世界樹の迷宮 風の翼   作:交喙

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初投稿です、頑張って続けていこうと思うのでよろしくお願いします。


第1話

世界各地にそびえ立つ巨大な樹、世界樹。

世界樹の内部や地下には広大な迷宮が広がっており、それらは世界樹の迷宮と呼ばれる。

この国、ハイ・ラガードも世界樹が存在し、それ故に迷宮が存在する。

そして人々はその迷宮へ挑み続ける。

その目的は迷宮を踏破する事によって得られる名誉か、それとも世界樹の中に隠された秘密か…

また、新たなギルドが生まれ迷宮へ挑んでゆく…

 

 ●

 

鋼の棘魚亭

 

迷宮に挑む冒険者達の憩いの場である酒場であり、同時に彼らに対するクエストを紹介する場でもある。

店の店主は昔からこの店で冒険者達の旅立ちを見守っており、頼れるオヤジ、といった貫禄のある御仁である。

………と言うか酒に酔って暴れる冒険者たちを拳一つで黙らせる姿は頼りがいがある何ていうレベルではないかもしれないが。

 

 ●

 

現在の時刻はAM11:00、朝から迷宮に挑む冒険者達は既に迷宮に入り、夜に迷宮に挑む上級冒険者達も宿にてベッドに入る、故に現在店内は閑散としており、埋まってる席も一割あるかどうかといった所だ。

そしてそんな店の片隅で、二人の金髪の女性が一つのテーブルを囲んでいた。

 

いや、厳密にはその二人組の内の一人、青いコートを着た少女はテーブルに突っ伏して寝息を立てている訳だが。

 

その少女に対して同じ机を囲む女性が声をかける。

 

「ねぇ?サラサ…?」

 

「………」

 

だがサラサと呼ばれた少女は目を覚まさない。

 

「ねぇってば!」

 

「……………あによぉ」

 

再び今度は強い口調で声をかけると漸くサラサは顔を上げた。

青い目の人形のような少女だ、幼げな外見の割に低めな声と、少し釣り気味の目の影響かクールな印象を受ける。

ただ今は目の下に隈が浮かび、半分位あいた口からはヨダレが垂れているという残念な感じになってはいるが。

 

「どうしてあなたはこんな大切な日にそんな情けなーい感じになってるの!シャッキリしなさい!」

 

先程から声をかけている女性がビシィッ!という効果音が付きそうな勢いでサラサに指を突きつける。

 

「仕方ないじゃない………昨日は火薬の調合で忙しかったのよぅ………属性弾の火薬って作るの面倒なんだからさぁ………」

 

そう言うとサラサはポンポンと自分の腰に回しているウェストポーチを叩く、隙間からは火薬を入れる専用の入れ物の口が覗いている。

 

「だったらもっと早い段階で準備しておきなさいよ……」

 

少し疲れたように呟くと女性は椅子に腰を下ろし、一つため息をついた。

 

誰も気にする事も無い様な日常の中に埋もれている風景。

それが後に伝説となるギルドの誕生の瞬間だとは誰も知らない………

 

 

 ●

 

 

さっきからギャーギャーと五月蝿い相方も黙ったようなんで私はのっそりと体を起こしてそのまま伸びをする。

早い段階で準備しておけ、とセレナは言うが私の武器である銃に使用する火薬はかなりデリケートな品である故に、あまり作り置きとかはしておきたくないのだ、通常の物ならともかく属性弾のモノは特に。

ちなみにセレナと言うのは相方の事だ、一応幼馴染で、ギルドの指定している職業分類で言うならパラディン。

正直色々適当な私と違って色々と気はきくし面倒みも良い、女の私から見てもかなりいい女だと思う。

私は火薬云々言っている時点で分かると思うがガンナーだ、って私は誰に対して説明しているんだこれは。

 

「で?結局ギルドはどうするの?」

 

すると私が覚醒したことに気づいたのかセレナは窓の外へ向けていた視線をこちらに戻す、ヤバイ、ちょっと不機嫌そう。

 

「全く…あなたが「どーでもいいー」何て言うから取り敢えず私含めて二人とも登録しておいたわよ…」

 

そう言うとセレナは足元に置いてあったリュックから一枚の紙を取り出してこちらに見やすいように机の上に置く、何と言うかこの自然にこっちに気を配る動作とか本当に流石だと思う。

 

私はその紙を手に取り読み始める、本来ギルドを登録する際は大人数を一度に登録する事が多いため、手の中の書類は空白が多い。

 

「えーと…メンバーは私とセレナ、でリーダーはサラサ……………って私がリーダー!?」

 

一気に目が覚めた、この幼馴染は一体何を考えているんだ!?

 

「そりゃ「ギルド作って世界樹に挑みましょ!」って私を誘ったのはサラサじゃない、だったらあなたがリーダーになるのが妥当でしょ?」

 

確かにそれはそうだけど!しつこい様だけど銃に関係すること以外は適当な私と気を配るのも気を回すのも得意なセレナ、リーダーとして妥当なのは誰がどう見てもセレナの方だろう。

 

「それにもうあなたがリーダーって事で登録しちゃったからどうしようもできないわ、諦めなさい?」

 

セレナはニヤニヤと人の悪い目をしながらこっちを見ている…くそっ、この時々出る性格の悪ささえなきゃ完璧なのに!

 

「さて、目も覚めたようだし早く向日葵ちゃんのトコ言って必要なもの色々買っておきましょ?公宮から冒険者って認めてもらうために古跡ノ樹海一階のマッピングをするって言うミッションも受けなきゃだし、急がなきゃ!」

 

そう言うとセレナは立ち上がり、足元に置きっぱなしだったリュックを背負うとさっさと店を出て行ってしまう。

 

「え、あ、ちょ、待ってって!あ、おじさんこれお代ね!」

 

私はテーブルの上に30en分の硬貨を置くと、店の店主に声をかけて急いで彼女の後を追った………

 

 ●

 

シトト交易所

 

ハイ・ラガードの冒険者御用達の店。

ちょっとした日用品から迷宮に挑むのには必須の薬やアイテム、武器や防具まで幅広く取り揃えている。

ちなみに先の会話で出てきた向日葵ちゃんとはこの店の看板娘の愛称であり、向日葵のような可愛らしい笑顔と大きな向日葵の髪飾りが特徴の可愛い女の子である。

そんな彼女の笑顔につられてついつい買いすぎてしまう客も多いのだとか。

………そう言えばみんな「向日葵ちゃん向日葵ちゃん」と呼ぶ性で誰も彼女の本名を知らない………まぁ、どうでもいい事か。

 

 ●

 

「えーっと、向日葵ちゃん!メディカを3本、それからアリアドネの糸を1本、後食料と地図を書くための墨を頂戴!」

 

「あ、はい!お買い上げありがとうございます!」

 

セレナが代金を払って買ったものをリュックの中に詰め込むのを見ながら、私はふと店内の一角に目を向ける。

 

「あ…あれが世界樹の魔物から取れる素材なんだ」

 

そこには糸で縛られて一纏めになった針や、瓶詰めされた蝶の羽、良く分からないぶよぶよした物体など様々な物が一纏めにされていた。

 

そう、迷宮の中には「魔物」と呼ばれる人間に対して友好的とは言えない生物達が住んでいる、故に世界樹の迷宮に挑む冒険者達は常に命の危機に晒されるのだ。

 

……………

………

 

………うん、師匠の特訓と比べれば大したこと無さそうだ、うん、大丈夫。

ちなみに師匠は引退した冒険者で、私の父親の友人だったらしい、私が迷宮に挑みたいって決めたその日からミッチリギッチリそれはもう地獄のような修行をつけてくれた。

 

そんな師匠の特訓方式は正に実践方式、容赦ない銃撃をくぐり抜けて的を撃つ訓練(一応、流石に非殺傷の銃弾を使ってた、当たっても死なない、死ぬほど痛いだけ)とか、実際にどこかから連れてきた魔物と戦闘させられたこともあった(勿論師匠の監視付き、ピンチになったら助けてくれた、と思う)。

 

………あれ?これもしかしたら迷宮に挑むより危険だったんじゃないかな?気のせい?

