愚かな僕は勇者になれない   作:ソウブ

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十四話 友奈と銀と

 朝食を食べ終わり自室でくつろいでいると、メールが来た。

 スマートフォンは戦闘の最中で壊れてしまったかと思っていたが、奇跡的に無事だった。

 偶然スマホが入っているポケットには攻撃が当たらなかったみたいだ。

 まあ壊れていたとしても、大赦が支給してくれるようだけど。

 それはともかく、誰かと思い開いてみると、大赦からだった。

 どんな用件かと呼んでみる。

 バーテックスの襲撃は終わったと見られるので、用意してあるマンションに明日から移住するように、というような事が書いてあった。 

 そういえば、大赦から友奈の家に居れるのは戦いが終わるまでと言われていたな。

 まだ結城家に着てから四日目なのに、もう出て行かなくてはならないのか。

 戦いが終わるまでということで泊めてもらっていたから、しょうがない事なのだろうけど。

 そもそもなんで結城家に泊まることになったのか結局詳しくは分からなかったな。

 神託がどうとか言っていたが、何故そんな信託が来たのかが分からない。

 といっても、それはさして重要ではないと思う。

 結城家に泊まるか泊まらないかで何かが特段変わるとも思えないし。

 今はそれよりも、今日が友奈がいる家に居れる最後の日だということだ。

 最後に、何か思い出を残しておきたい。

 

 そんなことを考えながら、勇者部のチャットを開いてみる。

 凄まじい大雨だし、カラオケがどうなるか確かめておきたかったからだ。

 東郷さんは車椅子だからきついんじゃないだろうか。

 開いた画面には、

 

Fu<雨が酷すぎるからカラオケ今日は中止になるかもしれないわ>

 

Fu<とりあえず昼まで様子見>

 

 ということが書いてあった。

 やっぱそうなるよね。

 この豪雨だもんね。

 凄い雨音がうるさいし。

 通り雨の可能性もあるから、昼まで様子見ってことにしたんだろうけど。

 まあ、その考えには僕も賛成だ。

 スマホをポケットにしまい、一息吐く。

 昼までなにしよう。

 

 …………僕の力って、本当になんなんだろうな。

 脈絡(みゃくらく)が無いが、気になっていたことがふと頭に浮かんだ。

 いきなり強力な力を出せたりするし、あんなに強大なバーテックスを一撃で倒したりできるし、どんだけチートなんだって話だけど。

 でも、得体が知れない。

 まったくこんな力が使える心当たりは無いんだ、どんな力なのかもわからない。

 いや、まったくってことは無いか、失った記憶の中にあるかもしれない。

 それでも、得体の知れない強大な力というのは、たとえ自分のでも心地が悪いというものだ。 

 確かに皆を守れる頼りになる力だけど、どんな力か情報が全く無いと、何か悪い事がいつか起きるんじゃないかと不安になってしまう。

 

 ――といっても、結局考えても分かることではないというのは変わらないし、敵はもう全部倒して終わったのだから力を使う場面ももう来ないだろうし、そんなことに思考を割いても不毛かな。

 記憶が戻れば別だが、戻る気配も無いしね。

 まあ、今はそんなことよりこの家に居れる最後の日なのだから、今日何をするかを考えよう。

 雨が土砂降りで当然家から出る事はできないから、家の中で何かをする事になるが。

 友奈や銀と遊ぶのが無難か。

 よし、そうと決まったら即行動だ。

 

「銀、見ての通りこの雨だし、昼辺りに風先輩から連絡が来るまで友奈と三人でなんかしようか」

『おう、いいけど、なにするんだ?』

「まだ決めてない、友奈も交えて考えてみようかと」

『そうか、家の中で三人でやるとなると選択肢は限られてくるかな』

「そうなんだよねえ」

 と言いながら立ち上がり、部屋を出る。

 隣にある友奈の部屋の前に立ち、ノックをする。

 

「僕だけど、入っていい?」

「うん、入っていいよー」

 と中から聞こえたので、ドアを開ける。

「友奈、チャットは見た?」

 友奈は寝転がっていたベッドから体を起こしながら答える。

「見たよ、凄い雨だもんね、てるてるぼうず作って置けばよかったかなあ」

「ははは、こんな雨じゃあ一つだと足りなさそうだね」

 

