銀の狐と幻想の少女たち   作:雨宮雪色

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竹取物語 ③ 「セレストブルー」

 

 

 

 

 

 大伴御行が鬼籍に入った。

 

 こちらの世界で知人を亡くしたのは、輝夜にとって彼が初めてだった。『龍の頸の玉』を求めて船を出した大伴御行(おおとものみゆき)が、嵐に呑まれ、海の藻屑と消えた。

 その報告を翁から聞かされた時、輝夜の心を支配したのは罪悪感ではなく、また憐憫でもなく、純粋な、身も凍るほどの恐怖だった。生まれて初めて、心の底から、恐ろしいと思ったのだ。

 御行の死ではなく。

 御行という人間、そのものを。

 なぜ御行がそこまで『龍の頸の玉』に執着したのか、輝夜にはどうしても理解できなかった。果たせるはずのない無理難題であることはわかっていたはずだ。御行に与えた難題――『龍の頸の玉』は、麒麟や朱雀と同格の神獣である龍を探し出し、頸にある玉を奪えというもの。龍なんて存在すら曖昧な幻の生き物だし、たとい世界のどこかで出会うことができたとしても、神獣故に、たかが人間如きに触れられる相手ではない。人間の力ではどうすることもできない、諦める以外に選択肢が存在しないその難題を、輝夜は拒絶の意味を込めて御行に押しつけた。

 それがわからないほど御行は馬鹿でなかったはずだ。だから彼は潔く輝夜を諦め、平穏無事にもとの暮らしへと戻るべきだった。

 なのに御行は愚かにも自ら船を出し、そして他愛もないくらいにあっさりと、死んだ。

 だから怖かった。御行の心が理解できなくて怖かった。己の理解が及ばないものを、未知のものを恐れる、恐怖心だった。

 御行が輝夜に向ける愛は、決して綺麗なものではなかった。それどころか、輝夜が今までに見てきたどんな愛よりも、ドス黒く汚れた愛だったと思う。

 こうも恐ろしい愛され方がこの世にあることを。そしてその感情を向けられる先が自分であることを。信じられなくて、信じたくなくて、心の芯まで凍るようだった。

 眠れない夜から数ヶ月が過ぎて、ようやく、忘れかけていたのに。

 

『お久し振りです、姫』

 

 いる。

 

『お元気でしたか?』

 

 目の前に、あいつがいる。

 

『帰ってきましたぞ。奈落の底から』

 

 あの時と同じ姿で。

 あの時と同じ瞳で。

 あの時と同じ顔で。

 輝夜の体を舐めるように、笑っている。

 

『他でもなく――』

 

 聞いてはいけないと思った。けれど恐怖で凍りついた体は、まばたきをすることも、指一本を動かすことも、敵わなかった。

 人を愛する目ではない。獲物を見つけた猛禽類のような。或いは垂涎の宝物を目の前にした好事家のような。どだい人に向けるものではない目を鬼火のように光らせて、彼は言う。

 

『――姫。あなたを、手に入れるために』

「――――――――!!」

 

 叫んだ。死してなお尽きぬ男の異常すぎる愛執に、恐怖の針が振り切れた。

 どうか夢であればいいと、そう願ったけれど。

 震える喉は裂けるほどに苦しくて、痛かった。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 ふいを衝かれたとはいえ、齋爾の行動は速かった。地下から迫ってくる凶々しい気配を察知するなり、翁のもとに駆け寄って小さな結界を展開し、直後津波の如き勢いで部屋に押し寄せてきた水をすべて弾き飛ばした。

 そして動揺した翁の声を宥めることもせず、即座に風の流れへと心を澄ませる。『風神』の二つ名を戴く齋爾にとって、風の流れから周囲の状況を読み解く程度は呼吸に等しく造作もない。

 風の流れは閉鎖的だ。屋敷を囲むようにして、巨大な結界が展開されている。無論齋爾のものではないし、銀山のものとも違う。夏空に溶け込む天色の天蓋は、人間が持たない異種の力――妖力によって制御されていた。

 この屋敷に再び現れた、物の怪の。

 

(チッ……)

 

 かぐや姫が席を外したあと、そのまま逃げ出したことにはとうに気づいていた。その上で齋爾が彼女を追わなかったのは、翁の無駄話に付き合わされて身動きが取れなかったせいだ。なにかと当たり障りのない話題でこちらを引き留めようとする翁に、彼が依頼主である手前もあり、なあなあとしたまま腰を上げることができなかった。翁が、平民の出とは思えないほどに話術に長けていたせいもあったのかもしれない。

 そこを突かれた。こんな真昼間から都の中心で暴れ回る妖怪がいることを、さすがの齋爾も予想してはいなかった。

 

「齋爾様、これはっ……!」

「ただの水です。翁殿は、どうか動かぬよう」

 

