初霜さんと   作:琵琶醐醒醍

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作者「5000字超えたので分割が決まりました」
初霜「デバーン、デバーン⋯」
ポー「うひひひひ、作者さんも一杯、いかがぁ?」
作者「済まんな、出番はまだなんじゃよ」
初霜「そういえば」
作者「正気に⋯戻った!?」
初霜「本文も半ば台本形式っぽいですよね」
作者「まァ一部はねぇ。うん。注意書きに追記しよう」



『混迷』 その1 『テンリュー』

ウワサ・夢というものは、大抵悪い意味でしか当たらない。

眼下の艦たちは三つ巴を描いている。

見えるのは、俺たちの艦隊、艦娘たち。それと毎度お世話になっている深海の連中。

そして一番の厄介者、アメリカ艦隊だ。

ここ数週間と行方知れずとなっていたが、今日ようやく霧の中から這い上がって来た。

しかし困ったことに、

接触を図ろうにもAA・GUN(対空兵器)に阻まれて近づきも出来ず、応答すりゃしない。

魚雷すら吊り下げていない旧時代の遺物に、ミサイル一つ飛んでこないのは幸いであるが、

もしかしなくとも向こうの目にはうろこか丸太がひっ付いていることに違いない。

こんなボコスコ、本来の性能の十分の一すら出ていないぞ、CIWS。あ、ジャムった。

「もう嫌ですよこんな無間地獄⋯」

「耐えろ耐えろ、もう離脱しか道は無いよ。これじゃあ、ね」

と操縦士を励ます。

「というか、なんで司令がこんなところに居るんですかぁ」

「仕方ない。前の電撃戦の後に、

 『今回の責任含めて、君にはこれからも、最前線で指揮を執り給え』

 なーんて言われたのだ。こうやって必死アピールを見せつける機会はそうそう無い」

短気なラバウルの司令達が到着した時にはすでに、

各地の艦娘たちがのびのびするぐらいに設備が整っていた。

そして一匹の虎が重々しく佇んでいた為、虎の島前線基地と名付けられたのだ。

今は爆撃機用の格納庫辺りを作っている所だろう。

「打電は!?」

「終わったぞ。だが、これは作戦会議が必要かもな。撤退も打ち込んどいた」

「つまり⋯⋯⋯」

「こいつは殿だな。よし、もう少し暴れて見ろ!」

「イヤァァァァァァァァァァァ」

「低空で艦と艦の間を縫うんだ、よし突撃!」

 

そうして無駄なようなエース〇ンバットごっこは、一人の少女の目に留まったのであった。

 

 

                    『混迷』

 

 

  特殊海域攻略艦隊旗艦 航空母艦金峰 作戦室

 

