インフィニット・ストラトス 恥ずかしがり屋で臆病なメイド?   作:リファイン

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半年以上空いての投稿となりました。
これから少しずつでも投稿ができればいいなと思います。
それでは、どうぞ!



第三話 泣き虫の彼女

 入学して三日経った放課後、澪は整備科に入り自分のISの調整をしていた。ディスプレイで各部の調整をしている前に全身装甲の人型のISと飛行機にも似たパーツ――BWSが鎮座していた。

 

リ・ガズィと呼ばれる彼女のISは第二世代である。BWS(バックウェポンシステム)と呼ばれる、外付け式のパーツを拡張領域に使うことで飛行形態に変化できるのだ。変化時には機動性は人型に比べて何倍も上がるが、反面とても扱いづらい。またBWSに拡張領域をほとんど使っているので追加武装は出来ないし強度的な問題で、全身装甲にしないと部品の消耗が激しいのだ。

 

澪「BWS時の姿勢制御バランスが安定しないな……」

 

 難しい顔をし、呟きながら作業を続ける澪。IS学園に来る前もリ・ガズィを使ってデータ収集をしていたが、収集のための実験が限られていたのだ。ここなら様々なISと模擬戦を行うことも出来そうだし、なによりアリーナが広いと言うのもある。

 

澪「まぁ、僕に出来る範囲で細かな改善をして、本格的なのは父さんと母さんに任せよう」

 

 ディスプレイを閉じて、ISも待機状態である緑のチョーカーに戻す。一番いいのはアリーナの使用許可をもらって実際に操作すればいいのだが、一年生は入学して一週間は禁止だと決まっている。

 

本音「澪ちゃん、調子はどう~?」

澪「本音か……BWSの姿勢制御バランスが安定しないんだ。案外大丈夫かもしれないが」

 

 こんな場所に本音がいるのは違和感があるかもしれないが、これでも彼女はISの整備技術はそこら辺の上級生よりも上である。もしかしたら技術者の娘である澪よりも高いかもしれない。

 だが整備中でも自分の腕より長い袖を直す気はない。よくそれで整備が出来ると毎回疑問に思うのだが、出来てしまうのだから不思議で堪らない。

 

本音「変形機構って通常のISに比べて調整が全く違うから安定させるのは難しいんだよねぇ~。それに澪ちゃん用に調整しようと思ったら、もっと難しいもん」

澪「まぁとりあえず安定させるのを優先させるさ。それから僕用に調整する」

 

 整備室を出てすぐの休憩室の椅子に二人で座って調整について話す。

 ISにリ・ガズィのように変形機構がないのは必要ないからだ。通常のISは背部にあるカスタムウイングによって飛行を可能にしているし十分な速度も出る。リ・ガズィはロボットが変形したらカッコよくない? ロマンじゃん? みたいな気楽な考えで作成されたISだ。そんな奇抜な考えを出すのは澪の父親なのだが、娘の澪も変形はカッコいいと思っている。

 

澪「今の状態で専用機持ちと模擬戦でもしてみたいが……」

本音「あ~……だったらダメ元で聞いてみる?」

 

 

 

 

 

本音「澪ちゃん、こっちだよ~」

澪「ま、待て本音! 一人にするな……」

 

 四日後の六時間目、二人はアリーナの中を歩いていた。あの休憩室で出した考えとは、一組のクラス代表決定戦に澪も参加させると言うものだった。

 まずは斉藤先生に二人でそれを提案したのだが、そこはあっさり通った。先生自身もそれは頭の隅で考えていたようだ。

 一組の担任である山田真耶先生と織斑一夏の姉であり、最強の称号「ブリュンヒルデ」を持つ、織斑千冬先生。この二人ともこの提案には進んで賛成してくれた。その代わり、三組のクラスメイトにも模擬戦を観戦させて、その感想を提出せよのことだ。

 翌日、先生もクラスメイトにそれを話すとこれまた全員が賛成。こうして今日の模擬戦をすることになったのだ。

 

澪「本音、本当にありがと」

本音「ん~、じゃあ学食のデザート一週間おごりね♪」

澪「んなっ!? まぁ、いっか。いいぞ、それぐらいのことはしてくれたんだ」

 

 それはもう幸せそうな笑顔になる本音。澪にとって今回の模擬戦は大きいものになる。一週間のおごりぐらいどうってことはない。

昔から本音は、行動力? があるのは変わっていないし、それに何度も助けられているのは事実であり、今回もそうだ。

 数分歩いて、着いた場所は発進ピット。何人か先客がいるのを見て、少し遅れたのを悟る。

 

斉藤「着たか二人とも。丁度、試合が始まったばかりだぞ」

 

 先にいた、斉藤先生が二人にモニターを見るように促す。そこでは真っ白な機体と蒼い機体の戦闘が繰り広げられていた。

 白い機体には噂の織斑一夏が操縦しており接近ブレード一本で戦っていた。大してセシリアは右手に持っている大型のレーザーライフルに一夏の周りを飛んでいる小型の射撃武装、BT兵器が相手をじわじわと追い詰めていた。

 

澪「射撃タイプに接近ブレード一本で挑んでいるのか?」

???「奴のISの武装はあれだけなんだ」

 

 そう発言したのは三人の他にモニターを見ている二人の内の織斑千冬先生である。黒いスーツを身に纏い、出されるプレッシャーは本物だ。頼みに行ったときにはこんなこと無かったが、あの時とは違って近寄りがたい。

その両隣にいるのは山田先生と一組のクラスメイトと思われる生徒が一緒にモニターを見ていた。

 

本音「モッピーもここに来てたんだねぇ」

 

 本音の声に生徒が振り向くと驚くような表情でこちらを見る。ポニーテールで髪をまとめ、凛々しい感じがするあたり、昔ながらの大和撫子を連想しそうな子だ。だが――

 

???「布仏か!? お前こそどうしてここに?」

本音「私は澪ちゃんのISの調整の手伝いに着たんだよ~」

???「れい? あぁ、お前が三組のクラス代表か」

 

 その生徒は澪を見て納得する。澪に対して威圧的な雰囲気を出すこの少女を見て、少しばかり怖がる澪は目を逸らして本音の袖をぎゅっと摘まむ。

 

本音「モッピー、澪ちゃん怖がってるよぉ……」

???「な、何だと!? ……篠ノ乃箒(しのののほうき)だ。怖がらせてしまったらならすまない」

澪「えっと……天羽澪、です」

 

 萎縮した澪に申し訳思う箒だが、本音がすかさずフォローに入る。

 

本音「大丈夫だよ、澪ちゃん。モッピーは本当は可愛いんだよ~」

箒「か、可愛いなどと……!」

 

 顔を真っ赤にして否定するあたり照れているようだ。しかしそれでも澪は怖がっているのか中々袖を離そうとしない。

 

本音「ん~……そだ、早く調整しないと間に合わないし、行こう?」

澪「あぁ……」

本音「そういうわけだから二人が終わったら呼んでねモッピー♪」

 

 それだけ言うと二人は簡易整備室へと向かった。無意識に人を傷つけてしまったことに落ち込む箒だが、呼ぶときにちゃんと謝ろうと誓い、モニターに目を戻した。

 

 

 

 

本音「よしよし、大丈夫だからね~」

澪「ごめん、本音……」

 

 私達は簡易整備室に入り、誰もいないのを確認すると澪ちゃんを抱きしめながら頭を撫でる。怖がりな澪ちゃんを落ち着かせるのも昔から。

 どうも澪ちゃんは人一倍に敏感な部分がある。特に人の視線や気持ちに対しては特にだ。澪ちゃん曰く、「本音や簪、お嬢様とかに抱きしめられたりすると凄く安心するんだ。心が暖かくなる」って言ってた。

 

澪「もう、大丈夫だよ。迷惑掛けた……」

本音「気にしない、気にしない♪ そろそろ始める?」

澪「あぁ、やろう」

 

 落ち着いた澪ちゃんは安心しきった顔で作業を始める。こうやって見てみると先ほどみたいなのが嘘のように思えるが、実は甘えん坊で私はクーデレと思っている。

 そんな澪ちゃんの作業姿を私は見つめる。

 

澪「BWS以外は大丈夫か……各部スラスター、メインバーニア良好っと。ん、どうした本音?」

本音「ん~ん、何でもないよ~」

澪「?」

 

 作業を再開し順調に調整を終えていく。澪ちゃんの言うとおり、BWS以外は良好で模擬戦をするには問題なかった。

 調整も早く終わり、片付けて部屋を後にしようとした私達の前にモッピーが部屋に入ってきた。どうやら試合は終わったらしい。

 

箒「さっき試合が終わったぞ。セシリアの勝ちだ。だがいいところまでは攻めていた」

本音「あちゃー、おりむー負けちゃったのかぁ」

 