 突然の事態に浮き足立つ翁へとそれだけ言って、齋爾は更に風を読み解く。かぐや姫を捜す。依頼主に対しては申し訳ないかもしれないが、居場所次第では翁を置いてでも動き出さなければならない。物の怪の狙いは間違いなく、かぐや姫なのだから。

 屋敷の東側に、不自然に乱れる風の流れを見つけた。それは屋敷を覆う妖力の中心であり、同時に、

 

「――童!」

『っ……御老体』

 

 風の陰陽術が一、『遠鳴り』――風の流れを操って、声を、通常では決して届き得ない離れた“彼”のもとまで届かせる。

 齋爾とともに依頼を受けた陰陽師、門倉銀山。妖力の中心であるその場所に、彼と、そしてかぐや姫もまた、いた。

 

「童、貴様まさか――」

 

 答えは早い。

 

『ええ。……いますよ、黒幕が目の前に』

 

 齋爾は反射的に走り出そうとした。だが結界の外で、押し寄せた水はこちらの胸元ほどの高さまで満ちていて、齋爾の判断を迷わせた。

 

『待ってください、御老体』

 

 銀山から制止の声が掛かる。とりわけ語気が強いわけではないが、鐘のように頭に響く声だった。

 

「なんだ」

『御老体。申し訳ないですが、屋敷の者たちを外に避難させてあげてはくれませんか』

 

 齋爾は唇を歪め、銀山がいるであろう屋敷の東を睨みつけた。それは本来であれば、銀山の方が全うするはずだった役目のはずだ。

 そして、銀山が今身を置いている状況こそが、齋爾の。

『遠鳴り』の術越しに、銀山の苦笑した息遣いが聞こえる。

 

『御老体の望むところでないのはわかります。ですがあなたならわかっているでしょう。ここが既に、相手の掌の上だということを』

「……」

 

 無論、わかっている。屋敷のほぼ半分を沈めるだけの水を、瞬時に生み出した妖怪だ。間違いなく、水を操る能力を持っていると見ていい。

 であれば、水で覆われたこの屋敷は、既に妖怪の手中に落ちたも同然だった。

 

『ですので、向こうの注意がこちらに向いている今のうちに、皆を逃がしてやってほしいんです。……後々、屋敷の者を人質に取られた、なんてなると面倒ですから』

 

 ここは妖怪の掌の上であり、もはやなにが起きても不思議ではない。たとえその妖怪が、矛の先を屋敷の者たちに向けたとしても、なにも。

 

『風を操る御老体なら、あっという間でしょう』

「……」

 

 銀山の言葉の意図は、理解できている。風の陰陽術はなにかと細かく応用が利くから、屋敷の者たちを外に避難させるのであれば、齋爾なら銀山よりもずっと短い時間で終わらせられる。

 だが、納得はできない。かぐや姫を守るのは齋爾の役目だったはずだ。それをただの偶然で銀山に奪われてしまうのが、この上ないほど気に食わなかった。

 けれど同時に、気づいてもいた。初め屋敷の風を読んだ際に、齋爾は聞いていた。

 突如押し寄せた水に狼狽える、屋敷の者たちの声。結界のせいで外に逃げることもできず、口を衝いて出た助けを求める声。不安と恐怖に負けて齋爾と銀山の名を呼ぶ、その声を。

 

「…………」

 

 妖怪の襲撃に備え、最低限以外の使用人は避難させるよう翁に進言した。その最低限の者たちが、或いは避難し遅れた者たちが、助けを求めて齋爾たちの名を呼んでいる。

 確かに齋爾は、自他ともに認める女好きだ。かぐや姫狙いでこの依頼を受けたことも、決して否定はしない。

 だがそれでも、大部齋爾は陰陽師である。邪悪な妖怪を退け、人を救う者の名である。

 人を救うために陰陽師になったのかどうかは、今となっては忘れてしまったけれど。

 けれど人を救うことが嫌いなら、齋爾はそもそも、陰陽師などにはなっていないのだ。

 

「……っ!」

 

 迷いを払うように強く、舌打ちし、そして同じくらいに強く、齋爾は叫ぶ。『遠鳴り』の術など使わずとも、銀山のもとまで声が届くように。

 

「童! そう言ったからには、守れるのだろうな!?」

『……そっちこそ』

 

 皮肉めいた声で、銀山は笑った。

 

『あんまりのんびりしてると、姫への見せ場、奪っちゃいますからね?』

「……上等だ!」

 

 この時齋爾は、笑ったと思う。都に流れ着いて高々数年の青二才が大層な口を利くから、それが生意気で、おかしかった。

 風を読み解き、妖怪の気配へと意識を澄ませる。そんなことをせずともこの大量の水を見れば察しがつくのだが、やはりなかなか強力な妖怪のようだった。齋爾の腕を以てしても、楽に勝てるかどうかはわからない。

