やはり喰種の俺が青春ラブコメをするのはまちがっている。   作:Daiki0426

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前回の投稿から随分経ってしまいすみません。

今回はあんていくでの話、そしてあの女性が登場します。


episode:11 俺の日常はまちがっている。

『お兄ちゃん助けて!』

 

『小町、今助けるからな!』

 

『八幡……、小町を頼んだわよ……』

 

『母さん! 母さん!』

 

『では実験を始めよう』

 

『グァァァ⁉︎』

 

『君は逃げろ!』

 

『でもそんなことしたら……』

 

『八幡くん……、君は生きるんだ……』

 

 

 

【人間ドモガ、皆殺シニシテヤル】

 

 

*****

 

「っ…⁉︎ ハァ、ハァ……」

 

久しぶりに嫌な夢を見てしまった。あの時の何もできなかった自分、奪われることしかできなかった自分、そして奪うことしかできなくなってしまった自分。いつ見ても嫌な夢だ。

ベットから起きあがり洗面所に向かう。

蛇口をひねり、水で顔を洗いタオルで拭く。鏡にを見てみると映った俺の顔はやつれていて、目の腐りはいつもより一層酷い気がする。

階段を降りリビングに行くと小町がブラックコーヒーを用意してくれていた。あと小町ちゃんその格好はどうかと思うよ。

 

「お兄ちゃんおはよ……って、どうしたのその目⁉︎ いつもより腐ってるよ!」

 

心配するところが目という事実に少し落ち込むが、小町から見ても今日の俺の顔は酷いようだ。

 

「まぁちょっと嫌な夢を見ただけだ……」

 

「お兄ちゃん……、もしかしてあの時のこと……?」

 

「いやあれは俺が弱かったせいだ。小町のせいじゃない」

 

「違うよあのとき小町が何かしていればあんなことには……」

 

「小町が何かしていたら小町も捕まっていたかもしれない。だから気にするな」

 

「うん……」

 

まだ納得してないようだが、あの時の話を辞めさせることができた。

俺は椅子に座りコーヒーを飲む。やっぱりコーヒーを飲んでいるときは落ち着く。

 

「そういえばお兄ちゃん、今日土曜日だけどあんていくに行かなくていいの?」

 

「ん、あんていく? …あ」

 

やっべ! 夢のことですっかり忘れていたが土曜日と日曜日は俺のシフトだ。時刻は午前八時、本来なら九時に開店するから完全に遅刻だ。

 

「もうお兄ちゃん、着替えは小町が用意しとくから、お兄ちゃんは歯磨きしてきて」

 

「分かった!」

 

椅子から立ち上がり洗面所に向かう。これはもう間に合わないなと思いながら歯を磨く俺であった。

 

 

*****

 

 

「遅い」

 

「返す言葉もありません」

 

着いて早々バイトの同僚、霧島にそう言われた。結果からいうと遅刻だった。

 

「まあまあトーカちゃん、比企谷くん許してあげようよ。なんならこの仲裁の魔猿と呼ばれたこの僕が……」

 

「古間くんカウンター席拭いてきてくれる」

 

「了解」

 

俺のことを見かねたのか古間さんが仲裁しようとしたが、入見さんに頼まれてカウンター席を拭きに行った。まぁあの人が来ると余計面倒な気がするしな。

 

「聞いてんの、比企谷」

 

「悪い悪いなんかするからそれで勘弁してくれ」

 

「じゃあわたしの分の仕事もやっといて」

 

サボりたそうな顔をして霧島はそう言った。気持ちは分かるが店員がそれでいいのかと思う。あと芳村さんから怒られるんじゃないのか?

 

「何、それともわたしのストレス発散のサンドバッグにでもなる?」

 

「い、いえやりますやります、やらせていただきます」

 

「じゃ、頼んだよ」

 

そう言って霧島は裏口の方に向かっていった。あとで芳村さんから怒られそうな気がするが、約束してしまった以上霧島の分もやらなければいけない。

自分のロッカーに行き荷物を置いて店員服に着替え、手を洗い厨房に向かう。厨房に着くと入見さんが料理を作っていた。

 

「比企谷くんトーカちゃんは?」

 

「あいつならサボってますよ。で、その代わりに俺が来たんです」

 

「トーカちゃん、芳村さんに怒られないかしら」

 

「あー、絶対怒られますね」

 