「なんでアメ公が撃ってくるんだ?」

「私たちには分からないですが⋯」

「これでも天下の龍驤戦闘機隊、どんな奴にも手加減はせん!」

「うおぉー!」

「なんや、めっちゃ張り切っとるやんかい」

わいわいがやがやと艦娘・妖精が騒ぎ立てる。昔は俺自身も騒ぐ側だったのだが。

「はいはい静かに。始めるぞー説明。あーあー、機関室、聞こえるか?」

『微かにだが聞こえるぞ!』

「艦橋!」

『よく聞こえる』

「格納庫は?」

『上部格納庫、クリア』

『下部、今忙しい。小耳にはさんでおく』

「八重桜副長、わざわざ乗艦していただき、光栄です」

「いいのじゃ。さて、始めておくれ。司令さん」

「グホンホン。えーっと、現在の艦隊予想図がコレ」

一気に周りがざわつく。西から古式艦隊、アメリカ艦隊、深海棲艦群の並びだからだ。

「アメ公の後ろに深海棲艦の軍勢じゃねーか!」

「なんだが、この二つの間で交戦は確認できなかった」

「そして、アメリカはまともな戦闘をしなかった、と」

観測班の一人が答えた。

「そう、練度があんまりにも低すぎる。十字砲火が呆気なく成功するくらい」

「いやいやーあいつらイージスっしょ!?」

「そうだったら俺は今頃海のスポンジだよ」

ここでどっと笑いが炸裂する。

海に浮かぶスポンジなぞ想像したくない。⋯そもそも浮く事すらないか。

「つまり何らかのアクシデントが起きていると」

「その通り。多分、コイツだ」

と、取り替えて二年経つスクリーンに一人の深海棲艦が映る。

ヲ級に似てはいるが新種かもしれない。

「こいつが、正体という訳ですかな?」

「恐らく。強いジャミング持ちらしい。もっとも、生まれつきだと思うが」

奥の方から手が上がる。この艦はかなり熱心な者が多い。

「はーい、しつもーん!」

「何だい、皐月ちゃん?」

「じゃみんぐって何だっけ?」

そしてその隣。

「私は知っているぞ。敵のレーダーを使い物にならなくさせる為に妨害電波を流すのだろう?」

「流石たけぞう、大体あってる。ただ今回は、乗っ取りも並行しているようなのだ、うん」

『乗っ取り?つまりアレは敵なのか?』

と上から割り込みが入る。

「乗っ取られているのは機械だけだと思う。だが⋯」

歴戦の古強者が繋ぐ。

「普通は誰かが外を見張っているはずじゃな。Z級以外は」

「ズムウォルト級の姿は無かった。⋯⋯⋯艦橋に人は居なかったしな」

「まさかのユーレイ艦隊かっ!?」

突如起き上がる深雪様。

「違う。何かしらの要因で外に出られない、外を見る事が出来ない」

「とでも吹き込まれている、が妥当じゃろう」

「突飛だがコレだな。どっちみちやることは一つ。

 北東に進路を取り、アメリカ艦隊を迂回、傍観者たちに鉄槌を喰らわす」

『解放後はそのまま手筈通り、ですかねぇ』

「目前に古き良き空母、デカブツに腰抜かす奴が要るかもしれない。その時は」

「あぁ、援護はするよ。我らの『八重桜』がな」

「艦載機組も北東ルートだ。艦隊はそのまま。あァ後⋯」

天龍が居る方向に体を向ける。

「今さっき起きた天龍さんにちょっとおつかいがある」

「ん?何だぁオレに用か?」

「ああ。取り敢えず方針は伝えた。解散」

この一言で会議室は更にガヤつく。すると天龍がこっちに来た。

「んで、オレのおつかいは何だ?」

「⋯向こうの進路予測ルートの途中に手狭な無人島がある。そこの探索をお願いしたい」

「おう、いいぜ!」

「その言葉を期待していた。近接戦闘が得意らしいから正直断られたらどうするか、ってね」

「んじゃ、もう行ってもいいのか?早くカツカレーを食いたいんだよ!」

気持ちはわかる、というセリフを押しとどめる。

「分かった、あと10分で食堂は開くから、

 食った後に、装備品保管庫に行ってくれ。その後に出撃でもいいか?」

「おぉ⋯いいのか!?」

「勿論。大盛は止めておけよ。魚に食わせる物じゃない」

「おう!行ってくる!」

「もう一つ!」

こればかりは大事なのだが、当の本人はそわそわしている。

「深海の奴らが住んでたら戦わずに逃げるんだぞ。奴らだったら⋯」

「分かった行ってくる!」

あーあ、行っちまった。

マミーヤレストラン五年間無料券を渡すなぞ聞かずにすっ飛んでしまった。

まァ、いいか。

「わしはおいとまするよ」

八重桜副長が後ろから言う。

「ヤマブキ艦長に宜しくと」

「分かっておる」

彼の背中程強者と思えるものは今まで無かった。

ボタン一つで戦争が始まって終わるこの世界に、熟練の兵は用済みだ⋯⋯った。

 

  同艦 食堂

 

「おかわりもいいんだぞ!?」

「止めとく!お魚どもには食わせたかぁないんだ」

「珍しいな!『フフ怖』がカレー一杯なんてな!明日は雪か?」

「⋯⋯⋯晴れる、オレ達が晴れにしてやるさ!」

美味かった。さぁ行こう!

 

  金峰 艦橋

 

『おーい!天龍様が見えるか?』

無線の相手は艦首の更に前方に居る。列島より南である分、お日様の仕事は長い。

「あー、あー、こちら艦長、済まないが、艦橋からだと見えないんだ。

 もう少し前に行ってくれんか?」

『りょーかいだ』

推進音が勝手に状況を伝えてくる。これなら安心。

後でこっちの護衛に回しても根は吐かないだろう。⋯⋯⋯⋯艤装の方は。

『おーい!これなら見えんかー!?』

ぶんぶん右、否左手をぶん回す天龍らしき人が見える。

あいにく双眼鏡を握っているのは艦長だ。

「見えるぞ。虫眼鏡ならな」

『オイオイ。中佐、艦長にメガネを買ってやってくれよ、遠視用のをよぅ』

「そうしておく。ところで、島は見えるか?」

普通は見えない。しかし艦娘になってしまえば、その手の妖精さんの視覚を借りることが出来る。

どうしてその妖精は視力が良いのだろうか⋯⋯⋯?

