初霜さんと   作:琵琶醐醒醍

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作者「こんばんわ。ここに来るのも久しぶりです」
皐月「こんばんわ!十時が近いから短めに言うね」
作者「お?何だ?」
皐月「くどい。と思うよ」
作者「知ってる。でも、削ろうにも削れないのよ」
初霜「私は⋯」メキメキ
作者「A3はハッピーエンドで締めます(断言)」

A1





『暗示』

世の中には、夢というものが二種類ある。

片方は、未来への確実性が不安定なビジョンであり、

もう片方が、誰もが知る、誰にも定義しきれない、

―いわば感情のように―これまた不安定極まりない、意識を明後日に飛ばして見る、

否、見えるビジョンのことだ。

このうちの後者、未だコントロールしきれない方には、

悪夢なるモノがよく話題に上がる。

夢の割には、理不尽な事が次々と心に刺さるのだ。

 

これは、そんな夢に苛まされる、一人の少女の物語である。

 

 

 

夢を見た。ひどく怖い夢を見た。

もしかすると、今日はもっとひどい夢を見てしまいそうで、心がつらい。

今度は、どんな死に方をするのだろう。

まだ、気を保てる内に、何も話したい。話せる人こそ、当の死刑執行人なのだけど⋯

 

 

音がする。ものすごく大きな音がする。目を開ける、と自分の両手が見える。

しかし、両手の奥にある物に違和感を不思議に思う。

木が見える。

木の床が見える。

緑色のシートがかかる、二人座れる座席が足の前にある。

はて、私の左に誰が座っているのだろう。今までで一番疲れるかもしれない。

今度は事故死だろうか?鉄と鉄のきしむ音からして、列車の中なのは間違いない。

くたびれた頭を、現実の如く、重く左に向ける。

居なかった、誰も。

そりゃ、息遣いすら聞こえないのだか⋯自分のは?

分からない。

右に顔を向ける。昼間だ。ド

田舎の如く、田んぼは広がり、山々は雲をまとう。

煙たい。

きっと蒸気機関車なのだ。

古式島に素晴らしい山々は無くとも、蒸気機関車は腐るほどある。

 

あれがc54、俺がポンコツという物全ての中で、最もポンコツな奴だ。

 

誰かの声がキンと脳を貫く。痛みで顔は正面を、眼は一瞬閉じてしまった。

「こんにちは、初霜?」

「あれ、『ハロー』、じゃ、ないの?」

眼を開けてすぐ返し、そしてすぐ口を手に当てる。

誰なのか分からないのに、何故名前を知ってて、何故そんな知識を引っ張り出せるの?

「それは、君が私を、知っているから」

心を読まれた。

「でも、記憶が全て飛んだわけではなさそう」

「あなたは、だれなの?」

そう、目の前にいつの間にか座っていた、黒いヒトガタに聞く。

「さぁ?それは、あなたがよく知っているんじゃないかな?」

ラチが明かない。

「⋯もしかしたら、君も、コッチ側に来るのかな?それだったらボク、大歓迎だよ」

「⋯どうやって、行けばいいの?」

半ばヤケに聞くと、

「例えば、ホラ」

 

閃光に目がくらみ、見れば周りが赤に包まれる。

ごうごうと雑音はするが、やがて消えていく。

熱い。

その感覚も次第に薄れる。窓に目をやる。

夢でしか見れない山々ですら、赤に染まっていく。

これが、赤の世界。

意識は止まり、周りは動く。

目の前の元凶は、うっすら笑ってるように見えた。

列車が、木で出来ていたのが、最高の不幸だった⋯あぁ、手にも足にも、痛い、イタイ⋯

 

「あー、やっぱりこれも駄目だったかぁ。273秒の火責め」

その声で、また目覚める。

何も無い、ただ白の空間。これほどまでに、虚空という語が似合う場所は無い。

「あんたはひどく幸運ね。『初霜』っていう名前以外に何かあるんじゃない?」

そんな事、分かるわけない。

「アイツに聞けば?ほら、『中佐さん』、とか呼んでるやつ」

『やつ』⋯ッ!

「ああ、だから目を赤くさせないで。にしてもこの『呪い』に『護符』、片方は彼の仕業ね」

「呪い?護符?一体何なのよ!」

「君はまだ知らないだけなんだよ。彼に隠されているだけ」

隠されている⋯?

「そういえば、あの提督もオカシイよねぇ~。

 夏でも素肌を見せやしない。誰も信じてないんだよ」

「⋯そんなことない!」

「でも貴女だって知らないでしょ?提督の正体」

言い返せない。そんなこと知ってる訳が無い。神通さんでも知らない事を、他の皆でも。

「それに、皆忘れている。昔の提督の事」

昔⋯?提督は、どんな姿だったか、

リベさん(→リベッチオの事)や葛城は、あの大きな提督しか知らない。

⋯元々小さかった⋯?

「彼女たちは知らない。何があって何故戦えるか。でもあなたなら思い出せる」

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

「そしてコッチに来る。君ならね。じゃっ」

 

 

夢を見た。ひどく頭をかき混ぜられる夢を見た。誰にも話せる訳が無い。もう、誰にも。

 

 思い出は

  セピアに映り

   夢は色

 現は黒と

  白のまやかし




用語集

TREU3

いきなり本文に現れた謎のお方。いずれ、本文にも出てくるだろう。
かつて中佐と共に戦闘機で飛んでいたが、ある理由により離れ、
今は空中管制機のクルーの一人に。
因みにその機体には逆三角形のマークが描いてあるのだとか。
もっとも、離島には似合わない高価な飛行機である。
過去に、いくつかの作戦で最終手段として、空中戦の支援をしている。
割とどうでもいいが、彼女が居ない、孤独の男である。


TREUとは、ドイツ語で信頼を意味する。
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