 

「サラサー!準備できたし、そろそろ行くわよー!」

 

セレナの声で思考の中に沈んでいた意識が急浮上してくる、セレナの背中には荷物で大きくなったリュックが背負われていた。

 

「ああ、うん、今行く!」

 

鋼の棘魚亭の時に引き続き、私は急いでセレナの後を追う………やっぱりセレナがリーダーをやるべきなんじゃないだろうか?

 

 ●

 

ラガード公宮

 

ハイ・ラガードを収める国の中心。

しかし現在公主は体調を崩しており、殆どの仕事は大臣が行っている。

大臣はかなり昔から公主の補佐をしてきたらしいご老人で、腰は曲がっているがボケなどとは程遠い芯の通った御仁である。

少々気難しい所はあるが、実際は好々爺といった感じで、常に街の事や迷宮に挑む冒険者の事を気にかけている。

ちなみに、時々公女が姿を見せることもある。

衛子と建を打ち合わせている姿を見ることもあり、公女は実は凄腕の戦士ではないか、と言う噂もある………

 

 ●

 

「さて」

 

大臣は私達をはっきり正面から見据える、何度か会った事はあったが、ここまで真剣な目をしているのは初めてだ。

 

「ふむ、世界樹へ挑む、か…」

 

手に持った杖で床をトントンと叩きながら考え込むように俯く。

 

「ふむ、君たちは既に公国民、ギルドを作り世界樹へ挑むのは自由じゃ、しかし…」

 

そう言うと大臣は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。

 

「君たちは若すぎる、よって外部から来た冒険者を公国民として認めるための試験と同じものを課そう…この羊皮紙に古跡ノ樹海一階の地図の一部を制作してもらう、詳しいことは樹海の入って直ぐに常駐している衛子に聞くといい。」

 

「はい、分かりました!」

 

この地図の作成は迷宮へ挑む冒険者への登竜門のようなものだ、私は大臣から羊皮紙を受け取ると深く頭を下げた。

 

「うむ、君たちの活躍に期待しておるぞ………ところで」

 

大臣の目が私に向けられる。

 

「サラサ………と言ったか、もしや、ザインの娘かの?」

 

「え?あ、ハイ!そうです!」

 

ザインと言うのは私の父親の名前だ。

 

「うむ、彼は非常に優秀な冒険者じゃった………ここに居るという事は、彼と同じ道に進む決意をしたのじゃな…」

 

先ほどの厳しい目では無く、孫の成長を喜ぶ祖父のような目で私を見る。

 

「彼の後を追うとしたらそれはまた厳しい道のりになるじゃろう…じゃが、この老体は君ならきっと出来ると信じておるよ…おっとそれから」

 

大臣は今度は私ではなくセレナの方へ目を向ける。

 

「確か君はセレナ君じゃったな……何度か衛子と一緒に訓練しているところを見たことがある。」

 

「あ、ハイ!何時もお世話になってます!」

 

私が師匠に師事を仰いでいた一方、セレナはこの街の衛子と一緒に訓練をしていたらしい。

 

「実は、君の事を気にしていた衛子がおってな…ほれ、あいつじゃ」

 

大臣が壁際を見ると、一人の衛子が何か大きな荷物を持って出てきた、セレナが衛子の方へ向かうと一言二言話した後に、その荷物を貰って戻ってきた…凄く良い笑顔だ。

 

「セレナ、何それ?」

 

気になったので率直に聞いてみる、するとセレナはその場で荷物を覆っていた布を解いた。

 

「訓練してくれた衛子の人がね、選別替わりに持って行けって!」

 

中から出てきたのは新品のタワーシールドだ、表面に剣を象った意匠が描かれている。

 

「彼女の期待に応えられるように頑張るつもりよ!」

 

そう言いながらセレナはタワーシールドを背負った、しかし彼女…って事はさっきの衛子は女性だったのか、あれだけいい笑顔だったから漸く春でも来たのかと思ったのに………

 

 ●

 

私達はラガード公宮を出て、世界樹の迷宮、その入口に向かう。

明るい日の光に照らされる入口は私達新米冒険者を歓迎しているようでもあって、逆に全ての侵入者を拒むような冷たい雰囲気もあった。

私達は覚悟を決めて迷宮に足を踏み入れる。

 

 

強い緑の匂いを含む風を浴びながら。

 

私達のギルド、「風の翼」の冒険が始まった。

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