銀の狐と幻想の少女たち   作:雨宮雪色

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第144話 「鬼を想わば豆をまけ」

 

 

 

 

 

「――月見、私に豆ぶつけてえっ!!」

 

 外の世界であればランドセルを背負っていたとしてもなんらおかしくない女の子が、突然水月苑に突撃してくるなり半泣きでそう叫ぶという有様を、月見は一体どんな顔で受け止めてあげればよいのか。

 

「お願いだよぅ、ぶつけてよぅ。月見ならわかってくれるよねっ……?」

「……」

 

 聞き様によってはなにやらアブナい台詞をひとまず置いておき、月見は努めて冷静に目の前の状況を分析してみる。

 駆け込んできた少女は、伊吹萃香である。

 鬼である。

 涙目の理由はさておいて、豆をぶつけてほしいそうである。

 しかしていま現在は一月の終わり、暦の上ではもう間もなく春の到来であるからして――

 

「……もしかして、節分かい?」

「そう! 節分といえば豆まき、豆まきといえば鬼、そして鬼といえばこの伊吹萃香さっ!」

 

 一際大声で言い放った萃香は、それから両足で畳を粉砕しそうなほど激しい地団駄を踏んだ。今日も今日とてこたつを根城にするぬえが「うるさいなぁ~もぉー……」と抗議の声をあげるも、萃香はまるで聞く耳持たず更に叫ぶ、

 

「ねえ聞いてよっ! 今まではね、博麗神社で毎年節分祭やってたの! 里の人間も呼んでみんなで豆まきして、もちろん私が鬼役でさ! ……なのに霊夢のやつ、今年は豆まきしないっていきなり言い出したんだよ!? こんなひどい話ってある!?」

 

 ふむ、と月見はもう少しばかり事の経緯を推測する。

 まずは幻想郷屈指の大妖怪が、しばらく見ぬ間に豆をぶつけられて快感を覚える被虐趣味に目覚めていたわけではないと確認しておく。あくまで豆まきをやりたいという訴えであり、「豆をぶつけて」は単なる言葉の綾のようだ――たぶん。

 で、その豆まきであるが。

 言うまでもなく来る立春の前日、子どもたちが豆で鬼という名の邪気を祓い、一年の無病息災を祈願するあの豆まきであろう。豆――とりわけ炒った豆には、実際に鬼を退散させる神聖な力が宿るのだ。萃香や勇儀は「我慢すれば平気」程度で済むようだが、たとえば月見が知るもう一人の四天王は、水ぶくれを起こして肌が荒れちゃうからと昔から大の豆嫌いだった。

 そんな鬼にとっては忌々しいはずの豆まきで、萃香がいつも鬼役を買って出ていたというのは純粋な一驚に値した。本物の鬼が豆まきで鬼役を務める――それはそのまま、芝居とはいえ人間に退治されるのをよしとする行為に他ならないのだから。

 確かにかつての鬼は、人間と勝負をするのが好きだった。されども、決して人間に敗北するのが目的だったわけではない。節分は鬼が人間に追い払われると約束された行事であり、はじめから勝負事としては成立し得ない。

 なのに、萃香が泣いてまで悔しがっているのはなぜなのか。なぜ、人間に追い払われることを心から楽しみにしていたのか。節分が現在の形に近づいたのは江戸時代頃と言われており、それより前からずっと外をほっつき歩いてばかりいた月見は、彼女がここまで豆まきにこだわろうとしている理由を知らない。

 だが、想像はできた。

 

「……そうか。節分は、鬼が人間から必要としてもらえる瞬間なんだね」

 

 萃香が、こくんと小さく頷いた。

 人間が節分に豆をまいて追い払うのは、鬼である。豆を構えた子どもたちの前で、大人がお面を被って扮装するのは鬼である。天狗でも河童でも狐でも狸でも、吸血鬼でも幽霊でも妖精でもない。他の妖怪では決して代理が利かず、『鬼』という存在こそ人々から必要とされるのが節分なのだ。

 それは鬼にとってみれば、いまや御伽噺の存在となってしまった自分たちが、他でもない『鬼』として人々と在ることを許される瞬間だったのではないか。

 だから萃香は、本当に心の底から楽しみにしていたのだ。だって彼女は、仲間たちと別れたった独りになってしまっても、それでも地上に残り続けることを選んだ最後の鬼なのだから。

 

「しかし、どうしてまた豆まきをやめるなんて話に?」

 

 萃香はぐすっと鼻をすすり、

 

「最近外の世界じゃ、豆まきじゃなくて恵方巻きとかいうのが流行ってるらしいね」

「ああ……そう言われてみれば、いつの間にかよく見かけるようになったね」

 

 確か、ここ十数年程度の話ではないかと思う。元々関西地方で親しまれていた巻き寿司が、気がつけば『恵方巻き』と名前を変えて全国に広まっていたのは。

 

