愚かな僕は勇者になれない   作:ソウブ

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六話 学校

 友奈たちとは同じクラスになった。中学二年だ。

 これは助かった。知ってる人が居るのと居ないのとでは、天と地ほどの差があるからね。

 大赦の計らいなんだろうけど。

 席は窓際の一番後ろで、友奈と東郷さんの席とは離れてしまっているけど。

 当然のごとく教師には大目玉をっくらってしまった。

 そりゃあ初日から盛大に遅刻すればそうなる。

 それはしょうがない。

 だけど、一つだけ、いや二つ、気に食わない事がこの学校にあった。

 

 ――それは、二時間目の授業が始まる時だった。

 一時間目の授業は遅刻したのでほとんど受けていない。 

 起立、礼、とクラスの委員長か誰かが始めの号令をする。

 ここまではよかった。だが――

 

「神樹様に、拝」

 

 なんて、わけのわからないことを言ったのである。

 それになんの異も唱えるものも無く、僕以外の全員が手を合わせて頭を下げた。

 今まで気に留めていなかったが、そこで始めて黒板の上の天井近くに、神棚があるのに気がついた。

 

 ……なんだよ、それ。

 自分でもどこから来るのかわからない怒りが湧き上がった。

 なんで、神なんか、あんなものを敬うんだよ。

 でも、ここで怒ってもしょうがない事は分かっている。

 ただでさえ大遅刻をしたんだ。これ以上問題を起こす事はできない。

 だから、黙って憤りを押し殺していたんだけど……。

 

 そこでもう一つの気に入らない事だ。

 授業の科目の一つに、神道なんてものがあったのだ。

 いやもうね、神に侵食されすぎでしょって思ったね。

 どんだけだよ。

 まあ、確かに、その神樹とやらの恩恵で人はやって行けてるんだろうけどさあ…………。

 でも、なあ……。

 とりあえずその授業は適当に聞き流した。

 

 ――とまあ気に入らないところはあったが、概ね悪くは無かった。

 友奈たちもいるし、クラスメイトもいい人が多かった。

 だから、特に不自由なく学校生活は送れたといって良いだろう。

 

 ――ああ、そうそう、二時間目が終わった休み時間に、新たな勇者部の人と話したんだった。

 友奈と東郷さんと同じクラス、つまり僕が入ったクラスにもう一人いたという事だ。

 結構強気な人だったな。具体的には――――

 

 

 

「私は三好夏凜(みよしかりん)よ。アンタが協力者ね」

「あ、はい」

 

 授業が終わってすぐに、僕の席までスタスタと歩いてきて、三好さんがそう言った。

 協力者という単語を放った事から、この子も勇者部の部員だとわかる。

 色素が薄めの黒髪にツインテールで、おでこが出ていて、勝ち気な瞳をしている女の子だ。

 

「僕は夢河朝陽です。よろしく、三好さん」

 急に話しかけられてビビったが、冷静にそう答える。

「夢河ね、わかったわ。先に言っとくけどね、アンタの協力なんてなくても私たちだけで倒せてたんだからね!」

「お、おう」

 なんだ急に。

 ヤンキーかな?

 いきなりそんな事言われてもどうしたら良いか分からない。

 僕が戸惑っていると。

「それに、アンタは強力な力は持っているけど、戦い方は全っ然なってないわ」

「どういうこと?」

「戦い方がトーシロだって言ってんの!」

「はあ」

 なぜに業界用語。

「そんなんじゃいくら強い力を持っていても、いつかやられてしまうわよ。精霊もいないみたいだし」

 

 ふむ。

 一考の余地があるな。

 確かに僕は、戦闘経験なんて無い。記憶が無いから以前戦闘をした事があるかもしれないが、それだったら身体が動きを覚えているとかそういうのがあるはずだ。

 自転車の乗り方と同じで、身体が忘れることは無いと思う。

 だけど僕には、一切そんな感覚は無かった。だから以前の僕は戦った事のない人だったのだろう。

 よくは知らないけど。いや全く知らないけど。多分そうなんじゃないかなって。

 だから僕は、完全に、力を持っただけの一般人の動きをしていたと思う。

 持っている力だけは強かったから、超人的なことはできたけど。  

 それでもこれから先、戦闘技術が無い状態では、三好さんが言ったとおりにいつかやられてしまう可能性が著しく高くなる。

 

 後、僕よりも友奈達の方が防御力は上のような気がする。

 あの戦いの時、皆の動きを見て、自分で戦ってみてそんな気がした。

 精霊とか今始めて聞いたが、それと関係あるのか?

