やはり喰種の俺が青春ラブコメをするのはまちがっている。 作:Daiki0426
八幡side
昼休みの教室で俺は調理実習をサボった罰としてレポートを書いている。なぜサボったのかは、複数で料理をするからだ。料理をする以上作った料理は食べなければならない。無論、俺は喰種であるため食べることは出来ず、作った料理は捨てざるを得ない。
しかし、それはあくまでも一人のときだけだ。複数では捨てる隙がなく強制的に食べざるを得ない。勿論、後で吐けば問題ないのだが、食器の後片付け等で吐く暇がなく酷い吐き気に襲われ最悪の場合は吐いてしまう恐れがある。そんなことをしてしまったら、クラス中の冷たい目で見られ『ゲロタニ』と呼ばれることは明白だ。
他にも調理実習を抜け出すという手もあるが、抜け出せば同じ班のメンバーからサボったとされクラス中から軽蔑の目で『サボりタニ』と呼ばれるだろう。
そんなことにならない為に俺は最初からサボることにした。最初からサボればそんなことは指摘されず尚且つ食べる必要もない。まさしく一石二鳥とはこのことである。しかし、鶴見先生にサボった事が露見し、レポートを書く破目になった。まぁどんな理由があろうと俺がサボったのが悪いし、レポートを書く程度で済ませてくれた鶴見先生には感謝して、真面目にレポートを書くのが道理だろう。
「ふー終わった」
俺は書き終わりレポートを鶴見先生に提出しに行った。
「あら八幡君、もう書けたの?」
「まあ、先生には迷惑ばかりかけてますからね。このくらいは真面目にやっておこうと思いまして」
「ふふ、そう、ありがとうね」
「それはどうも」
俺はそう言って職員室を後にした。
鶴見先生は家庭科の先生で、よく生徒の相談に乗るしまさしく教師の理想像である。あの糞独神と違って暴力どころか小煩く怒らない。まぁ、多少厳しい所もあるがそれも優しさだと俺は思う。まぁ、平塚が屑すぎるだけかもな。
俺はそう思いながら教室で次の授業の準備をしていた。
******
放課後になり俺は奉仕部の部室に行こうと歩いていた。部室に行ったら雪ノ下に罵倒されるだろうなと考えていると、平塚が何故か少し怒った様子で近づいてきた。
「比企谷。今すぐ職員室に来い」
おいおい、周りの奴らが怖がっているだろ。しかも、此奴何で怒ってるんだ?
俺は平塚と共に職員室に入った。職員室に入ると平塚は俺をなぜか鶴見先生の所に連行した。
「八幡君、どうかしたの?」
どうやら鶴見先生にも分からないらしい。すると平塚がとんでもない事を俺に言った。
「比企谷。鶴見先生に謝れ!」
「「へっ?」」
俺と鶴見先生は平塚の言った言葉に目を見合わせた。確かにサボったことについては謝らなければいけないことであるが、ここまで怒る必要性はないし、それにこの件は既に解決済みだ。鶴見先生も何を言っているのがわからない様子だ。
「お前はレポートにロクでもないことを書いたんだろう。鶴見先生が困っていたぞ」
えっ! そんなにひどいことを書いたのか? 俺はこのレポートを真面目に書いたんだが、少なくとも以前書いた作文よりはマシだと思っていたんだが……。
「どうせお前のことだ。『薄っぺらい奴ほど人に影響されやすいのと同様、薄く切ったほうが味がよくしみる』とか書いたんだろ!」
……こいつ、やっぱり俺のレポートを見ずにこんなことを言っているのか。数日前の教訓を忘れていなら本当に救いようのない奴だ。
「さあ比企谷。鶴見先生に謝ま――」
「それは違います、平塚先生」
内心、怒り心頭の俺より先に鶴見先生が言った。ふっ、独神よ。鶴見先生のおかげで命だけは助かったな。命だけは……。
「そ、それはどういう事でしょうか?」
「八幡君はしっかりレポートを書いてくれました。平塚先生はそれをよく見ずに、一方的に八幡君を悪と決めつけるのはどうかと思うのですが」
「だ、だが比企谷のレポートをずっと見ていたでしょう」
「それは平塚先生の早とちりです。私は八幡君のレポートが良く出来ていたから、ずっと見ていたんですよ」
よくぞ言ってくれました鶴見先生。しかし、これは不味いことになったな。俺なんかのせいで鶴見先生と独神の仲が気まずくなるのは否めない。仕方がないが、平塚の意識を鶴見先生から俺に向けるか。
「で、この落とし前はどうつけるんですか平塚先生?」
「そ、それは」
「大体あんたさ、前からも持ってたけどさ。人の事をよく調べずに先入観だけで人の『存在』を語るなよ」
「くっ」
こいつの思い込みはもはや病気の域だ。ここ数日間で学習しなかったらはっきり言って教師を辞めたほうがいいだろう。まあどうせこいつは何言っても意味がなさそうだから精神的に潰すか。
「だからあんたは何やっても上手くいかないんだよ、結婚とか結婚とか結婚とか」
「ぐはっ⁉︎」
ふっ、ざまあみろ。本当はボイスレコーダーで録音してあるが、提出したらしたらで面倒になりそうだから結局やらない事にした。
「ぐす、何で結婚できないんだ……」
「……八幡君やりすぎじゃないの」
「いいんですよ鶴見先生。このアラサー独身教師にはこのくらいやらないと意味が無いですよ」
鶴見先生は平塚に憐みの目を向けるが俺はそんなものは一切向けるつもりはない。むしろ一生結婚できないように呪いを掛けるまである。
「それじゃ鶴見先生。俺は部活があるんで後はよろしくお願いします」
「わかったわ。頑張ってね」
鶴見先生にだけ独神を任せるのは心苦しいが、ただでさえ遅れているんだ。これ以上遅れると雪ノ下の罵倒がひどくなり、俺の心理的ストレスが悪化する。
俺はそのまま職員室を出て部室に向かった。
******
俺が奉仕部に強制入部してから早四日、俺は雪ノ下から距離をとった場所に椅子を持ってきて腰を掛けて、鞄から取り出し本を読む事にした。
今更だが肝心の依頼人はいっこうに来ない。もはやこの部活は文芸部といっても差し支えないような状態になっている。結局のところ勝負とは何だったのか?
