その日の天気は晴れでした   作:puc119

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2話~会話~

 

 

 甥っ子君と洗剤の頑張りもあり、どうにか換気扇へこびりついたギトギト油との戦いに勝つことができた。

 そしてどうやら、実家の大掃除はこれで終わりらしい。てか、叔父家族にも掃除を手伝わせるのはどうなのだろうか?

 

「だって大人数でやった方が楽じゃない」

 

 母様の言葉。

 いや、まぁ、そうだけどさ……

 

 ともかく掃除も終わり、これでやらなければいけないことはなくなった。実家へ帰ってきたのは掃除をするためではなく、この年末年始を活かして身体を休めるため。のんびり過ごさせてもらおう。

 とは言え、ただただボーッとしていたのでは意味がない。文庫本でも買ってこようかな。

 

 そんなことを考え、母親へ出かけることを伝えようと居間へ行くと、従妹と甥っ子君が何かのゲームをしていた。二人の両手には3DSが握られ、なんとも楽しそう。姪っ子ちゃんもその場にいたが、姪っ子ちゃんは二人のゲームを眺めているだけらしかった。

 

「何やってんの?」

「もんはん」

 

 従妹へ声をかけると、視線を此方に向けることなく返事をされた。

 はー。今は甥っ子君のような小さな子もモンハンをするのか。ポケモンとかならわかるが、モンハンのモンスターが怖かったりはしないのかねぇ?

 しかし、ふむ。モンハンか。

 

「俺も混ぜてもらっていい?」

「いいけど、お兄持ってるの?」

 

 もちろん持ってる。暇なとき村上位シャガルのTAやろうと思っていたし。それにモンハンは例え二日酔いだろうが、発売日の開店30分前から並ぶくらいは好きなゲームだ。ゲームと言えば子どもの遊ぶものだが、大人が遊んだって良いじゃないか。

 

「おじさんもモンハンやるの?」

 

 そんな姪っ子ちゃんの言葉。

 お、おじおじおじおじさん!? いや、間違っちゃないが、俺はまだ20代だぞ。其処まで老けてはいない。

 そして従妹は何をクスクスと笑っているんだ。俺がおじさんなら、お前もおばさんだぞ。

 

「お姉ちゃん次、どのクエストをやればいいの?」

「あっ、うん、えっとね」

 

 おい、こら姪っ子。なんで従妹はお姉ちゃんなんだよ。おばさんと呼びなさい。おばさんと。

 

 そんなお茶目な姪っ子ちゃんに社会の厳しさを教えてあげようと思わないでもなかったが、其処は俺が大人として一歩引いてあげることにした。それに小さな子どもから見れば、俺なんてもうおじさんなんだろう。かなり傷ついたけどさ。

 

 

「すごい! おじさん大ちゃんより強い!」

 

 ゲームを起動させ、通信を開始すると、甥っ子君から直ぐにそんな言葉をかけられた。いや、誰だよ大ちゃんって。

 そして甥っ子君と姪っ子ちゃんは交代交代でやっているらしい。俺と兄は年齢がかなり離れていることもあり、そういうことをした記憶はない。だからこの二人を見ていると、少しだけ羨ましくなった。

 

「もうHR100越えって……お兄暇なの?」

「睡眠時間削ってやってたからなぁ」

 

 発売してから2日間はほぼぶっ通しでやり続けた。自分でも馬鹿だと思う。自分の年齢と体力くらい考えろってんだ。

 

「何やってんのさ……」

 

 命削ってモンハンしてました。

 一つのゲームをひたすらにやり込む性格なんです。

 

 それにしても、従妹や甥っ子姪っ子とモンハンをするとは思わなかった。なんとも変な感じだ。

 

「おじさん男の人なのに、どうして女の人のキャラ使ってるの?」

 

 甥っ子君からの純粋な質問。ソレが汚れた俺の心に突き刺さる。

 野郎のケツをずっと見ていることを耐えられないからってのがその質問の答えだが……そんなこと言えんよなぁ。この子達がその世界を知るのにはまだ早すぎる。

 

「あ~……女キャラの方が身体小さいから、モンスターの攻撃を避けやすいんだよ」

 

 嘘だけど。

 

「へー、知らなかった」

 

 素直に納得した様子の甥っ子君。いかん、心が痛む。でも此処は大人としてこの痛みを乗り切るべきなんだろう。

 

「ただな、別に男キャラ、女キャラどっちを選んだってそれは人の自由なんだ。従妹だって女の子なのに男キャラ使ってるだろ?」

 

 従妹が丁度良く男キャラを使ってくれていて良かった。此処は有り難く利用させてもらおう。

 いや、でもコイツはなんで男キャラを使ってるんだ? 今作は可愛い装備も多いし、見た目で選ぶなら女性キャラ一択な気がする。

 

「こう……男の人達が大きな武器を振り回すのっていいよね」

 

 従妹から腐ったような香りが……誰の影響だ。いや、まぁ、趣味は人それぞれだし文句はないけどさ。

 

 

 

 それから一時間ほどモンハンを楽しんでいると、母親からお昼を買って来いとの命令を受けた。近所のスーパーにサンドイッチを頼んでいたらしく、それをもらって来いとのことです。

 一人で行くのは寂しかったため、甥っ子君と姪っ子ちゃんを誘ってみたものの、見事にフラレた。一緒にモンハンした仲だと言うのに……

 

 しゃーない。ここは従妹で我慢しよう。

 

「……一人で行ってきなよ」

「コンビニのドーナツ奢るんでついてきてきださい」

 

 一人ぼっちは寂しいのだ。

 