『おう、うんうん、確かに見えた。手狭で住む気にはならねぇけどよぉ』

「だが寝泊りくらいは出来るはずだ。全速力で、頼むよ」

『へいよー!』

そりゃ『ハイヨー!』だと思う。

「にしても、そこまで恐れるものですかねぇ」

隣の艦長は眠たげだ。この艦が戦闘海域ど真ん中でない限り、公私ともに眠たげなのだ。

その分、覚醒したら大変なことになる。

しかしこのことを公にするか⋯艦橋要員は口が堅いからいいか。

「実は横須賀の連合部隊がね。あそこの第一が戦果ゼロで帰って来たのだ」

「悲しいものだね。で、誰か死んだのかい?艦長はそっちが心配だ」

「これでも全国の変態どもを集めた連合だ。しぶとくて俺にも茶華田元帥にも理解出来ない。

 ⋯⋯まさか自動照準器を付けてたなんて、ねぇ」

「それ本当かい!?」

「あァ。連合は急いで隠そうとしたけど、中央本部付にはバレたらしくてね。

 元帥から末端の木曽殿にまで笑い話にされている」

「妖精たちを信頼しないから鉄槌を喰らったんですよ。多分」

「妖精たちを部下に持てばそう思うのも無理はないが、作ったのも妖精だ。

 最初の試験戦闘にジャマーが紛れていたのは不幸なことだ。

 あァ俺はアンタらの事を信頼するし、艦長もさっきの通りだ。安心しろ」

一瞬ざわついた艦橋も落ち着きを取り戻す。自分でボイラー炊けなんて言われたくもない。

「まぁ艦長としては、この艦の一部自動化もいいと思うんですがね」

「戦争は人がするものだよ。机に脚のっけて煙草をたしなむもんじゃない」

なんてことを敷島博士は言っていた。

「⋯⋯⋯彼女たちがやってのけると良いのですが。艦長は不安ですよ?」

「自動照準に頼っている奴らと同じにはしないでほしい。あの秋から更に力をつけたのだ。

 それに、天龍があそこを取れば、障害はなくなる」

 

 

 その頃

 

 

う~っ、さみぃ。日が暮れるのはもっと後らしいけど、海の風はくっそさみぃ。

うん?んもう、首元を突くなよ、ん?おっ!島に穴倉ってか?雨よけにはぴったりだな。

よし!加速だ!うおっつ、それは無理って?うおー、分かったよぉ。

 

 

いい砂浜じゃねぇか。ビーチパラソルとか持ってくりゃ、⋯⋯⋯龍田に絞らるよな。

上りっ⋯⋯くわっ!?オレとしたことが⋯

ヤシの実は落っこってるし、鳥のくちばしはひん曲がってるし、いやぁ~南国だぁ~

よしと、歩くか。

 

 

ぐりぐり穴開けてヤシの実を持つオレ、なんか南国してる感じだ。

おまけに広い!全く手狭じゃねえ、平屋位なら建ててもいいんじゃないか?

こんの穴もいいな⋯⋯⋯中で手榴弾を使う気にはなれねぇ、あの映画胸糞悪いからな。

⋯⋯風、か?穴ぼこじゃなくてトンネルなのか、まぁいい、時間はまだある。

このヘルメットもいいもんだしな。

 

反対側も砂浜、なんだ崖じゃねぇのか⋯それも変か。

ヤシの実拾ってこっちから帰ろう、海の方がオレは速いもんな。⋯⋯何だあれ?

⋯人ォ?ってことは艦娘か?パツキンでか?いや、アブクマーが怒るな、うむ。

どんどんこっちに近づいてきやがる。ここにバナナはねぇぞ、ヤシの実はあるぞ。

あぁでもあいつにはバナナが似合いそうだ。

 

パツキンはボインでもあった。が、オレに比べて活力がねぇ。

向こうにとっちゃ、オレは変人かもしれない。

剣とヤシの実を持って、ヘルメットを被ったヤンキーかなんかだ。

⋯⋯いけねぇ、オレは天下の天龍様だ。

「ん、これ」

とヤシの実を差し出す。目の前のパツキンに赤色が戻って来た。

こつこつ拳でヤシを叩いているが、今更返せという訳にもいかねぇ。

んぬ⋯!、妖精が出てきた。

なぁにかっこつけてんだ、ほれ、向こうの妖精たちんところに行ってこい!