「それにしても、朝陽くん今日休みなのに制服なんだね」

「あ、うん。この制服気に入ったもんでね」

「そうなんだ、似合ってると思ってたけどそこまで気に入ってたんだね!」

「そ、そう……?」

 自分の好きな服を着て似合ってると言われると結構嬉しいな。

 でも制服に似合ってるもなにもあるのだろうか。

 

「それはそうと、銀も入れて三人でなんかして遊ぼう、昼まで暇だしね」

「いいよー、なにする?」

「それを今から三人で考えようかなって」

 銀が姿を現す。

「そういうことかー、じゃあどうしよ」

 友奈は腕を組み、う~むと考えている。

「三人だから何かゲーム的なものがいいよな」

 銀がそう言う。 

 ゲームか、そうだねそれぐらいか。

 テレビゲームだとテレビが下のリビングぐらいにしか無いし、友奈の両親がいる場でってのもなあ。

 アナログゲームならこの部屋とかでもできるし、そっちの方がいいかな。

 そもそも友奈がテレビゲームとか持ってるか知らないけどね。

「何かパーティーゲームみたいなのないかな? ボードゲームとか」

 そう友奈に聞くと、

「あ、それなら色々あるよ! ちょっと待っててね」

 友奈はそう答えた後、クローゼットを開いて奥のほうをがさごそと探している。

 そしてなんか色々と腕に抱えて出てくる。

「えっと、トランプとジェンガと人生ゲームと、あとツイスターゲームかな」

 

 …………ん?

「え? ツ、ツイ……ツイッター?」

「朝陽、呟くやつじゃない。ツイスターだ。ところでツイスターゲームってなんだ?」

「ツイスター? 竜巻かな?」

「朝陽、わかっていってるだろ……」

 ジロリと銀に睨まれた。

 う……。

 

「ま、まあそうだね。ところでなんでそんなものを友奈が持ってるの?」

 意外すぎるんだが。

「お母さんが前に買ってきたんだよ」

 おいいいいいい! 友奈ママなにやってんの!?

 おっとりした顔してなに娘にツイスターゲームなんてあげてんの!?

 ……いや、待て。僕の頭が煩悩まみれなだけで普通にそういうゲームなんだと思って買ってきただけなんじゃないのか。

 ただのゲームとして。

 うん、きっとそうだろう。そうじゃなきゃおかしい。

 Sex in a box(エッチ箱)なんていう蔑称があることは棚に上げる。

 そう自分を納得させ、銀に軽くツイスターゲームの説明をする。

「ほう、面白そうじゃん」

 そうかな?

 確かにゲームとしてみて、普通に面白い……かな?

 わかんないや。

「じゃあ、とりあえず全部やろうか!」

 銀がそんなことを言う。

「全部? 時間的に大丈夫かなあ」 

「私も銀ちゃんの意見に賛成、とりあえず全部やってみよう!」

「うーん、二人がいうなら別にいいか」

 ちょっと早めにやれば良いだけだしね。

 そんなこんなで、遊ぶことになった。

 

 

 

 空気が張り詰めている。

 真剣な表情で僕は友奈の手札のカードを吟味し、表情を窺う。

 

 ……ぐっ、隙がなさすぎるっ。

 友奈の表情はまるで動かない。常時微笑んだ状態だ。

 全部のカードへ手を掛けていっても、全く顔が変わらない。

 そのポーカーフェイスはまるで能面のようだ。

 友奈にこんな特技が合ったなんて。

 というか、

 怖い。

 この友奈怖い。

 全く表情が微動だにしないんだよ? 怖いよ。

 もう、心理戦は無理だな。

 表情が変わらないんじゃ考えても無意味だ、適当に選ぼう。

 右隅の一枚を取った。

 ふう。

 ジョーカーではなかった、スペードのエースだった。

 安心、順調。

 

 ――といっても、ジョーカーは今銀の手元にあるんだろうけど。

 なんというかノリで、ね。

 ジョーカーだったらどうしよう、みたいな反応をしてみたかっただけだ。

 自分の手札にあったもう一枚のスペードのエースと一緒に、三人で座ってる輪の中心部分に在るカード溜まりに放る。

 

 そう、僕たちは今ババ抜きをしている。

 まあトランプの定番だね。

 トランプで遊ぶ時、大体最初に頭に思い浮かぶのがババ抜きだよね。

 時間も比較的他のより掛かんないし、今の状況に最適だ。

 ということで、ババ抜きを最初にやる事が決まるのに全く時間は掛からなかった。

 で、今に至る。

 