 ならば或いは、銀山がやられそうになった瞬間に颯爽と助けに入るという形も、悪くはないかもしれない。それに、屋敷の者たちの命を積極的に救ったとなれば、かぐや姫からの評価も上がるだろうし。

 そんな露骨な打算の末に、都随一の陰陽師は動き出す。

 

「齋爾様、かぐやは……」

「今は、あの若造がなんとかやっているようですな。……姫のことは一度あやつに任せ、我々は屋敷の者たちの避難に当たりましょう」

 

 不安げに結界の外を見つめる翁へ、速やかに答えを返して。

 

「申し訳ないですが、御老体に少しばかり鞭を打って頂きますぞ。事態は一刻を争いますからな」

 

 風が流れる。一呼吸分のそよ風は、されど瞬く間に力強い旋風となる。

 そして一人の人間が、風神へと姿を変える。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 輝夜が御行の存在を恐怖するようになったのは、なにもその死を聞かされてからのことではなかった。屋敷に遥々求婚に訪れたかの姿を初めて目の当たりにした時から、漠然とではあるが、肌が粟立つ感覚を覚えていた。

 御行の愛は黒い色をしていた。御行が輝夜に向ける目は他の貴族たちのどれとも異なっていて、輝夜の美貌に皆が見惚れる中、ただ御行だけは、不気味に細めた双眸の奥で、まとわりつくような粘性のある光を抱えていた。

 あれは決して異性への関心ではなく、ある種の征服欲、支配欲に満たされた目だった。

 必ずお前を手に入れてやる。

 垂涎の宝物を求める蒐集家の。

 人ではなく、物に対して向けられる目だった。

 だから輝夜は自分でも気づかない本能の領域で御行を恐怖し、五つの難題の中で最難ともいえる『龍の頸の玉』を彼へと課した。

 そして御行は必然、難題の解決に失敗し、輝夜との婚姻を諦め――それで終わるはずだったのに。

 天色の空を取り込み澄んだ御行の瞳は、一方で身の内で燃えたぎる征服欲を如実にする。その奥で唯一色の変わらない闇色の瞳孔が、輝夜の体をぎょろりと貫いた。

 

『どうされたのですか……姫?』

「――ッ!」

 

 喉に刃物を突きつけられたようだった。全身が総毛立つ。頭が真っ白になって、体中から血の気が失せる。咄嗟に目を逸らすことも、息をすることすらも忘れて、竦み、凍りつく。

 恐怖に潰された今だからこそわかる。トラウマだったのだ、御行の存在は。人から愛されるということは必ずしも綺麗なものではないのだと、輝夜の心に楔を打ち込んだ。だから、死してなおこの世界に舞い戻り、輝夜を手に入れようとする御行の執念に、震える体を抑えることができなかった。

 正直、自分一人だったら半狂乱にでもなっていたかもしれない。それでも輝夜が膝を折らず立ち続けられたのは、銀山が、こちらの肩を強く支えてくれていたから。

 きっと銀山の手には、足場の悪い屋根の上で輝夜を支える、それ以上の意味はなかった。その証拠に銀山からは、慰めるような言葉など一つも飛んではこない。

 だが、指先から伝わる彼の体温が、人のぬくもりが、輝夜の心を支えてくれたのは事実だった。

 

「姫」

 

 バリトンの声音で、銀山が小さく、それだけ言った。

 輝夜の体を凍てつかせていた氷が溶け、力が戻る。

 

「ッ……」

 

 そうだ、怖がっている場合ではない。たとえ恐怖を抑えられなくても、心で負けてはいけない。

 

「立てますか?」

 

 頷く。心を強く持ち、縋っていた銀山の襟から手を離し、一人で立てば、銀山がこちらを守るように一歩前に出た。

 

「後ろに」

「う、うん」

 

 銀山の言葉は短かったが、迷いのない声音は輝夜の恐怖を和らげた。輝夜は言われるがまま彼の背に隠れ、向かいの御行を強い意志で睨みつけた。

 最後に見た姿となにも変わっていない。頭に烏帽子、体に胡服、片手に笏を持ち、柳幽霊のような黒髪に、生気の薄い白肌と、底の見えない征服欲で満たされた瞳。恐ろしいくらいになにも、変わってはいない。

 ふいに、御行が強い不快の色で瞳を眇めた。

 

『姫……そんなところで、なにをしておられるのですか』

「なっ……なん、ですか」

 

 問いの意味がわからない。震える声でそれだけ返せば、遮るように、銀山が強く右の袖を振った。一枚の札を構え、薄い霊力を放って牽制する先は、御行。

 御行が嘲るように低く笑った。

 