そんな事を考えていると扉の方からノックの音が聞こえた。平塚はノックをしないから消去法的に依頼人であろう。
「どうぞ」
「し、失礼しまーす」
雪ノ下の声に促されて一人の女が入ってきた。まるで誰かに見られるのが嫌なような行動だが、むしろ目立っている。見られることを嫌う喰種でもそんな行動はしない。
それにしても、この女はビッチみたいな奴だ。普通に校則違反な格好をしている。独神も俺よりこいつみたいな奴を指導しろよ。
そんな事を考えていると女は俺を見て驚愕といった表情をした。
「なっ何でヒッキーがここに居んのよ」
「それはここの部員だからだ」
そんなことより、ヒッキーって俺のことか。あと、その前にこいつ誰? 俺は知らない奴に、引き篭もり呼ばれされてるのか……。
「まぁ、とにかく座ってくれ」
「あっありがとう」
取りあえず俺は女に椅子を出す。
この女がどこの馬の骨かな知らんが、依頼人ならばある程度友好的に接することで事が上手く進めるようにするのが得策であろう。
「由比ヶ浜結衣さん、ね」
「あ、あたしのこと知ってるんだ」
どうやら雪ノ下に名前を覚えてもらっていることが彼女にとってのステイタスらしい。まぁ、雪ノ下は成績優秀の生徒で周りからの評判もいいからな。実態は人を見下し、罵倒し、洗脳しようとする独裁者系ナルシスト人格破綻者だが(笑)。
「勿論、私は全校生徒の名前を憶えているわ。……あっごめんなさい。訂正するわ。そこに居る目の腐った男の名前は覚えられなかったわ。別にそう落ち込まなくてもいいのよ比企谷君。寧ろ、これは私のミスよ。あなたの矮小さに目もくれなかった事が原因だし、何よりあなたの存在からつい目を逸らしたくなってしまった私の心の弱さが悪いのよ」
よくそんな長ったらしい罵倒が直ぐに思いつくな……。
「何か……楽しそうな部活だね」
……この女は馬鹿なのか? 今の罵倒発言を聞いて楽しそうに思えるなんて、虐めの加害者か何か?
