銀の狐と幻想の少女たち   作:雨宮雪色

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第151話 「十六夜咲夜は進めない ②」

 

 

 

 

 

 咲夜が風邪で体調を崩し、スカーレット姉妹が大慌てで月見を呼びに行ったと聞いたときは、これは千載一遇のチャンスが巡ってきたと思ったものだ。

 すなわち、月見に咲夜の看病をしてもらう。いくら咲夜が恋愛完全初心者の生娘だからって、まさかその意味がわからないほど鈍感ということはあるまい。紅魔館の恩人に手間を掛けさせてしまう形にはなるが、こと咲夜への対症療法としては間違いなく最適解である。せっかくだからご飯を食べさせてもらうなりずっと傍にいてもらうなり、月見成分の過剰摂取(オーバードース)を起こすくらい幸せな思いをしてしまえばよいのだ。

 と、柄にもなくわくわくしていたのであるが。

 

「――とまあ、こんな具合でして」

「……はあ」

 

 その日のお昼時、昼食を持ってきた従者からついでで報告を聞いてみれば、パチュリーの口から出てきたのは崩れ落ちるようなため息だった。

 大図書館の片隅にある読書用のスペースにて、たまらずテーブルに肘をつき目頭を押さえる。咲夜が恋愛の「れ」の字も知らず育ったド素人なのはわかっていた。月見と今まで通りの日々を送れればそれだけで幸せになってしまい、いつまで経っても大きく一歩を踏み出すことができない。ともすれば踏み出そうとも考えていない。わかっていた。ええわかっていましたとも。

 けれどまさか、落ちてきた牡丹餅をそのまま棚に戻してしまうほどだったとは。

 

「妹様がそれとなく前フリはしたみたいなんですけど、それでもダメでした……」

 

 小悪魔の報告をまとめれば、せっかく月見に「あーん」してもらえるチャンスだったのに、ひとりで大丈夫だとはっきり断って本当にひとりで食べてしまったらしい。恥ずかしがり屋もここまでいくと逆に感心してしまう。

 

「薄々思ってましたけど咲夜さん、ヘタレすぎませんか」

「……」

 

 小悪魔の口振りは、ほのかな危機感すら覚えているようでもあった。いつまで経っても進展らしい進展がない咲夜の現状は、曲がりなりにも悪魔な彼女からすればもどかしくて歯痒くて仕方がないらしい。

 

「月見さんが部屋にいると落ち着かないからって、傍にいてほしいとも言えてないです。月見さんも月見さんで無駄に空気読んじゃって、必要なときしか様子見に行かないですし。絶望的に噛み合ってないですよ」

「……本当に何事もなく終わりそうね」

「いいのかなあこんなんで……」

 

 月見が咲夜の看病をしてくれるこのイベントを、一番真剣に考えているのは小悪魔だった。以前まではあまり口を挟まず物陰から見守るだけだったものの、最近ではとうとう我慢ならなくなったのか、フランと結託して咲夜に発破をかけようとする頻度が増えてきている。彼女が午前中、図書館を離れて館の方に行っていたのもそのあたりが一番の理由だ。

 

「仕方がないわ、あくまで踏み出すのは咲夜自身だもの。あとは見守りましょう」

「ぬるい、ぬるいですよパチュリー様……! こっちから仕掛けないとなにも変わりません……! 人の言葉を借りちゃいますけど、弾幕も恋も火力なんですっ!」

「それ、どっかの古道具屋に惨敗し続けてるやつの言葉じゃない?」

 

 パチュリーも小悪魔も、咲夜のことは心から応援している。ただそのスタンスでひとつだけ明確な違いを挙げるなら、小悪魔はとにかくこちらから行動を起こす攻撃重視で、パチュリーは咲夜の意思を念頭に置くバランス重視という点だ。つまりは多少咲夜の気持ちを無視してでも強引に背中を押すか、あくまで咲夜が自分の意思で踏み出せるよう促すに努めるか、である。今回の看病だけ見ても、小悪魔は一気に距離を詰められる外面的なチャンスと捉えており、パチュリーは引っ込み思案な咲夜の心に変化を起こす内面的なチャンスと捉えている。

 

「それは香霖堂さんが絶食唐変木のド変人道具マニアなだけです!」

 

 バッサリ切り捨てられた古道具屋店主はさておき、

 

「私が思うに、月見さんはすごく長生きしてきたせいで、私たちがみんな年の離れた娘みたいにしか見えなくなってるんです。……まあ実際そうなんでしょうけども。だから積極的に行動して、ちゃんと一人の女なんだって意識させなきゃなんですよっ!」

