ある意味オリジナル艦娘の話になるのかもしれないのでそこは注意(一応オリ主タグ付けておきます)。
この作品の艦娘については作者は特に誰もイメージせずに書いてますので読んだ人が想像してみて下さい。
ハッキリ言って暗い話なので荒んでいる方や癒しが欲しい方は回れ右で。
――――――
私の意識はどこから来てどこへ行くのか
かつて誰かが思う、考えるからこそ自己意識は存在すると言っていた
思考をし続けるということが自己の存在を保証するのだとしたら
何も思考しないということは生きてはいないということなのか
――――――
気が付けば、『私』という存在はこの肉体にあった。それは何時のことだったのか自分では覚えてはいない。
自分が誕生した日というものはわかるのだが、『私』という意識が無意識の海の中から有意識へと浮遊した日というのは誰も知らない。
記憶を辿れば、海上で鎮守府所属を名乗る艦娘と出会った時が最古のものだ。それ以前のものは『私』の中には存在しない。
しかし、全く可笑しなことに(これは後から気付いたことだが)『私』の中には『私』のものではない記憶が混ざっていた。
それは自分の記憶よりも非常に鮮明で、『私』が見て来た世界よりも色彩が豊かのように感じられる。
『私』は今では鎮守府所属の艦娘となり、制海権を獲得する為に深海棲艦と戦う日々を過ごしている。
そのことに疑問は持たない、何もしないでいるよりは何かをしている時は一番気が紛れる。
でも、出撃が終わって、帰投して、次の出撃までに待機をしている時間はそうではない。
『私』の記憶と、『私』じゃない記憶、決して混ざり合うことのない二つの記憶が常にこの肉体の中でぶつかり合う。
まるで水に垂らした水彩絵の具のように、カラフルな記憶は灰色の記憶と混ざりあってぐちゃぐちゃになる。
「おい、大丈夫か?」
呆けていたらしく、この鎮守府の責任者つまり提督が私の顔を覗き込んで呼びかけていた。
気が付けば、私は執務室に先の出撃の報告をしに来ている最中だったようだ。
「すみません、少し考え事をしていて……」
まるで悪戯していたことを隠す子供のように、目の前の人の視線を避けるように顔を背ける。
「そうか、これから大規模作戦が開始される。お前にも参加して貰うから気を確り持てよ」
『私』の頭を撫でると提督は執務に戻り、『私』は執務室を後にした。
あの人に頭を撫でられると『私』の記憶は強さを増し、まるでピンボケしていた視界がピンとが合うような感覚を覚える。
――――――
夜、『私』は自室に戻って敷かれている布団に体を潜り込ませる。
一瞬で『私』の意識は薄暗い夢の中へと誘われる。
夢の中でまず認識したのは巨大な鉄の塊が爆ぜる轟音、無数の翼に引き裂かれる風の悲鳴。
その次に血と油で汚れた海、突き出した暗い山のような艦、それに群がる蠅のような艦載機。
今まで以上に鮮明に『私』は『私』じゃない記憶の中に存在していた。
次の瞬間には視界が大きく震えて、真っ暗な海の中を映し真っ白い手と赤い二つの目のような物を映して真っ暗な幕が閉じた。
いつしか、『私』は現実に生きているのか、『私』じゃない記憶の中に生きているのかの区別も付かなくなっていた。
――――――
そして、大規模作戦が決行された日、鎮守府は目標海域に行く途中に深海棲艦と予想外の遭遇をし、対応が遅れた艦隊は後手に回らざるを得なかった。
此方の被害は中破が3隻、小破が2隻、そして『私』は大破していた。
自力航行も出来ず曳航され、朦朧とした意識の中、『私』は夜のように夢のような『私』じゃない記憶の中だった。
曳航している仲間の誰か(既に誰なのかの区別も『私』にはつかなかった)が何かを私に向って叫んでいる。
もうすぐ鎮守府に辿り着ける?ねぇ、それは誰の名前なの?
次の瞬間、私に喋りかけていた彼女の姿は風切りの轟音に掻き消されて、水柱の向こうに消えてしまった。
周囲を見回してみると、無数の深海棲艦が『私』たちを取り囲んでいた。
深海棲艦たちはまるで品定めでもするかのように『私』たちを見回すと、やがて砲撃を開始した。
まず、後ろの娘、左隣り、右隣り、目の前の順に艦は沈み行き、やがて『私』の番になる。
大きな衝撃と轟音が鳴り響き、『私』の体がゆっくりと海に沈み行くその瞬間、『私』と『私』じゃない記憶が完全に混じり合った気がした。
最後にあの赤い目と真っ白い手が『私』を捕らえて、『私』の頭を優しく撫でながら深淵へと沈めて行く……。
――――――
そうか、『私じゃない記憶』は
本当は『私の記憶』であって
『私』という記憶は完成された記憶の不協和音
さようなら『私』
コンニチハ『新シイ私』
嗚呼、水面ニ光ハ満チテ
ヤガテ『新シイ私』モ
『私ジャナイ記憶』ニナルダロウ