永遠は英雄となりえるのか   作:リョウタロス

3 / 10
Gは別に黒い悪魔ではありません。いや、確かにこのGもどす黒さなら負けてないけど


Episode:02 Gの使い

「んっ、ううん……ここは……そうか、俺、あそこで寝ちゃったのか」

 

気がついた俺の視界に映ったのは見慣れた天井

どうやら両親は眠ってしまった俺をベッドに寝かせてくれたらしい

 

時刻を見ると今は午前0時、帰ってきた時が17時頃だったから7時間くらい眠ってしまっていたようだ

おかげで眠気もほとんど無い

 

「遅いお目覚めですね。てっきり夜明けまで起きないのかと思いましたよ」

 

「!!」

 

突然枕元の方からした声に俺はベッドから飛び起き床に転がりながら声の主から距離を取る

 

俺が寝ていたベッドのすぐそばにいたのはカソックを着丸眼鏡をかけた長身痩躯の黒髪の男だった。片手には銀色のアタッシュケースを持ち5歳児である俺の行動に驚きもせずこちらを見ている

 

 

「誰だあんた。いつどうやってこの部屋に入ってきた」

 

「いつ入ってきたかと問われればつい今しがたと言ったところでしょうか。まあ、あなたが起きるまで別の場所からあなたのことを見ていましたが。それで、私が何者か、でしたね。それは“あの老害の使い”と言えばわかりますか?」

 

「あのクソ神の部下か!」

 

老害という単語だけでこの男がどこの奴か把握できた。俺には他にも老人の知り合いはいるが基本はいい人ばかりだ。俺が知ってる中で老害という単語が唯一似合うのはあのクソ神しかいない

 

 

「5年以上何も接触してこなかった癖にいきなり何のようだ」

 

「こちらからの介入でやることなど簡単に想像がつくでしょう?貴方の特典を届けに来たんですよ」

 

「解せないな。なんでわざわざ個性の診断を終えた今日にしたんだ。もっと前に渡してくれてもよかっただろ。あのクソ神が何の個性もない子供の育成記録をただ見てるだけなんて暇潰しにもならないことする筈がねえ。何か裏でもあるんじゃないのか?」

 

「はぁ、面倒ですね。5年間貴方と接触出来なかったのはあの老害の命令ですよ。今日、貴方の個性診断が終わるまでこの世界への介入を禁じるとね。こんな私にとって何のメリットも無い仕事などさっさと終わらせたかったんですが一応上司の命令ということで今日まで接触しなかったんです」

 

「つまりあんたもなんで奴が5年間もこの世界への介入を禁止にしたのか知らないってことか」

 

俺の言葉に男はため息をつきながら頷き懐から一通の手紙を取り出す

 

 

「あの神から渡してこいと言われた手紙です。恐らくそれに全て書かれているでしょう」

 

 

俺は差し出された手紙を受け取り封を開き取り出し開くとその手紙は謝罪でも挨拶でもなく予想外の言葉から始まっていた

 

 

 

 

 

「おい……なんだこれは?」

 

「どうしました?そんな鳩が濃硫酸かけられたような顔をして。子供が言うような幼稚な罵倒でも書き連ねてありましたか?」

 

 

 

 

男に手紙を手渡すとそれを読んだ男は呆れたようにため息を吐き「またこっちの仕事増やすような真似しやがってあのクソじじい」とぶつぶつ愚痴を呟き始めた

 

書かれていた内容はこうだ

 

『 以下の条件を破った場合お主の特典は失われる

 

・雄英高校入学試験まで他者に変身を見られるべからず

 

・雄英高校入学試験まで正体をばらすべからず

 

・他者に変身させるべからず

 

・雄英高校 ヒーロー科に入学すること

 

・オール・フォー・ワンに味方するべからず』

 

 

 

 

手紙に書かれていたのはメッセージでも能力の詳しい説明でもなかった

書かれていた言葉は『誓約書』、神から恩恵と共に与えられるのはルールという名の楔。聖書の神でももうちょい色々教えてくれるぞ

 

しかしこのルールもかなり面倒だ

3つ目と4つ目の2つはまだいい。俺も他人に変身させる気なんて元から無いし進学先を決められてもまだ小学校にすら入っていない今なら問題視するほどのことでもない

だが上2つは厄介だ。誰にも見られず正体がバレるわけにもいかない。それは目の前で見られるだけでなくこちらが気づかずに見られること等も含まれているのだろう。変身する時と解除する時に毎回必ず周囲に人はいないか確認しないといけないのはでかいデメリットだ。緊急の場合にそんなことしていたら間に合わなくなる可能性だってある