「行動するだけで彼をモノにできるなら、八雲紫や鬼子母神がとっくにそうしてるわ。動かなければスタートラインにも立てないのは同意するけど、そこから先はどうするの? 毎回毎回無理やり焚きつけるのはナンセンスでしょう。長い目で見れば、咲夜の意識を変えさせる方が大切じゃないかしら」

「そんなのは、行動すればあとから自然とついてくるものです!」

 

 せっかく美鈴が作ってくれたできたて炒飯をそっちのけにして、だんだんと会話のボルテージが上がっていく。恋愛事に関する考え方が違えば、咲夜をどう応援するべきかで意見の食い違いもたびたび起こる。

 

「パチュリー様っていかにも経験者な顔して咲夜さんにアドバイスしてますけど、思いっきり未経験ですしぜんぶ本の中の知識じゃないですか! 現実の恋愛は物語みたいに甘くないんですよっ!」

「未経験なのはあなたも同じじゃないの! どうせ今だって、先輩悪魔から聞いた知識を偉そうに語ってるだけでしょう!?」

「こっちは実際の体験談に基づいてますもん!」

「先輩風を吹かせたくて、あることないこと盛っただけよ。とにかく行動すればいいなんて前時代的だわ」

 

 むむむむむ……! とお互い譲らず睨み合いに入ったところで、ふと炒飯の香りが鼻孔をついた。

 小悪魔のお腹が、小さく鳴った。

 

「「……」」

 

 なんだか唐突に虚しくなってきた。具体的にはパチュリーも小悪魔も、なにをどう言ったところで所詮は一寸法師の背比べ、恋愛経験皆無のド素人なのだというあたりが。

 

「……とりあえず、冷める前に食べましょうか」

「……そうですね」

 

 大図書館にこもってばかりで月見以外の異性とも縁がないのに、どうして人の恋路の道案内ができようか。

 久し振りに味わう美鈴の炒飯は、咲夜の一品に負けず劣らずの美味だった。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「……はあ」

 

 パチュリーと小悪魔が大図書館で揃ってため息をついた頃、咲夜もまたベッドの上で悩みの多いため息をついていた。

 今日だけで、もうそろそろ百回目くらいになったのではあるまいか。左に寝返りを打ってまたため息をつき、右に寝返りを打って更にため息をつく。太陽が南中を越え西に傾き始めてからというもの、咲夜はひたすらため息のオンパレードである。あいかわらず体調がよくないままなのもあるけれど、本当の原因はもっと別のことだった。

 

「暇」

 

 つぶやく。

 

「……暇だわ」

 

 月見のお粥で胃を適度に満たし、果物で糖分とビタミンを摂って、ドリンクで水分も補給した。そして、月見が屋敷から持ってきてくれた永遠亭の風邪薬も飲んだ。風邪薬といえばあくまで体調不良を和らげるだけというのが通説だが、永遠亭のそれはウイルスに直接作用できるスグレモノらしい。水月苑には人間の子ども用から妖怪用まで、ウサギ印の常備薬が豊富に揃えられているのだ。

 あとは体を冷やしすぎず温めすぎず休んでいれば、今日のうちにきっとよくなるだろうと月見は言っていた。

 しかし、ここである問題が起こる。

 午前中すでにひと眠りしてしまったせいで、いくら目を閉じても一向に眠気がやってこないのだ。眠ろうとしても眠れないまま無為に流れ去っていく時間というのは、一度自覚してしまうと存外ストレスが溜まるものである。そうなると紅魔館のメイド長として、ついつい、本来ならこの時間でどれだけ仕事を片付けられていたのかを考えてしまって、

 

「仕事したぁい……」

 

 と、ある種の禁断症状を起こし始めてしまうのであった。

 さてこうなると、月見の看病に気を取られすっかり忘れていたあの葛藤が息を吹き返す。すなわち「紅魔館のメイド長である自分が、多少の風邪ごときで仕事を休んでいいのか」であり、そうやって悶々としていればひと眠りするなど夢のまた夢、どこまでも儘ならぬ感情に絡み取られていく負のスパイラルのできあがりだった。そこに体調不良も合わされば、もはや気分は最悪の一言に尽きた。

 せっかくだから月見に看病してもらえ、とフランや小悪魔は言う。咲夜もまあ、二人が言いたいことはわかっている、と思う。月見が様子を見に来てくれるだけでほかほかと嬉しかったし、さすがに「あーん」は無理だったけれど、彼が咲夜のためだけに作ってくれた手料理は文句なしで幸せだった。きっと予定だってあっただろうに、わざわざ駆けつけてくれた月見の優しさにはいくら感謝しても足りない。

 だからこそ、もう充分だった。

 幸せである一方で、こんな風に思い煩う羽目になるくらいなら。

 最初から、いつも通りの日常を送る方が何倍もよかった。

 

「はあ…………」

 