 

「カン⋯ムス⋯⋯?」

コイツの艤装を舐め回さなくても妖精たちが慌てふためいてるのが分かる。

こういうのは、確か、沈みかけの時くらいだって聞いたなぁ。

「あー、いぇす、あいむ、てんりゅー」

英語なんて艦娘になる前から点数低いってのに、口が動きやがる。

「テンリュー?」

こればかしは⋯雑学クイズでやってたなぁ、縦に振ると否定を意味するんだったかな。

ニヤッと笑って、

「イェス、テンリュー!」

 

 

 視点を戻して

 

 

「で、パツキンボイーンと出会ったワケだ」

「そうさ。でもあんまりパワフルじゃなかったぜ。

 アメ公はパワーで溢れているんじゃないのか?」

持って帰って来たらしいヤシの実を自前の虫眼鏡で見る。

そのパツキン⋯⋯噂で聞く『アイオワ』だと思われる。

「さァ?それに、向こうは艦娘なんて、アメコミのヒロインになるか否か、そんだけだ」

そもそも、ボートに引っ張られるくらいしか水上を走ることは出来ないのだ。

大西洋でも大抵フリゲートがボンと撃ってポーンと爆雷を投げる、

特殊作戦にしか彼女らは使わないのだ。

「でもアイツは帰っちまったぜ。何かよく分かんないけどな」

取り敢えず帰って来たのは良かった。しかし米国たちも島には気付いたらしい。

そして、

「何で、青葉に勤務していた奴が天龍んとこに居るんだよ⋯」

写真を撮ってきやがったのだ。

「コイツ曰く、親友の代わりだってさ」

義理堅いもんだ。写真には確かにキンパツボインが映る。

「クマが出来てるな」

「だろ?きっと寝不足に違いねぇ」

眠ることは大事なのだ。

「という訳で、早起きかもしれないからすぐに寝る事。いいかな?」

「ハハ、そうしてもらうぜ⋯オレとした事が、もう、眠いんだよぉ~」

バタンキュー寸前の天龍がふらつきながら空母にとっつけられた司令室のドアを開ける。

そのまま消えたがドタンと聞こえない辺り、揺れには強いのかもしれない。

⋯3時だ。全てはこの時決まる。やり残しは⋯⋯対潜戦闘くらいだ。

ガスマスクのサダコが出てこないことを祈ろう。

だがこのフネは金峰だ。幾多の海の覇者に魚雷の一本二本、問題はない。

さァ楽観論を唱えよう。軍歌の代わりに唱えよう。

                    彼らの明日は、

 

                   「こっちのものだ」

 

 

 

「中佐?あ・な・た!?もう3時よ!起きないと冷めたコーヒーぶっかけるわよ!」

「あががががが、ぶっかけは止めてくれ⋯⋯」




人物・用語集
初霜「安定しないタイトルね⋯⋯」

横須賀鎮守府

全国に7つある鎮守府の総本山。
他は室蘭・横浜・呉・舞鶴・佐世保、あと古式。
残念、大湊は警備府止まりである。
東海、太平洋側の各基地をまとめる司令部的役割を持つ。
でも東京湾内は横浜鎮守府の仕事。戦場よりもカオスなのだ。
特に優秀な司令達は横須賀鎮守府直轄となり、自由に出入りができる。
こいつらとは別に、全国各地の優秀すぎる艦娘達を、
出張名義で運用しているのが連合部隊。
第一から第四まで存在し、半ば脅迫で自動照準器を手に入れた。
そしてこの上に中央本部が存在するが、
書類上は横須賀鎮守府という枠の外にある。
茶華田元帥がここのトップを兼任しているのが原因である。
なので退任騒動の時は全世界が動揺したとか。
深海棲艦退治のトップでもあるお方だから余計面倒に。
実はアメリカさんの所も借りて運営されている。


他の鎮守府も似たようなものである。
バックアップと東京湾を手中に収める横浜鎮守府と、
飛び地過ぎて一つしか基地作れなかった上に
壊滅したと思ったら新体制で復活してたよ系鎮守府こと、
古式鎮守府が異常なだけである。
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