『これはこれは……陰陽師がただの人間に札を向けるのか』

「冗談」

 

 対して銀山は、おどけた調子で小さく笑う。

 

「お前が人間なんだったら、世の中の物の怪はみんな人間だ」

 

 衝撃は、なかったと思う。死んだはずの人間がこうして舞い戻ってくることの意味を、なんとなくではあるが、輝夜も覚悟はしていた。

 一度死んで、甦るなど、ただの人間にできる芸当ではない。

 だから、今の御行は。

 

「……」

 

 御行は言った。帰ってきたと。あなたを手に入れるために、帰ってきたと。輝夜が欲しくて、欲しくて欲しくて、たまらなかったから。だから御行は、人を捨てまでしてまた輝夜の前に戻ってきた。

 確信的な予感があった。一度御行の手中に落ちてしまえば、少なくとももう二度と、輝夜はこの屋敷に帰ってくることはできない。御行は、輝夜を人として愛さない。己の心を慰める道具としてのみ、愛すだろう。

 もしもその感情を、正しく愛という名で呼ぶのなら。

 きっとこの体は、瞬く間もなく芯まで凍るだろう。

 

「っ……」

 

 体に震えが戻ってくる。だから輝夜は、寄り添うようにそっと、銀山の服の背を掴んだ。

 ――悪寒、

 

「……!」

 

 全身が痺れるような悪寒だった。輝夜は音がするほど大きく息を呑んで、そのまま呼吸が上手くできなくなった。御行が、輝夜と銀山を睨みつけ、瞳を激しい憎悪の炎で燃やしていた。

 ああ、人の瞳は、あれほど激しい炎で燃えるものなのか。

 いや――御行は既に、人ではない。赤と黒が混じり合ってたぎる炎は、まるで無数の怨恨を燃やし尽くす地獄の業火のようで。

 

『なにをしているのですか、姫』

 

 初めの問い掛けは、瞳の業火が嘘であるかのように優しく、輝夜へ。

 そして次は、燃える憎悪をそのままに、銀山へと。

 

『――なにをしている、貴様』

 

 その問いを直接向けられたわけでもないのに、輝夜の肌がさあっと粟立つ。

 

『貴様、姫のなんだ』

 

 屋敷に満ちた水を隅々まで凍らすほどの冷たい問い掛けに、けれど銀山は答えなかった。輝夜のように言葉を失っているのではなく、御行から向けられる憎悪を楽しむように、薄く笑んだ表情のまま、答えなかった。

 

『――答えろ!!』

 

 御行の大喝は大気を震わせ、満ちた水面をも波立たせる。

 それすらも、受け流して。

 

「――嫉妬というのは、恐ろしいね」

 

 波立った水面を鎮めるように穏やかな声で、銀山は緩く首を振った。

 

「情愛は、時に容易く人の心を狂わせる。……或いは憎しみよりも。過去の依頼でも、この手の情が原因で起こった事件というのは、多かったね」

 

 さすがに妖怪化してるのは初めてだけど、と小さく付け加えて、銀山は振り返ると輝夜の手に一枚の札を握らせた。

 

「これを肌身離さず持って、下がっていてください。結界の札です」

「で、でも――」

 

 輝夜は口を衝いて銀山を引き留めようとしたが、言葉はそれ以上続かなかった。でも――なんだというのだろう。なにかを言わなければならない気がするのに、どれだけ考えても続く言葉は出てこなかった。なぜ銀山を引き留めようとしたのかすら、わからなかった。

 言葉に窮する輝夜を置いて、御行が小鼻を鳴らして笑った。

 

『この私を退治するというのか。笑わせる』

 

 だがまあ、と唇を歪め、

 

『その方が都合がいいな。――貴様は、邪魔者だ。二つの意味でな』

 

 だから御行は、輝夜に微笑みかける。劣情を押し殺し、輝夜の心に爪を突き立てるように、

 

『姫、少々お待ちください。今から、そこの邪魔者を始末致しますので』

「――!」

 

 輝夜がなにかを言うよりも先に、銀山は動いていた。縋りついていた腕を振り払われ、行き場をなくした輝夜の両手が宙を彷徨う。

 前へと歩み出た銀山の背に、焦燥だけが輝夜の心を駆り立てた。なにかをしなければならないはずなのに、なにかを言わなければならないはずなのに、けれどどんなに考えても体は動かなかったし、唇もまた、言葉を紡ぐことはなかった。

 

『御覧ください、姫。黄泉の世界で得た我が素晴らしき力、お見せ致しましょう。姫もきっとお気に召してくださる。今はまだ成し遂げておりませぬが、この力があれば龍の頸の玉を得ることも容易いでしょう』

「へえ」

 

 御行の口上を、銀山の無感動な声が遮った。

 

「それは面白そうだね。見せてくれないか?」

『……』

 

 御行は目を眇め、

 

『……貴様を殺す力の姿だ。精々、胸に刻め』

 

 大地がかすかに哭いた。屋敷を覆う水が震えた。御行の体が水の中に戻っていく。蝋が溶けるようにどろりと崩れ、音もなく水底へと沈み込んでいく。

 人間の形をしていたものが溶けて消える――そんな恐ろしい光景を目の当たりにしたにも関わらず、輝夜の心は波立たなかった。ただ、御行は本当に人でなくなってしまったのだと、今更ながら腑に落ちるように理解できた気がした。

 そして水面を切り裂き現れるのは、もはや人ではない。水を巻き上げ、飛沫を振りまき、屋根の上の輝夜たちですら見上げるほどに高く鎌首をもたげたのは、巨大な水の蛇。

 澄んだ水の体が蒼天を取り込み、天色に染まって輝く姿は。

 醜悪なまでに、美しかった。

 

「……人の姿も捨てたか」

 

 とりわけなにかを感じた風でもなく、銀山の言葉は淡々としていた。雨となって落ちる水の雫を身で受けながら、静かに蛇へと目を眇める。

 蛇の額となる場所に、御行の顔が埋め込まれていた。顔形は変わっていないが、やはり天色の水で透き通っている。ぎょろりと、まさしく蛇さながらに瞳を動かして、御行は銀山を見下ろした。

 

『私は、黄泉にて人を超越する高みに手を掛けた。……人の体は脆すぎる。故に、より強い体へ進化しただけのこと』

「ああ……人の体が脆いというのは同感だ」

 

 まるで心当たりがあるというように低く笑って、銀山は新たに札を抜き放つ。

 

「ぎ、銀山……」

 

 輝夜は銀山の名を呼んだ。名を呼ぶことしかできなかった。それで一体なにになるのかはてんでわからなかったが、それでも呼ばずにはおれなかった。

 銀山は振り返らなかった。一瞬の間だけ意識を確かに輝夜へと向けて、決して大きくはない、けれどよく通る強い声で言った。

 

「では、少しばかり行ってきます」

「あ、」

 

 開戦の鐘が鳴る。水蛇の背後から、轟音とともに大量の水が巻き上げられていく。天に昇った水柱は、まるで鯉が龍へと姿を変えるように巨大な刃の群れとなり、透き通る矛先を静かに銀山へと向けた。

 静寂は一瞬。響くは魔の声。

 

『――では、死に給え』

 

 刃の葬列が、雨となって銀山を打つ。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 愛は、時に憎しみよりも恐ろしく、重い。それが、銀山がこの都で生活を始めての数年で学んだ最たるものだろう。

 例えば過去の依頼でこの世に悔いを残して成仏できなかった霊がいたとすれば、正確にどちらが多かったかは定かでないが、およそ半数は憎しみ故の不浄霊であり、また半数は愛故の不浄霊だった。愛には、或いは憎しみよりも容易く人の心を狂わせる力がある。行きすぎた情愛は、人を獣のようにしてしまう。

 降り注ぐ水の刃に対し、銀山は焦りなく動いた。札を媒体に周囲に防御の結界を展開し、攻撃を無効化する。

 陰陽師の戦法は基本的に受け身だ。人間と妖怪とでは身体能力に大きな隔たりがあるから、初めから後手に回ることを前提にした戦い方をする。いかに相手の攻撃を凌ぎ反撃するか。いかに少ない手数で短時間で勝利するか。

 その解答の一つが、――火力。

 一撃必殺で、相手を倒すということ。

 

「――狐火!」

 

 水の刃をすべて弾き返し、生み出すのは紅蓮の炎。篝火のように小さな火種は、されど銀山が結界を解くと同時に、爆発的な勢いを以て燃え上がる。銀山が腕を振り、放てば、それは既に篝火ではない。

 巨大な水蛇の体すらも呑み込む、龍の如き烈火となる。

 

『!』

 

 御行が瞳を驚愕で凍らせた時には、既に遅い。その喉笛に烈火が牙を突き立て、瞬く間もなく全身へと燃え広がる。過去幾つもの命を灰燼へと変えてきた、銀山が得意とする強力無比の一撃だった。

 だが、

 

「……」

 

 銀山は霊力を緩めない。直撃させれば大抵の妖怪を葬る必殺の豪火とはいえ、御行はこの程度であっさり終わるほどの雑魚でもない。それどころか彼は、銀山にとって最も分の悪い相手だともいえた。

 その理由が、『五行相剋』――水剋火。

 

 炎は、水によって消し止められる。

 

 水柱が立ち上がる。空気を震わせ天に昇った水は、今度は刃と変わるのではなく、形をそのままに御行の体を包み込んでいく。

 それだけで、必殺の炎は呆気なく打ち破られた。炎が消え、水が残るのは自然の理。赤を払い、再び空の色で透き通った無数の鱗が、水蛇の健在を告げていた。

 