 いつもなら心地よいはずのベッドの中が、まるで生温かく不快な泥の塊のようだ。なのに気がつけば自分は、布団を頭まで被って塞ぎこむように体を丸めている。

 風邪なんか引いてしまった自分が、ただひたすらに情けなかったのだ。

 

『咲夜』

 

 ノックの音が、聞こえた。

 

『入っていいかい』

「……あ、」

 

 月見の、声。

 けれどもう、午前中のように胸が高鳴ることはない。

 

「……どうぞ」

 

 よく考えもせず返事をしてから、自分が月見に背を向ける恰好で丸くなっていると気づいてはっとする。目上の相手を部屋へ入れるのに、背中を向けたままなんて――そう慌てて入口の方へ向き直るも、ちょうど入ってきた月見に一部始終を見られてしまった。

 

「ああ、ごめん。もしかして、起こしちゃったかな」

「い、いえ、違うんです。その、なかなか眠れなくて」

 

 余計な気を遣わせてしまった。本当になにやってるんだろう私、とますます自分が不甲斐なくなる。

 

「なに、眠れなくてもいいのさ。安静にして、体が風邪とじっくり戦えるようにするのが大事だから」

「……はい」

 

 言外に、薬を飲んだからといって仕事をするのは論外だと言い含められた気がした。もちろん月見にそんなつもりはちっともなくて、悪いのは咲夜の心を苛むこの後ろめたさなのだろう。もしも誰かから一言だけでも「いい」と言われれば、自分はすぐさまメイド服を着て働き始めるのだろうから。

 

「飲み物、ここに置いておくよ」

「はい……」

 

 ナイトテーブルにコトリと小さめの魔法瓶が置かれるのを、ぼんやりと目で追う。

 

「他には大丈夫かい。汗をかいたならこぁを呼ぶよ」

「いえ、大丈夫です……」

 

 月見がせっかく様子を見に来てくれたのに、心ここにあらずな返事ばかりをしていたせいだろうか。

 

「ふむ……」

「……?」

 

 月見が上からこちらを覗き込んで、

 

「午前中より具合が悪いかい?」

「いえ、特に悪化は……していませんが」

「そうか。なんだか、午前中より元気が……というのも変だけど。落ち込んでるように見えたものだから」

 

 ――正鵠を射る、とはまさかにこのことか。

 喉に詰まるものを感じ、気まずさに負けて視線を逸らす。誤魔化そうという気は起こらず、ただ、やっぱりわかるんだと諦めめいた感覚が胸に広がった。

 

「……」

 

 今からでも遅くはない。なんでもない、大丈夫だとはっきり言い切れば、月見ならひとまず察して引き下がってくれるだろう。

 けれどそうしてまで、また最悪な気分の中でうじうじと思い煩うくらいなら。

 

「……月見様」

「うん?」

「もし、ご迷惑でなければ……」

 

 この本音を打ち明けられるのは、たぶん、自分には月見しかいないのだと思った。

 

「悩み相談……していただいても、いいですか?」

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 正直に話した。風邪なんて引いてしまった不甲斐ない自分と、迷惑を掛けたくない自分、そして迷惑にも思われないのは嫌だと思ってしまう自分。躊躇したのは最初だけで、一言話し出してしまえば言葉は次々とこぼれ落ちていった。

 自分のみっともない心をさらけ出すのは、緊張したけれど。月見ならちゃんと聞いてちゃんと答えてくれると信じられたから、怖くはなかった。

 

「――なので、私は、なんて卑しくて不完全な従者なんだろうと。考え出したら、止まらなくなってしまって……」

 

 月見は、見ているこちらがどきりとするくらい優しい表情をしていた。彼には咲夜の言葉ひとつひとつが目に見えていて、そのすべてを慈しみながら眺めているかのようだった。高々数十年ぽっちしか生きられない人間にはあまりできない表情だと思った。だからだろうか、知り合いに悩み相談をしているというより、静かな森の中で大樹に向けて話しかけているような感覚が咲夜にはあった。

 

「体を休ませるのは、こうして横になっていればいいから簡単ですけど。心も一緒に休ませるのは、少し難しいものですね」

「そうだなあ。なにか気晴らしができればいいんだろうけど、風邪で動けないとね。確かに難しい」

 

 月見が口元に明確な笑みを浮かべ、心当たりがあるとばかりに二度頷く。

 

「私は妖怪だから風邪は引かないけど、怪我で動けなくなったことなら何度かあってね。一日中寝転がってるだけってのは本当に退屈で、ちょっとくらいいいだろうと思って散歩に行こうとするんだけど、なにやってるんだと怒られてすぐ連れ戻されたり」

「まあ、月見様もですか」

 

 咲夜もつられてくすりとしてしまう。なんだか今日はじめて自然と笑えた気がして、それだけで少し心が軽くなった。

 

「私もそういうとき、してもらってばかりだと据わりが悪くなることはあるよ」

「……そういうとき、月見様はどうしてるんですか?」

 

 月見はしばし考え、やがて浮かべた笑みに、一抹の気恥ずかしさらしきものを織り交ぜた。

 

「今の私なら……負い目を感じても、それ以上にありがたく思うかもしれないね」

「ありがたく……ですか?」

「……そうだね。たとえば、お前の友人が風邪で寝込んだとして考えてごらん」

 

 とりあえず言う通りにしてみる。風邪を引きそうな人間の友人ということで、仮に霊夢の姿を想像する。

 

「すると都合がつけば見舞いに行くし、動くのが辛いようだったら、少し身の回りのことを手伝おうと思うだろう?」

「はい」

「そのときお前は、面倒くさいやつだな、迷惑だな、なんて考えるかい」

「……、」

「もしそうなら、最初から見舞いにも行かないだろう」

 

 頷く。こちらからお見舞いに行って、それでもしも霊夢が「迷惑掛けてごめんなさい」なんて謝ろう日には、咲夜はなにバカなことを言っているんだと一笑に付すだろう。いまさら他人行儀な関係でもないのだ。本当に迷惑だと思っているのなら、わざわざお見舞いなんて行かず魔理沙あたりにでも任せるに決まっている。

 月見の考え方が、少しずつわかってきた。

 

「動けなくなったときにそうやって助けてもらえるのは、ありがたいことだよ。だから私は、申し訳なく思う以上に感謝するのだろうね」

 

 そして、ちょっぴり気恥ずかしそうにしている理由も。

 

「もちろん、なにからなにまでしてもらってばかりじゃないぞ。自分でできることは自分でするし、怪我をいいことに怠けるわけではなく」

「ふふ、わかってますよ」

 

 月見がそんな妖怪でないのはわかっている。彼らしい考え方だった。人生経験の差というやつなのか、彼はいつだって余計なものに心を縛られず、自分の中に自分が納得できる大抵の答えを持っている。自分だけでは答えが出せないとわかっているのに、延々とうじうじ悩んでため息ばかりついている咲夜とは大違いだった。

 月見には、果たしてどこまで見透かされただろうか。

 

「……まあ、そう考えると案外、お前が悩んでいるのも的外れなのかもしれないよ」

「……?」

「レミリアとフランは言うまでもないし、こぁも今日はこっちに出てきてる。お前は寝ていたけど、パチュリーと美鈴も一度様子を見に来てくれた。できることがあれば遠慮なく言ってくれってね」

 

 そこでようやく気づいた。さっきの月見のたとえはそのまま、今の自分にも当てはめられる話なのだと。

 レミリアとフランは、妖精メイドたちと一緒に不慣れな掃除を頑張ってくれている。

 小悪魔は図書館の仕事を休み、咲夜と似た立場で働く経験を活かしてみんなのサポートに奔走してくれている。

 パチュリーは小悪魔をこちらに送った分、図書館の雑事はすべて自分で片付けると言ってくれた。

 美鈴はいつも通り門番の仕事に励む傍ら、咲夜に代わってみんなの昼食を作ってくれた。

 咲夜がひととき仕事を忘れてゆっくり休めるように、みんなが自分にできることを考えている。

 

「だからお前の悩みにひとつ答えると、お前は誰にも迷惑を掛けていない」

 

 それは、迷惑だからなんて理由でできることではない。

 

「向こうから顔を見に来てくれて、助けてくれる。――それは『迷惑』じゃなくて、『心配』っていうのさ」

「――……」

 

 今まで散々思い悩んでいたのに、月見の言葉は呆気ないほどすとんと胸に落ちてきて。

 みんながこんなにも咲夜のことを考えてくれているのに、咲夜は誰とも目を合わせず自分しか見ていなかったのだと気づかされた。迷惑を掛けたくないと苦しんでいたのも、結局は自分だけの考えに過ぎなかった。自分からわざわざ泥沼に入って、自分で勝手にもがき苦しんでいただけだったのだ。

 咲夜を『心配』して差し伸べられたみんなの手が、はじめからすぐそこにあったというのに。

 

「私もそうだよ。お前を心配しているからここにいる。早くよくなってほしいからね」

 

 ……本当に、自分は不完全な従者だと思う。けれど不思議と、もう嫌な気分にはならなかった。

 思わず笑ってしまった。こんなにもあっさりと諭されてしまって、あれだけ憂鬱だった自分は一体なんだったんだとおかしかった。

 

「……月見様。私、意外と単純だったみたいです」

「なにか気づけたかな」

「はい」

 