 でもいきなり専用機を与えられたと言うことは一次移行も終わってない状態だったんだろう。それはそれで凄い。

 モッピーは澪ちゃんの前までいき、勢いよく頭を下げた。いきなりの行動に私達は何がどうなのか分からず反応できなかった。

 

箒「さっきはすまなかった! 保身と言うわけではないが私もこういう言い方しか出来ないから勘違いされるんだ……」

澪「だ、大丈夫だから……僕もいきなり怖がってしまってごめんなさい。だから頭を上げてほしい、です……」

箒「し、しかしだな――」

本音「澪ちゃんがいいって言ってるんだからモッピーもここまで♪」

 

 モッピーは顔を上げて澪ちゃんを見た。澪ちゃんはモッピーを怖がっておらず、緊張が解けたのか大声で笑い始めた。

 澪ちゃんがここまで笑うのは中々無い。幼馴染がいい方向に変わっているのを見ると私も自然と微笑んでいた。

 

 

 

 

 

箒「一夏!」

一夏「箒! すまねぇ、セシリアに負けちまった……」

 

 三人はピットに戻ると、箒が一人の男子生徒に話しかける。先ほどまで戦っていた織斑一夏だ。戻ってきたばかりなのだろう、ISスーツのままだ。

 

箒「ふん……これからも精進することだな」

一夏「そうだな……あれ、なんでのほほんさんが居るんだ?」

本音「ちょっとね~、この子のISの調整の手伝いしてたんだ~」

 

 本音は後ろで隠れている澪を無理やり引っ張り出す。元々、男子とあまり話したことのない澪は一夏を前に緊張している。

 

一夏「確か、天羽さんだっけ? 俺、織斑一夏、よろしくな」

澪「えっと、よろしく、です。それにしても代表候補生相手に後一歩まで追い詰めたそうじゃないですか……」

一夏「それでも、負けは負けだ。やっぱりオルコットさんは強い……」

 

 潔く負けを認める一夏に澪は関心を持つ。人は何か失敗したときや負けた時は言い訳が出てくるものだが、この織斑一夏という男は素直に自分の敗北を認めたのだ。その時の一夏の瞳を覗いて確信した。

 

――織斑はいつか必ず化ける

 

 澪は慣れない男性である一夏に対してその様な期待をしていた。この学園に居る誰よりも強くなると。

 

斉藤「男子と話したい気持ちは分かるが今は模擬戦を優先にしなさい」

澪「ひゃ!?」

 

一夏との話に夢中になっていた澪は、澪の頭に手を乗せて髪をワシワシしてくる斉藤先生に吃驚して可愛い声を出してしまう。

 

本音「わぉ、可愛い声だね~」

澪「何してんですか先生!?」

千鶴「お前がこのままだと準備しそうにないからやったまでだ。ほら、行って来い」

 

 背中を押して一夏との距離が空いた澪はISを纏いながらカタパルトへと向かう。

 

 ブルーグレーを基本とした塗装に包まれたそれは、現在では珍しい全身装甲である。一般のISより鈍重そうな見た目と背部ウイングユニットが存在しない。代わりに背部のバックパックが装備してあり、空中戦が不得手なイメージを受ける。

 

 カタパルトに着くと、ハイパーセンサーによる各部の簡単なチェックを行う。先ほど、本音と調整は行ったがそれでもチェックは絶対に欠かさない。澪の昔からの癖だ。

 

澪「うん、BWSの姿勢制御以外は大体問題なさそうだな。反応速度に少しブレがあるけど、気にするほどじゃないはず」

本音「まぁそこはこれから改善していくしかないかな~」

 

 そうだな、と頷く澪は専用のビームライフル、シールドを装備する。それだけで澪の纏うリ・ガズィの纏う空気が変わる。

 

 センサー越しにこの模擬戦を誘ってくれた親友と眼を合わせると、相手も気付いたかのようにニコっと笑顔を向ける。

 

箒「全身装甲とは……」

一夏「如何にもロボットみたいな感じでカッコいいな!」

本音「澪ちゃん、頑張ってね~」

澪「あぁ、行ってくるよ」

 

 最低限の言葉で応えると、澪は様々な人に見守られながら戦場へと飛び立った。

 

 

 

 

 

千鶴「しっかし、まさか1組の乱闘に3組も混ぜてもらえるなんて思わなかったよ。なにか深い理由でもあるのかい?」

千冬「合同授業と言うのも、コミュニケーションの一環として良いと考えたまでです。それに実技に入る前に一度模擬戦でも観戦すれば、生徒達の関心も向上すると考えたので」

 