『――舐められたものではないか』

 

 低い声音には嘲りの色がある。

 

『水そのものであるこの私を、まさか燃やせるとでも思ったか? 水は炎よりも強いと、学のない平民ですら知っておろうに、陰陽師とやらは存外間抜けなのだな』

「……一番得意なんだよ。炎はね」

 

 銀山は肩を竦めて、緩い吐息を落とした。

 

「とはいえ、こうも簡単に破られちゃあ形無しだけど」

 

 狐火を破られるであろうことは予想していたが、それで傷の一つすら与えられないのは予想外でもあった。炎の術を得意とする銀山にとって、ここまで相性が悪い相手というのも稀だろう。

 だが、

 

(なるほどね、そういうことか)

 

 今の御行の発言は迂闊だ。お陰様で、やつを倒すにはどうすればよいか、銀山の脳裏で解答が組み上げられていく。

 

(けど、それには御老体の力がほしいな)

 

 今、齋爾は逃げ遅れた屋敷の者たちを助けるために動いている。こちらに駆けつけるまでは、まだ時間が掛かるだろう。

 御行は幸い、輝夜以外の屋敷の者たちへは興味の欠片も持っていないようだった。齋爾が動いていることには気づいているだろうが、それでなにか動きを起こすわけでもない。

 御行の殺意は、銀山だけに向けられている。故に今は、時間を稼がなければならない。

 

『次は私の番だ、小僧』

「……!」

 

 御行の左右から、二つの巨大な水柱が上がる。巻き上げられた水は、再び刃へとその姿を変えていくが、

 

『今度は、加減などせぬぞ』

 

 だが、初撃と比べて尋常でないほどに数が多い。百を優に超え、或いは千にすら届くかもしれない刃の葬列が、銀山の天上を埋め尽くしていく。

 

「ちっ……!」

 

 天を見上げるだけで、悪寒が背筋を駆け抜けるようだ。銀山は舌打ちし、より上位の結界の札を抜き放った。

 結界を張るのと、刃の葬列が殺到するのとは同時だった。間一髪で展開された防壁に無数の刃が激突し、とても水から作られたとは思えないほど激しい衝撃を残して弾け飛んでいく。

 銀山は結界を破られないように霊力を強く保ちながら、素早く背後を一瞥した。屋根の端まで下がった輝夜は、この刃の殺到に巻き込まれてはいない。泣き出しそうな顔をしながら、何事か銀山に向けて必死に叫んでいる。絶え間なく結界を打つ水刃たちに掻き消され声は聞こえないが、どうやらこちらの名を呼んでいるらしい。

 そのことを意外に思いながら、銀山は再び前を見据えた。輝夜が巻き込まれていないのなら問題はない。やはり御行に輝夜を巻き込む意思はないようだから、であれば時間を稼ぐ方法はいくらでも――

 ――ふと、木々の砕ける音が、聞こえて。

 視界が傾いだ。咄嗟に足元へ目を遣った銀山は、続け様に顔を歪め、舌打ちした。――やられた。完全に失念していた。

 ここは地面の上ではない。降り注ぐ無数の刃に穿たれた屋根は、今まさに、崩落しようとしていた。

 

「……!」

 

 崩落に巻き込まれれば、落ちゆく先は周囲に満ち満ちた水の中。水を操る力を持つ御行の前では、完全に命取りだ。

 木々が無数の欠片となって砕け散り、支えを失った足元が落下を始める。是非を論じている暇はなかった。一か八か、銀山は背後に跳躍し、結界の外へと飛び出した。

 ……降り注ぐ水刃が直撃しなかったのは、偏に運が良かっただけだろう。だがいくつもの刃が体を掠め、痛みと血が傷口から吹き出した。何ヶ所に傷を負ったかなど数えられるはずもない。刃の雨を抜ける頃には完全に体勢を失っていて、銀山は屋根の上を転がった。

 

「銀山ッ!!」

 

 輝夜の悲鳴に意識を叩かれる。斜面を転げ落ちそうになるのを耐え、体中に走る鋭痛を押し殺し、立ち上がろうとする。

 だが、できなかった。

 水面から伸びた水の腕に、足を捕られている。

 

「くっ……!」

 

 気づいた時には手遅れだった。視界が回転しなにもわからなくなる。しかしすぐに背中に強い衝撃が走って、直後、全身が水中に沈んだのがわかった。

 投げ落とされた。

 

(……!)