 もちろん、体調管理のミスで風邪を引いてしまった事実は消えない。消していいわけがないし、それ自体の反省は充分にしなければならない。けれどそれで負い目を感じるなら自らを責め抜くのではなく、少しでも早く風邪を治して、心配し助けてくれたみんなへ『ありがとう』を返す――その方が、ずっといい生き方だなと思った。

 

「ありがとうございました、月見様」

「なに、これくらいはお安い御用さ」

 

 それだけで気分が随分と軽くなって、今はしっかり休もうと思えるようになった。とはいえ、午前中に一度ぐっすり眠ってしまったのは事実。このままでは、またベッドで寝返りを打つだけの時間を過ごしてしまいそうだったので。

 

「……月見様」

「うん?」

「その……意外と単純だったみたいなので、わがままを言ってもいいですか」

 

 本音をさらけ出して相談したせいか、その勢いのままもう少しだけ素直になれそうだったから。

 目で促す月見へ、思いきって一歩近づくように言った。

 

「私が、眠れるまで。ここに、いてくれませんか……?」

「それは構わないけど……私がいたら落ち着かないんじゃないかい?」

「ええと、もう慣れました」

 

 だいぶ嘘だ。慣れたわけがない。咲夜の心を覆っていた霧が晴れた今、自分の部屋で月見とふたりきりという状況に、また心臓の音がばくばくと大きくなってきたのを感じる。こんな有様では、落ち着いて眠るなんて十中八九不可能だろう。

 けれど、それでもいいのだ。月見だって言っていた。安静にさえしていれば、必ずしも眠らなければいけないわけではない。だってこうしてお悩み相談をして、咲夜はどうしようもなく理解してしまったのだから。

 今の自分にとっては、こうして月見と一緒にいるのが一番の休息で。

 わかったよ、とそう言って返ってくる彼の微笑みが、それだけで一番の栄養なのだと。

 

「じゃあ、なにか適当に話でもしようか。退屈な話を聞かされれば眠くなるかもしれないし」

「ふふ、そうですね。お願いします」

 

 断っておくが、月見の話が本当に退屈だったわけではない。

 でも悩みが吹っ切れて、ひととき仕事から解放され、心ゆくまで彼と一緒にいられるこの時間が、風邪を引いているのも忘れてしまうくらい心地よくて。

 月見の声に優しく耳を撫でられ、ふわふわと眠りに落ちる最後の一瞬まで。きっと自分は笑っていたのだと、そう思った。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「――ん、ぅ……」

 

 感じたのは、暑苦しさとまぶしさだった。

 目を開けると窓から西日が差し込み、部屋が薄い朱色で染まっていた。布団の中に熱がこもっている。押し退けるように半分めくって空気を取り込むと、パジャマの下がうっすらと湿っているのがわかった。眠っている間に体温があがって、ほどよく汗をかいたようだった。

 咲夜は束の間、ぼんやりと天井を見つめて頭を整理する。日が暮れ始めているということは、どうやら自分は恥ずかしいほどぐっすりと寝落ちてしまったらしい。月見の声に耳を傾けながら微睡むあの心地よさを思い出して、せっかく涼しくなりかけていた体がまた熱を持った。

 

「っ、はあ……」

 

 汗をかきながら眠ったお陰で、喉が渇いていた。咲夜は脇のナイトテーブルへ手を伸ばし、月見が持ってきてくれた魔法瓶を、

 取ろうとしたところで、そこに月見がいた。

 

「…………………………」

 

 椅子に腰かけ、浅く腕組みをして、下を向いたままぴくりとも動かないでいる。

 眠っている。

 

「……へ、あっ……」

 

 魔法瓶に手を伸ばした体勢のまま、咲夜はつい間抜けみたいになって呆けてしまう。だってそうだろう。「咲夜が寝るまで一緒にいる」という約束だったのだから、月見がここにいるはずはないのだ。咲夜が眠ったのを確認してとっくの昔に部屋から出ていき、今頃はメイド長フランの爆走を、レミリアや小悪魔と一緒にほどよく見守っているはずなのだ。

 はずなのだが。

 

「…………えーっと、月見様……?」

 

 ささやくように声を掛けてみるが、返事はない。静かで規則的な呼吸とともに、組んだ腕がゆっくり上下を繰り返している。間違いなく眠っている。

 

「…………………………………………」

 

 えっと。

 どうしましょう。

 とりあえず、窓から差し込む春の陽気が気持ちよくて、彼もうっかり眠ってしまったのだと思われる。それ自体特になにも言うつもりはなく、問題は月見を起こすべきかどうかという話であって。

 いや、別に変な意味ではないのだ。月見だって少し疲れていたのかもしれないから、無理に起こす必要はないかなと思うだけで。

 決して、断じて、「これひょっとしてチャンスでは?」とプチ悪魔な咲夜がささやき始めているわけではないのだ。

 そんなわけないのだ。

 

