多発しております、小型モンスターの大幅な個体数減少について、今現在の調査の進展をご報告致します。
近隣住民からの目撃情報や大型モンスターの補食活動の残骸と思われる、小型モンスターの死骸などから、小型モンスターの個体数減少は、獣竜種の過剰な補食活動が原因のものと思われます。
しかしながら、雑多に生い茂る原生林により上空からの視界が非常に悪く、また足場も悪いことから、当方の所有する飛行船、及び調査隊では十分な調査が行えません。
つきましては、ギルドからもハンターによる調査隊の派遣を願えませんでしょうか。
尚、調査隊の編成等につきましては、ギルドに一任致します―
そこまで読んでから、ギルドマスターはパイプの煙と共に深いため息をついた。
「これは要するに、『詳しい結果が欲しければ、そっちからも人員を出せ』ということかのう…」
独り言を呟きながら、手紙の最後の部分を読む。そこには、このような但し書きがあった…
―尚、採取したサンプルの一部から狂竜ウイルスが検出されたことから、調査対象は狂竜ウイルスに感染していると思われます。調査隊の人員編成につきましては、その事も考慮に入れていただきたく存じ上げます。
敬具 生態調査部 部長
『調査対象は狂竜ウイルスに感染していると思われます』の文の下に太い赤線が引いてあるのを見て、ギルドマスターは再びため息をついた。
「しかも、遠回しに『ベテランハンターを出せ』と言ってきおる…さて、どうするかのう…」
ギルドマスターは天井を向いて、パイプの煙を深く吐き出した―
* * *
同時刻、チコ村のギルド支所―
鼻にツンとくる消毒薬の臭いで、アイルーは目を覚ました。
ほどなくして、自分の体が清潔なアイルー用のベッドに寝かされているのが分かる。よく見ると体のあちこちには、真っ白な包帯が巻かれている。
泥だらけだったはずの体は綺麗に洗われ、少し青みがかった白の、ふさふさとした自らの毛には少しの汚れも無かった。
―ここは…天国かにゃ?でも天国にしては、ちょっと殺風景だにゃ―
そう思って辺りを見回してみると、どうやらここは天国ではなく、何らかの医療施設であることが分かった。
『主人』の姿は見当たらない。代わりに奥の方で、若い医者らしき男性が机に向かって何か書き物をしている。
男性が不意にこちらを振り向いた。視線が合った。男性が間の抜けたような表情になる。
二秒間ほどお互いに口を聞けなかった。
沈黙の後、やっと医者が発した一言は、
「あ…おはよう。よく眠れた?」だった…
* * *
キャラバンの船の船室―
俺は今、あるものと闘っていた。
それは…退屈である。
外出する気もないし、いつも俺とバカ話をしているエドも、大鬼ヶ島の点検と整備のため村の加工屋へ出掛けている。読書等の繊細な趣味は持ち合わせていないし、アイテムの調合も苦手だ。
という訳で、俺は一人、与えられた自室(と言ってもエドと共用だが)で退屈と闘っている。
「暇だな…」
ベッドに寝転がって呟いた所で、何かが変わるはずも無い―と、その時、誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「おーい、レツ君、エドウィン。ちょっといいかな?」
ゴードン団長の声だ。
「はい。エドは居ませんけど。何でしょう?」ベッドから降りてドアを開ける。
「すまないな。ちょっと頼みがあるんだが…」
「…頼み、ですか?」
団長がこう切り出した時は、大体ろくな頼みではない事くらい既に学習済みだが、俺は話を聞いてみることにした。退屈しのぎにはちょうどいいかもしれない。
「実は、ある依頼を手伝って貰いたいんだ。詳しいことはエドウィンが帰って来た時に話そう」
「分かりました」団長からの依頼、すなわちクエストは大体俺とエドが受けている。こういうことには慣れていた。
団長が部屋を出て行った後、俺は再びベッドに潜り込み、いつの間にか寝てしまっていた…
* * *
チコ村の加工屋―
「…で、発射機構の点検と消耗部品の交換、その他もろもろでこのくらいいただきますにゃ」
加工屋(なんとこの村では加工屋までアイルーである!)が差し出した見積りの紙を一瞥した後、エドは再び加工屋をまじまじと見つめた。油で汚れてはいるが、とてもふさふさなその毛に見とれてしまい、思わず抱きつきたくなる。
「…何ですかにゃ?」
アイルーの不審そうな目に、やっと我に帰った後、エドはもうひとつの用事を告げた。
「おっと、すまない。ところで、新しいボウガンを作りたいんだが…」
「どのようなボウガンにいたしましょうかにゃ?」
「これを、使いたいんだが。」そう言って、持ってきた大きな革袋をアイルーの前に差し出す。その中には、これまで彼が集めてきたたくさんのあるモンスターの素材が入っていた。
「これで、ヘビィボウガンを一丁作って欲しい。合わせて防具もだ」
「拝見いたしますにゃ…ん?!お客さにゃ、これは…?!」驚きのあまり、思わずろれつがおかしくなるアイルーを観察する。以外に可愛い。
「で、合わせていくらほどになる?」
「は…はいにゃ。ちょっとお待ち願いますにゃあ…」
「ん、分かった。…ふぁ~あ」
思わずあくびが出る。少し長居し過ぎたかな…と、エドは思った。
* * *
???―
『それ』はひたすら前進していた。
『それ』の体には異変が生じ始めていた。鱗の無い皮膚は紫がかった黒に染まり、口からは何やら障気のようなものが出ている。目は血走り、狂気とも怒りともつかぬ色をしていた。
―足りない―
この変わり果てた姿になってから、余計に『それ』の空腹は収まることを知らなかった。
―次はあそこへ行こう。これまで手をつけていなかったあの場所へと―
『それ』は暴走を始めた生存本能のまま、次の餌場、原生林狩猟区へ向かってひたすら前進していた…
この更新を持ちましてアンケートを締め切らせていただきます。
友人を交えた審査の結果、アイルーの名前が、“ジル”に決まりました!(元の名前は“ジルコン”でしたが、執筆の都合と『アイルーの名前なら、愛称に近いものが良いのでは』という友人の意見で変更になりました。原案を考えてくださった方、申し訳ありません…(-_- ))
なお、もうひとつの“ララム”という名前も、機会があれば使わせていただきます(^.^)