 

 行動は反射だった。規模も強度も度外視してとかく己の周囲に結界を張り、周りの水を御行の制御から切り離す。結界に守られ、御行の妖力が行き届かなくなった水たちは、ただそこを漂うだけの液体へと戻っていった。

 

『チッ……そのまま水の中に引きずり込んでなぶり殺してやろうかと思ったが、随分と悪知恵が働くものだな』

 

 水上へと顔を出せば、見上げる先で水の蛇が苛立たしげに鎌首をもたげている。銀山はなにも言わず、ただ小さく肩を竦めた。

 状況は、決してよくはない。水の中とはすなわち、御行の掌の中と同じだ。今は苦し紛れに張った結界で事なきを得ているが、所詮、今だけはという話でしかない。

 御行が、く、と含むように喉を鳴らした。

 

『姑息な手だな』

 

 銀山はなにも言い返さない。自分が一番よくわかっていることだから。

 

『――ではそろそろ終わりにしようか! 姫も退屈なさっているしな!』

 

 御行の左右から再び水が巻き上がる。天色の空が、再び無数の刃で覆い尽くされていく。

 

『胸まで水に沈んだその状態では、もはや逃げられまい!』

 

 回避は不可能、結界を破られれば最期。わかっている。傍から見れば、これは既に絶体絶命の一歩手前だ。

 だが銀山の心に焦りはなかった。思考を回転させる。焦る程度で現状を打開できるのであればいくらでもそうしよう。人と妖。身体能力で大きく負ける相手に、心でまで負けてしまったら、勝ち目はない。

 

『――終わりだ、小僧』

 

 宣告の刃が落ちる。全天を覆う刃が降り注ぐ様は、もはや雨と呼べる次元ではない。轟音とともに雪崩落ちる刃の瀑布に、世界のすべてが押し潰されていく中で。

 銀山は静かに、水で濡れた一枚の札を、手に取った。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

「銀ざああああああああん!!」

 

 叫んだ喉が切り裂かれるほどに痛い。水の腕に投げ飛ばされ、二十間(※約三十六メートル)以上も(くう)を切って水中に消えた銀山へと、那由多の刃が降り注ぐ光景は、とても坐視できるようなものではなかった。

 降り注ぐ水の刃は滝のようで、もはや銀山の姿を見ることすら敵わない。

 生きているのか、死んでしまったのかすら、わからない。

 ただ刃だけが、屋敷に満ちる水から延々と作り出され、降り注いでいく。

 

「ッ――……!」

 

 殺されると思った。このままでは殺される。死んでしまう。

 銀山が。

 

「あ、あああ……!」

 

 全身が白熱して、熱に浮かされて息ができなくて、わけがわからなくなってしまいそうだった。頭が割れるように痛い。このままではダメだと悲鳴を上げている。早くなんとかしなければならないと絶叫している。

 だがこの場に齋爾はいない。そして輝夜にはなんの力もない。今だって、目の前の現実に恐怖し震えるだけで、銀山へと手を伸ばすことすらできない。

 普通の人よりただ無駄に長生きしているだけで、無駄に顔が整っているだけで、それ以外の取り柄なんてなに一つもない。そんな輝夜に、できることなんて、なにも――

 

 ――本当に私は、なにもできないのか?

 

「――……」

 

 場違いな思考だったろう。妖怪退治のプロですら押し負かすような相手に、ろくな力も持たない女一人が立ち向かってなんになるのか。

 でも、それでも、強く心臓を叩かれるような、気がした。

 御行の意識は、完全に銀山へと逸れている。残虐めいた笑顔を貼りつけては、刃の降り注ぐ様をまんじりと見つめている。

 だから輝夜は、もはや行動を迷わなかった。着物を脱ぎ捨てる。下着姿になることを、今更躊躇ったりはしない。半壊した屋根から飛び降り、水の中へ身を躍らせる。水は輝夜が思っていたよりもずっとずっと深かった。溺れてしまいそうになって、泳ぎと呼べるほど垢抜けた真似はできなくて、結界の札だってどこかへ手放してしまった。

 けどそれでも、必死に水を掻き分けて、手を伸ばす。

 “それ”がここにあることを、偶然だなんて思わなかった。きっと輝夜のために、きっと輝夜と同じように水を掻き分けて、ここまでやってきてくれたのだと思った。

 一対の、弓矢。

 それを手に取って、輝夜は懸命に周囲を見回した。記憶だけを頼りに水を進み、やっとの思いで足場を見つける。足に当たる硬くて荒い感触は、庭の一角にあった景石だった。その上に立てば水位が腰のあたりまで下がって、ようやく弓を構えられるようになった。

 御行との差は思っていたよりも開いている。正確な距離はわからないが、三十間ほどはあるだろう。

 けれど空の色を取り込んだ大きすぎる蛇の姿は、なによりもはっきりと輝夜の目に映る。

 これなら大丈夫だと、強く自分に言い聞かせた。

 

「見てなさいよ……」

 

