翌日、俺は気がつくとベットの上で寝ていた
昨日の特典をもらったのは夢だったのだろうか……
ふとベットの隣の机の上を見ると折りたたまれた紙を見つける
紙には丁寧な筆跡で特典の出しかたやしまいかたが分かりやすく書かれていた
おそらく昨日の特典を届けてくれた男が書いておいてくれたのだろう。上司と違って気配りができるあたり本当に好感が持てる。いや、あの神を反面教師にしてるのだろう。老害とも言ってたし
「名前は、ザスティエル、ねえ。熾天使っぽい名前だしそれなりに偉いのか?」
とりあえず手紙に書いてあることを試してみよう。変身は母さん達に気づかれる可能性があるがメモリやベルトを出すだけなら問題ないだろ
「えーと、頭の中で出したいアイテムを思い浮かべ、出ろと念じると出現します。出現させたい場所は自分の身体の周りならどこでも出せ特に希望がない場合はロストドライバーは腰に装着された状態でその他は手元に出現します、と」
書かれている通りに頭の中に右にだけメモリを挿すスロットがある赤と銀、黒を基調とした変身ベルト、ロストドライバーを思い浮かべ、出ろ、と念じるとまるでクウガのアークルのように俺の腰にロストドライバーが現れ装着された
「ほんとに出た……。なんか少し興奮っていうか感動に近いもんがあるな」
特撮ファンとして本物の変身できる力というのは悲願の一つだ。それが叶ったと思うと感慨深いものがあるな
そしてうまくロストドライバーが出せたからかここで俺の中で変身してみたいという欲望が出てきた
(こうなったらこのまま変身までしてみるか)
幸いまだ時間は日ものぼりきっていない早朝、両親も寝ている時間だ
そこまで大きな音をたてなければバレることはない筈だ
俺は周りにバレないようにカーテンを閉めドアに鍵をかける
エターナルメモリを出し左手に持つとまずはちゃんと作動するか確認する為にボタンを押し地球の声、ガイアウィスパーを聞く
カチ
………あれ?
おかしい、ボタンを何度押しても声が出ない
まさか元から壊れているような欠陥能力でも与えられたか?
数分後
全てのT2ガイアメモリを試したがまったく反応を示さないのはエターナルだけ、他の25本のメモリは正常に作動した
なんでこいつだけが動かないんだ?
あの神の話だと変身できるのはエターナルメモリでだけ
このままでは特典が宝の持ち腐れになってしまう
試しにロストドライバーに挿そうとしてもまるで磁石の同極同士のように反発し入ってはくれない
これは……俺がエターナルメモリに拒絶されているのか?
「俺がまだ認めてもらえてないってことなのか」
幸い他のメモリは機能している。暫くはエターナルエッジを主軸に使い方をマスターしていくか
もう隠す必用は無いのでカーテンを開けるとうちから少し離れた家に何かが入っていくのが見えた
「今の……」
机の中から双眼鏡を取りだし何かが入っていった家を見ると窓から蜘蛛のような顔の男が出てきてその右手には糸だろうか白いロープのようなものを持っている
(泥棒か?周りに人はいねーみたいだし気づいてるのは俺だけか)
片手にゾーンメモリを持ちいつでも発動できるようにし蜘蛛男を観察していると糸の先に何が縛られているのが見えた
(女の子、しかも俺と同年代かよ……)
女の子は意識はあるようだが口も縛られ話せないようになっている。流石に大声で助けを呼べるような状態にはしていないようだ
だがこの時点で俺があの蜘蛛男を見逃す可能性は0になった
金目的だろうが身体目的だろうが関係ない。幼い子供の誘拐した時点でもう奴は俺にとって許せない存在になった
(移動し始めたか。あいつが向かった方で見通しがいい建物は……あれだな)
『Zone Maximum Drive!』
俺は双眼鏡を持ったままゾーンメモリをロストドライバーの横にあるスロット、マキシマムスロットに挿すと蜘蛛男が向かった方向にあるマンションの屋上に地帯の記憶であるゾーンメモリの力を使いワープする
それを何度か繰り返し蜘蛛男を追っていると蜘蛛男は町外れの廃工場に入っていった
(ここがアジトか?)
