愚かな僕は勇者になれない   作:ソウブ

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六十話 絶対の楯

 今まで全力を出していなかったとでも言いたいのか。

 僕達の力がどれほどのものか、戦闘スタイルを理解してから、対処することにしていたということか。

 最初から全ての力を使っても、相手がどんな手を使って来るか解っていなければリスクが大きい、慎重な戦法を天の神は取っていた。

 だがその様子見の間に消耗させられたのは、僕たちの利点だ。

 ここからそれがどう響いてくるかが、勝敗を左右するかもしれない。

 どう転ぼうが、負けるつもりはないが。

 今までが全力でないのなら、僕もさらに力を惜しみなく使うしかないか。

 

 内に念じる。イメージを叩き付ける。

 傅く様に漂う粒子、それが聖剣に纏わり付き、染み込み、浸透する。

 マフラーが弾け、粒子と成り僕の全身に入り込み、行き渡る。

 聖剣が月白(げっぱく)に光り輝いた。

 

 ――力の装飾は、強大なる神の斬撃。身体能力をさらに超化。戦闘技術の卓越化。 

 

 

 天の神の両手に二刀、太陽フレアを起こし続ける焔剣が握られた。

 そして、姿がぶれる。

 ぶれて、離れる。

 無数の天の神が視覚に認識される。

 つまり無数の幻影。

 さらに距離の不覚。

 

 無数の天の神が、肉薄する。襲い来る。

 されど、奴は一柱。

 どれかが本物。

 判ったところで、距離が判らない。

 だが。

 月白の刃は、天の神の焔剣を受け止めた。

 

 幻影と姿は同じであろうとも、近づけば本物の質、格というものが嫌というほど伝わる。

 普通ならその時点で判ったところで、反撃などする暇なく攻撃を受けるだろう。

 けれど僕だって、神なんだ。

 反応して見せるさ。

 現人神夢河朝陽を、なめるなよ。

 

 しかし右の刃を防げても、左の刃は防げない。

 こちらの武器は一つなのだから。

 ここが二刀流の一番厄介な所だ。

 

 けれど、問題ない。

 振り下ろされた二刀目の焔剣は、皆が防いでくれた。

 

 

『そうやって、人類はいつも争いを続けて来ました』

 天の神が、急に話し始めた。

 どういう風の吹き回しだ?

 今まで僕らの話に耳を貸さずにいたのに。

 ようやく話す気になってくれたのだろうか。

「貴方も暴力によって人類と争っているだろう」

 刃と刃が、弾かれる。

『愚かな人類を滅ぼす手段が他になかっただけです』

 再度聖剣と焔剣と満開武装がぶつかり合う。

「確かに争いはいけないが、それだったら貴方も人間と同じだ。貴方のしていることは本末転倒、意味が無い」

 今までよりもさらに大規模の、焔剣の刀身、太陽フレアの爆発。

 粒子をエネルギーとして爆発させ、相殺する。

『けれど人類が存在する限り争いも無くなりません』

 切り結ぶ。

「考えが極端すぎるんだよ」

 火炎と粒子が荒れ狂う。

『ならばどうすれば争いが無くなりますか』

 皆のバリアが砕かれる。即座に再度満開をした。

「争いは無くならないかもしれない。けど人間だって馬鹿じゃない。いつかはもっと良くなるはずだ。過ちを犯しても、それから学んで、きっといつかは」

 白と(あか)が、交じり弾く。

『もう待ってなどいられません。昔から何千年と見てきましたが何も変わってなどいないではないですか。人類は過ちを繰り返す。これから変わりなどしないでしょう』

 二刀の焔剣と、何合も斬り合う。

「確かに争いを繰り返す人間はいるだろう。けど、悪い人間ばかりじゃない。昔から()い人間だっていつでもいただろ」

 衝撃波、プラズマ、神の雷が縦横無尽に飛び交う。

『けれどそれでも争いは消えない』

 剣、焔、超常、周り(まわ)る。

「消えなくてもいいじゃないか。わざわざ消す事じゃない。色んな人間がいる。それでいいじゃないか」

 消耗。お互い体力は削られていく。

『それでは何も良くなどならない』

 感覚で無心で反応する。剣を振る身体を動かす。

「無理に良くする必要があるか」

 天の神の剣技はかなり卓越している。人では到達できない場所に至っているだろう。だが僕も能力で剣技なら頂点に近い、それに七対一だ。負ける訳がない。そう思いたい。

『ある。神として、より良い世界に導くのは当然です』

 剣戟。剣閃。交戦。抗戦。

「どうやら話し合っても無駄なようだね」

 魂の、信念の、想いのぶつかり合い。されど分かり合うことはない。少なくとも僕は。

『そうです、認めさせたいのならワタシを打ち負かして見せて下さい。そうしたら後少しだけ信じてもいいですよ』

 聖剣、焔剣、雷、豪腕、砲撃、赤刀、大剣、ワイヤー、剣斧、入り乱れる。

「結局、戦うことになるんだな」

 月白(げっぱく)の聖剣と(あか)の焔剣が斬撃を交わす。

 

