長らく連載を休止していて申し訳ありません。
いつまでたってもガロウ編が終わらないまま、アニメ2期が始まってしまったので皆さんの滾るワンパンマン熱の糧になるように少しは話を先に進めようと思い立ちました。
ひとまず、S級たちが怪人協会アジトに乗り込むあたりまで不定期更新で書いてゆこうと思ってます。
待ってくださった方々の期待にこたえられるように努力しますので、楽しんでいただけたら光栄です。
今回は金属バット視点です。
あぁ、最悪だ。
やっぱり要請なんか無視して、ゼンコの買い物に付き合ってやれば良かった。
そんなこと出来るわけがない、無視した方が絶対に後悔することをわかっているのに今更すぎる後悔をしつつ俺は援軍にきたB級とC級に指示を飛ばす。
「突進来るぞ!!」
ムカデ長老とかいう、災害レベルじゃなくてサイズがガチで竜レベルの大怪蟲が道を抉り、その辺の建物を屑ってなぎ倒して俺達に、ヒーロー協会の幹部とその子供を狙って突進してくる。
親子はB級とC級の二人に任せて、俺はその虫の頭目がけて金属バットをフルスイングで叩き墜とす。
あの親子はなぁ、正直言って「次、皿をレーンに戻したら殺す」と心に決めたくらいムカつくクソガキとバカ親だ。
そもそも、タンクトップマスターも病院送りにしたヒーロー狩りがヒーローだけじゃなくて協会の幹部にまで手を出したから、不用意に出歩くなって言われてんのに何でお前ら、「庶民飯が食いたい」ってだけで俺を護衛に着けて出歩いてんだ?
こっちは重大な任務だって言うから、ゼンコとの約束を後回しにして、そのことでゼンコに怒られた挙句にまたエヒメさんに俺が約束を破ったとかの愚痴を吹き込まれることが確定してまできてやったのに、何で怪人と戦う以上の地獄を味わなけりゃいけねーんだよ!? 俺が何をしたって言うんだ!?
いや、エヒメさんならゼンコに何を言われても俺がゼンコとの約束が面倒だったからテキトーな言い訳して破ったなんて誤解はせず、むしろゼンコの怒りを宥めてくれるから俺にとって好都合っちゃ好都合だけど、それでもエヒメさんが知ってる俺の情報がゼンコの愚痴による俺の恥ずかしい話ばっかりってのはさすがにちょっと……って、そこはどうでもよくねーけど今は関係ねぇ!!
あー! くそっ! ムカつきとさっきの眠気覚ましに気合入れた所為で血が足りねーのと、早く終わらせてーって焦りの所為で自分でも何が言いたいのかわからなくなってきた。
……けどな! とにかく! あの親子はムカつく、ぶっちゃけお前をあの親子だと思ってバットぶん回した方が気合い入るくらいにムカつくけどな!
だからと言って、てめーらが殺したり襲ったりしていい理屈にはならねーんだよ!!
俺のフルスイングでも、ムカデの体にヒビどころか久しぶりに殴った俺のバットを持つ手がジンジンと痛むぐらいだが、それでも奴は直撃コースだった顔を避けた。
そこが弱点ってことか。
なら、そこを狙うしかねーな。
* * *
……あー、一瞬意識とんだ。
ここどこだ。ってか、あれがムカデ長老か。結構飛ばされたな俺。まぁ、S市の外にまではさすがに放り出されてないからマシか。
しっかし、必殺気合い
けどまぁ、他の所をぶん殴った時より手ごたえはあったから俺の性には合わねーけど、ひたすら地道にぶん殴りまくるか。
「あ~あ、急いで戻らねぇと……」
「な……ちょっと待ちやがれ! 金属バット!」
面倒な泥仕合いになりそうだなと思いながら、俺がバット担いでムカデの所に戻ろうとしたら声を掛けられた。
なんだ? 逃げ遅れた一般人か?
「生きてんなら話は別だ! ……っははは! S級2匹目ヒット♪」
逃げ遅れて助けでも求められてるのなら、悪いが面倒だと思ったらそうじゃなかった。そもそもこいつは確実に俺の助けなんかいらねぇ。
俺とそう変わらねぇほどガタイは良くて、なんかところどころ怪我はしてるがそれをろくに手当もせずケロッとした顔でいられる奴は、頼むから逃げるくらいは自分で何とかしてくれ。
もちろん、俺がそんなことを頼む必要なんかなかった。
「こっから先は俺が相手だ。テメェを狩るぜ」
……この時の俺はまだ、相手が一般人だと思ってた。
たまにいる、腕っぷしに自信ある奴が空気読まず俺に腕試しを挑んできてるのかと思ったから、俺はバットでムカデを指して避難するように言った。
「……何言ってんだ、バカ。さっさと避難しとけ。あのムカデが見えねーのか?」
が、その考えは甘すぎた事を即座に思い知る。
背を向けた俺の顔面目掛けて、こいつは躊躇なく突きをