やはり喰種の俺が青春ラブコメをするのはまちがっている。 作:Daiki0426
この話は雪ノ下のイメージが原作とかけ離れる予定です。雪乃ファンの方々は見ない方がよろしいかと思います。
八幡side
独神もとい平塚が教室から去ってから数分ほどたった。取り敢えず俺は椅子に座って本を読んでいる。ちなみに何故か平塚が廊下に居るのが疑問であるが、恐らく俺の監視であろう。
しかし、部活に強制的に入部させられたのはいいが何の部活に入ったのかが分からないこの状況では何をすればいいのかわからない。しかし、聞いてみなければ何も分からない。俺は嫌々ながらも雪ノ下に聞いてみる事にした。
「あの、すみませんがこの部活は何をするのですか」
俺がそう聞くと雪ノ下は露骨に不機嫌そうな顔をした。そんなに俺が気に食わないのか?
「……そうね、ではゲームをしましょう」
「ゲーム?」
「そう、ここが何部か当てるゲームよ。さて、此処は何部でしょう?」
結論を言おう……、分かるか‼ ヒントも無しの状況だけで判断しろというのが無理がある。正直言ってオカルト研究会……、じゃなくてオカルト研究部くらいしか思いつかないんだが。こうなったら駄目元で言うしかない。
「文芸部か」
「へえ……。その心は」
「特殊な環境、特殊な機器を必要とせず、人数がいなくても廃部にならない。つまり、部費なんて必要ない部活だ。加えてお前は本を読んでいる。つまり、この状況下ではそう考えるのが自然だ」
「はずれ」
嘘だろ……。この状況ではそのくらいしか思いつかないぞ。しかし雪ノ下の表情は俺を小馬鹿にした顔をしている。このまま引き下がるわけにはいかない。あの女に一泡吹かせてやらないと俺の気が済まない。たしか平塚は俺に奉仕活動をさせる為にこの部活に入れたんだよな。……ん、待てよ。奉仕活動……。ああ、なるほどそういう事か。いささかシンプル過ぎるような気もするが言ってみる価値はある。
「……奉仕部か」
「くっ……正解よ」
雪ノ下は心底悔しそうな顔をしながらそう言う。ふっ、どうやら俺の勝ちのようだな。
「……比企谷君。女子と話をしたのは何年振り?」
こいつ、俺が何年間も女子と喋った事がないと思っているのか。確か、女子と話をしたのは……
『あんたさ、そんな不味いのいつも飲んでて大丈夫なの?』
「昼休みぶりだな」
雪ノ下は驚愕といった表情をしている。まぁ、確かに俺みたいな奴が昼休みに女子と話をしたなんて聞いたら少なからず驚くだろう。
「……くくっ、あなた、昼休みに女子と会話をしただなんて言う程、妄想にとらわれていて、本当に哀れね、妄想谷君」
雪ノ下は罵倒混じりの哀れみを俺に向ける。こいつも平塚と同じ確かめもせず勝手に俺を哀れむ屑だ。しかし、口に出せば面倒な事になるのは確かだ。ここは耐えしのぶしかない。
そんな俺の心境を知らずに、雪ノ下は話を進める。
「持つものが持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、もてない男子には女子との会話を。困ってい人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」
いつの間にか雪ノ下は立ち上がり、俺を見下している。言
っている事は立派だが、正直言ってこいつが言ったらろくでもないことを言っているように聞こえる。
「ようこそ、奉仕部へ。歓迎するわ」
そんな見下されて言われても、とても歓迎されているようには見えないのですが……。
「平塚先生曰く、優れた人間は哀れな者を救う義務がある、のだそうよ。頼まれた以上、責任は果たすわ。あなたの問題を矯正してあげる。感謝なさい」
どうやら雪ノ下は俺に問題があると言っているようだが、俺から言わせればお前の方が問題があると思う。ここは少しばかり反撃をしよう。
「悪いが雪ノ下。俺は自分に問題は無いと思っている。それどころか結構高スペックなくらいだ。自分で言うのもなんだが、結構優秀なんだぞ。実力テスト理系コース数学学年三位。顔だって中の上くらいにはいい方だ。欠点を挙げるなら友達が1人しかいない事くらいだが、よく話す知り合いはそこそいるからさほど問題ない」
「そんな事を自信満々に言えるなんてある意味凄いわね……。あとあなた、かなり自分の妄想に浸っているようね。あなたに友人や知人なんていないのに……。本当に哀れね、妄想谷君」
確かめもせず、自分の想像で俺を語るお前の方がよっぽど妄想に浸っているぞ。
「ふうん。私の見たところによると、どうやらあなたが独りぼっちなのってその腐った根性や捻くれた感性が原因みたいね」
それは少し違う。腐った根性や捻くれた感性も原因の一つだが、俺は元々一人でいる事が好きなだけだ。
「まずは居た堪れない立場のあなたに居場所を作って差し上げましょう。知ってる?居場所があるだけで、星となって燃え尽きるような悲惨な最期を迎えずに済むのよ」
『よだかの星』かよ。随分とマニアックなものを知っているな。
「あとあなた、さっき数学学年三位と言っていたけど、私からすれば三位風情でいい気になっている時点で程度が低いわね。大体一科目だけで、頭脳の明晰さを立証しようという考えがもう低能ね」
その理論だと総合学年三位のお前が総合学年一位の俺に向かっていい気になるなよ。三位風情の雪ノ下さん。
「大体成績だの顔だの表層的な部分に自信を持っているところが気に入らないわ。あと、腐った目も」
それについては同感だが、俺はべつに自分のスペックに自信があるわけでない。あと腐った目は関係ないだろ!
「さて、これで人との会話シミュレーションは完了ね。私のような女の子と会話ができたら、大抵の人間とは会話出来るはずよ」
え、これ人間との会話シミュレーションだったの? いくらなんでもここまで馬鹿にされると流石に腹が立つ。しかも、自分で『表層的な部分に自信を持っているところが気に入らないわ』とか言っていたくせに一番自分が表層的な部分に自信を持っているだろ。
「これからこの素敵な思い出を胸に一人でも強く生きていけるわね」
元から一人でも強く生きていけるわ!ここまで俺の評価は酷いのか……。流石にそろそろ涙が出てきそうだ。そんな事を考えていると、ドアを荒々しく引く音が響いた。
「雪ノ下。邪魔するぞ」
「ノックを……」
「悪い悪い。まあ気にせず続けてくれ。様子を見に寄っただけなのでな」
とか言っておきながら実際は廊下で盗み聞きしていたくせに……。平塚は教室の壁に寄り掛かった。そして、俺と雪ノ下を交互に見る。
「仲が良さそうで結構な事だ」
どこがだ!さっきの会話を聞いていて、どう解釈したんだ?
「比企谷もこの調子で捻くれた根性の更生と腐った目の矯正に努めたまえ。では、私は戻る。君達も下校時間までには帰りたまえ」
「ちょっと待ってください」
「……どうかしたか?」
「何ですか更生って。俺が非行少年みたいじゃないですか。大体ここ、何なんですか?」
非行どころか、むしろ俺ほどこの学校で害のない人間はいないだろう。……あっ、俺、喰種だった。
「雪ノ下は君に説明してなっかたか。この部の目的は端的に言ってしまえば自己改革を促し、悩みを解決することだ。簡単に言えば精神と時の部屋だと思えばいい。それとも少女革命ウテナと言った方が分かりやすいか?」
いや、どっちも分かりにくい。あとアラサーだったのか……。
「雪ノ下。どうやら比企谷の更生にてこずっているようだな」
「本人が問題点を自覚していないだけです」
また勝手に俺の事を何も知らずに俺を評価するお前ら屑の説教は聞き飽きた。
「さっきから俺の更生だの変革だの改革だの好き勝手盛り上がってくれていますけど、別に俺は求めてないんですけど」
「ふむ?」
「……何を言ってるの?あなたは変わらないと社会的に不味いレベルよ」
俺は別に社会的に死んでも喰種だから肉さえ食えれば生きていける。
「傍から見ればあなたの人間性は著しく劣っているのよ?自分を変えたいとは思わないの?向上心が無いのかしら妄想谷君」
……限界だ。俺の事を何も知らずに勝手な先入観と思い込みで俺を社会不適合者と決めつけるてくる、この人格破綻者共に対する怒りは堪忍袋の緒が切れるレベルに達している。理性で怒りを押させるのが馬鹿々々しくなってきた。もうこの怒りをこいつら屑にぶちまけてる。
「別にそんなんじゃねえよ。大体、変わるだ変わらないだ何も知らない他人に俺の『自分』を語られたくない。そもそも他人に言われたくらいで変わる自分が『自分』といえるのか?」
「自分を客観視出来ないだけでしょう。あなたのそれはただ逃げているだけ。変わらなければ前には進めないわ」
「確かに変わらなければ前には進めないだろう。だが変わったとしても必ずしも前に進めるとは限らない。それに俺は今の現状に満足している。わざわざ変わる必要性なんてないだろ」
「それは詭弁だわ。論点をずらさないでちょうだい」
雪ノ下はどうやら自分が絶対正しいとでも思っているのか、俺の意見に文句を付けてきた。だが、この程度で屈する俺ではない。
「俺の考えを詭弁と言うならお前の考えも詭弁だ。そもそも俺が自分で変わる必要が無いと判断しているのに、何も知らない赤の他人のお前が俺に変われと言う。ふざけるなよ。他人に言われたくらいで変わる自分が『自分』なわけねえだろ‼」
「……それじゃあ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない!」
「さっきも言ったろ。俺は今の現状に満足している。別に何も悩んでいない。それにお前みたいなエゴイストに誰も救いを求めねえよ」
俺の言葉を聞いた雪ノ下は親の仇にでも会ったかのように俺を睨み付ける。
何も反論できない屈辱を味わうのは。俺はお前に勝手に『自分』を語られ否定した。そんな奴に誰も付いて行かないし、誰も救いを求めない。
「面白いことになってきたな。私はこういう展開が好きなんだ。古来よりお互いの正義がぶつかった時は勝負で決するのが少年漫画の習わし……」
「黙れよ。このアラサー独身女」
「ぐはっ⁉︎」
アラサー独身女はショックで半泣き状態になっている。
勝手に『自分』を語られ馬鹿にされる気分は。俺はあんたみたいに勝手な自分の思い込みで人間性が劣っていると決めつける奴が一番嫌いだ。
「ようは俺と雪ノ下で勝負をするという事だろ。平塚先生」
「ぐすっ……。ま、まあそういう事だ」
平塚は案外立ち直りが早く、俺の質問に答える。
「詳しいルールを教えてください」
「うむ。奉仕部には依頼人が相談をしに来る。その依頼者の悩みを解決する。基準は私の偏見で決める」
なるほど平塚の偏見で決められるのは少し癪だが内容は分かった。しかし、この勝負を受けるメリットが無い。
「ちなみに勝った方が負けた方になんでも命令できる」
「なんでも命令できるか……」
俺は雪ノ下の方を見る。すると雪ノ下は二メートル程後ずさり、自分の体を抱える防御態勢に入っていた。
「この男が相手だと貞操の危機を感じるのでお断りします」
「心配するなよ雪ノ下。そんな卑猥な命令はしない。ただ……
屋上から飛び降りろとかならするかもな」
ニヤリと笑いながら雪ノ下にそう答えた。当の雪ノ下はビクッと怯えている。
「なんだ、今更怖じ気付いてんのか? あれだけ大口を叩いておいていざという時に何も出来ないのか? 鉄板胸の猿ノ下さんよ」
俺にそう言われたのが悔しかったのか、雪ノ下はむっとした表情になる。
「……いいでしょう。あなたの安い挑発に乗るのは少しばかり癪だけど、受けて立つわ。ついでにあなたの事処理してあげるわ」
「じゃあ決まりだな。平塚先生、俺はこの辺で失礼します」
俺は平塚にそう告げるて鞄を持ち教室から足早に去った。この時の俺の心境は奴らに一泡吹かせてやったという思いと、
――『これからどうしよう……』という後悔の念であった。
雪乃ファンの皆様ごめんなさい。