初霜さんと   作:琵琶醐醒醍

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初霜「完全に私の出番が無いわ」
作者「若干サイドストーリー気味だからね。伏線回収の為だけ言っちゃ、ねぇ」
初霜「今回、ある人物の一人称が変わってるみたい」
作者「家の中と職場・学校で一人称変える事ってよくあるからね」
初霜「この子の所為で投稿が遅れたに⋯ヘブッ」
作者「それは違うさ。あんまり悪い方に考えてると作者みたいになるぞぉ」
初霜「わーお。気を付けるわ」
作者「唐突だけどFOR〇VER B〇UEのロック〇ンド侵入時のbgmがゆーちゃん   には合うと思うの」
初霜「それ分かる人居ないんじゃ⋯」

B1





『深部潜航』

「海底基地、こういうのって浪漫だよね」

「そりゃ、俺らにとっちゃ、だ。彼らは深海に棲まう艦、その位普通なのかもしれない」

「じゃあ皆海中から撃てばいいじゃん?」

「そこが問題⋯って、話がズレてるぞ」

因みにこの問いに対する答えは

『太古より存在していた彼らにとって、水中からの攻撃は比較的最近に編み出され、

 一方の水上攻撃は昔からずっと用いられてきた方法の為、後者を使う者が多い』

が有力だ。

「偵察出すにもチヴィクターには荷が重いし⋯正直ムリ」

「いや、ユーちゃんの潜水服ならいけるかもしれない」

「じゃあ呼ぼうかぁ」

「もう一つある」

「何々?」

一帯の地図を開いて、言う。

「諸島南西の端くれの島、其処の建物の話だ⋯」

 

「んで、君を呼んだって訳よ」

「うーん⋯違う艦隊だけど⋯」

確かに第一艦隊独立潜水部隊の彼女ではある。

というかそもそも潜水艦の娘は例外なく第一に所属なのだが。

「いや、提督にも了承はとっつけている」

「おぉ~!じゃーあぁ、どんな感じ?」

と、ろーちゃんは言う。

「あの潜水服が直っている。

 アレならいつものより潜水できる、というよりはアッチじゃないと辛いと思うんだ」

「そんなに深いの?」

「正確には『ハッキリしていない』といったところだ」

「えぇっ?⋯心配、です」

「んまァ平面的に見れば偵察ポイントは五か所程度だ。

 あらかた第三艦隊が削ったんだがこれだけは無理だった。

 あとお供にチヴィクターをつけるよ。でっち達も待機させとく」

「チヴィクター?」

「あァ、こやつよ」

と言い、窓の外に浮かぶ舟を指す。

とても小さいが、全長はろーちゃんの背丈よりは長い。

「あれは偵察型の潜水艦、深海棲艦の位置を特定できる奴だ。

 さっきようやく調整が終わったのさ。ただ内部からはあまり外が把握できないのよ。

 だから眼が必要って話。⋯基地と言ってもそこまで大きくは無いと思うんだよね。

 水上から反応が一切ないって事は。

 あまり向こうを刺激したくないから武装はヌキでお願いしたい」

「ヌキかぁ⋯でも、やってみる!」

「無茶振り済まねぇ。サメが空かしてる程度、つまりサメを殺せるほどの力は無いって事だ。

 そこまで力む必要はない。あと一応、5か所すべてを見てきてほしい」

「分かった!ろーちゃん、やってみる!」

「君の前向きな姿勢にすがるしかない自分が悔しいよ。

 潜れたらいいんだけど、そこまでいける気がしない」

「だから!ろーちゃん達がいるんですって!」

「そだな。頼むぞ」

「はい!」

「じゃあ降りるか。チヴィクターを岸壁によせとかないと」

「おー!」

と思えば、舟屋のドック(どういう訳か、水が張ってある)に泊まっているではないか。

「おっきーい!」

まァこういう反応はするだろう。

ろーちゃんの抱き枕レベルの大きさという、

(身体変化を起こせる限りに起こした)妖精たちが動かせる最適サイズの結果である。

一応無人航行も出来る。

「異常ナシ。いつでも行けますよ!」

この方は気力がある。サブマリナーに必要な根気があるに違いない。

『信頼できる人物』に追加しておこう。

「それじゃあ行って⋯って、潜水服!」

「おうおう、そうだよ。済まんが一時待機だな」

「待ってますぞぉ」

 

 

潜水服は近場の更衣室にあるって言ってたから、その更衣室に入ってみる。

「あった⋯!」

ロッカーの扉にくっ付いている服を取って、着てみる。

生まれ故郷から、艦娘になる前から一緒の子が手伝ってくれる。

海なんて夢の最果ての物かと思っていた私に、青さ、涼しさ、時に熱さを伴う海を。

私は海をもっと知りたくなった。

だけど、海に棲む生き物たちが攻撃を始めて⋯

危険なのは百も承知、だってこの子が居てくれる。

そう思って、槍を片手に、夢に飛び込んだ。

「この服、とっても懐かしい」

「ですねェ」

周りの皆は心を閉じていた。一人、一人と姿が見当たらなくなってから。

少なくともその時は、必死だった気がする。とても複雑な、気持ちになっていた。

「でも今日は」

「沈めるお仕事ではない、ですよ」

「うん。行ってみよう!」

 

   それは、神秘。それは、恐怖。それは、⋯⋯⋯

 

青の世界が広がる。上の方が白くて、深い下は黒。

ほんの少しだけ深い方に行ってみよう。

隣の潜水艦も付いて来てるし、この子もいるもの。

「何故私は潜れるのだろう⋯特別な服など一切無いのだが」

「私が潜れるから!ふふんっ!」

「愚問だったな」

『そういえば俺たちの謎の休暇、何の意味があったんだ?』

『オイオイ、嬢ちゃん達の対潜演習で結構ぶっ壊れたじゃねぇか⋯』

『いや、記憶にない』

『あぁ~、アンタ、そういえば気絶してたわ、あん時』

『道理で記憶が無いワケだ』

『機関もイカレたんだっけなぁ』

『こちら機関部、この前とは違う機関で現在苦戦中。誰かエンジニアは居ないのか?』

『妖精士官学校出てる奴なんてそうそう居ませんよぉ』

『俺元は内地で働いてたから分からんよ』

『前はピザ屋で』

『『『『『マジか!』』』』』

『任務に集中してくれよ、艦長困るよ~』

『敵の潜水艦らしきもの、ナシ』

『魚雷、残弾ナシ』

『機関、微速の為出力安定』

「すごいな、これが鶴の一声ってものか!」

「すご~い⋯私たちの方は」

「久しぶりの仕事だぜ」

「ろーちゃんだとワイの役割もねーからなぁ」

「日本のスクールナントカってすんげぇなぁ」

「相変わらず、ですね」

「お、魚だ!やっぱでけぇ」

お隣を青くて小さな魚が通り過ぎる。妖精には大きく見えるらしい。

今度は銀色の魚たちにまとわりつかれた。

故郷のおじちゃんは「美味そうだから何匹か送ってくれ」って言ってたなぁ。

住所が分からないけれど。うあっ、ナマコ!嫌だなぁ、変なの出してくるし。

そういえば、海藻に巻き込まれて救助隊が出動した子が居たっけ。

あれから見てないな⋯。

『感アリ!』

「どこらへんかなぁ」

『低画質でいいからカメラ欲しい⋯』

「サンゴの中にでもいそうだな」

「うーん⋯」

「この窓スゲーよな!深くてもヒビ一つ無い」

「よし、雷撃科も手伝うぞ。何分暇だからな」

『前方、3メーター』

「あの穴ん中か?」

『更に潜航!潜望鏡から見える位置まで前進しよう』

『リョーカイ!』

「⋯居ますね」

「やっぱり。一か所目からビンゴだね」

『確認できるか?』

『ウツボとかクエが入りそうな穴しか⋯』

『銛も槍も魚雷も無いぞ?』

お隣の潜水艦は止まって、『あまり威嚇させたくない』と言って明後日の方を向いちゃった。

