愚かな僕は勇者になれない   作:ソウブ

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最終話 刃を突き立てろ

 勇者の剣を強く握り、魔王へ突き立てようと移動する直後。

 

『おっと。待て。その剣を捨ててもらおうか。ワレの内に存在する天の神を生かしたいのならな』

「小物が。そんなものは脅しにはならない。この剣はお前と天の神を切り離す」

『知っているとも。十分に犇々(ひしひし)とそれを視るだけで伝わってくる。ワレの云っているのは別のことだ』

「…………そういうことか」

『そういうことだ』

 この剣を捨てなければ、天の神を殺すということ。

 乗っ取り融合している今ならば瞬時にそれは可能だろう。

「下種が」

『なんとでも言うがいい。ワレはここで死ぬわけにはいかないのでな。使える手は何だろうと使うさ』

 

 ここで死ぬぐらいならば、みんなが死んでしまうぐらいならば、天の神を見捨てるという選択もある。

 けれど、天の神が存在しなくなったら太陽が消える、天からの恵み総てが。

 そうなれば神樹の恵みのみで人間は生きられるのか分からない。

 そんな打算もある。でも。

 ここで見捨てたら、僕は何も変われない。

 単純に、今まで非道なことをしてきた神だとしても、助けたい。

 見捨てることは、したくない。

 そう、思った。 

 だったら――

 

『そうだ。それでいい』

 僕の手から剣は、滑り落ちた。

 墜ちながら粒子となって消えていく。

 

 されど諦めてはいけない。

 ここで死んでも、意味が無いのだから。

 何か別の手を、模索するんだ。

 

『動くな。力を一片たりとも使うな。その瞬間天の神を殺す』

 だとすれば、どうすれば打開できる。

「くたばれクソ神」

 こんな言霊、意味を持たない。

『黙れよ道化が。お前は強い力を手に入れて護ることに酔っている。それは自己愛。自己陶酔だ。

 お前は何もかも間違っている。ヒーロー願望、承認欲求。自分が認められたいだけ。自分が良い思いをしたいだけだ。

 弱い偽善者。主人公気取り。

 ワレが劇の中の主人公に据えてやっただけのことだというのに。それが無ければお前のような道化などそこら辺にいる小童と変わらない』

「そうかい。だけど、たとえそうだとしても。僕の弱さを全てさらけ出してもみんなは受け入れてくれたんだ。好きに言ってろこの野郎。僕はやりたいようにやる。好きに生きてやる」

『ガキだな』

「敵でしかない貴様の云うことなど知るか。間違っていたら正してくれる人たちがいる。自分なりに考えてもいる。だから思うように生きるだけだ」

『そうか。もう終わるがな』

「お前がな」

 

 剣状の黒が一本、蛇のように伸びて延びて貫こうと凄まじい速さで此方(こちら)に接近。

 反射で避けようとしてしまった。

『動くなよ? フハッ』

 どうにかしないと。

 このままじゃ死ぬ。

 でも、考えてる暇も、どうすればいいのかも――

 

 ドッ。と腹に衝撃。

 黒に貫かれた。

 痛い。

 痛い。痛い。痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 ただ貫かれた痛みなんていうものではない。

 痛みという概念が、魂にまで連続的に届けられているような、壮絶。

 これも、奴の能力か。

 そういえばさっきも、同じようなことがあった。

 

「い……っ……ひっ……」

 変な声が、喉から漏れる。

 痛い。

 状況を覆す策を考えなければならないというのに、痛みで全てが覆い尽くされる。

 それでも考えろ。

 でないとこのまま終わる。

 痛い。

 

『このまま苦しんで絶望して死ね』

 痛い。

 なんでもいい。理由などいい。とにかくあの悪神、邪神を殺す方法を。

 殺せればいい。奴を動く事無く、悟らせる事無く、刹那の間に殺す。

 痛い。

 脳が熱い。焼き切れそうだ。

 意識を必死に繋ぎ止めなければ、すぐにでも堕ちて終わってしまう。

 痛い。

 だけど少し考えれば分かる。勇者の剣以外に、魔王を打倒する術はないと。

 ならば、その刃を奴に気づかれないように届かせるしかない。

 痛い。

 悟られないように、繊細に、静かに、()つ精工に。

 創り出すしか。

 痛い。

 念じろ。

 痛い。

 念じる。

 痛い。

 力を使う予兆さえ見せるな。

 苦しい。ただ苦しんでいるだけに見せろ。

 痛い。

 死ぬ前に、やり通さなければ。

 繊細に。美麗に。流麗に。清流に。潜ませろ。潜ませろ。そしてもう一度創り上げろ。

 痛い。

 創れ、作れ、造れ。創れ、作れ、造れ。創れ、作れ、造れ。創れ、作れ、造れ。

 少しずつ、だが確実に、出来上がっていく。

 

 痛い痛い痛い痛い!