「恵方を向いて、一言も喋らず一気に食べ切ると願い事が叶うんだって? 霊夢が、早苗とか志弦とかから聞いたみたい。そしたらね、まいた豆を拾う面倒がなくなっていいとか、ただの邪気払いより縁起がいいとか、美味しい物を食べる方が人もいっぱい集まりそうとか、そんなことばっかり言ってさぁ……っ!」

「……それで豆まきはやめて、恵方巻きを食べることにしたと」

「うううぅぅ~……!!」

 

 まこと現金な霊夢らしい。おおかた一人でも多くの人間で神社が賑わいさえすれば、祭りの中身なんて大して問題ではないのだろう。

 しかし、萃香にとってはまったく笑い事ではない。だって豆まきが中止されてしまったら、今の自分に残された鬼としての大切な存在意義が、足元から無残に崩壊してしまうにも等しいのだから。

 どうして萃香が突然半泣きで駆け込んできたのか、完全に納得が行った。

 

「霊夢なんてもう知らないっ!! ねえ月見、お願いだよ。ほんの何人かでいいからさ、なんとかして豆まきできないかなあっ……!」

 

 涙目で頼み込んでくる萃香を、大袈裟だとは思わない。むしろ誰かに泣きついてでも人間と交流したがるその姿には、なかなか感じさせられるものもあったので。

 

「わかった。私がなんとかしよう」

 

 博麗神社で節分祭があるからといって、里の人間がみんないなくなってしまうわけではない。幸い節分まではまだ数日あるから、今から里で知り合いに相談すれば豆まきくらいはなんとでもなるはずだ。

 集まる人数次第では、祭の邪魔をするなと霊夢に怒られるかもしれないけれど。

 まあ、それはそれ。目先の損得にとらわれ友人を悲しませた、ひとつの因果応報と思ってもらうとしよう。

 

「ほ、ほんと!? ほんとにいいの!?」

「ああ。こういうことじゃ嘘は言わんよ」

「そ、そうだよねっ……うう、ありがどうづぐみ゛ぃ~……!」

 

 感極まってずびずび泣きついてくる萃香の背を、そっと撫でてあやしながら。

 

「よしぬえ、お前も手伝え」

「うえーっ!? なんでよめんどくさーい!」

「お前もいい加減、食べて寝る以外になにかしろ」

 

 時折命蓮寺の手伝いに連れ出される以外、ぬえの生活は食べるかゴロゴロするか温泉に入るかのどれかしかない。どこから調達してきたのか今月分の家賃は約束通り払ってくれたが、だからといって好き勝手怠惰の限りを尽くしていい理由にはならないのだ。

 

「ぶーぶー、横暴だぁー。強制労働はんたぁーい」

「……」

 

 畳を両手でペチペチ叩いて不満をあらわにするかたつむり、もといこたつむりを見下ろしながら。

 いっぺん豆をまかれて成敗されるべきは、鬼ではなくこのぐうたら娘ではなかろうか。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 打ち合わせはとんとん拍子で進んだ。元々里でも豆まきをやる計画はあったようで、お前が主催してくれるならとても助かる、と慧音もあっさり二つ返事だった。

 会場をどこにするかもすでに決めていた。里との交流もかねてどうだいと今回の話を持ちかけてみれば、『彼女』は月見が予想していた通り、迷った素振りもなく笑顔ひとつで快諾してくれた。

 

「――白蓮、今日はよろしく」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

 というわけでいよいよ節分当日、月見たちは命蓮寺の境内に集合していた。

 命蓮寺には、僧が日頃の修行を行う場所とされる僧堂がある。修行の場所と書けば神聖で近寄りがたい印象を受けるが、実際のところはいくつかの座敷で仕切られたごく一般的な平屋の建物だ。毎日の修行はもちろん、里人を集めて法話を行ったり、来客の応対をしたりと普段から概ね多目的に使われている。広い上掃除が行き届いていて清潔なので、豆まきの会場としてはまさしくうってつけなのだ。

 白蓮の隣には、正月になってこの寺へ居を移したばかりのナズーリンがいた。元々無縁塚から引っ越しするつもりはなかったようだが、白蓮と星にしつこく手招きされて折れざるを得なかったらしい。まったくいい加減楽をさせてほしいんだがね、と迷惑げに小言を言うナズーリンは――なかなか満更でもなさそうだったと月見は思っている。

 

「ナズーリンも、今日はよろしく」

「こっちのセリフだよ。私は厨房担当だからね、ストッパーは君に任せた」

 

 ナズーリンは月見の背後を一瞥し、

 

「……どうやら、また随分と賑やかになりそうだからね」

 

 さむーい帰りたーいこたつ入りたーいと月見の袖を引きながらぼやくぐうたら娘の、その更に後ろから。

 

