やはり喰種の俺が青春ラブコメをするのはまちがっている。 作:Daiki0426
八幡side
時計の針が十二時なった。本来ならバイトのために寝ている時間だ。しかし、今日は俺たち喰種にとって大事な集会がある。俺の家からは俺と親父が参加することになっているがその親父が未だにトイレから出てこない。
少々心配になった俺はおそるおそるトイレを覗いた。すると親父がトイレの床で気絶していた。おそらく由比ヶ浜のクッキーを食べて吐いたときにそのまま気絶してしまったのだろう。
このまま目覚めるのを待っていているのも悪くないが集会に遅れてしまっては元の子もないので、とりあえず腹部に蹴りを食らわした。
「グフッ⁉︎」
親父は腹部の痛みで起きた。だが少し強くし過ぎたか親父は腹部を抑えながら恨むような目で俺を見た。
「よう、やっと起きたか親父」
「む、息子よ。もっと優しく起こしてくれても良かっただろ」
「仕方がないだろ。こうでもしないと集会に遅れちまうからな」
「集会? ……しまった! 八幡、今何時だ?」
「十二時五分だ」
「何! ちょっと俺風呂入ってくるから集会に行く準備をしてくれ」
「あいよ」
親父はゲロまみれの体を洗うために風呂場に向かった。俺は集会にいるメモ用紙とシャーペンを用意する。ついでに親父の服を風呂場の投げておく。
さて、これで準備は万端だ。後は親父が出るのを待つだけだ。
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「何か言いたいことはあるか親父?」
「い、いえ全くもってこの比企谷
この男は比企谷稲荷。基本的に駄目な男で俺の親父だ。この状況は親父が土下座をしてそれを俺が見下している。理由は親父は集会に遅刻しそうなのに二十分以上も風呂に入っていからだ。長風呂は勘弁してほしいものだ。
まあ、これ以上の説教は本当に集会に遅刻しかねないし、親父も反省しているようだからこの辺で勘弁しとくか。
「それよりも走らないと本当に遅刻するぞ」
「ああ、じゃあ集会の場所まで競争するか!」
「おい! ってもういないし……」
親父はすでに玄関で小走りに『もたもたするな』と言わんばかりにしていた。
あんな奴に負けるのはさすがの俺もムカつくからその誘いに乗り親父の後を追った。
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「酷い目にあった……」
「全くもって同感だよ親父」
いやまさか競争していたら警官に親子揃って職質を受ける羽目になるとは……。いや、まあ、深夜に二人で競争している方がおかしいんだけど。
おかげで集会の時間には完全に遅刻だ。
「ところで八幡。ジジイから聞いたんだが最近帰ってくるのが遅いらしいな」
そういや親父と爺ちゃんには話してなかったな。まあ、話したところでどうにかなるものでもないんだがな。
しかし聞かれた以上は話す必要があるので、とりあえず一連の話を説明した。
「……八幡、お前……部活に入ったのか?」
「驚くとこそこかよ! まあ、部活に入ったつっても強制入部だが」
俺は親父に入部した件や雪ノ下と平塚のことを言った。
どうせ親父のことだから『馬鹿だなぁ』とか言われるんだろうなと思う。だが親父から返ってきた言葉は普段の親父からは想像できない言葉だった。
「ああ、お前の言うその教師はとんでもない奴っていうのは分かった。それでどうする? 始末するなら協力するが」
……まさか親父からそんな言葉が出てくるとは。いちおう親父の考えはある程度、把握していたがこのような言葉が返ってきたのは記憶している限りでは一度もなかった筈だ。
そしてその言葉に少し喜びを感じている自分がいることに少しは動揺した。
「俺もそうしたいのはやまやまなんだが部活には雪ノ下の奴がいる。下手に動けば勘づかれて俺たちがやられる」
平塚を殺すだけなら俺一人でもできるが雪ノ下に勘づかれれば俺たちが一家共倒れだ。だが俺一人が耐えればそんなことは起きないだろうし、上手くいけば雪ノ下の連中の動向も知ることができる。
「まあ、脅迫体罰独身教師に人に自分の正義を押し付ける同級生とはお前も大変だな」
全くだ、この世にあそこまで精神のイカれた奴が集まるとは世も末だ。総武高校は学力が高いだけで実際は喰種以上にイカれた人間の集まりじゃないのかと思うぞ。ホント学校行きたくねえな。
「まあなんだ、困ったことがあったら教えてくれ。微力ながら力になるぞ」
親父は恥ずかしそうにそう言った。
普段は休日にぐうたらしてる奴で寝てばかりの親父がこのような言葉を俺にかけるとは今までほとんどなかった。だからこそ俺は親父にこう言おう。
「親父が……優しいだと……⁉︎」
「おい八幡、それどういう意味だ⁉︎ 普段のお前は俺をどんな目で見てんだよ!」
「強いて言うなら息子から金を媚びてパチンコ行った挙句大損して、血酒飲んで酔っ払ってリビングで嘔吐して後処理せずにそのまま寝るダメ喰種の中のダメ喰種」
「そこまで言うか!」
「いや俺の中の親父像をそのまま言っただけ、というよりも普段の親父の行動をそのまま言っただけなんだが……」
「なん、だと……⁉︎」
そう言って親父は地面に膝をついた。
あーこうなるとしばらく動かないから面倒くさくてしょうがない。遅刻確定だなと思いながら絶望している親父の姿を見ていた。
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「ずいぶん遅かったですね。比企谷さん」
「「すみませんでした」」
集会の場所について
大町さんはこの地区のリーダーで喰種たちの相談事に付き合ってくれて、更にあのろくでなし親父の友達らしい。