俺も昔、芳村さんを怒らせて二時間正座されられたっけ。あのときの足の痺れ具合といったら歩くだけで足に痺れが伝わって、しばらくまともに歩けなかった。あれ以来、芳村さんを怒られるのはやめようと思った。

 

「じゃあ、これお客さんに届けてくれる」

 

「分かりました」

 

入見さんから料理を渡され客席に向かう。

何度も体験しているがやはりオールスタッフの役目は苦手だ。この前、人間の客にコーヒーを渡しに行ったら露骨に嫌そうな顔をされ、厨房に戻って一人で泣きそうになった。あとその光景を霧島に見られて笑われたのがものすごムカついた。まぁ幸い、この料理は喰種用だから大丈夫だと思う。

料理を届ける席には、眼鏡をかけ紫色の髪をした大学生と思われる女性が本を読んでいた。側から見れば綺麗な女性だが何か得体の知れないものを感じる。これは料理を届けたらすぐに離れたほうがよさそうだな。

 

「ご注文の品です」

 

「ありがとう」

 

俺は注文を届け、厨房に戻ろうとしたその時……。

 

「あなた、美味しそうね」

 

「⁉︎」

 

舐めまわされるような声に思わず振り返ってしまう。

 

「そう怖がらないでよ、わたしはあなたと少しお喋りがしたいだけだから」

 

女性はニコニコしながらそう言うが、何か裏のありそうな顔だ。だがこの状況ではどうすることをできない以上、この女性のいうことを聞いた方がいいだろう。

 

「……なんでしょうか」

 

「ふふっかわいい子ね。君は強がっているようだけど内心は弱々しいビビリくんってところかしら」

 

女性は俺の心の中を的確に当ててくる、俺の苦手なタイプだ……。だが得体の知れないこの違和感はそれだけによるものじゃない気がする。

 

「ところで君の名前はなんていうの?」

 

「へっ? あ、ひ、比企谷でしゅ」

 

「……ぷっ」

 

何これ⁉︎ 自己紹介で噛んだうえに相手に笑われるとか羞恥プレイだよ‼︎ ハチマン穴があったら入りたい。

 

「ごんなさい。あなたの自己紹介がへ……、面白くて」

 

あの、むしろそのまま変って言ってくれた方がダメージ少なかっったのですが……。

 

「あの、そろそろ戻らないといけないので戻らさせていただきます」

 

「あ、ちょっと待ってくれる? あなたの名前教えてくれたお礼にわたしの名前も教えてあげるわ。

わたしの名前は……

 

【神城利世】よ」

 

「神城……利世? ……っ⁉︎」

 

この女まさか11区の大食いか……⁉︎ …いや、まだそれだけでは確定できない。だが、この事は吉村さんに報告した方がいい。

 

「そうなんですか、いいお名前ですね。それでは僕はここで」

 

そう言ってこの場から離れ、厨房に向かう。あの女が本当に大食いなこの20区は大変なことになる。

 

 

「…比企谷くんか……。あの子はどんな味がするのかしら……、ふふっ」

 

 

******

 

 

あのあと俺は入見さんのところへ行き、芳村さんが二階の休憩室にいるということを聞いて、休憩室に向かった。

別にそこまでは良かったのだが、休憩室のドアノックして中に入ると芳村さんとバイトをサボったのがばれたのか霧島が正座して座っていた。まあ多少は俺にも原因はあると思う。が、だからといって俺を睨まないでほしい。怖いから。

 

「どうしたのかな比企谷くん、何かあったのかい?」

 

「それがリゼ……大食いが20区に来たかもしれません」

 

「⁉︎ 本当なのか比企谷!」

 

霧島が珍しく驚いた表情をしてそう言った。

 

「……来たかもしれないとはずいぶんと疑問形なのだがどういう意味だい?」

 

「はい、その喰種は神城利世と名乗っていましたが、その神城利世がリゼとは限りません。ですがリゼの性別は女、それにこれは俺の直感なんですが、なんというか……強者の余裕、そんなものを感じました」

 

普通の喰種は白鳩や強い喰種に怯えながら生活している。つまり人が多い場所では少なからず警戒してしまう。

だがあの女は怯えというものを全く感じない。それどころか余裕で獲物を見定めている。そんな目をしていた。

 

「…そうか、わたしからもその神城さんに接触してみよう。いちおう入見くん達にも伝えておいてくれるかな」

 