「びゃくれんさまー、おじゃましまーす!」

「「「しまーすっ!」」」

「いらっしゃい。みんな、今日は楽しんで行ってね」

 

 博麗神社で節分祭が行われ、本日限りで参道が安全に警備されるといっても、それで実際に山奥の神社まで行けるのは体力豊かな若者や大人たちだけだ。よって今回メインで参加してくれたのは、里の外を歩くにはまだ幼すぎるわんぱくちびっこ軍団だった。

 またお手伝いとして保護者の方々や、何人か年長組に当たる子たちも集まってくれている。これだけ頭数が揃えば豆まきとしては充分すぎるくらいだろう。ふと見てみれば、萃香が僧堂の戸の隙間からこちらを覗いており、その瞳は豆をいっぱいぶつけてもらえる喜びできらきらと輝いていた。

 庫裏(くり)の方から、炒った豆の香りがほのかに漂ってきている。

 

「それじゃあ、中に入って準備しようか」

 

 はーい! と元気いっぱいな子どもたちを引き連れ、ぞろぞろと僧堂に向かう。保護者の方々とはここで別れ、ナズーリンが厨房のある庫裏へと案内してゆく。

 本日のプログラムは至ってシンプルだ。子どもたちが豆まきをしている間に、保護者の方々が伝統的な節分料理を準備。そしてお昼になったらみんなで昼食を取り、一年の無病息災を願っておひらきである。

 僧堂の戸を開けると、すでに萃香の姿はなかった。

 

「星たちはどこかな。ちょっと挨拶してくるよ」

「あ、みんなはこっちの奥の座敷です。……では、私は子どもたちを見ておきますね」

「ああ、頼む」

 

 子どもたちの面倒を白蓮に任せ、月見はぬえを引っ張りながら廊下を進む。ほどなくすると、ひとつだけぴっちりと襖の閉められた座敷があったのですぐにわかった。

 

「入っていいよー」

 

 月見がなにかを言うより先に、中から萃香の声が飛んでくる。おおかた体の一部を霧状にして、今もどこからか月見とぬえを見ているのだろう。

 月見が襖を開けると、

 

「とぉーうっ!」

「ぶ」

 

 萃香の腹がいきなり顔面に飛びついてきた。萃香はそのままもそもそと肩車の体勢に移行し、

 

「いやー、月見ありがとうっ! あんなにいっぱい集めてもらえるなんて嬉しいよ!」

「そりゃあよかった」

 

 座敷では鬼の扮装をした水蜜と一輪、そしていつもより一段とおめかしした星がお茶を飲みながら出番に備えていた。水蜜がゆるく手を挙げ、

 

「おはようございまーす月見さん。今日はよろしくお願いしまーす」

「お願いするのはこっちだよ。今日はよろしくね」

 

 水蜜はこめかみのやや上からちょこんと二本の角を、一輪は額から勇儀のような一本角をつけている。妖怪として人間と交流できるまたとない機会なので、彼女たちにも鬼役として手伝ってもらう予定なのだ。

 一方、星が普段通りの恰好なのは福の神役だからで、一層おめかししているのはこれを機に仏様アピールしたいからである。命蓮寺が開山してから約一ヶ月、彼女は天然だったりドジだったりなにかと頼りないせいで、里人からあまり仏様だと信じてもらえていない。

 して、月見がここまで引きずってきたぬえはといえば。

 

「よーし、四天王最後の一人も揃ったねー。ほら、早く角つけな角」

「なんで私がこんなことしなきゃなんないのよー」

 

 萃香の言う通り、四人目の鬼役として問答無用で働いてもらう。結局豆まきの話が持ち上がってから今日まで、ぬえは変わらぬぐうたら生活を貫いてばかりだった。寝正月はとっくの昔に終わったのだから、月見も少しは心を鬼にするのだ。

 

「ほら、ここまで来たんだから文句言わずにやる。じゃないと今日のおやつは抜きだよ」

「横暴だー! ぶーぶーっ!」

 

 かつて京で伝説となった大妖怪が、どうしてこうも腑抜けになってしまったのか。この少女、やっぱり命蓮寺で居候しながら修行を積む方がよいのではあるまいか。今からでも白蓮に頼み込むべきか月見はだいぶ悩む。

 その場から動こうとしないぬえの腕を掴み、水蜜と一輪が呆れながら引っ張っていく。

 

「あんた、さすがにちょっとぐうたらが過ぎるんじゃないの? 同じ妖怪として情けないわよ」

「そーよ、一輪に言われるって相当よ? こないだだって修行中に居眠ぶぎょ」

「拳骨がほしいの?」

「し、してから言わないでくださいぃ……」

 

 一輪がぬえの頭に角の飾りをつけ始める。しかしぬえはこの期に及んでも自分ではまったく動こうとせず、一輪にされるがままぼーっと姿見の自分を見つめている。星が苦笑し、

 