「つ、月見様ー……」

 

 ベッドの上でもぞもぞと動き、咲夜は月見の寝顔を覗き込んでみる。

 

「ね、寝てますよねー…………?」

 

 まぶたは動いていない。それだけで本当に寝ているとは断言できないけれど、彼ならわざわざ寝たふりをする理由もないように思う。

 

「……」

 

 まつげがきれいだなあ。

 って、そうじゃなくて。

 

「…………」

 

 咲夜はむくりと体を起こし、自分の部屋を隅々まで用意周到に見回す。

 誰もいない。

 絶対に誰もいない。

 魂を懸けてもいい。部屋の隅に羽虫がいたって見逃さない全身全霊の集中力で確認して、咲夜はゆっくりと深呼吸をした。

 深呼吸をして、月見を見た。

 

「……今の私は、ちょっぴり、わがままです」

 

 胸に手を当てつぶやく言葉は、半分以上が自分に向けた指差し確認のようなもの。――そう、今の咲夜はわがままなのだ。だから自分の感情に従って、やりたいと思ったことを素直にやってしまったりするのだ。

 本当にやる気があるのか、と小悪魔に言われた。

 そんなんじゃいつまで経ってもなにも変わらない、とフランにも言われた。

 別に変えたいと思っているわけではない。咲夜は今まで通り、月見が紅魔館の隣人として傍にいてくれればそれだけで満ち足りる。だから、自分が前に進みたいと願っているのかどうかも自分ではわからない。

 でも、今日は。お姫様だっこでベッドまで運んでもらったらしいけれど、気を失っていたせいでぜんぜん覚えていないし。せっかく「あーん」してもらえるチャンスだったのに、勇気が出なくてひとりで食べてしまったし。結局月見に看病してもらえたといっても、なんだか普段とあんまり変わっていない気がして。

 だからちょっとくらいは、いいんじゃないか。いつもとは違う、なにかがあったって。

 だって、仕方ないのだ。

 今の咲夜は、風邪を引いているのだから。

 

「……」

 

 ――ちなみに今は体のダルさが綺麗さっぱりなくなって、熱も下がっている――つまり風邪が治っている――のだが、咲夜がこれに気づくのはもう少しあとの話である。

 月見と向かい合って座る。待てやめろ早まるな、と心臓がばくばく大声をあげて咲夜を止めようとしている。けれどそんな雑音は、もう咲夜の耳には届かない。

 

「…………っ、」

 

 月見に向けて、両手を伸ばして、

 体の重心を、彼の方へ傾けて、

 

 顔を。

 近づけて。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「――ん」

 

 誰かに触れられた気がして月見は目を覚ました。

 顔を上げれば目に入ってくるのは咲夜のベッドで、そこには半分背を向ける恰好で眠っている彼女がいる。窓際がほのかな茜色で染まっている。ナイトテーブルの時計で時間を見てみれば、自分がなにをしてしまっていたのかは一目瞭然だった。

 

「……ああ、私も寝てしまったのか」

 

 咲夜が眠ったのを確認して席を立とうとしたものの、窓から注ぐ春の陽気があんまりにも心地よかったからついぼーっとして、そのまま……という間抜けなオチがついてしまったようだ。日はすでに西の尾根近くまで傾いていて、「少し微睡んでしまった」なんて言い逃れはできそうにもなかった。

 椅子に座ったまま寝たせいで、体のあちこちが凝り固まってしまっていた。月見は欠伸を噛み殺しながら、すっかり老朽化した絡繰人形みたいに重ったるく伸びをして、

 

「……あの、月見様」

「ん……おや咲夜、起きてたのか」

「は、はい」

 

 眠っていると思っていた咲夜が実は起きていた。ということは、だらしなく居眠りする姿をばっちりと目撃されてしまったらしい。

 

「申し訳ありません。起こしてよいかどうか、わからなくて……」

「ああ、すまないね。私まで眠っちゃって」

「い、いえ、そんな」

 

 咲夜がぎこちなくこちらへ体を倒す。熱が下がりきっていないのか、その顔はまだほのかな赤みが差して見える。

 

「具合はどうだい?」

「はい、もうほとんどよくなりました。熱も下がったと思います」

 

 それにしては妙に熱っぽそうだったが、きっと夕焼けのせいかもしれないなと月見は納得した。

 部屋を見回す。自分と咲夜以外には誰もいないし、今まで誰かがいた感じもしない。よって誰かに触られていたようなあの感覚が事実であるならば、犯人は咲夜しかいないということになるが。

 

「……どうされましたか?」

「いや……なんだか寝てる間に、誰かに触られたような気がしてね」

 