  ゴソゴソ、ボコボコ

「キー!キー!」

小っちゃい!こんなにも小さいのをイ級と呼ぶ国は何処にも無いと思う。

下手すると小魚として網の上で焼かれそう。

あぁ⋯お腹空いちゃった。近くを歩く黄色と青の魚は無理そうだけど。

「カメラ!カメラ!⋯私には十分大きいですよ」

「私にとっては小っちゃいって!」

『レーダーに少し乱れが。何だ?』

「クフォッ?」

ヒョコっと奥から大きいのが出てきた。

故郷でよく配られたガスマスクみたいなものをくっつけてる。

これは⋯カ級かな?でもやっぱり形が整ってない。

何かが足りないような⋯?青い両目がこっちを不思議そうに見ていて、少し気まずい。

「クォーフ、フォーフォー」

うーん、分からない。取り敢えずニッコリしてみたら、

向こうも何か笑ってるような⋯気がした。

 

結局、あの場所にしか、彼らは住んでいないみたいだった。⋯けれど、居た事は確かだった。

「生活しているのならしゃあない。叡知の大結界を水面に張れば問題ないか」

「魚雷持っててもアレは撃てませんよぉ~」

「イ級って不思議だなァ。大型のがここ最近出没してるそうだし。

 ウン、でっち達の待機命令を解除しよう」

「それって⋯」

「お咎めさん、ってところだ。危険度はやはりそこまで無い。

 提督にも害はないって伝えておくよ」

「おぉ~!」

「敵対しないのならば放っておくのが最適だ。

 徹底的に叩くのはゲームの中だけでいいのさ。あと、お疲れさん。

 いつも最前線を張ってるって聞いたけど、少しは気晴らしになったかねぇ」

「驚きがいっぱい!」

「なら良かった」

「そういえば、艦長さんはイタリアンに精通していると噂で聞いたが?」

「え!?そうなんですか、艦長?」

「石窯もあるんだよねぇ~。手伝ってくれるならぁ、奮っちゃうよぉー」

「手伝います、手伝います!」

「俺も俺も!」

「ワインたくさん持ってる奴なら知ってるぞ!」

「本当、妖精は宴が好きなんだなァ」

「のんびりろーちゃんと二人でご飯を頂くのが私の流儀ですがね」

「ふぅーむ。多種多様だのう」

こうやって、私は幸せな世界に居ます。皆は⋯ううん、私が皆の分、頑張るんだよって!

「チェーン店だからお肉多めのしか作れませんよ」

「艦長、ソッチは苦手なのよぉ」

「設営は任せろ」

「夜の見回りに行く妖精たちにはどうします?」

「だったら今から準備だ!他の所からも呼んで来い。

 どうせ誰かがやるんだ、皆まとめて夜更けまでやる!」

「オォー!」

 

 

その頃、

葛城は天城にお使いを頼まれ、

たまたま居合わせた山雲と一緒に野菜の選別をしていたという。




人名・用語集

潜水艦チヴィクター

ヴィクターiii級という東の国の原子力潜水艦を縮小した小型潜水艦
大きさは本文中にある表記通り 妖精専用で、つい最近動力源が「また」変わった
艦長はイタリアン好きだが、潜水艦の中でのクッキングはマズいと思っている
その為かスローガンが『任務は焦らず油断せず、そして素早くやっちゃおう』となっている
ほんの少し気が緩いのも潜水艦という特殊な環境のゆえ
割とどうでもいいが、妖精士官学校出身の妖精が魚雷発射室に在籍しているという
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