「ぬえさん、きっと月見さんのお屋敷がすごく居心地がいいんでしょうね」

「……やっぱり、私のせいかな」

「い、いえいえ決してそう言っているわけではなくっ。むしろ大妖怪の心も穏やかにしてしまう素敵なお屋敷だなあと!」

 

 なんにせよ、水月苑での生活が影響しているのは事実なわけで。なんだか居候の娘というより、呑気でふてぶてしい野良猫に居座られているような気分になってきた。

 肩の上の萃香が、指先で月見の耳を弾くように小突いた。

 

「月見ー、向こうはもうすぐ準備できるみたいだよっ」

「了解。じゃあ、私は先に向こうで待ってるよ」

 

 萃香を降ろし、月見はこの僧堂で最も大きな座敷がある方へ向かう。豆まきはそこで行う流れになっている。

 廊下を歩きながら、それにしても、と月見は唸るようなため息をつく。脳裏に浮かんでいるのは、もちろんあのぐうたら娘だった。いい加減彼女のダメ妖怪化に矯正を掛けなければ、いずれ幻想郷にやってくるであろうマミゾウに少々申し訳が立たない。

 余談ながらぬえは、自分がようやく封印から解放されたこと、その後幻想郷で暮らし始めたことを手紙でマミゾウに宛てて出している。無論、幻想郷に月見がおり、自分がその屋敷で居候しているとは伏せたままで。あの手紙を藍が無事届けられるかはわからないが――マミゾウが「狐が持ってきた手紙なんぞ受け取る筋合いもないわ!」と門前払いしかねないという意味で――、受け取ったならば近いうちに幻想郷へ顔を見に来ようとするだろう。

 千年以上の時を経て再会した友人が狐の屋敷で堕落しきっていたとなれば、まあ間違いなく怒りの矛先が向くのは月見のはずだ。マミゾウは人の社会に溶け込んで生きる数少ない妖怪である一方、根本的にはあやかしはあやかしたらんと誇りを秘めた大妖怪でもあるのだから。

 そのときのことを考えれば、いっそぬえを追い出してしまうのが一番安全なのかもしれないが――。

 

「……まあ、しょうがないか」

 

 そこまで鬼になろうとは思わないあたり、私も私なのかもしれないなと、月見は一度だけ尻尾を左右に揺らした。

 

 

 

 

 

「「「鬼はそとーっ!!」」」

「うわっ」

 

 そして月見は豆まみれになった。

 さっきは萃香の腹だったが、今度はちびっこ軍団による豆の集中砲火だった。月見は襖を開けたばかりの恰好で固まり、炒った豆が景気よく床一面に散らばった。

 

「こ、こらっ、月見さんに投げちゃダメでしょ!? 月見さんは鬼じゃないんだから!」

 

 白蓮が慌てて叱りつけるも子どもたちはまったく聞いておらず、「うちとったりー!」と仲良くハイタッチをして喜びあっている。楽しそうでなにより。

 

「申し訳ありません月見さん、私がついていながら……!」

「ああなに、これくらい平気さ。……ほらお前たち、豆まきはこれからなんだから豆を拾って。もうすぐこわーい鬼がやってくるぞ」

 

 こわーい鬼と聞いて、子どもたちはきゃーきゃー歓声をあげながら豆を拾い始めた。

 この僧堂では、間仕切りを取り払うことで最も広い座敷となる部屋だった。どうやら準備はすでに万端のようで、集結したちびっこと年長組はみんな豆がたっぷりと入った枡を持っている。どうやら一部気の早い子たちがいるらしく、月見の足元以外でもちらほらと豆が散らばっているのが見えた。

 このはしゃぎ様を見ればわかる通り、彼女らは今回の豆まきで一人本物の鬼がやってくることを知らない。命蓮寺の面々は正体を明かした上で受け入れられているから例外として、萃香についてはただ月見の友人とだけ説明し、妖怪とも人間とも明言しないようにしている。鬼は今や御伽噺の中だけの存在であり、だからこそ史実の妖怪像が根強く人々に浸透しており、正体を明かせば悪い意味で怖がらせてしまう可能性がないとも言い切れないのだ。

 もっともみんな、まさか鬼とまでは予想せぬも、なんとなく人間ではないのだろうとは感じているのかもしれないが。

 

「さあ、そろそろやってくるよ」

 

 子どもたちが豆を拾い終えたのを、恐らく萃香は部屋のどこかから見ているだろう。案の定ほどなくすると、廊下の向こうからバタバタと元気な駆け足が近づいてきて、襖を開け放った萃香は万歳とともに意気揚々と、

 

「がおーっ!! さあさあ恐れ震」

「「「とりゃ――――――――っ!!」」」

「にょわあああああ――――ッ!?」

 