 間。「あ、あー」と咲夜はわざとらしい動きで天井に目を逸らし、

 

「そ、そうなんですか。なんでしょうね、あは、あはは」

「咲夜かい?」

「えほん!? い、いえ、なにも見てませんなにもしてませんなにもわかりませんっ!?」

 

 どうやら本当に咲夜だったらしい。はぐらかそうとしているようだがバレバレである。一瞬で布団を頭まで被って丸くなり、「なんでもありませんなんでもありませんなんでもありませんなんでも」と一生懸命に早口言葉を量産している。

 一体なにをされたのやら。

 どこかを触られたのは間違いないけれど、それがどこだったのかも、どんな風に触られたのかもまったく不明の状態だ。もしかすると変なことをされていた可能性もありうる。もしもこれが紫か輝夜あたりの犯行であれば、とりあえず脳天に手刀を一発叩き込んでいたかもしれない。

 しかし咲夜なら、そのあたりの良識は心配無用だろうと信頼できたので。

 

「……まあいいや。別に変なことをしていたわけじゃないだろう?」

「……………………は、はい」

 

 その、思いっきり気まずそうに視線を逸らすのは一体なにか。

 

「じゃあ、一度熱を測ってみてくれるかい。私はその間にこぁを呼んでくるから」

「は、はひ……」

 

 心なしか冷や汗びっしりに見える咲夜へ体温計を渡し、部屋を後にする。ドアを閉め、歩き出そうとしたところでふと思い留まり、壁一枚隔てた向こう側へ耳を澄ましてみる。

 ベッドの上で、咲夜がばたばた身悶えしているらしい物音が聞こえた。

 

「……」

 

 本当にあの娘、一体なにをしてくれたのだろうか。

 

 

 なお体温計の結果であるが、ウサギ印の風邪薬が効いたようですっかり平熱に戻っていた。となれば咲夜はすぐにでも仕事へ復帰し、みんなから受けた『心配』を感謝の形で返そうとする。まだ少し不安そうにしていたレミリアとフランだったが、熱が下がり顔色もよくなったのは事実なので、万が一また具合が悪くなったら隠さないことを条件に了承した。

 かくして紅魔館崩壊の大ピンチは無事収束し、今までと変わらない日常が戻ってきたのだった。

 月見が帰るとき見送りに来てくれた咲夜が、やっぱりそわそわと落ち着かない様子だったのを除いて。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「――どうも、ご心配をお掛けしました」

「いいえ。こんなに早く治ってよかったわ」

 

 九割本音である。残りの一割ほどはあともう一日だけ寝込んで、今度こそ月見につきっきりで看病してもらうべきではないかと思っている。何事もなく終わったのを喜ぶ気持ちと、何事もなく終わってしまったのをちょっぴり口惜しく思う気持ちの板挟みになりながら、パチュリーは表面上笑顔で咲夜の復帰を祝福した。

 役目を終えた月見が水月苑に帰ったあとの、黄昏時の紅魔館だった。

 

「もうすっかりよくなりましたので、これよりは今まで通り、なんなりとお申し付けくださいませ。……そちらの本、片付けましょうか?」

「ああ……いいのよ、これは。私の落ち度みたいなものだから」

 

 パチュリーは己の現状を見回してため息をつく。大図書館の一角にある本棚と本棚の間で、何冊もの本が散乱し無造作な山々を形成している。これが、小悪魔に頼らず自分で本の整理をしようとした今日一日の成果であった。

 一応、午前中はそれなりに上手くやっていたのだ。しかし午後に入って、何気なく目に入った一冊の本を読み始めてしまったのが運の尽きだった。読書エンジンに火がついてしまったパチュリーは、本をしまうどころか逆に次々と引っ張り出し、結果として整理を始める前よりも散らかしてしまうというご覧の有様なのだった。

 お陰で、戻ってきた小悪魔にも大層呆れられてしまった。彼女は迷いのない手つきで本の山を崩しながら、

 

「こっちは私がやるので大丈夫ですよ。咲夜さんは、お嬢様たちのところに行ってあげてください」

「……そう。わかったわ」

 

 大図書館の本の整理という一点だけならば、さしもの咲夜であっても小悪魔に一日の長がある。咲夜もそれがわかっているので潔く引き下がり、

 

「では、お夕飯は腕によりをかけてお作りしますね」

「ええ、楽しみにしておくわ」

 

 ――咲夜ならてっきり、風邪で休んでしまったことを気に病んでいるのではないかと思ったが。

 意外にも責任を感じている風はなく、むしろ心配をかけた分だけみんなにお返ししようと意気込んでいるらしかった。ひょっとすると、月見がなにか言ってくれたのかもしれない。本当にもう心配はいらなそうだったので安心した。

