気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
九回目。
何もかも考えたくない。思いたくない。頭を働かせたくない。
何度失敗したと思ってるんだ。
手は尽きたんだ。
万策は尽きたんだよ。
何回戻ればいいんだよ。
もうこの際死なせてくれ。
死にたくないけど、死なせてくれ。
――でも、友奈が死ぬなんてことはあってはならない。
だけど、守る方法が無い。
いや――。
『友奈を守る』方法なら、一つだけあるか。
僕が代わりに死に続ければいいだけだ。
いつまで続くかは、分からないけれど。
いつかどこかで、戻れないかもしれない。
無限のように続くループが、ぷつっと途切れて、突然の終わりを迎えるかもしれない。
されど、それに関して僕に出来ることなんてない。
どんな力が働いて戻っているのか知る由もないから。
知ったとして、何の力も無い僕ではどっちにしろ何も出来ない。
それに関することだろうが関係しないことだろうが、結局僕は何も出来ていないけれど。
斃すことも、逃げることも無理だ。
だったら、これからどうすればいいんだよ。
わかんないよ。
わかんない、分からない、判らない、解りたくない。
このまま死に続けるだけだなんて、受け入れられるわけない。
けれど、何が出来るわけでもない。
詰んでいる。
もう、いい。
もういいよ。
とにかく、逃げよう。
逃げるんだ。
逃げきれ。
むしろ飛べ。
跳べ。飛べ。
僕は友奈に近づいて、また手を取った。
「? あさ――」
有無を言わせず、引っ張って走る。
走る。
奔る。
愚直に、無心に、走る事だけを考える。
他の余計なことは考えない。
耳に入れない。
視界に入れない。
ただただ、走る。
走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る。
僕はスプリンターだ。
僕はチーターよりも速い。
新幹線よりも速い。
神よりも疾い。
何もかも速い。
早い。
速い。
疾い。
何もかもから逃げきれるんだ。
だって何よりも速いから。
僕は超速の神だふはははは。
みんな遅いな。
そんなんで僕を殺せるのか?
僕はこんなにも速いぞははは。
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははあほらしははははあははははははははははははははは。
――影が、差した。
ちょっと曇ってきたかな?
今日は天気が悪いのか。
僕は何よりも速いんだから追いつかれることはない。
でも雨振られたらヤダなあ。
やだなあ。
ヤダなあ。
嫌だなあ。
厭だよ。
腕を動かす。
友奈を突き飛ばす。
いつものこと。
僕は速いけど。
速いから大丈夫だけど。
だけどいつもの行動はしないとね。
生活リズムが狂ってしまうよ。
あれ?
僕は何者よりも速いんだ。
だから足が止められることなんてないんだ。
自分から止まらない限りないんだよ。
だったら僕は自分から止まったのか。
そっかー。止まる理由なんてなかったけど自分で止まったのか―。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
十回目。
とうとう二桁に到達したぜ。
おめでと―、拍手―、パチパチパチ。
めでたいから今回で解決だな。
十回目ボーナスだよ。
ポイントが貯まったんだ。
つまり斃せるんだ。あの訳の分からない化け物を。
ポイント貯まったんだからその分でパワーアーップ、みたいな。
右腕が疼く。疼くぞお。
そのポイント分の力が右腕に集約している気がする。
気がする。
気がする。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
僕は突っ込む。
前へ前へ、進む。
友奈には後ろで待っててもらおう。
僕が倒してくるのだから。
最強の、この僕が。
――――見えて来た。
青くない空から、飛来してくる白い影。
奴だ。
星屑だ。
化け物だ。
怪物だ。
斃すべき敵。
殺すべき宿敵。
倒せる難敵。
僕へと真っ直ぐ降下してくる。
友奈を優先的に狙っていたはずだが、友奈を置いて先に来たからか、迷わず僕を殺そうとしてくる。
効率重視か。
機械的ともいえる。
だがそんなもの関係ない。
僕にとっては好都合だ。
力が溢れてくる気がする。
その力を溜める。
右腕に集中させ、奴を待ち構える。
来てる。来てる。
いいぞ、そのまま来い。
貴様が飛来し、僕の右手に触れた瞬間、星屑という化け物の死が確定するんだからな。
あらゆる触れた存在を掻き消す事の出来る能力、
そんな能力が、僕に宿っている気がした。
この最強の右腕が、貴様を屠ってやる。
倒すべき悪は、巨大な歯を持つ口腔を目一杯開き、降下してくる。
そして僕の目の前まで迫り。
僕は右腕を突き出す。
さあ、消失しろ。
お前の負けだ化け物。
僕は狂気に兇器じみた恐歯に喰い千切られ、紅い鮮血を撒き散らしながら息絶えた。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
――――――――――。
――――――――――――。
殺された。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
――――――――――。
――――――――――――。
死んだ。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
――――――――――。
――――――――――――。
絶命した。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
――――――――――。
――――――――――――。
意識が閉ざされた。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
何十回目だっけ?
忘れた。
一々覚えてるわけないじゃん。
ははははは。
あ、星屑が来た。
あはははははは! 僕死にまーす☆ SI、NU☆
喰われた。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
死の恐怖。失う無力。
もう沢山だ。
何もかも、思い知らされた。
根付いたその恐怖に、屈している。
何もやりたくない。動きたくない。
僕は寝てるよ。
――――――――――。
喰い千切られた。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
起こさないでくれ。
もう終わりでいいじゃないか。
いい加減寝させてくれ。
永遠に。
――――――――――。
歯に身体が分断された。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
――――――――――――――――――――――――――――――。
身体が裂断された。
気づいた時。
急に。
脈絡なく。
ぶつ切りの様に。
一寸で。
一瞬で。
刹那の間すらなく。
僕の意識は、在った。
命は捩じ切られた。
――。
喰われた。
――――。
食われた。
――――――。
断裂させられた。
――――――――。
裂断を起こされた。
――――――――――。
捩じ切られた。
――――――――――――。
殺された。
――――――――――――――。
死なされた。
――――――――――――――――。
絶命した。
――――――――――――――――――。
息絶えた。
――――――――――――――――――――。
意識が暗闇の底に落ちた。
――――――――――――――――――――――。
命が終わった。
――――――――――――――――――――――――。
くわれた。食われた。喰われた。クワレタ。