 理屈なんてどうだっていい!

 理由だってどうだっていい!

 思考も思想も、何もかも今は無意味だ。

 ただただ。敵に悟られないように創り上げる。

 それだけでいい。

 それだけ出来れば、後は簡単だ。

 生かせちゃおけない相手を、逝かせるための手段のみに集中しろ!

 終わらせる。終わらせる!

 帰る! 還る!

 創って何もかも一切合切、幕引きだ。

 想像しろ。創造しろ。想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造想像創造。

 

 

「なあ」

『最後の言葉か?』

「お前の負けだよ」

 

 

 魔王の、頭上。

 そこに、灰の柄、金の鍔――刀身が数センチほどしかない折れたような剣が、出現。

 粗末だ。気づかれないようにと制約がある以上、ここまでしか創れなかった。

 されど、その刀身に秘めた絶対の概念は強固。

 魔王を打ち滅ぼす、勇者が携える剣だ。

 勇者の剣は、重力に従って魔王へと落ちていく。

 

『――ッ!』

 瞬時に気づかれた。

 剣状の黒が勇者の剣を咄嗟に跳ね除けた。

 しかし、けれど、奴は刀身に触れてしまったようだ。

 ただそれだけで、最強の剣の効果は発揮される。

 

 離別。別離。存在遠く。

 デウスと天の神は、存在をそれぞれに別たれた。

 黒と緋が、投げ出されるように、完全分離。

 

 ――僕は既に、魔王へと剣が落下し始めた瞬間から動き出していた。

 腹を貫いている黒を無理矢理引き抜き、血が溢れ出し、けれど満身創痍の身体を気にせず酷使する。

 早く! 速く! 疾く!

 今だけは、誰よりも疾くなくちゃならない!

 ここだけなんだ。ここで、終わりなんだ!

 だから、最大の速さをこの瞬間に!

 白の粒子が、迸った。 

 

 刹那を超え。時すら止まったかのように感じる移動を為し、魔王に跳ね除けられた落ちていく剣の柄を手に取り、掴み、強く握り込む。

「あああああああああああっっ!!!!」

 叫ぶ。叫ぶ。

 もう何もかも、総て凡て総て、一切合切。

 どうだってよく、何も考えられず、この剣を!

 愚直に一直線に、一つ、ぶつけたい!

 刹那。刹那。刹那。

 魔王に肉薄。

 剣状の黒を荒れ狂わせ、暴れさせ、暴虐の嵐を()る魔王。

 そんなもの、知るか!

 突っ込む。屈む。掻い潜る。進む。斬られる裂かれる叩き付けられる。

 進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。進む。

 ――到達。

 

 無心で、何も言わず、云わず、思わず、その短く小さな刀身を、

 

 不定形に、突き立てた。

 

 

 

 

 リノリウムの白い床を、靴裏から音を立てながら歩く。

 病院の人に見つからないように周りに注意しながら、進む。

 

 ――今日は、文化祭当日。

 天の神を救出し、デウス・エクス・マキナを斃してから少し経つ。

 

 滞りなく万事が解決していた。

 神樹が散華の供物を返して、みんなの身体は元に戻ったし。

 園子は讃州中学にもう少ししたら入る予定らしいし、勇者部にもきっと入るだろう。

 

 天の神もちゃんと生きているし、改心もしてくれた。

 人類はこれからもっと頑張らなければいけなくなりそうだけど。

 さもなくばまた天の神が滅ぼすとか云いかねない。 

 

 銀は、生き返るなんてことにはならなかったけれど、僕からどこまでも離れても問題ないようにはなった。

 僕が現人神に成った影響だ。

 現人神としての魂が強固に一つ創られたことで、銀の魂を借りていた状態を脱した、ということみたいだ。

 自分の感覚と、神樹の言によるところだけど。

 まあつまり、厳密には生き返りはしなかったけれども、銀は銀で僕に縛られずに暮らしていけるってことだ。

 それは、僕が望んでいた結果とほとんど同じだ。

 だから、満足している。  

 銀も「自由だー!」なんて言っていたし。少なくとも悪くは思っていないだろう。

 

 ちなみに僕らが一つの存在に成ったあの合体は、戦いの後解除した。

 解除できないなんて笑えない話にはなっていない。

 もともと僕がやったことだし、それが出来ることは解っていたけれど。

  