 そんなこんなで、従妹と出発。ドーナツを買ってあげる予定だったが、お昼前に甘いのはちょっと……と言うことで代わりにコーヒーを買ってあげることにした。最近のコンビニのコーヒーってやたらと美味しいよね。

 

「お兄の車ってどれ?」

「あのシルバーのやつ」

 

 いくら近所のスーパーとは言え、此処は田舎。徒歩でいける範囲にスーパーなんて存在しない。そんなことで俺の車で行くことに。ああ、もしかしたら煙草の匂いが残っているかもしれないな。車の中ではほとんど吸わないから大丈夫だとは思うけれど、自分じゃ気づかないこともありちょっと心配だ。

 

「……お兄にしては普通の車なんだね」

「どんな車乗ってるイメージだったんだよ」

「黒くて、なんかブオンブオンうるさそうな車」

 

 俺ってそんなイメージだったのね……

 それに、そういう車は総じて燃費がなぁ。最近はガソリンも安くなったが、俺の収入的にも贅沢はできない。

 

 そして車へ乗り込み、エンジンをかけたとき、母親からお金をもらっていなかったことに気づいた。俺のお金で払っても良かったが、財布の中身に余裕はあまりない。

 

「忘れ物したからちょっと取ってくるわ」

 

 せっかく実家へ帰ってきたんだ。これくらいは許されるはず。

 

 

 

 家へ戻り母親からお金を受け取る。その時、お雑煮用に白だしが欲しいから買ってきてくれと新たな命令も序でに受け取った。

 お雑煮か。なんともお正月って気分になる。

 そのことが少しだけ嬉しかった。

 

 従妹を任せたままの車へ戻ると、フロントガラス越しに気まずそうな従妹の顔が見えた。何かあったのだろうか?

 そして、ドアを開けた瞬間にその原因を理解。

 

 俺は一人で車に乗るときは、なかなかの音量で音楽を聞く。俺以外の人も乗るときは音流を下げるわけだが……タイミング悪く、俺は今朝一人で車に乗っていた。一人で乗っていたものだから音量はそれなりに上げていたんです。更に俺の聞く曲の中には、ちょっとその……万人には受け入れ難いような曲も……

 

 まぁ、あれだ。

 

 車の中では――爆音でチルノのパーフェクトさんすう教室が流れていた。

 

 

『チルノの算数教室、は~じまるよぉ~』

 

 おい、やめろ。始まるな。

 

 ……いや、もうね。なんだろう。神様は俺のことが嫌いなのだろうか。俺が何をしたというのだ。タイミングとかが悪すぎる。

 

 もう色々とダメな気もするが、できるだけ冷静に音量を下げ、流れている曲をスキップ。そうしてから流れてきたのは、一昔前に流行った若者向けの曲だった。

 何故初めからこっちの曲が流れない。

 

「……お兄って、ああいうの聞くんだ」

 

 ぽそりと落ちた従妹の言葉に俺は何も返せなかった。

 いや、だって、チルノ可愛いじゃん……

 

 

 せっかく隣に現役女子校生を乗せていると言うのに、俺から何かの話をする元気はなく、沈んだ気分のままとりあえずコンビニへ向かった。励ましとしてなのか、いくらかの言葉を従妹がかけてくれたが、心の傷は癒えそうにない。

 一人で来れば良かったって心から思った。

 

 コンビニへ着いてから、従妹へ100円玉を2枚渡す。200円あればLサイズだって買えるはず。

 

「お兄は買わないの?」

「フィルターを通した新鮮な空気吸ってるわ」

「素直に煙草って言いなさいよ」

 

 例えわかっていることでも、誤魔化すってのは大切だと思う。

 

 従妹がコンビニ中へ入って行くのを横目に、ちょいと一服。甥っ子君や姪っ子ちゃんの側じゃ流石に吸えない。吸える時に吸っておかねば。

 吸わないことが一番だってことくらいはわかっているけどさ。

 

 

 コンビニの前の道路を走り過ぎて行く車をボーッと見ながら、煙草を燻らせていると従妹が近づいて来た。

 

「あー、悪い。もうちょいかかる。寒いし匂いが移るから車の中で待っててくれ」

「別にゆっくり吸ってもいいよ。お父さんだって吸ってるから匂いは慣れてるもん」

 

 そう言えば叔父もスモーカーだったか。祖父も吸っていたと聞いているし、うちの男系はそう言う家系なのかもしれない。まぁ、環境の差が一番大きいのだろうけど。

 

「友達に見られたら変な噂されるかもしれんぞ?」

「大丈夫。私、学校では優等生だから」

 

 自分で言うな。

 てか、それなら尚更マズイだろ。

 

 自分で言っていて悲しくなるが、他人から見ると俺のガラは悪いらしい。そんな野郎が煙草を吸っている横にいるところを見られたら、良い噂にはならないだろう。

 

「それに……」

「うん?」

「たまにはさ。こうやって、いけないようなことをしている気分にもなりたいんだ」

 

 ちびちびとホットコーヒーを飲みながらそう言った従妹の顔は、少しばかり恥ずかしそうだった。

 高校時代の俺は決して優等生なんかではなかった。そんな俺だけど、その従妹の気持ちはわかる気がする。

 

「別に私もお兄も悪いことはしてないんだけどね」

 

 そして、はにかむように笑った。

 

 悪いこと……ねぇ。この世界、その悪いことってのを決めるのは自分だけじゃないってのが、難しいんだよなぁ。

 

 煙草の火を消してから灰皿の中へ。

 どうせ無駄な抵抗だけど、幾度か大きく深呼吸をして、できるだけ煙草臭さを減らしてみる。

 

「そんじゃ、行くか」

「うん」

 

 ここ数年会っていなかったけれど、ちゃんと成長してたんだな。

 なんて思った。

 

 

 

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