 始まりの口上を述べるより先に、子どもたちの豆マシンガンが火を噴いた。豆まみれになってひっくり返った萃香は、すぐ起き上がってぷんすか両腕を振り回し、

 

「こらぁ!! 名乗る途中でいきなり攻撃なんてひきょーだぞーっ!!」

「えー」

「なさけむよう」

「けんてきひっさつ」

「あくそくざん」

「どこで覚えてきたのそんな言葉!? ……あっちょっと待って待って、少しくらいいーじゃん一生懸命考えてきたんだからーっ!?」

 

 さすがは幻想郷式豆まき、初っ端からアクセル全開である。

 登場するタイミングを完全に見失った水蜜たちが、襖の向こうから顔を覗かせちらちらと月見へ目配せしてきている。なので月見は子どもたちの前に割って入り、

 

「ほらほら、せっかくだから言わせてあげようじゃないか。一生懸命考えてきたんだってさ」

「「「はーい」」」

「……なんで月見の言うことはあっさり聞くかなあ?」

 

 萃香は服の中まで入った豆を不服げにしながら取り除き、しかしすぐに明るく表情を切り替えて、

 

「じゃあ、登場するとこからやり直すから!」

「そこからか」

「そこからだよもちろんっ。今度は終わるまで投げないでよ!」

 

 襖が閉まる。こほんと咳払いする音が聞こえる。それから再び襖がすぱーんと飛び、

 

「がおーっ!! さあさあ恐れ震えて我が名を聞けえ! 泣く子も黙る鬼の四天王が一、伊吹萃香ここに推参っ!」

 

 萃香は、傍目で見ていてもものすごく楽しそうだった。こうして人間の前で堂々と口上を述べる機会も、今となっては年に一度の節分だけなのだろう。楽しさのあまりぴょんぴょん飛び跳ねながら、

 

「今日は私の仲間も来ているぞっ。お前たち、出てこーい!」

 

 萃香の合図を受け、水蜜たちがようやく襖の陰から飛び出す。

 

「はーい、村紗水蜜でーす! 悪い子は食べちゃいますよーっ!」

「く、雲居一輪……えーと、お手柔らかにお願いね」

「正体不明の大妖怪、封獣ぬえ様とは私のことだぁー! ぅがおー!」

 

 水蜜は萃香に負けず劣らずノリノリで、一輪はこの手の演技に慣れていないのかやや恥ずかしそうで、ぬえは多少はやる気が出てきたらしくなかなか悪くない口上だった。最後に、三人が名乗り終えたところを萃香が締める。

 

「我ら鬼の四天王が、お前たちの相手をしてやろう! 勝負だあっ!」

 

 一生懸命考えた口上が無事終わり、五秒ほど間があって、

 

「あ、もう豆投げていいよ」

「「「とりゃあ――――――――っ!!」」」

「「「んあ゛ぁ――――――――ッ!?」」」

 

 一気に大騒ぎになった。解き放たれたちびっこ軍団は狼のごとく機敏な動きで四天王に襲いかかり、豆で山盛りになった枡から怒涛の一斉攻撃を開始する。

 

「なさけむよう!」

「けんてきひっさつ!」

「あくそくざん!」

「「「鬼はそと――――っ!!」」」

 

 これに対し、四天王の反応は二つに分かれた。すなわち片や真正面から受けて立つ萃香と水蜜、片や予想外の勢いに狼狽する一輪とぬえであり、

 

「まだまだー!! そんなんじゃ鬼は退治できないぞおーっ!!」

「そうですよそうですよ、もっとぶつけてこおーい!!」

「いたたた!? ちょっと、お手柔らかにって言ったたたたたぁっ!?」

「あっちょ、か、顔はダメだって! 顔狙うのはやめろおーっ!?」

 

 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)阿鼻叫喚(あびきょうかん)とはまさにこのことか。

 とはいえ、はじめから予想できていたことなので特に驚きも戸惑いもない。それどころか、今日もみんな元気でなによりだと安心している自分すらいた。幻想郷ではこれがいつもの光景です。

 やや遅れて、年長組の少女たちも豆を投げ始めたので。

 

「ほら、白蓮も一緒にまいたらどうだい」

 

 怒涛の勢いでエキサイトする子どもたちについていけず、白蓮が早速蚊帳の外になってしまっておろおろしていた。子どもたちと同じ枡を持っている通り、彼女も人生初の豆まきを体験しようとしていたのだが、

 

「ま、豆まきって……なんていうか、こういうものなんですか?」

 

 言いたいことはなんとなくわかる。けれど月見は頷き、

 

「幻想郷ではこういうものさ。さあ、思いっきりやってごらん」

「……わ、わかりましたっ」

 

 白蓮が枡から豆をひと掴み握る。さすがに萃香をいきなり狙うのは気が引けたか、まずは一番近くの水蜜を相手にやってみるようだ。後ろに振り被って、ふんすっと気合一発、

 