 償いも、ちゃんと毎日していかなければ。

 生きれなかった人たちの分も生きるなんて厚かましいことは言わない。

 ただ日々を送って、人のためになることを率先してやって生きて行く。

 そんなことしても、なにも殺してしまった人達は思わないし、変わらない。

 残された人たちは何をしても恨むだろう。

 でも、何もしないよりは、何かが違うはずだから。

 きっと。

 だから、とりあえず自分が正しいと思ったことを行動に移してみる。

 そして潰れそうになったら、みんなを頼ればいい。

 そうして模索しながらも、進んで行こう。

 頼ってばかりじゃいけないかもしれないとは思う。

 何年も、何十年も頼るなんてことは無理だし駄目だ。

 だけど、頼ってと言われた。

 なら今は、今だけでも、頼っていよう。

 

 言葉にしてしまうと陳腐だけれど、やっぱり愛は人を救うんだって、思った。

 人を愛するって、愛されるって、必要不可欠なんだ。

 みんなへの愛、みんなからの愛、それがあるから、頑張れる。

 

 何はともあれ、ようやく色々と、解決して終わった感じだ。

 まだまだ細かい問題もあるかもしれないけれど。

 ずっとこの平和は続かないかもしれないけれど。

 ずっとなんて、絶対にありえないとしても。

 それでも、今は平和で、問題なく毎日が在る。

 そういうことなら、いいんじゃないかと思う。

 

 

「おい。何普通に病院抜け出そうとしてんだ」

「あん?」

 振り向くと、友奈パパ。

 病衣から私服に着替えた上、玄関まで一直線に歩いていたから、ばれたのか。

 いくら制服好きと言っても通常服ぐらい持っている。

 

 そう、僕はまだ入院期間を終えていないのに、病院を抜け出そうとリノリウムの上をせっせと歩いていたのだ。

 今日は文化祭。

 僕ら勇者部の演劇がある日。

 僕が戦いの傷を結構な量肩代わりした影響で――痛みはみんなにも伝わっていたけれど――僕だけまだ退院できていない。

 現人神の人外治癒力でだいぶ楽にはなったものの。まだ退院はさせてもらえない。

 あの力を使えば一発で全回復だろうけれど、なるべく神なんてものの力は使いたくないんだ。

 だから今日の演劇は僕抜きでやることになっていた。

 けれどそうは問屋が卸さない。僕は出るぞ。

 それに中学二年の文化祭は、今日だけ。

 前の世界では、何のイベントも起きずにただ飯食って過ごしただけの文化祭。

 役なんてやりたくなかったけれど、貴重な一度だけの――二回目の――文化祭を逃してたまるか。

 そういうのは大事にしたい。

 なのに病院で一日無駄に過ごせというのは酷なんじゃないのか。納得できない。

 と思った次第で、こうしてもうすぐ病院の正面玄関なのだが。

 ここでこのおっさんだ。

 

「こんにちは。なんでこんなところにいるんですか?」

「おう。ちょっと体術の鍛錬を張り切り過ぎてな。腰を痛めた」

「もう歳なんじゃないんですか? 前戦った時も僕が勝ちましたし」

「馬鹿言え。次にやったら俺が勝つ」

「いやいや腰痛めといてなに言ってるんですか。僕が勝ちますよ」

「いやいやいや俺だ」

「僕です」

「俺だ」

 

 もう一度こんなふうに会話が出来るようになるなんて、あの時は思っていなかった。

 数日前に会った時、なんだか普通に話してしまって、流れるように以前の会話。

 後腐れなく、前のことは前のことと、男特有の適当さと馬鹿さがなんだかんだと融和し、こんな関係に戻った。

 自分でも驚いている。

 一生気まずい関係になると確信していたから、尚更。

 まあ、なんとかなったならよかったと思う。

 

「というかそれよりも」

 演劇の時間が迫っている。

 ロビーの時計を見ると、あと数十分。

 全力で走らないとやばい。

「なんだ?」

「時間ないんで、失礼します」

 挨拶もそこそこに腰痛めおじさんの横を通り抜けて走り出す。

「あ、おう……あ! 病院から出るなよ! なに考えてんだ!」

「ここはひとつ見逃してください!」

「駄目だ! それと病院で走るな!」

 

「病院で叫ぶな」

 どっかの知らない人に、そんなことを言われていた。

 いや、僕も言われたのか?