ひとまず廃工場の近くにワープし物音をたてず窓から中を覗くと木箱やドラム缶が乱雑に置かれている中で年期の入ったソファーに蜘蛛男はドカリと座りその前の床に女の子を座らせていた
「ケヒヒヒヒ、無事誰にも見つかることなくガキを拐えるなんて俺も運がいいぜ」
「あの家の電話番号は調べはついてるからな。これで暫く遊べる金が手に入るぜ。にしてもこのガキもなかなか上玉だよなぁ」
蜘蛛男は女の子にいやらしい視線を向けると女の子に近づいていく
「まだ電話する予定の時刻には時間があるし、ちょっとばかしつまみ食いしても問題ないよなぁ」
(まさかあの野郎、あの女の子を!)
「ン゛ーー!ン゛ーーー!!」
女の子は必死に男から離れようとするが足首に巻かれた糸のせいでうまく動けていない
近づいてくる男に怯えた女の子の涙を見た瞬間、俺の中で我慢が切れた
(行くしかねえ。ここで行かずに傍観していたら俺は、俺自身が永遠に許せなくなる!)
そう思ったと同時にいきなり俺の身体からエターナルメモリが飛びだし一人でにロストドライバーへと挿しこまれた
「これは……少しは認めてくれたということか」
「変身」
『Eternal!』
ロストドライバーの右側だけに存在するスロットを傾ける。するといくらやっても鳴らなかったエターナルメモリのガイアウィスパーと共に俺の身体は成人男性の伸長まで大きくなり白い装甲が俺の身体に纏われていく
窓ガラスに映った俺は人の姿ではなく頭にEを横倒しにしたような触覚、∞のような形の黄色い複眼、白を基調とした姿の仮面ライダー、エターナルとなっていた
だが、原作の大道 克己が変身したエターナルと違い両腕の炎の刻印は赤くエターナルローブや25個のマキシマムスロットを持ったコンバットベルトは装備されていなかった
「レッドフレアか、ブルーフレアじゃないのはちと残念だが今の俺には調度いい。憤怒の赤い炎がなぁ!!」
俺が壁を蹴ると人一人が余裕で通れるような大穴が開きその音と衝撃に驚いた蜘蛛男と女の子がこちらを見て目を見開いていた
「な、なんだお前は!そんなとこから入って来やがってどういうつもりだ!」
「ちと、頭にくることがあってな。お前の邪魔しに来た」
狼狽えながら質問してくる蜘蛛男に中に入りながら返答する。何故だかわからないがあの女の子の涙を見ただけで俺の怒りはグツグツと煮えたぎっている
だがその激情はまだ表に出さない。女の子の近くに奴がまだいる今激情に身を任せては悪手どころか愚策だ
「なんだと?俺の邪魔をしに来たぁ?ふざけんな!顔も名前も知らねえてめえなんかに邪魔される謂れはねえんだよ!」
「あるさ。女の子が泣いていた、ただそれだけで十分だ」
俺の理由に蜘蛛男は身体をプルプルと震わせ口元をひくつかせている。既に爆発寸前といったところか。短気な奴だ
「へー、そうかい。じゃあそんなキザで下らない理由を掲げて、死ねやぁ!」
「お前がなぁ!」
『Violence Maximum Drive!』
「ぐばぁ!?」
飛びかかってきた蜘蛛男に既に持っていたバイオレンスメモリのマキシマムドライブのアッパーカットをカウンター気味に奴の顎におみまいしてやった
蜘蛛男は廃工場の反対の壁まで吹き飛び今のうちに俺は女の子を縛っていた糸をエターナルエッジで斬っていく
「もう大丈夫だ。ここは危ないからひとまず外に出ていてくれ」
俺の言葉に女の子は泣きそうになりながらも頷き小走りで俺が入ってきた穴から外へ出ていく
それを見送り蜘蛛男の吹っ飛んでいった方向を向くと俺の右腕にロープのように太い糸が飛んできて右腕を覆ってしまった
「粘着性の糸か」
「ケヒッ!ケヒヒヒヒ!いてえじゃねぇかぁ。俺が異形型じゃなかったら死んでたぜえ?このお礼はたっぷり返さないとなあ!」
蜘蛛男は口から糸を出すタイプらしく俺の腕に付いている糸は奴の口から繋がっている。蜘蛛男は力一杯口から伸びた糸を引っ張り俺を引き寄せようとするが好都合だ
俺は自分から蜘蛛男の方へと跳び左手にヒートメモリを出しマキシマムスロットに挿す
『Heat Maximum Drive!』
「俺の怒りはかなり熱いぞ?」
「なっ、ぎゃっちゃあああああああ!?」