 とにかく、僕が彼女達より優れているところは、爆発的な攻撃力だけだ。

 これは早急に戦闘技術を身に付けたほうが良いだろう。  

 でもすぐに出来る様になるものじゃない。

 どうすればいいんだ?

 とりあえず走って体力をつけるか?

 それとも剣の素振りでもするか?

 今更そんな事して意味があるのか?

 …………何をすればいいかわからない。  

 そもそも三好さんが言ってきたんだから、三好さんが改善案をだな…………。

 

「なら、どうすればいいの?」

 ということで聞いてみる。

「え……? え~と、そうね……」

 あ、これ絶対考えてなかったっすね。

 改善案も考えないで言うだけ言うとか、それはただの誹謗だな~。

 良くないなあそういうの、良くないぞ~。

 

 …………。

 だーかーら、強く優しくかっこよくを忘れんなって何回も言ってるだろうが。

 ほんと、僕は駄目駄目だな。

 三好さんは唸っていたが、閃いたのか顔を上げ――

 

「あっ――そう! そうよ! 私が戦い方を教えればいいのよ!」

 渾身のドヤ顔である。

 えぇ……。

 教えるって……えぇ……。

 女の子に教えられるとか緊張するんですが。

 というか同い年の女の子に戦い方教わるとか男として情けないじゃないか。

 

 ――この考えは傲慢なフェミニストだろうか。

 でも、僕はそれでいい。

 傲慢なフェミニストでいい。

 この考え方は変えたくない。

「いや、でも会ったばかりの人に良いの?」

 あまり強く断るのもどうかと思ったので、控えめに聞いてみる。

「いいのよっ!」

「いいの!?」

 ああ、どうしよう……。

 これもう断わりにく過ぎるだろ。

 三好さんも半ば自棄(やけ)になっているような気もするけど。

 

 ――まあ、いいか。

 どっちにしろ強くはならないといけないんだし。

 この際都合が良い。

「じゃあ、悪いけど頼むよ」 

「わかったわ。ビシバシいくから覚悟しときなさいよ!」

「うん、お手柔らかに」

 そうして、三好さんは自分の席へと戻っていった。

 

 

 ――――とまあ、こんな感じな人だった。

 少し気が強めだが、悪い人ではなさそうだと思う。

 戦闘技術を教えてくれるって言っていたしね。

 あれ……? そういや何時やるって言ってなかったな。

 これ忘れられるパティーンじゃないかな?

 いや、そこまで不誠実じゃないでしょう。

 だよね……? そうだよね……?

 

 それはともかく。

 今日の授業が全て、今終わった所だ。

 やはり帰る前のSHR(ショートホームルーム)で、なるべく複数人で行動する事と、暗くなる前に帰るようにと教師が伝えてきた。 

 まあ、朝のHRでも言ったんだろうけど遅刻したしね。

 部活を一時停止するほどではないんだな。

 まだ事件が一度だけというのもあるんだろう。

 そんな悠長でいいんだろうかね。

 警察はいつも後手後手だな。

 SHRが終わった後、時間を決めてない懸念を晴らそうと三好さんの席に行こうかと一瞬思ったが、急かしてるようでなんかやだなあという思考がすぐに掻っ攫っていったので、やめた。

 だって、早く教えてもらいたいとか思ってると勘違いされたら恥ずかしいし。

 

 鞄を持って教室を出ようとする。

 すると、友奈に声を掛けられた。

「朝陽くんっ、今から勇者部に行こう!」

 あ、そうだった。

 昨日言われていたんだった。

 色々あって忘れていた。

 それに早めに帰るようにも知らされていたし、すっかり失念してしまっていた。

 というか早めに帰れといわれたのに行くんだな。

「あ、うん、そうだね」

 