「天の神さん、絶対になんとかして見せるから、安心して待っていて、そのための勇者部なんだから」

「そうよ、今は昔よりも道徳が大切にされている。授業にも多く採用されている。前より少しずつ変わっているのだから」

 友奈と東郷さんが僕の言葉から話している内容を察して天の神に言う。

 

『ならば、これを凌いで見せなさい』

 天の神もかなり消耗して来ているように見える。力ももうすぐ枯渇するはず。

 これが最大の一撃になるだろう。

 

 刹那の間に両の焔剣が白色光を蓄える。

 刀身の太陽フレアが一度総て治まる。

 一瞬静寂、訪れ。

 爆縮。

 圧縮。

 太陽フレアの宇宙規模の爆発が圧縮され、絶大なる神域の力が創造される。

 その力は、惑星を容易く破壊し得る一撃。

 コロナプラズマは数億万、いや数兆万度に加熱されている。

 数万キロの爆発を何倍にも圧縮した、破壊という概念が埋め尽くした神の一撃。

 正しく天照(太陽の神)の名を持つに相応しい具現。 

 二刀の焔剣が、振り下ろされる。

 

 されど僕も、黙って見ていた訳じゃない。

 現人神の力を、発動する準備を整えていた。

 刹那の(とき)

 

 ――創成せよ――

 

 白の城が、具像する。

 

 絶対防御の月白の楯。

 

 月白色に煌めく円く巨大な楯の形成。

 全力で内から力を引き出し、吸い出し、絞り出して創造した最硬の楯。

 総ての暴力を跳ね除ける、絶対の護り。

 加減などしない。

 したら一瞬で蒸発させられてしまうだろう。

 だから僕の総てで以って、貴方を倒す。

 斃すではなく、倒す。

 これで、最後だ。

 

 破壊の焔剣と、最硬の月白楯が衝突。

 爆縮されていた焔剣のエネルギーの開放。

 衝撃波。

 辺りに散る。

 神域の力を持たない、借りない者なら、一寸で塵のように霧散してしまう暴力的な衝撃。

 荒れ狂い、有れ狂う。

 

 直ぐに、決着は訪れる。

 時間など必要ない。必要とされない。

 力が衝突した瞬間から、結果は既に決まっているのだから。

 結論。

 

 僕は、打ち勝った。

 

 天の神が、後方に吹き飛ぶ。

 焔剣は、消失。

 月楯は、健在。

 

 されど、天の神は多大なる傷は負っていない。

 全く負っていない訳ではないが、軽減されている。

 先の二の舞にならないように、何らかの対策をしていたのか。

 

 ――けれど、これで終わりだ。

 僕は、一人ではないのだから。

 

 吹き飛ばされた天の神に、六人の勇者が追い縋る。

 天の神は、とても力を行使出来る状態にない。

 

 空色の砲撃が八門、放射され狙い違わず命中する。

 

 純赤の六刀が、火炎の体を斬り刻む。

 

 大木の大剣が、押し潰すように振り下ろされる。

 

 萌葱色(もえぎいろ)の鋭きワイヤーが、絡み切る。

 

 鈍色の勇ましき剣斧が、螺旋を描き叩き下ろされる。

 

「勇者パアアアアアアアアンチッッ!!!!」

 白桜色の豪腕が、引き絞られ、裂帛の気合と共に加速し、殴り付けられる。

 

 

『――――――――――ッ」

 天の神は、(くずお)れ、宙に膝を突いた。

 決定的な一撃を与えることに、成功したと確信する。

 疲弊し、もう立てないだろう。

 

「これで、いいか……? 凌いだぞ。勝ったぞ」

『はい……そうですね』

 一間。一呼吸。

『信じても、よいのでしょうか……これほどまでの強く良く善く好い思いを感じたのは初めてです。負けるというのも、初めてです…………』

 (かお)の無い顔を上げ、天の神は言葉を続ける。

『もしかしたら、貴方達なら……特に、そこの六人なら――――――――』

 刹那。

 

 

『フハハッ――好い見世物だったぞ』

 嫌で(いや)(いや)だと思うべき不快な声が、脳に響いた。

 

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