あとオール・フォー・ワンて誰だ

 

「あのクソ神、ふざけたルール押しつけやがって」

 

「まったくです。これどうせ特典が失われるとか言いながら回収するの私達部下の仕事になるんですから……」

 

そう呟く男の顔にはもう諦めたような哀愁が浮かんでいた。典型的な上司に恵まれなかったタイプの人かこの人

 

 

「……あんたも苦労してんだな」

 

「いえ、もう慣れましたから……」

 

自嘲めいた笑みを浮かべたこの人の顔見てたらもうこの人がクソ神の部下というどうでもよくなってただ自分と同じあの神の被害者なんだという仲間意識のようなものが湧き始めていた。とりあえずこの人?には優しくしよう。同じ神の被害者なんだ。同じような被害者の人が他にもいたら被害者の会でも作ろうか

 

 

 

「遅くなりましたね、それでは貴方に力を与えましょう」

 

男がアタッシュケースを開くと中には俺の特典であるロストドライバーとT2ガイアメモリ一式、エターナルエッジが入っていた

 

それをそのまま手渡されると思っていた俺は受け取ろうと手を出すが男はアタッシュケースをこちらに渡さない

不思議に思い男に顔を向けるが男は何かに気づいたように苦笑いをした

 

 

「ああ、そうでした。貴方には力の譲渡の仕方を教えていませんでしたね」

 

男がそう言った瞬間アタッシュケースの中身は一瞬でカラフルな液体に変わり空中で集まると一つの液状の球体になった

 

 

俺がその光景に呆然としていると男は球体を手のひらに乗せこちらに差し出してきた

 

 

「飲んでください」

 

「え」

 

 

え、この色んな絵の具水混ぜ合わせまくったような水飲まなきゃだめなの?そのまま渡されて普通にベルトを持ち歩いてるのじゃだめなの?

 

「こ、この液体の塊をか?」

 

「はい」

 

「絶対に?」

 

「絶対にです」

 

 

「ど、どうしても飲まなきゃだめなのか?普通に持ち歩くのは……」

 

「すいません、この世界でこの力を使うには個性として世界に認識させ馴染ませなければならないんです。同情はしますがこれ以外の方法だと注射で臀部から注入するしか「喜んで飲ませていただきます!」

 

 

とは言ったものの……。この球体、元が元だからか大きさはバスケットボール程とけっこう大きい。今の身体だとこれを飲みきれるかも怪しいぞ

 

 

「それじゃ口を開けてください。一気にいきますよ」

 

「えっ、ちょっと、まっ――

 

まさかと言おうとした瞬間俺の口の中に大量の液体が入ってきた

その液体の勢いとあまりの味に俺の意識はまっくらになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、気を失ってしまいましたか」

 

 

男は倒れこみそうになった斗和の身体を支えるとその身体を抱えるとベットに寝かせる

そして自分の仕事が終わった男は帰ろうと思ったがふと昼間の斗和に感じた違和感を思い出した

 

 

(そういえば、昼間、彼は転生者にしては珍しく自分の感情をコントロールも理解できていませんでしたね。少し失礼して、見させてもらいますか)

 

 

男は気を失っている斗和の額に指を当てると地球の言語ではない言葉を呟く

 

 

(……やはり、転生前の記憶を封印されていますね。これもあの老害の仕業ですね。いきなり封印を解いたら脳に負荷がかかりすぎますし少しずつ解けるようにしておきましょう。その間に少しだけ覗かせてもらいますよ)

 

 

一時間程、作業を続けた男は指を離すと深々とため息をつく

 

 

「はぁ、本当にあれは人が悪い。わざわざトラウマを抉るように再現させるとは。なんであんなのが神なんてやっているのか、絶対におかしいですよ」

 

男はそう呟くと斗和に向かって微笑を浮かべ再び何かを唱える

 

 

「運気を上げる呪文です。貴方の第二の人生に幸あらんことを」

 

そう言い残すと今度こそ男は部屋から姿を消した




タイトルのGはgodのGでした
まだまだ原作には入れなさそうです
エターナルに早く変身させたいな……
因みにカソックの人は仮面ライダーキバの中間管理職の苦労人、ビショップさんがモデルです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。