 澪が飛び立った後、3人の教師はこの模擬戦について話し合っていた。千鶴は模範過ぎる回答に面白くなさそうな溜息をつく。

 

千鶴「真面目だね……麻耶ちゃんはどう思う?」

麻耶「私ですか? 私も織斑先生とほとんど同じですよ。でも、個人的にはこうやって違うクラスでも3年間頑張っていく「仲間」として仲良くなって欲しいですね♪」

千鶴「麻耶ちゃんらしい考え方だねぇ。それに比べて千冬ちゃんときたら……」

千冬「何かご不満でも?」

 

 やれやれと言った感じで溜息を吐く千鶴に、千冬は本気で機嫌を悪くしたのか、鋭い眼光で射抜く。しかし、それを無視するかのように千鶴は話を続けた。

 

千鶴「私も麻耶ちゃんの意見には賛成だね。ISを立派に使えるようになるのも大事だが、その前に一人の人間として繋がりを大切にしてほしいもんだよ」

千冬「……貴女は相変わらずですね」

千鶴「当たり前だっての! おっと、試合が始まったみたいだ」

 

 試合開始のホイッスルがなったと同時に教師三人は先ほどのほんわかとしたそれとは違い、教師として試合を見守る。

 

千鶴「お前の実力を見せてみろよ、天羽」

 

 楽しみにしていたかのようににやける千鶴は、まるで新しいおもちゃを与えられた無邪気な子供の様な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

澪「BWSの姿勢制御回路が滅茶苦茶になってる……すぐに直せそうにないぞ、これ」

 

 放課後、誰も居ない整備科のピットにて澪はリ・ガズィを人型とBWSを分けて目の前に展開していた。

 

 模擬戦は澪の完敗であった。

 

高い射撃能力を持つセシリア・オルコットに対して射撃位置を読んでいるかのような回避に見ている全員が驚いていた。しかし、「ブルー・ティアーズ」によるオールレンジ攻撃に対して上手く立ち回る事が出来なかった。

 

 様々な角度からの射撃に反応は出来たものの、IS自体が澪の反応速度に追いついていなかったのである。頭部バルカンやビームライフルで何基か壊す事ができたが追い詰められていた。

 

そこでBWSを使い変形し逃げ回りながらチャンスを伺っていたのだが、スピードと高度を維持するのがやっとでとても攻撃に移ることなど出来なかった。一か八かでBWSによる最高スピードで急接近し、近づいた所で人型に変形しビームサーベルで斬り付けようとした。

 

だが、変形してビームサーベルを取り出したと同時に、急スピードによる負荷の大きい変形にIS自体が耐える事が出来ずに機能停止してしまったのである。これにより、澪はセシリアに敗北したのである。

 

澪「……結果、BWSは姿勢制御関係の回路の60%が破損。更に人型での背部メインバーニアがイかれて、各種スラスターも少し損傷……か」

 

 澪は自分の整備士としての、テストパイロットとしての技術力の未熟さを痛感した。それが悔しくて自然と手に力が入る。

 

 それから澪は、今すぐに修理を行える箇所を黙々と直していた。修理中、ふと気が付けばもう19時30分でもう生徒は寮に帰らなければならない時間だ。

 

 修理の進捗状況をメモしてISを待機状態に戻すと整備科を後にした。

 

???「だ~れだ?」

 

 寮に戻らず、なぜか生徒会室に向かっていた澪は途中で誰かに視界を隠されてしまう。その正体を既に知っていた澪は慌てることもなく淡々と応える。

 

澪「今、そんな気分じゃないんで止めてもらえませんか、お嬢様」

楯無「あらら、ばれちゃった♪」

 

 視界が元に戻って後ろを振り向くと、自分の主人である楯無がにこやかに澪を見つめていた。何か言うわけでもなく、何かを待っているかのように澪を見ている。

 

 しばらくの間、俯いていた澪だが、我慢ができずにそのまま楯無に抱きついて啜り泣き始めた。楯無はそんな澪に何も言わずに頭を撫でる。

 

楯無「本音ちゃんから聞いたわ。悔しかったね、辛かったよね。今は思いっきり泣いて、また前に進んでいこうね?」

澪「ありがと……また頑張るから。次は負けないもん……」

 




澪のISは本編通り、リ・ガズィとなりました。
たぶん、変形とか無理があるだろとか言われそうですが、そこは大目に見てもらってですね……
澪ちゃんが唯の泣き虫でしかなくなっている気がするけど、これでもメイドです(棒)
オリキャラって難しい……
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