 次は友奈が銀のカードを引く番だ。

 友奈が手を銀のカードに近づける。

 銀は順番に左からカードに掛けられていく手に面白いように反応していた。

 途中までは普段どおりの表情だったが、真ん中のカードに手を掛けたとたん、よっしゃっといわんばかりの喜色満面な顔になった。

 わかりやすすぎる……。

 さっきもそれでジョーカーが銀の手元に行ったことが丸わかりだった。

 案の定真ん中のカードは引かれることなく、友奈はその横のカードを引いた。

 肩を落とす銀。 

 南無、三。

 

「やったー」

 友奈が笑顔で両手を上げる。

 結局友奈が一位となり、僕が続き、銀が最後までジョーカーを持ちビリとなった。

 

「次こそは勝つ!」

 銀がそう息巻いている中、次のゲームが始まる。

 ジェンガだ。

 最初は順調に抜いては積まれと続いていく。

 次第にブロックのタワーは不安定になっていく。

 ここからが本番といっていいだろう。

 

「わわっと……よし!」  

 銀が危なげにブロックを抜き、一番上に乗せた。

 次は僕の番だ。

 まるでジェンガのブロックを引き抜くかのような慎重さでジェンガのブロックを引き抜かなければ(?)

 とにかく慎重に、繊細な動きでゆっくりと引き抜くんだ。

 息を吸って、吐く。

 心を落ち着ける。

 そして、

 

 体はジェンガで出来ている。

 

 血潮(ちしお)は木で心はブロック。

 

 (いく)たびの遊技場を越えて不敗。

 

 ただ一度の敗走もなく、

 

 ただ一度の勝利もなし。

 (にな)い手はここに独り、

 ジェンガの丘で木を()つ。

 

 ならば我が生涯に意味は不要(いら)ず。

 

 この体は、

 

 無限のジェンガで出来ていた。

 

 意味不明な詠唱を呟きながら、ジェンガを繊細な動作で引き抜いた。

 一番上にトスンと乗せる。

 

「おお、朝陽くん今の動きすごかったよ。まるでジェンガのブロックを引き抜くかのような慎重さでジェンガのブロックを引き抜いてたよ」

「全くタワーが揺れてなかったな。本当に、まるでジェンガのブロックを引き抜くかのような慎重さでジェンガのブロックを引き抜いてたな」

 

 ……二人とも日本語おかしくない? 

 

 

 次は人生ゲームだ。

 ちなみにジェンガは銀がブロックタワーをクラッシュさせて終わった。

 うん、銀、残念だったね(暗黒微笑)。

 ちょっと僕さっきから変なノリになってるね。

 まあいいかな。 

 

 ――おっと、僕の番だ。

 ルーレットを回す。

 僕はここまで順調に進めてきた。

 それなりに良い会社に入り、結婚もし、社長にまで上り詰めていた。

 この調子で一番になってやる。

 ルーレットが止まる。

 四だ。

 駒を四マス進める。

 止まったマスは、

 

 ――――会社倒産。

 

 ピエアアアアアアアアアアア!!

「あっはっはっはっは! 朝陽、倒産だってよ!」

 銀が爆笑している。

「あ、朝陽くん、惜しかったね……ぷふっ」

 友奈も笑っている。

 ――――ちくしょうっ!

 次は、次こそはっ。 

 友奈は順調に進み、銀がルーレットを回す。

 止まったマスは、

 

 宝くじで三億円。

 

「よっしゃあ!」

 銀が思いきりガッツポーズをする。

「銀ちゃんすごい!」

 ぐぬぬぬぬ。  

 僕の番だ。

 ルーレットを気合を入れて回す。

 ここで挽回する!

 駒を進めて、止まったマスは、

 

 離婚、仕事に就けない、浮浪者。

 

 ヴェアアアアアアアアアアア!!

「ぶわははははは! 倒産に続いて離婚とか、転落人生すぎるだろ朝陽ぃ!」

 銀がまた大爆笑する。

「あはははは、朝陽くん運がなさすぎだよお」

 友奈にもまた笑われた。

 ――――こんちくしょうっ!

 

 そうして人生ゲームは終わった。

 結果は惨敗。僕は転落し続けた。

 銀はあの後もいいマスを連発させ、一位となった。

 友奈は順風満帆(じゅんぷうまんぱん)な感じで普通にゴールした。  

 そして最後のゲームに移る。

 

 

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