吸 血 宣 言。
な、何で…? 俺って、意外と血が美味しそうとか…?
い、いや、理由なんかどうでもいい。それより確認が先だ。
『えっと……あの、どれぐらい吸われるんでしょうか…?』
『安心しろ。ほんの少し……ほんの一口分だ』
そういえば、レミリア嬢は少食だというのを何かで見た事がある気がする。求聞史紀だったかな。
まぁ、とりあえず出血による死亡の線は無さそうだ。
『で、では、血を吸われて自分がゾンビとか、レミリア様の眷属になってしまうとかは……』
『血を吸われた程度で別のモノに変わる様な事はないぞ』
……プライドの高いレミリア嬢が嘘を吐く様な事は無いだろう。多分。
うむむ……どないしよ…? 少しくらいなら別にいいだろうか…?
……まぁ、いいか。
『じゃ、じゃあ、少しだけなら…』
『フフフ、そうこなくてはな』
レミリア嬢が高くジャンプ! 縦に一回転しながらテーブルを軽く飛び越え、そのまま俺の膝の上にストンと座った。着地時に衝撃が殆ど無かったのは、多分空中で制動を掛けたのだろう。全然痛くなかった。
っていうか顔近っ! びび、美幼女が目の前に…っ!
『では、遠慮なくいただくぞ…』
そう告げると、レミリア嬢は俺の首筋に噛みつ痛ったあああぁぁぁぁっ!
想像してたよりもかなり痛いめちゃんこ痛い!
いや、先程の美鈴さんとの試合でくらった一撃程ではないけどしかし痛い痛い! うっ、ちょっと涙出てきた…!
レミリア嬢が牙を離し、傷口をペロリと一舐め。思わず「ふぁ…っ」とかいう変な声が出た。
そして、彼女はゆっくりと体を起こし、視線が合う。何だか物凄く色っぽい印象を受け…る…。
あ、れ……何だか頭がボーっとしてきたぞ…。
何だろう…でも、何だか凄く心地が良い…。
レミリア嬢がゆっくりと顔を近付けてきた…。このままだと互いの唇が接触してしまう…。
ああ…でも…いいか…どうでも…。
このまま口付けをして……ミモココロモ、コノヒトダケノモノニ…。
『霊牙!』
『━━━ッ!』
ハッと我に返り、レミリア嬢の肩を押さえる。
互いの顔の距離は、本当に目と鼻の先ほどに近い。
…何だ…今のは…? 俺は今、何を考えていた…?
レミリア嬢が体を起こし、先ほど俺の名を呼んだ声の主に視線を移す。その時のレミリア嬢の表情は、思わず体が震え上がってしまう様な鬼気迫るものがあった。
恐る恐る視線をレミリア嬢から外し、彼女と同じ方向、つまり俺から見て右方向に視線を移すと、其処には何時の間にか実体を現した薙の姿があった。彼女も何だか怖い表情を浮かべている。
『……よくも邪魔をしてくれたな。古臭い道具風情が』
『黙れ蝙蝠。
『知るか。
……えっ……何この状況…? 私のものって何…? 何で俺の取り合いみたいな状況になってんの…? イマイチ状況が理解出来てないんだけど…。
私の為に争うのはやめて! とか言った方が良いのか…? いや、まぁ、とてもそんなギャグを言える様な空気じゃないんだが…。
何かレミリア嬢と薙の間に火花が散っている様な気がするし…。
ふと、レミリア嬢が俺の膝の上から降り、
『シャラァッ!』
一瞬で薙との距離を詰め、レミリア嬢は爪で引き裂かんとばかりに手を振るう。だが、それが当たる直前に薙の姿は煙の様に消えてしまった。
剣から声、
『馬鹿め。私の本体は剣だ。実体化しているのは、私の分身の様なものに過ぎない』
その声はハッキリと俺の耳に届いた。前の様なエコーの掛かった、俺だけに聞こえる声では無い。
ってか剣の状態で喋れたの!? 口ないのにどうやって発音してんだ!?
『へし折る!』
『させるか!』
『ぅおっ!?』
突然、俺の右腕が勝手に動いた。背中の剣を抜き放ち、前方から迫るレミリア嬢に斬り掛かる。彼女はすんでのところで止まり、切っ先が左腕を掠めるだけで済んだ。
しかし、傷口からまるで炎に焼かれたかの様な煙が上がっている。
『お嬢様!』
俺の後方に控えていた咲夜さんが慌てて飛び出し━━━次の瞬間、糸が切れた人形の様に倒れた。
同時、何時の間にか俺の腕が後ろに向いていた。
何だ!? 俺は体を動かしていないぞ…!? 何が起こっているんだ…!?
レミリア嬢の舌打ち、
『咲夜の能力が効かないとはな』
『時間停止程度の力で妾を縛る事は出来ぬ』
え、ちょっ、ちょっと待ってー、ちょっと待ってプリーズ。皆さん何を仰っているのかさっぱり解りません。俺、完全に置いてけぼり状態なんですがー。
『霊牙、構えろ。実戦だ。この蝙蝠を殺すぞ!』
『…はっ!?』
『ほざけ古道具が。粉々に打ち砕いてくれるわ!』
『えっ!?』
何かレミリア嬢が初期の王子みたいな台詞を口走ったが、今はそんな事どうでもいい。
『ま、待って! お二人とも、何故争ってるんです!?』
『戯け! まだ気付かぬのか! お前は狙われておるのだ! あの蝙蝠にな!』
『狙っ…え…っ!?』
『先程、お前はあの蝙蝠に魅力を受け、奴の
な、なんだってー!?
『いや……え…? 何で俺なんかを…?』
『知るか! あの蝙蝠に聞け!』
レミリア嬢に視線を移す。彼女はフフフと妖しく笑う。それが妙に色っぽく感じる。まだ魅了の効果が残っているのか…?
俺はそれを振り払う様に首を振って、レミリア嬢に問い掛ける。
『ほ…本当なのですか…?』
『フフ……いや、血を吸う前まではそんな気はなかったよ。しかし、お前の血が余りにも美味だったものでな。私の僕にして手元に置いておくのも悪くはないかと思ったのだ』
ナンテコッタイ。私の体が目当てだったのね!?
『霊牙よ。そんな古臭い剣は捨て、私の元に来い! 永遠の安息と安らぎを与えてやるぞ?』
『騙されるな、霊牙。あの蝙蝠はお前の血が目当てなだけだ。さぁ、今すぐ私を振るい、奴を葬ってやれ!』
…何だか、お前はどっちを選ぶんだ的な空気になっているが……レミリア嬢なんてDIO様みたいな事を言ってるし。
だが、二人とも勘違いをしている。
『…お二人とも、何か勘違いをしていらっしゃる様で』
『…何…?』
『どうやら、お二人とも俺を引き込んで二対一に持ち込もうとしている様ですが、そらぁ間違いってもんです。俺は、
『…何を言っておるのじゃ』
二人とも理解出来ないという様子だった。
だから、俺はこう言い放った。
『この争いは俺を引き込んでの二対一でも、ましてやお二人が一対一でぶつかるのでもない。俺を含めて一対一対一! つまり、俺は第三勢力というわけです!』