 

 ――ということで、僕、友奈、東郷さん、三好さんと四人連れたって勇者部とやらの部室前まで来た。

 扉の斜め上の場所に、元々在ったであろう家庭科準備室の表札の下に、勇者部部室と書いてある表札が付いている。

 三好さんからスライド式の学校によくある扉を開けて入り、その後東郷さんを連れた友奈が開いた扉から入り、最後に僕が入って扉を閉める。

 完璧な順番だな。

 入ってすぐに、声が上がった。

 

「来たわね、今日はあまり時間が無いから早く取り掛かるわよっ、て言いたかった所だけどその前にすることがあるわね」

 声を上げた女の子は、黄色い髪色の長髪で、その髪を黒いシュシュでツーテールにしている。

 そして黒くて花の飾りが付いたチョーカーを付けていて、ツーテールの先がくるんとロールしている。

 そして、おでこがでている。

 

 僕は、こめかみのあたりで横に結んである方はツインテールといってしまうけれど、風先輩みたいにストレートっぽく下に流れて結んであるやつはツーテールと呼んでしまう。どうでもいい情報だけど。

 正式には全部ツーテールが正しいらしいが、意味は伝わるしツインテールでもいいだろと、別にどっちでもいいだろと僕は思う。

 一応僕が分けて言うツーテールとツインテールで良さも全然変わってくるけど。

 なにかちゃんとした分けた呼び方ないんですかね。まあないか。だから自分で勝手にこうして区別付けてるわけだけど。

 

「アタシは三年の、この勇者部の部長の犬吠埼風(いぬぼうざきふう)よ。あの時は強力感謝するわ」

 僕に顔を向けて話す犬吠埼先輩。

「あ、はい。どうも。夢河朝陽です」

 そういえば僕どもること多いな。

 強く優しくかっこよくと言っておきながらまだそういう所は変えられないんだなあ。

 先は長いな。

 あああ、ゴールが見えないっ。

「これからも一緒に戦ってくれると嬉しいわ。それと、勇者部の活動もねっ」

 え、あ、そういう流れになりますか。

 まあいいけれど。

 共に戦う人間の事はよく知った方が良いし、一緒にいる時間は多い方がいい筈だからね。

「よろしくおねがします」

 少し噛んでしまったが別にいいよね。よくないか。

 

「あ、あの……私は一年の犬吠埼(いつき)です。ここにいるお姉ちゃんの妹です。よろしくお願いします夢河さん」

 と、もう一人すでに部室にいた女の子が犬吠埼先輩を示しながら僕に言った。

 同じ犬吠埼なら名字で呼ぶと分かり難いな。風先輩と樹さんでいいか。

 樹さんは、この中では一番背が低い小さな可愛らしい女の子といった容姿だ。

 ショートヘアーで、頭に白い花の髪飾りを付けていて、顔の横に垂らした髪を白いリボンで小さく結っている。

 あらゆるところが小さくてキュートだ。

 うん。あらゆるところが。 

「どうも。改めて夢河朝陽です。よろしく樹さん」

 なんか最近自己紹介ばっかりしてるような気がする。

 まあ初対面ばかりなんだからしょうがない。

 記憶も無いしね。

 

「じゃあ、勇者部に入るって事でこの入部届けに必要事項を記入してね」

 用紙と鉛筆を渡される。

 ああ今書くのか。

 平らで硬い所で書かないとな。

 地面に膝を突き紙を床に置いて記入に取り掛かる。

「いやいや! そこにテーブルあるんだからそこで書きなさいよ」

 風先輩が、まず名前を書こうとしていた僕の頭上から声を掛けてきた。  

 え? あー、そういわれればそうだね。

「すんません」

 テーブルまで行き、その上で鉛筆を動かし始める。

 うんうん、まずは夢河朝陽っと……。

 黙々と記入していると後ろで―― 

 

「なんていうか……」

「朝陽くんって……」

「真面目とは少し違いますが、なんといえばいいのか……」

「あ、あはは……」

 なんか話してたけど、よく聞こえなかった。

 

 

 

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