その日の天気は晴れでした   作:puc119

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愉快な仲間たち

 

 

 片付けを終え、会議室から出て直ぐに、首元のネクタイを緩めた。こんな物をつけていたら息苦しくてたまらん。つけているだけで肩が凝る。

 ああ、今はとりあえず煙草を吸いたい。

 

「おう、ご苦労さん。でも、ネクタイはまだ取るなよ。またウチの悪いうわさが広まる」

 

 部屋を出て直ぐ、ボスからそんな声をかけられた。

 なんとか問題なしに終わらせることはできたけれど、内容の良い発表ではなかったせいで、どうにも居心地が悪い。それでも、短期間でよく頑張った方だとは思う。発表中、2回ほど意識が飛びかけた。流石に徹夜明けでの発表は厳しかったか。

 

「これ以上悪くなることないんで大丈夫ですよ。それにボスだってネクタイ外してるじゃないですか」

 

 ウチの職場の評価なんて既にどん底だ。これ以上はどうやっても下がりやしないだろう。それに本部の奴らと関わることは少ないし、今更気にしたところで仕様が無い。

 

「俺は別に良いんだよ。上から色々言われるほど低い立場じゃないし」

 

 それは羨ましい限りだ。俺もそんなことを言えるほど偉くなってみたいものだねぇ。

 

「それにしても、相変わらずプレゼンは上手いんだな。あんな材料でよくもまぁ、彼処まで引っ張れたもんだよ。詐欺師の才能とかあるんじゃないか?」

 

 たぶん褒められているんだろうけれど、なんだろうか。全然嬉しくない。詐欺師ってあんた……

 俺のプレゼン能力は……どうなのだろうか? 下手だとは思わないけれど、自分が上手いと感じたこともなかった。

 

「後輩君の方がよっぽど上手いですよ」

「確かにアイツは上手いが、ちょっと硬すぎる。お前くらい適当な方が良いことが多いんだよ」

 

 すみませんねぇ。適当な性格で。

 うん、やっぱり褒められている気はしない。まぁ、褒められたところで、どう反応して良いのかわからないんだけどさ。

 

「とりあえずご苦労だったな。せっかくだし昼飯奢ってやるよ。何食いたい?」

「鰻重が怖いです」

 

 鰻なんてここ数年食べていない。久しぶりに食べるのも悪くない。

 

「了解。牛丼だな。ほら、行くぞ」

 

 何に了解したのか全くわからない。特盛で豚汁をつけてやる。まぁ、いつものことなんだけどさ。ボスが昼飯を誘ってきた時は必ず牛丼だ。

 いや、俺だって牛丼は好きだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、お疲れルー君。どうだった?」

 

 ボスとの昼飯兼反省会も終わり、職場へ戻るとまずお嬢に声をかけられた。身長140数cm。どう見ても中学生。そんな見た目のせいか、必ず年齢確認されるから、一人じゃ飲み屋へ行き難いなんて愚痴をよく零している。

 因みに、“ルー”って言うのは俺のことらしい。どうしてそう呼ばれるのかは知らないけれど、お嬢と先輩ちゃんさん、それとたまにだけど同僚とボスが俺のことをそう呼ぶ。

 

「なんとか乗り切ったよ」

 

 これで当分は楽ができる。今日はほとんどやることは残ってないし、午後はずっと寝ていようかな。

 

「そかそか、それは良かった。これで安心してスキー行けるね」

 

 そう言ってお嬢は嬉しそうに笑った。どうやらお嬢もかなり楽しみにしているらしい。そう言う俺も楽しみではある。

 

「そう言えば、スキー場はどこへ行くんだ?」

 

 泊まりで行くってことは聞いていたけれど、何処へ行くのかは聞いていなかった。住んでいる県が県だけに、スキー場なんて其処ら中にある。今年は暖冬の影響でどこも雪不足だと聞いているし、場所によってはほとんど滑ることができないかもしれない。

 

「あれ? 聞いてなかったの? 野沢温泉だよ」

 

 ああ、野沢か。それなら雪は問題ないだろう。

 それに彼処は温泉もあるしなかなか楽しめそうだ。此処から遠くないって言うのも運転手としては有り難い。

 

「ルーは野沢温泉へ行ったことあるんだっけ?」

 