「鬼は……そとおっ!」

「ぶ」

 

 放たれた豆は空を切り裂く幾筋もの剛速球と化し、水蜜の体にやや情け容赦なくめり込んだ。気がした。

 ぎょわはー!? と水蜜が変な悲鳴を上げてひっくり返る。すかさず周りの子どもたちが水蜜を取り囲み、

 

「びゃくれんさますごい!」

「今がチャンス!」

「たたみかけろーっ!」

「「「あちょ――――――――っ!!」」」

 

 ふぎゃああああああああああああああああああ。

 濃厚な豆のシャワーを浴びせられ、ムラサ船長は英霊となった。

 

「ちいっ、一人やられたか! だがやつは鬼の四天王の中でも最弱! 迎え撃てーっ!」

「これ私が知ってる豆まきじゃないんだけどおおおおお!?」

「だから顔はやめっうひゃあああああめっちゃ服の中入ってくるううううう!?」

 

 結果、カオスが二割増しくらいになった。

 白蓮が気まずさと恥ずかしさを半々織り交ぜた表情で、一生懸命月見を見たり見なかったりしている。なにかコメントを求められている気がした月見は一言、

 

「さすが白蓮」

「お、お父――月見さんが思いっきりやれって言ったんじゃないですか!? 『さすが』ってどういう意味ですか!?」

「豆は『魔』を『滅』するという語呂合わせで鬼を祓うものであって、物理的な威力で倒してしまうのはお前くらいだろうと」

「わ、私は普通に投げただけですもんっ!!」

 

 この少女、昔から身体強化の魔法を得意とする上に、長年魔界に封印されていた影響なのか、魔力の純度が高まって身体能力を大きく向上させているのだ。現在は素の状態ですら平均的な男性以上だし、身体強化を遺憾なく発動すれば拳骨一発で妖怪をも仕留める。そのため命蓮寺では、白蓮の怒りを買うのが最も恐ろしい愚行であるとされている。

 嘘か真か、お寺の鐘を素手で叩いて鳴らせたとか。

 さて、水蜜が英霊となったことでちびっこたちの驀進(ばくしん)はますますヒートアップしている。一輪もぬえも座敷の隅っこまで追い詰められ、ビシビシと絶え間なく豆をぶつけられて涙目になっている。萃香ただ一人だけが、「うーん、やっぱりこの痛痒さがなんとも……さーどんどんぶつけてこーい!」と少々おかしな方向に悦びを爆発させている。あまり深く考えないでおこうと月見は思う。

 

「――皆さん、お待たせしましたっ!」

 

 そのとき、高らかに声をあげ星が座敷へ飛び込んできた。錫杖を片手にした彼女はその場でむふーっと得意げに胸を反らし、

 

「私が福の神ですよっ。さあ皆さん、『福は内』って言いながら私を部屋の中に」

「「「鬼はそとお――――っ!!」」」

「ひええええええええええ!?」

 

 もちろん、次なる獲物を見つけたちびっこ砲が即座に襲いかかった。

 

「ちちちっ違いますわたし福の神、福の神ですってば!? 『鬼は外』じゃなくて『福は内』ですーっ!!」

「えーそうなのー?」

「てかお花畑のおねえちゃんって、ほんとに神様なのー?」

「あやしい」

「神様はもっとかりすまがあるとおもう」

「ふえええん!!」

 

 豆まきといえばとかく鬼というイメージばかりが強く語り継がれているけれど、実はその陰に隠れて毘沙門天と深い関わりがある行事ともされている。豆まき発祥の地とされる京都は鞍馬にて、毘沙門天のお告げにより豆で鬼を追い払ったという伝説が残されているのだ。なので代理とはえい毘沙門天たる星こそが福の神にふさわしかろうとなったのだが――まあ、こういう扱いになってしまうあたりはさすがというべきなのだろうか。

 と、

 

「……ふ、ふくはうちー」

「ん?」

 

 白蓮が豆を四粒ほど、打って変わってとてもしおらしく月見の袖にぶつけてきた。いきなりどうしたのかと月見が疑問符を浮かべていると、白蓮は三拍ほど置いてから一気に湯気を噴いて、

 

「な、なななっなんでもないです!? では私、もう少しまいてきますねっ!」

「あ、おい」

 

 あっという間に踵を返し、萃香のところへ残りの豆をぶつけに行ってしまった。早速剛速球を食らった萃香が「いだぁい!?」と悲鳴をあげるも、

 

「あっ、でもこんくらい強めも結構悪くないかも……」

 

 月見は聞こえなかったことにした。

 かくして、豆まきは制御不能の乱痴気騒ぎへと発展していく。止まらないちびっこ軍団、暴走気味で剛速球を投げまくる白蓮、だんだん変な方向に悦び始めている萃香、袋叩きにされている一輪とぬえ、英霊となった水蜜、「わたし福の神なのにいいいいい」と涙目な星、飛び散る豆、豆、豆。