ヒートメモリの炎を纏い赤く燃え上がった俺の右腕は糸を焼き切りそのまま慣性の法則に従い固まっていた蜘蛛男の顔面に突き刺さった
あまりの熱量に蜘蛛男は顔面が焼けただれその痛みで床をのたうちまわる
「立て、まだ俺は怒りたりねーんだ」
「ひいっ!?ひいいいいいい!?」
のたうちまわる蜘蛛男を無理矢理立たせると首根っこを掴み腹や顔を何度も殴る 殴る 殴る
気がつけば蜘蛛男の顔面は原形が残らない程にまでぼこぼこになっていた。涙を流しながら気を失っている蜘蛛男を床に放り捨てるがピクリとも動かない。息はしているから問題ないが何かロープのようなもので縛らなきゃな
『Gene Maximum Drive!』
とりあえずジーンメモリでロープ状にした木箱で縛って近くの木に吊るしたら蜘蛛男の持っていたケータイで警察に連絡しておいた
ヒーローじゃない俺が直接警察と会ったら面倒なことになるのはわかりきってるし最悪もう変身できなくなっちまうからな。あの女の子にも捜索依頼が出てるだろうしこれから警察が来ることだけでも教えて警察に保護してもらおう
廃工場の外に出ると近くの茂みからあの女の子がおずおずと出てきた
「あ、あの人は?」
「もう大丈夫だ、あいつは俺が倒した。直にお巡りさん達もここに来るからそれまでここで待ってるんだよ」
しゃがんで女の子と同じ目線で伝えるべきことを伝えると女の子もやっと恐怖から解放されたからか目に大粒の涙を浮かべながら頷く
と思ったらいきなり女の子が俺に向かって抱きついてきた!?
「うわあああああああん!!怖かったよおおおお!」
……そうか、そりゃそうだ。この歳の子があんな体験してしまったんだ。怖くてしょうがなかっただろう。むしろよくここまで泣かなかったもんだ
「大丈夫、もう大丈夫だ。よく頑張ったな。もうあいつはいないから安心して泣け。泣き止むまで一緒にいてやる」
泣き続ける女の子の頭を撫で思いっきり気持ちを吐露させてやる。こんな幼い子供に無理に我慢なんてさせちゃいけない。少しでもあんなトラウマになりそうなことを思いっきり気持ちを出して忘れさせてやることが大切なんだ
それにしても、この感じ、懐かしいな。まるで妹でもあやしてるような……転生前の俺には妹がいたのか?
数分間泣き続けると落ち着いたのか女の子は俺から離れお礼を言ってくれた
「お兄ちゃん、ありがとう。お兄ちゃんのおかげであたし助かった……」
「どういたしまして、お嬢ちゃんもかわいいんだからこれからはもっと気をつけろよ」
「う、うん…」
あれ?すごい顔赤くしちゃったけど俺フラグ建ててないよね?子供がちょっと照れてるだけだよね?恋情じゃなくて憧れ的なあれだよね?どうかそうであってください俺は犯罪者になりたくないです
そんなことをしているパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。俺もそろそろ行かなくちゃいけないな
「お巡りさんが来たようだ。俺ももう行かなくちゃならない」
「え……」
そんなすごいガッカリした顔しないで!罪悪感すごいから!
「悪いが俺にも事情があるんだ。わかってくれ」
「じゃ、じゃあせめて名前……名前を、聞かせて」
「エターナル、仮面ライダー エターナルだ。それじゃあな、お嬢ちゃん」
『Zone Maximum Drive!』
俺はそう言い残すとゾーンメモリでワープしその場を後にした
自分の部屋に戻ってきた俺は変身を解除してベルトとメモリを消すと途端にとてつもないだるさに襲われ床の上に倒れる
「はあっ、はあっ、そりゃ、何も鍛えてない五歳児の身体で、いきなりあんだけやりゃあ、はあっ、こうなるよなぁ……」
スペックだよりの戦い方だったからな、こいつは色々、鍛えていかないと駄目か……
なんとかベッドに潜り込めた俺はそこで意識を落とした
やっと主人公変身できました。でもまだ原作に入るにはかかりそう……
あと別に主人公はロリコンではありません
某アタランテさんと同じように子供は守る対象として見ているだけです。これには転生前の人生も関わっていますが詳しいことはまだ言えません
え、斗和がzeroのキャスターと龍之介を見たら?確実に抹殺対象ですね。すぐ駆逐しに行くでしょう
因みに今回のタイトルのGはgirlのGです