 同僚が入れたと思われるコーヒーを啜りながら、先輩ちゃんさんが聞いてきた。俺も後でいただこう。同僚のいれるコーヒーは好きだ。

 

「そうですね。何度か行ったことがあります。てか、一昨年に俺、同僚、お嬢の三人で行ってます」

 

 お嬢は滅茶苦茶スキーが上手く、ソレについて行くのが大変だったことをよく覚えている。俺も同僚もそれなりに上手い方ではあるけれど、それでもついて行くのがやっとだった。まぁ、喫煙の影響が大きい気もする。

 

「あら、そうだったんだ。それなら丁度良いじゃん。ああ、あと、今日飲み行くよ」

「行ったことはありますが、記憶はかなり曖昧ですよ? それと僕、徹夜明けで死にそうなんですけど……」

 

 こんなボロボロな状態でアルコールなんて入れたらどうなるかわからない。たぶん寝不足のせいだけど、頭痛いし。

 お酒は好きだけど、今日は流石に辛い。

 

「ルーなら大丈夫でしょ。じゃあ、行けるってことで良いね」

 

 相変わらず強引な人だ。少しは俺の意見も聞いてもらいたいところ。

 ただ、そんな性格も嫌いにはならない自分がいた。

 

「他には誰か行くんですか?」

「いや、誰も誘ってないよ」

 

 なんと、サシ飲みですか。正直、先輩ちゃんさんとのサシ飲みはちょいと遠慮したい。この人、酔っ払うとかなり面倒くさいんだ。

 

「同僚も行こうぜ」

「すまんが今日はサオリちゃんのところ行くって約束してるんだ」

 

 サオリちゃん(男)。なるほど、またコイツはオカマバーへ行くのか。そうなると、ボスも無理だよなぁ。いつも同僚と一緒に行ってるはずだし。オカマバーねぇ……楽しそうではあるけれど、行く気にはならない。

 

「因みに私も今日は無理かなー」

 

 そんなお嬢の声。あら、残念。

 俺一人じゃ先輩ちゃんさんを止められる気がしないし、もう一人くらい来て欲しいところ。

 

「後輩君は?」

「すみませんが、僕も今日は……」

 

 ああ、そっか。今日は木曜日だったか。生活が不規則になると、どうにも曜日の感覚が狂ってしまうね。

 毎週木曜日、後輩君は彼女さんと一緒に過ごす日と決めているらしい。羨ましい限りだ。

 

 しゃーない。ちょっとどうなるかわからないけれど、先輩ちゃんさんと二人で飲むか。

 

「ちょっ、ちょっと先輩! 私がまだ聞かれてませんよ?」

 

 急に騒がしい声が聞こえ、何事かと思ったら後輩ちゃんだった。

 別に後輩ちゃんのことを忘れていたわけじゃないけど、後輩ちゃんも後輩ちゃんで酔うとアレなんだよなぁ……そろそろそのことを自覚してもらいたいってのに、毎回のように潰れてくれるし。

 

「あ~……ごめん。忘れてたわ。それで後輩ちゃんは行けそう?」

「えっとぉ、私、忙しいですしぃ、ちょっと厳しいかもしれないです。あっ、でも、頑張れば行けないくはないんじゃないかなぁって思いますよ」

 

 一応、聞いてあげると、途端に嬉しそうな顔となった後輩ちゃん。なんなんだコイツは……

 放っておいても騒がしいし、構っても騒がしい。毎日が楽しそうで何よりだ。

 

「ああ、忙しいなら別にいいや。じゃ、今日は二人で飲みに行きますか」

「嘘。嘘です! 超、暇です! 私も連れてってください!」

 

 初めからそう言いなさいよ。

 

 ふむ、つまり今日の飲み会は3人か。面子が面子なだけに今日は荒れそうだなぁ……

 

「先輩ちゃんさん。何処で飲みますか?」

「おばちゃんのところで良いでしょ」

 

 おばちゃんのところってのは、俺たちが会社帰りによく寄っていく店。焼き鳥と漬物が美味しい。あと値段がとても安く、申し訳なくなるくらいサービスしてくる素敵なお店です。

 

 色々言っていても仕方無い。身体の調子は決して良くないけれど、せっかく一山越えたんだ。今日くらいは楽しませてもらおうかな。

 

 人生、楽しんだもん勝ちってのは確かなことだと思うから。

 

 

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