 教えてもらったのはたった一度だ。かつての教育係の弓を操る姿に惹かれ、好奇心から手に取って、そしてさほどもしないうちに飽きてやめた。巻き藁以外の的を射たことなんて、一度もない。

 けど、それでも。

 

「ッ……!」

 

 矢を当て、弦を引く。恐らく、近衛の男が使うような剛弓だったのだろう。弦の張りは恐ろしいほど強くて、指が千切れ飛んでしまいそうだった。

 だが輝夜は、決して力を緩めない。

 それでも、やるんだ。

 

「私だって……!」

 

 腕に力を。矢に霊力を。手が傷つこうが、指が千切れようが、輝夜は構わない。

 矢を番い、引いて。

 狙いをまっすぐに、御行へと。

 彼を敵だとは思いたくなかった。彼のことは大嫌いだったけれど、死んでほしいと思ったことは一度もなかった。こうして弓を向けることにだって、決して心が痛まないわけではない。それは、どんな形であれ、顔を合わせ知り合ってしまった弱みだったのかもしれない。

 だが、彼がこうして、銀山を殺そうとするのなら。

 

「私だって……ッ!」

 

 銀山を失いたくない。理由はわからないが、それが輝夜の素直な気持ちだったから。

 だから輝夜は、弓を引く。

 

「――私だって、守りたい人の一人くらい、守るのよ!!」

 

 想いを込めた輝夜の霊力は、か細い矢に淡い光の紋様を描いた。そうして放たれた矢は、水の刃が降り注ぐ空を切り裂き、一筋の彗星となる。

 弓を握ったのはもう何百年振りにもなるのに。動く相手を射るのは初めてだったのに。それでもその彗星は、できすぎなくらいにまでまっすぐに、水蛇の右目を貫いていった。

 

『ぐ、ぬ……!?』

 

 蛇の巨影が傾ぐ。瞳を形作っていた水が弾け飛び、ふいを衝かれた御行の妖力が大きく乱れた。無限に空へと昇り水刃を生み出し続けていた、二つの水柱が消えていく。

 その直後――呼応するように、銀山へと降り注いでいた水刃が、大気の爆発する轟音とともにすべて消し飛んだ。

 

『……!』

 

 御行が目を剥いた先で、バリトンの声が鳴る。力強い霊力の奔流が生まれる。

 

「――たった一枚しかない札だ」

 

 危機を脱し、瞳に反撃の光を宿した銀山が、

 

「友人が使っていた技を再現した札。友人の言葉を借りれば――ぶっ飛ばします、といったところだ」

 

 宣言、

 

「――『吼拳』!!」

 

 なにが起こったのかは、輝夜にはわからなかった。銀山が『吼拳(こうけん)』と呼んだ術が果たしてどのようなものだったのか、わかったことといえば、獣の咆吼が輝夜の鼓膜を打ち、屋敷中の水を激しく波立たせたことであり。

 そして直後に、水蛇の頭が粉々になって消し飛ばされたこと、だけだった。

 

「……あ」

 

 あまりに一瞬の出来事だったから、脳が追いつくまでに時間がかかったが。

 

「……や、やった……?」

 

 頭が、吹き飛んだのだ。脳が潰れれば、人間だって、妖怪だって一巻の終わりだ。

 だから、銀山が勝ったのだと、そう思って、彼の名を呼ぼうとした、輝夜の耳に。

 

「――馬鹿野郎ッ!!」

 

 声は鋭く、強く。銀山が輝夜を見て、顔を強ばらせて、歯を剥いて、叫んでいる。それが輝夜が身を縮めてしまうくらいに鬼気迫っていたから、きっと彼は、怒っていたのだと思う。

 どうして怒られるのかがわからなくて、一瞬は、頑張ってあなたを助けようとしたのにどうしてそんなことを言うのと、悲しくも思ったけれど。

 輝夜は、忘れていたのだ。二人の戦いに固唾を呑むあまり、忘れていたのだ。

 御行は確かに、銀山を殺そうとしていた。だがそれは、所詮は本当の目的を果たすための一つの通過点でしかなく。

 御行の本当の狙いは、あくまで自分なのだと、いうことを。

 忘れていた。

 

『――――!!』

 

 咆吼。周囲の水が逆巻き、頭を失った蛇へと殺到し、その体を再生させていく。

 

「……!」

 

 完全な姿を取り戻した水蛇が、くねらせた体をバネのようにし、水を切り裂いて身を翻す。

 高笑いのような雄叫びを上げて。

 巨大な顎門を限界まで開いて。

 迫る先は――

 

「――あ、」

 

 小さく声を漏らす、それ以外のことなんてなにもできなかった。助けを求めることも、逃げ出すことも、戦うことも、できなかった。

 

 なにもできないままで、蓬莱山輝夜は、押し寄せる瀑布の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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