 

 

 

 ――――――。

「グーハッハッハ。結局、世界は嫌なことだらけだろ。辛いことだらけだろ。お前も見て見ぬふりをして堕落してしまうがいい!」

 風先輩(ふん)する魔王が、舞台上で腕を広げ台詞を言う。

「いやだ」

 友奈扮する勇者が、それに台詞を返す。

「足掻くな! 現実の冷たさに凍えろ!」

「そんなの気持ちの持ちようだ!」

「なに!?」

「大切だと思えば友達になれる、互いを想えば、何倍でも強くなれる、無限に根性が湧いてくる。世界には嫌なことも、悲しいことも、自分だけではどうにもならないことも沢山ある。だけど。大好きな人がいれば、挫けるわけがない。諦めるわけがない。大好きな人がいるのだから。何度でも立ち上がる。だから、勇者は絶対、負けないんだ!」

 友奈が剣で斬りかかる。風先輩の扮する魔王は手の平を翳し。

「魔王バリア!」

「うわあああ!」

 跳ね返されたように倒れる友奈。

 起き上がり、膝を突いて友奈の台詞。

「強い……」

 苦境に立たされる。

「結局、そんなことを言ったところで力がなければ何も出来ないんだ! これで終わりだ!」

 手の平を友奈に向ける風先輩。

 

 ――そこに現れる、白き仮面を付けたヒーロー。

 魔王と勇者の間に立つ。

「な、なにやつ!」

 魔王が戸惑う。

「勇気仮面、参上!」

 これは僕の台詞。

 滅茶苦茶恥ずかしい。

 顔が熱い。

 仮面の下汗まみれ。

 死にたい。

 

「それでも、信じ合える仲間がいる! 助けてくれる、味方が!」

 友奈が意気揚々と台詞を叫ぶ。

「ぬぅっ! 一人が二人になったところで、この魔王の力の前には無力!」

 勇者と二人で剣を持って斬りかかる勇気仮面。

 風先輩に当たらないように、魔王へと斬り付けた。

 倒れる魔王。

「ぐっ、おぅっ! 何だ、この力は」

「これが、頼って頼られた。人と人との力だよ」

「そう、か」

 そうして、演劇は終わった。

 僕は終始心臓がバクバクと動悸して、全力疾走してきたのもあり体中汗まみれ。

    

 …………この後、当然のごとく病院に送り返された。

 文化祭後、勇気仮面がしばらく一般来客で見ていた子供たちの間で流行ったとか流行らなかったとか。

 

 

 

 ――――数日経った。

 天気のいい日の、穏やかな昼間。

 花畑に、友奈と来ていた。

 これはデートか。デートなのか!?

 と少し緊張気味。

 前に約束した、押し花に使う花を一緒に摘みに行くというやつを今日しようとなったから起きた出来事だが。

 気持ちのいい風が吹き付け、秋の花たちがそよぐ。 

 

「朝陽くん。あんまり摘み過ぎないようにね。多くても数本だよ」

「なんで?」

「花たちの命を手折(たお)って作られる芸術だから、無闇に散らしちゃいけないんだよ」

「そう、か。確かに」

「うんっ。だから少しだけ、気に入った花をね」

「わかった」

 

 しばらく、花を見て歩いた。

 どれも綺麗だが、選定するとなるとどれがいいのか分からない。

 むしろ先の話を聞いたら摘むのが躊躇われる。

 一本ぐらいでいいかな。

 

「朝陽くん」

「ん? なに?」

「色々終わってから、毎日、どう?」

「どうと言われても、まあ、何事もなく楽しく生きれてるけど」

「それならよかった」

 微笑み。

 花畑が背景だと、より絵になる。

 

「この花、押し花にしてプレゼントするね」

 そう言って友奈は、紅い花を見せて来た。

「この花は?」

 何度か見たことはある気がする。有名な花なのかな。

「コスモスだよ。これは紅いけど、白いのもあるね」

「綺麗だね」

「でしょ? 白もいいけど、今回はこれを渡したいんだ」

「そうか。うん、ありがとう」

 一間空いた。

「朝陽くん。今じゃなくて、後でね、この紅いコスモスの花言葉、調べてほしいんだ」

 頬を朱く染めて、上目遣い。

 胸を突かれるそんな仕草に硬直して、僕は何度も頷いた。

 

 

 ――その日、マンションに帰ってスマホで調べた。

 紅いコスモスの花言葉は、調和――そして、愛情。

 愛情。

 …………。

 愛情!?

 

 

 おわり

 

 

 




 これにて完結。
 初心者の好き勝手やりまくった未熟な文章に最後まで付き合っていただきありがとうございます。
 全話読んでくれた人には感謝感激雨あられです。
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