「別に愉快ではないけれど……。寧ろその勘違いがひどく不愉快だわ」
雪ノ下が冷ややかな視線を送っているが、それについては同感だ。こんな奴と一緒とか死んでも嫌だ。
「あ、いやなんていうか凄く自然だなって思っただけだからっ!ほら、そのー、ヒッキーもクラスに居る時と全然違うし。ちゃんと喋るんだーとか思って」
いや、喋るよ。ただ喋る相手がいないだけだ……。
「そういえばそうだったわ。由比ヶ浜さんもF組だったわね」
「え、そうなのか? ……あっ」
「まさかとは思うけど、知らなかったの?」
雪ノ下の言葉に由比ヶ浜が反応する。
不味いな。一気に依頼内容を聞いて解決する予定が友好関係を築く所でつまずくとは……。取り敢えず誤魔化すことにした。
「いや、知ってるぞ」
「じゃあ、由比ヶ浜さんお誕生日は知ってるの?」
そんなこと知るか‼ 大体同じクラスでも誕生日を知らない奴なんていくらでもいるぞ。……多分。
「……そんなんだから、ヒッキー、クラスに友達いないんじゃないの?」
由比ヶ浜の馬鹿を見るような視線が俺を貫く。
ああ、この視線は覚えがあるわ。確かクラスの雌豚共がこんな汚物を見るような目で時々俺を見る。
あと、此奴は確かサッカー部なんかがつるんで出来た、F組最上位カーストに位置づけられるグループ、通称『葉山グループ』に属する奴の一人だ。こんな奴の心配なんかしていた俺が馬鹿だった。
こいつも雪ノ下や平塚同様俺の敵だ。
「一応言っておくが、確かにクラスには友達がいないが友達は居るし、よく話す知人はクラスにも居るぞ」
「は、ヒッキーに友達なんていないでしょ。嘘は良くないよ」
やはり此奴も先入観と思い込みだけで人を語るタイプか。ならば俺も先入観と思い込みでお前を語ってやる。
「あまり先入観と思い込みで人を語るなよ。この校則違反糞ビッチが」
「びっビッチって何よっ! あたしはまだ処――う、うわわ! な、何でもないっ!」
……どうやらただの阿呆のようだ。
由比ヶ浜は顔を真っ赤にして慌てふためいている。まあ、異性がいる時に話すような内容じゃないから当然か。
「別に恥ずかしいことではないでしょう。この年でヴァージ――」
「わーわーわー! ちょっと何言ってんの⁉︎ 高二でまだとか恥ずかしいよ! 雪ノ下さん、女子力足んないんじゃないの⁉︎」
「……くだらない価値観ね」
確かにくだらないが女子力が足りないのは確かだぞ雪ノ下さん(笑)。普通は堂々と『ヴァージ――』とか暴露しないし、社会的に異端な俺でも他人に童貞とか言わないぞ。
「にしても、女子力って単語は結構ビッチみたいだな」
「また言った! 人をビッチ呼ばわりとかマジありえない! ヒッキー、マジでキモい!」
「別にお前に言ったわけではないんだが、俺の言った言葉に反応している時点でお前のビッチくしさが増してるぞ。あと、ビッチ呼ばわりと俺のキモさは関係ないぞ、ビッチモドキ」
「こっの……っ! ほんとウザい! っつーかマジきもい! 死ねば?」
……この世には言っていい言葉と悪い言葉がある。少なくとも心の底からそう思っているなら仕方がないが、先程ビッチモドキが言った言葉は軽はずみで言っていい言葉ではない。
やはりストレスが溜まっているのか、俺の沸点が低くなっているよだ。
「……人に軽々しく死ねとか殺すとか言ってんじゃねえよ‼︎ それで人が死んだらお前はどう責任を取るつもりだ。あぁ‼︎」
「ひっ――ごっごめんなさい。あっあたしそういうつもりじゃ……」
どうやら根は悪い奴ではないらしい。……思い返せば結構大人気ないことをしたな。まぁ、謝ってくれたし、俺も言いすぎたから謝るか。
「いや、俺の方こそ言い過ぎ――」
「か弱い女の子に怒鳴り散らすなんて最低ね、怒鳴り谷君」
……お前はどこのイヤミ課長だ。『はい、論破!』とかしないと落ち着かないわけ?
「それより本題に入って貰えないかしら」
「……あのさ、平塚先生から聞いたんだけど、ここって生徒のお願いを叶えてくれるんだよね」
何となくだが違うような感じがするんだが……。あと、この部活は独神がサボりたいが為に作ったような気がするのは気のせいか?
「それは少し違うかしら。あくまで奉仕部は手助けをするだけ。願いが叶うかどうかはあなた次第」
「どう違うの?」
やはり阿保だな此奴。阿保な由比ヶ浜の為に、ここで雪ノ下が説明しよとするがそうはさせない。
「飢えた人に――」
「要は魚をあげるか魚の釣り方を教えるかの違いだ」
「あー、それなら解るよ。ありがとね、ヒッキー!」
どうやら理解してくれた様だ。雪ノ下は俺が雪ノ下の話を遮って話したことに怒っているようだが、俺が由比ヶ浜に謝ろうとしたときに遮った挙句、罵倒してきたのはお前だ。つまりおまえ自身の自業自得、ざまーみろ(笑)。
「ところでお前の相談は何なんだ?」
「あのあの、あのね、クッキーを……」
言いかけた所で俺の顔をちらっと見る。どうやら俺が居たら話せないような内容らしい。ここは雪ノ下に任せて俺は時間を潰すのが賢明だ。
「雪ノ下。ちょっと飲み物買ってくるわ」
「私は『野菜生活100いちごヨーグルトミック――」
雪ノ下がそう言い切る前に俺は部室から出た。あいつ、人をナチュラルにパシろうとするとか、どんだけ俺を見下してんの? 正直引くわ。
俺は自販機に向かって歩みを進めた。
平塚先生のファンの皆様すみません。
鶴見先生は原作では存在しか語られていないため、ほぼオリキャラです。ちなみに喰種です。
それと投稿の件ですが、この調子だと恐らく今回よりも遅くなる可能性が高いです。
読者の皆様は今後とも宜しくお願いします。