4月の3週目
古式鎮守府 北側 艦娘寮b館
日が出始めた頃
「助けてくれ!初霜が!」
今度は何が起きたのでしょうか、こんな明け方に⋯
「夜明けのアイドル!那珂ちゃんだよ~!どうしちゃったの~、若葉さぁ~ん?」
「夜任務が終わって帰ってきたら、初霜がげっそりしているんだ」
「ふ~む⋯初霜ちゃん、聞こえる?那珂ちゃんだよ?ねぇ、ねぇ!」
「揺さぶったらダメですぅ~」
確か、この声は阿武隈さんかしら。
「激しく揺さぶったら、余計に疲労が増えてしまいます!」
そうそう、と自分の部屋で聞き耳を立て続けていたら、
「ただいまーぁ」
「おかえり、川内姉さん。例の網食い動物は見つかりましたか?」
「それがねぇ、こーんなに大きなサメだったんだ。
ついでにから揚げにしようと砲口を向けたんだけど」
雷撃では木端微塵になってしまう。姉さんなりの優しさなんだろう。
「漁師さん達(依頼主且つ漁船で同伴していた)が駄目って言うんだよ」
「それは、 何ででしょうか?」
「『鮫という大将を撃ったらどうなる事やら』って。
まぁそれが、アイツらの侵入を防いでくれるならいいけどさ」
「あれ、それでは?」
「漁獲量を減らすって。サメも腹ペコじゃあどうしようも無いからねぇ。
フカヒレにもありったけない」
「⋯⋯⋯!後で提督に意見具申しますか」
「?取り敢えず、もう寝るからね、雨戸締めっぱなしでしょう?」
「そうよ。ところで、誰か一緒に寝かしてもいいかしら」
「別に構わないよ。寝言にまで『夜戦』は言わないし」
「少し待ってて」
「え?」
キキィィッッ!
「若葉さん、初霜さんを連れて川内さんの所に。理由は起きてから聞きましょう」
あと、 やっぱりそうでしたか。
「那珂さん、窓は開きますか?」
「え、えぇ~っと⋯あれ?」
右に開けようとも、反対の窓を左にスライドしようにも、動かない。
「う、う、動かない~ぃ」
この艦娘寮の怪奇現象、ほとんどがウソと言われているものの、
これに限ってはどうやら本当のようね。どんな人でも開けさせる事を拒む窓。
こうなれば、砲かハンマーに頼らざるを得ないとも言われている⋯
「Good morning!良い天気だけど、何があったネー?」
「あ、金剛さん。理由は聞かないで欲しいですが、
取り敢えずこの窓を思いっきり開けてください」
「OKネー。Burning Looooove!」
地面にめり込んだカブのごとく、窓は頑固に拒絶をし続ける。
「開かないネー⋯ナカちゃんも手伝ってほしいヨー」
「オゥケィ。那珂ちゃん、手伝っちゃう!」
「行きますヨー!」
「よう、神通さん」
「あら、中佐さん。⋯少しお願いしたい事が」
「なんだいさ?」
「⋯窓が、開かなくて」
「それは見ないとね。見ないで信じるかとかはさておき、原因は直視しないと分からない」
「ぐぬににににに⋯」
「はなののののの⋯」
「こりゃまた厄介な」
「どうしましょうか⋯」
「まァ、心当たりはあるがな。ちょいと休んでろ」
二つの窓のそれぞれの縁が重なっている所、
その下の部分をクリと動かしただけであっという間に御開帳してしまいました。
一体何が⋯
「みんなやっぱりストッパーの事知らないのか。かくいう俺も、この間知ったばかりだが」
「⋯!中佐さん、もう一つお願いが。かくかくしかじか」
「ふむほむ。提督に突き付けておこう。に、しても」
「ふへー」
「ほへー」
「この二人は、もうお疲れですね⋯」
「いろんな意味で、な⋯」
設定集
深海棲艦(当作品での設定)
実際に目撃されたのは1992年頃。
超大型艦が資金難に陥る程度の被害を与えたとされる。
2012年になっていきなり船なり港なり海に浮かぶか接する人工物を破壊し始めた
不思議な連中。
とはいえ、遥か数千年前から、プロトタイプとなる生物がいるorいたと考える方が
妥当だと思われている。
中佐の考察では、特に不安定な感情に吸い寄せられるとある。
理性を欠いた状態でかたき討ち等をするのは控えるべき、ともある。
退治方法は、煮る、焼く、蒸す、切る、叩く、撃つ、射るなど。
様は拳銃でも日本刀でもミソでも倒せる。
なお味は保障されていない。深海生物の一部は油ゴテゴテで、
食用にはなれない(食えないとは言っていない)事があるため。
割とどうでもいいが、92年の事件の事があってか、
彼らが超大型艦を攻撃する事があまり無いと判明している。
乗組員の恐怖か悲痛か怨念のような感情を狙う彼らにとって、
沈められない艦を攻撃するのは、あまり意味のない事だと思っているのかもしれない。
そして2015年、被害を受けた、かの超大型艦が再び⋯