 一輪のところから雲山がふよふよと避難してくる。そんな彼はわたあめサイズより更にひと回り小さくなり、「老骨には少々沁みるわい……」と言うが如く渋みのある顔をしていたので。

 

「……とりあえず、豆を掃除しようか」

 

 壁に立てかけてあったほうきを二本、月見は手に取る。

 妖怪であっても人間であっても、子どもが放つ無限のエネルギーとはかくも最強なのである。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 山門をくぐる前から、ドタバタぎゃーぎゃーと大変賑やかな喧騒が聞こえてくる。あいかわらずだと思いながら命蓮寺の境内へ足を踏み入れると、子どもたちの元気すぎる跳ね回り様とは対照的に、見物に来ている大人は皆が穏やかな様子ではちゃめちゃな豆まきを見守っていた。

 これも月見の人徳なんだろうな、と慧音は考える。命蓮寺は人間のみならず妖怪へも平等に開かれたお寺であり、門下の少女たちはみな人間ではない。住職の聖白蓮をはじめ、全員が心優しき少女なのはすでに知れ渡っているが、それでも妖怪がいる寺に安心して我が子を預けられるのは、やはり月見という男の存在が大きいからなのだろう。

 月見もまた、紛れもない妖怪の一匹であるのに。

 慧音自身、今回の豆まきに関しては、向こうから相談されたのをいいことにぜんぶ彼へ丸投げしてしまった身だ。お陰で今度のテストづくりに終始集中できたので、近いうちに礼をしなければならないと思っている。

 そこで慧音はふと、

 

「……おや、阿求?」

 

 見物人の中に、よく見知った着物姿があった。こちらを振り向いた少女――稗田阿求は、口元に小さな微笑みを浮かべて会釈した。

 

「お前が来ているとは思わなかったよ」

「ええ、まあ、友人がこちらの方に参加すると言っていたもので。一応様子を見に来たんです」

 

 言われて僧堂へ目を向ければ確かに、年下の子どもたちに交じってえいえいと豆を投げている鈴奈庵の娘がいる。阿求はため息、

 

「普段から妖怪は怖いとか言ってるくせに、現金なもんだわ……」

「あの子、月見が妖怪だと信じてないみたいだからなあ」

 

 え、あんなにいい人が妖怪なわけないじゃないですか。お稲荷様でしょう、みんなもそう言ってますよ?――と、いつだったか真顔で言っていたのを思い出す。月見がそこらの人間よりも人間らしいせいで、彼が妖怪だと未だに信じていない里人はちらほらといるのだ。

 それにしても、豆まきの会場はまこと縦横無尽の大騒ぎである。節分大好き伊吹萃香を筆頭に、鬼の扮装をした少女たちが子どもたちに猛烈な勢いで追い回され、割かし冗談抜きの悲鳴をあげながら逃げ惑っている。寅丸星に至っては鬼の恰好をしていないのになぜか畳へ転がされており、四方八方から豆をぶつけられ哀れな涙目で助けを求めている。白蓮が星を助けるべきかどうか判断できずにおろおろし、月見と雲山はほうきで黙々と畳を掃除している。

 深い感慨とともに目を細めながら、阿求は正面の喧騒をまっすぐに見つめている。

 

「……まさか里でこんな光景が見られるようになるなんて、思ってもいませんでした」

「……同感だ」

 

 指先ひとつで簡単に人の命を奪ってしまえる妖怪と、魔に抗う術などなにも持たないか弱い人間の子ども。この二つが同じ空間で同じ時間を共有し、しかも妖怪の側が子どもたちに振り回されるという形で、まるでお祭り騒ぎのごとくはちゃめちゃに盛り上がっている。ここに集まっている人間たちは知るまい――ちびっこ軍団の集中攻撃を全身で受け止めている少女が、実は正真正銘本物の鬼であり、その気になれば里を一瞬で滅ぼすこともできる大妖怪中の大妖怪であると。

 

「すっかり、月見さんがいてくれるのが当たり前になっちゃいましたね」

「そうだなあ」

 

 はじめは「しばしば里にやってくる不思議な狐」だった月見も、今では里のなんでも相談役として盤石な地位を固めつつある。過ぎし正月には里で毎年恒例の豊作祈願祭が行われたが、そのとき彼はまさかの稲荷神役で参加させられてとても微妙な表情をしていた。

 月見は慧音と違って純粋な妖怪で、里に住んでいるわけでもないけれど、それでもここの立派な一員として受け入れられているのだ。

 

「この様子なら、特に心配は要らなそうだな。私は仕事に戻るよ」

「あ、はい。わかりました」

 

 進撃のちびっこ軍団は留まることを知らない。慧音が山門をくぐって外へ出ようとすると、はてさて一体誰に向けたものだったのか、少女たちの人外とは思えぬ情けない悲鳴が慧音の背を叩いた。

 

「「「たすけてええええええええっ!!」」」

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 豆まきは、子どもたちのKO勝利で幕を下ろした。

 豆まきでKO勝利というのもなかなかおかしな話だが、鬼三名及び福の神がみんな豆だらけになって降参する光景は、間違いなくKOと表現する他なかったと月見は思っている。

 その後は全員で畳を綺麗に掃除し、節分料理をいただいて此度の豆まきは終了と相成ったのだった。

 

「おきつねさまー、びゃくれんさまー、すいかおねーちゃーん、ばいばーい!」

「ああ。またね」

「気をつけて帰ってね」

「来年もちゃんと豆まきするんだぞー!」

 

 保護者の方々に手を引かれ帰ってゆく子どもたちを、月見は少女二人と一緒に山門から見送る。見送りに出てこられたのは白蓮と萃香だけだ。鬼三名及び福の神はすっかりくたくたになってしまって、ナズーリンと雲山にマッサージで労をねぎらってもらっている。

 そんな中で萃香はといえば、最も多くの豆をその小さな体で受け止めたにもかかわらず、むしろ豆まきが始まる前より元気が弾けているように見えた。最後の子どもを見送り終えると上に伸びをして、

 

「いやー楽しかった! 神社じゃあんな風に大暴れしたことなかったからねー、もー最高だったよっ!」

「そうか。それはよかった」

 

 この少女がどういう意味で此度の豆まきを楽しんだのかは、もはや触れまいと月見は思う。

 

「えへへ……月見、今日はありがと! 来年もまたやろーねっ!」

 

 そう――彼女がこうして百点満点の笑顔で喜んでくれたなら、真実なんてどうだっていいのだ。

 萃香のご機嫌な頭の上に、掌を置いて。

 

「そうだね。来年もまた」

「約束だよっ。……あんたも、今日は協力してくれてありがとね!」

「いえ、そんな。こちらこそ、素敵な時間を過ごすことができました」

 

 門下の仲間がみなコテンパンにされたというのに、白蓮はとても満ち足りた微笑みで深く頭を下げた。

 

「人間と妖怪が、同じ場所で同じ時間を共有する……その夢が私の寺で叶いました。月見さん、萃香さん、本当にありがとうございました」

 

 年末の開山からまだ一ヶ月という手前、命蓮寺と人里の関わりといえば、仏教を通した儀礼的な交流がほとんどだった。空飛ぶ船をお寺に変形させるという御業を目の前で披露したせいもあるのか、里人たちは命蓮寺をやや神聖視しすぎているフシがあるのだ。ありがたい方々なのだから里の低俗な話題に関わらせては失礼だ、という遠慮の空気を月見は前々から感じていた。

 それもあって、月見は今回のイベントを命蓮寺に持ちかけたのだ。これで里の人たちにも、「こういう庶民的な行事も快く引き受けてくれるお寺」という親しみやすい認識が広まっただろう。今日という日をきっかけにして、白蓮が理想として思い描くような、種族も宗教も取っ払った飾らぬ交流が始まってゆくはずだ。

 

「では、中に戻りましょうか。大したお礼もできませんけど……」

「おー! お酒呑もーよお酒っ!」

「……ええと、まだお昼ですけど……?」

「え? それがどうかしたの?」

「え?」

「え?」

 

 さて、豆まきが終わったので萃香もいつも通りの萃香に戻ったらしい。あとは相手を取っ替えながら明日まで呑み続けるんだろうなと、月見が呆れながら踵を返そうとしたときだった。

 

「あ。あのー、月見さん」

「ん?」

 

 どうやら月見たちの話が終わるのを待っていたらしく、豆まきに年長組で参加していた一人の少女が駆け寄ってきた。栗色の髪を鈴の髪留めでおさげにして、市松模様の着物に道行(みちゆき)――和服用のコート――を被った姿は、月見とここ何ヶ月かで親しくなった顔見知りのもので。

 

「どうかしたかい?」

「えっと、月見さん、このあとお暇かなーと思って」

「特に予定はないよ」

 

 月見が答えると、少女は可憐に頬をほころばせた。

 

「ああ、よかったです。実はこのあいだ、新しい外の世界の新聞が手に入って」

 

 人里の一角に、『鈴奈庵』と書かれた年季ある看板を構えた店がある。

 彼女はそこの一人娘であり、本業を忘れ本の虫と成り果ててしまった親に代わって、日々健気に店を執り仕切っている看板娘でもあり。

 

「よかったら、またウチのお店に来ませんか?」

 

 名を、本居小鈴。

 物珍しい外の本が手に入ると本業そっちのけで月見を店に招く、あの親にしてこの子ありなビブロフィリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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