しかしそんな大町さんでも一時間の遅刻は許してもらえないらしい。(親父だけ)
「いやしかし
「問答無用!」
「ひぃっ」
あーこうなると説教が長いからな。というか遅刻すると毎回こんな感じだ。あと親父よ、こうなる事が分かっているなら長風呂すんなよ。
「じゃあ伏見さん、俺は先に中に入っているんで」
「おう。俺はこいつを絞めとくから」
「お、おい八幡まっ――」
親父がなんか言ってるような気がするが知らん知らん。
集会場の中に入るとすでに喰種たちが集まっていた。後できれば俺を睨まないでほしい。いくら目が濁っているからって遅刻したのは親父のせいだ。
よく見ると教員を含めた総武高の喰種も来ている。ええと海老名さんに本牧、あと厚木先生、他にも色々いたが名前は知らん、だって俺ぼっちだし。
しかし俺の知り合いの義輝と川崎が来ていない。川崎に関しては何かしらの事情があるのだろうが、義輝には集会以上に大事な用はないはずだ。何かしらの事件に巻き込まれていないといいが……。
そんな事を考えているとあいつがやってきた。俺に川崎のことを相談しに来た川崎の弟の川崎――
「今日は来るの遅かったっすねお兄さ――」
「お前にお兄さんと呼ばわりされる筋合いはねえ‼︎」
前言撤回、妹に手を出そうとする害虫『タイシ』だ。
「いきなり大きな声出さないでくださいよ、おに――じゃなくて八幡さん」
「お前が変なことを言うからだろ。それでなんの用だ?」
「それは……姉の、ことで」
おどおどしながら大志はそう言った。
大志の奴には申し訳ないが川崎の行動の詳細は何一つわかっていない。川崎のは忠告はしたがあいつがそんな忠告を守るとは思えない。
「あーその……俺も大した成果はなかった」
「そうっすか」
そう言うと大志は少し落ち込んだ様子になった。
はぁ……全く川崎のやつ弟の面倒くらいちゃんと見ろよ。俺が言えることじゃないが川崎の行動はおそらく家族の為なのだろう。しかし、その家族に心配されているようなら元も子もない。
「でも、まあその、お前の姉が頼ってきたら助けてやれよ。俺がどうこう言うことじゃないが、家族だから言えないことってのもあるし本当に困っているんなら俺も助けになるぞ」
「! ……ありがとうございます。姉ちゃんが困ったらそうするっす」
「おう、がんばれよ」
大志は俺に頭を下げてそう言った。
これでいちおう大志の悩みは少しはマシになっただろう。だが川崎が何やっているのかはいぜん謎のままだ。集会に出ないほど優先すべきこととなると……金か。たしか大志によれば川崎の家は金に困っていると言っていた。となるとバイトでもやってるのか?
そんな事を考えていると大志が俺に話しかけてきた。
「そろそろ集会が始まるっすよお兄さん。……あっ!」
……ふっふっふっ、タイシよ。てめえはたったいま俺の敵になった。
そしてこの害虫に向かってあえて俺はこう言おう。
「てめえにお兄さんと呼ばれる筋合いはねえ‼︎ この害虫が‼︎」
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あー恥ずかしかった。まさか俺の声で集会に集まった人たちが一斉に出てくるなんて思わなかった。しかもほとんどの人が『またあいつらかよ』と言わんばかりの目で見てきたから自殺しようかなと軽く思ったわ。
ちなみに親父は大町さんにギッシリ絞られてきたらしく、目が死んでいた。
「それでは今から集会を始める。今日の集会に集まってもらったのは、この地区の喰場が何者かによって荒らされている事件のことだ」
喰場を荒らす行為自体は喰種の多い東京では確認されていたが、それ以外の場所では珍しい。もっとも千葉は東京よりは少ないないが全体的に見れば多い方だ。
だが、ここ最近の喰場を荒らす行為は以前に比べて明らかに多くなった。恐らくアオギリの連中が暴れまわったせいで喰場を失い自分の地区から逃げて来た奴らの仕業だろう。
そう考察していると喰種の一人が大町さんに向かって話しかけた。
「喰場を荒らすなんて飛んでねえことしでかす奴なんて、いっそ殺しちまいましょうよリーダー」
「いや、彼らにもそれなりの事情があるはずだ。とりあえず見つけたら事情を聞いてここに連れて来てくれ。ただし、もし話を聞かないようなら殺しても構わない」
大町さんマジ怖えー、そりゃ親父もビビるわ。
さてと、喰場を荒らしている喰種を始末すれば早く寝れる。いや、ホント明日バイトあるから早く寝たいんだよ。あっ、日とっくに跨いでるから今日か……。
そんな悠長な事を考えていると大町さんからぼっちにとってもっとも非情な宣告を受けた。
「じゃあ、分かれて捜索するからいくつかグループを作ってくれ」
……マジですか。
オリキャラ情報
・比企谷稲荷
八幡と小町の父親で社畜。基本的に家ではだらしない生活をしていて、八幡たちは『普段がんばって働いているから休みの日くらい好きにさせてやろう』と思っているため特に何も言わない。
隻眼の喰種で実力は喰種の中でも最強クラスの実力者。レートについては不明だが、八幡はSSレート以上と推測している。
なお、友達が少ない。
・大町伏見
稲荷の数少ない友人の一人で八幡たちの住む地区のリーダー。積極的に喰種たちの相談に乗ってたり、揉め事を解決したりする人で喰種たちに好かれている。
実力についてはかなり強く、噂ではSSレートに認定されているといわれている。
なお、怒らせると怖く、稲荷はよくボコボコにされる。
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読んでいただきありがとうございます。
次回は多分バトルもあると思いますがバトル物は書いたことがなく、次の投稿に時間がかかると思います。
今後ともよろしくよろしくお願いします。