「分かりました」

 

「じゃあ頼んだよ」

 

入見さん達に伝えるために俺は部屋を出て厨房へ戻る。それに乗じて霧島も出ようとするが……。

 

「トーカちゃん、まだ二時間半も残っているのにどこに行くつもりかな?」

 

案の定、芳村さんに捕まった。いちおう後ろを見てみると冷や汗を出している霧島とニッコリ笑っているのに心は全然笑ってなさそうな芳村さんの顔があった……。

…とりあえず扉を閉めて全力疾走で階段を下る。

 

「あー無茶苦茶怖かった……」

 

やはり芳村さんを怒らせるのはやめようと思う俺であった。

 

******

 

時刻は午後八時、あんていくを出て少し散歩をしている。春であるがさすがに夜は肌寒くもう一枚服を着て出てきた。

あのあと入見さん達にリゼの事を伝えた。入見さん達は少し驚いていたが警戒はしておくとのことだ。古間さんは『そんなの心配いらないよ。この殺戮の魔猿と呼ばれるこの僕……」とか言っていたから少し心配だが、あれでも強いらしいから大丈夫だと思う。……大丈夫だよね?

あと霧島は脚が痺れてまともに歩けていなかった。さすがにかわいそうになったので助けてやろうと思ったのだが俺の脚が霧島の脚に当たってしまい『ひゃっ⁉︎』なんて声を出してもんだから思わず笑ってしまった。直後に手痛いパンチをくらったけどな。

俺は基本的に土曜日は家に帰らない。時給千円のバイト代を八時間働いても八千円、つまり電車を使用すると一往復で約二千円ほど消費し、自分の手元には六千円しか残らない。給料の四分の一を電車代に使うなどもったいないことはしない。だから基本的にはあんていくで寝泊まりする。これだけで二千円分の節約にもなるし、さらに寝坊する心配もない。別に寝起きが辛いとかじゃないからな、断じて。

あー月曜日になったら奉仕部に出ないといけないのが辛い。雪ノ下だけのときは無視をしていれば罵倒は治まっていたが、由比ヶ浜がいるから無視しようにも無視できない。

 

「あー、学校行きたくねえな……」

 

学校に隕石でも落ちてくれないかなホントに……。

…それはそうと誰かに付けられている。このままあんていくに帰るのも一つの選択肢だが白鳩の可能性もある以上、面倒事を持ち込むわけにはいかない。どちらにせよ今は路地裏を使ってまくか、そうじゃなくても喰種か白鳩かどうかを見分ける必要がある。

俺はすぐ近くの横道を右に曲がり、裏路地の方に行く。追跡者はまだ追ってくるようだ。ここまで来たら白鳩だろうが喰種だろうがあまり関係ないだろうから、路地裏に入って角を曲がってから走って逃げる。しばらく走ってついたのは人気のつかない高架線の下、ここまでくれば白鳩なら追ってこないはず……。

突如として二本の触手状の赫子が俺を襲う。咄嗟にかわすが高架線の柱が抉れる音がした。

 

「ふふっやっぱり早いわねぇ比企谷くん、いえ『狐』くんと言った方がいいかしら」

 

「お前は……!」

 

声の主は今朝あんていくで俺に話しかけてきた女、神城利世だった。

 

「やっぱり尾行に気付いていたのね。ふつうは無理だの思うのだけれど」

 

「あいにく尾行は得意分野なんでな。尾行する奴が尾行に気づかないでどうする」

 

「たしかにそれもそうね。でもね…、そんな事はどうでもいいの……。あなたの美味しそうな肉を食べさせてくれたら!」

 

神城は赤黒く先端が爪状で所々に鱗のようなものがある鱗赫をもう二本発生させる。

これは少しまずいかも、いや絶対まずい。喰種は赫子の本数が多いほど強い傾向にある。神城の場合は四本……、さすがは無秩序に人を食っているだけはある。下手したら本当に食われるかもしれないな……。

それでも俺はこの女に負けるわけにはいかない。家で待っている小町のためにもな。

 

「誰がお前の餌になるかよ神城、いや大食い」

 

その直後、四本の赫子が俺を襲った。




今回はあんていくのメンバーとリゼを登場させてみました。

次回はリゼとの戦いをする予定です。いつ投稿できるかはわかりませんが12月の終わりまでには投稿したいと思っております。
今後ともよろしくお願いします。
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