 一礼した咲夜が踵を返そうとしたところで、尋ねる。

 

「ところで、咲夜」

「はい?」

「あなた、月見に今日一日看病してもらったわけだけど……本当に何事もなく終わっちゃったの?」

 

 パチュリー自身、色よい反応を期待しての問いではなかった。とりあえず、訊くだけは訊いておこうというくらいで。なので咲夜がさっと頬を赤らめて固まったのを見たとき、パチュリーもまた意表を突かれて思考が停止してしまった。

 まっさきに反応したのは小悪魔だった。たぶん、彼女の恋愛センサーが針を振り切る勢いでビンビンに反応したのだと思う。

 

「咲夜さん。――やっぱりなにかあったんですね? 最後の方、なんだか月見さんの顔をまっすぐ見れてませんでしたもんね? なにがあったんですか?」

 

 咲夜は小悪魔と目も合わせられず、

 

「……い、いえ、別に大したことじゃ」

「へえそうなんですか、大したことないなら話しても大丈夫ですよねさあ教えてくださいなにがあったんですか」

 

 小悪魔の声音が完全に据わっている。両手で抱えていた本を一発で棚に叩き込み、時間を止める隙も与えず急速接近する。その頃にはパチュリーの頭も再起動し、

 

「あら、一体なにがあったのかしら。これは気になるわねえ……」

 

 月見の顔をまっすぐ見れていなかった、というあたりも大変気に掛かる。口元で三日月の笑みを描きながら、小悪魔と一緒に咲夜を左右から包囲する。咲夜はじりじりと後ずさり、

 

「い、言わなきゃだめですか……」

「ダメです。今日一日、私たちがどんな気持ちで咲夜さんを見守ってたと思ってるんですか」

 

 まったくである。決して下心があったわけではなく、至って純粋潔白な気持ちで、せっかくだから咲夜にちょっとでもいいことがあればいいなあと願っていたのだ。それ故、なにかがあったというならパチュリーには当然詳しく聞く義務が発生するのだ。

 逃げ切れない――時間を止めて逃げたところで意味がない――と察して、咲夜はたどたどしく白状する。

 

「じ、実は、その……」

 

 要約すると、午後になってなかなか思うように休めないでいた彼女は、眠くなるまで月見に話相手をしてもらった。

 そのうちいつの間にかひと眠りして目を覚ますと、なんと月見が椅子に座ったまま舟を漕いでいた。

 

「そ、それで、なんといいますか……魔が差した、というかですね……」

 

 このあたりでパチュリーも小悪魔も、自分たちの想像を遥かに超えるとんでもないことが起こったのかもしれないと気づき始める。

 

「その……私、つい、我慢できなくてっ…………」

 

 ――ちょっと待って、これってもしかしてもしかしなくても!?

 ――まさか咲夜さん、アレですか!? アレやっちゃったんですか!?

 そんな感じで、パチュリーも小悪魔も心の中で驚天動地の大混乱に陥る。淡い恋心を胸に秘める乙女が、眠る意中の相手にこっそりとやってしまうこと――そんなの、答えはひとつだけといっても過言じゃあないではあるまいか。

 つまり咲夜が、あんなに無自覚で恥ずかしがりで引っ込み思案で生娘だった咲夜が、

 まさかまさかまさか、寝ているとはいえ月見にキ

 

 

「――月見様のお耳を、くしゃくしゃーって触っちゃったんですっ!!」

「「は?」」

 

 

 おいちょっと待て。

 待て。

 

「――耳?」

「は、はい。前々から触ってみたいと思ってて……」

 

 みみ。

 

「や、やっぱり、寝ているからってこんなのはしたないですよね……ああ私ったら、なんてことをっ……」

「「………………」」

 

 なんでいやんいやん恥ずかしがってんだこいつ、とパチュリーは急激に冷却されていく頭の中で思う。小悪魔が、期待の絶頂から真っ逆さまに墜落していくひきつった笑顔で、

 

「え、えーっとですね、咲夜さん。……他には?」

「他、ですか? ……あ、そういえばまつげが長くて綺麗で」

 

 ……………………………………。

 パチュリーと小悪魔は、すべてを察した。お通夜みたいな空気でお互いの顔を見合い、黙祷を捧げるように力なくため息をついた。

 

「パチュリー様……私、もうずっとこのままな気がしてきました」

「……私もよ」

 

 十六夜咲夜が月見と今以上の関係になる未来を、もはや二人は逆立ちしても想像できなくなってきたのだった。

 月見様のお耳、先の方は毛が短いんですけど根元の方はふさふさだったんですよ……! あと触るとぴくぴく動くのがかわいくて……! とわけのわからないトリップをしている咲夜の姿が、どこかの鬼子母神様と重なって見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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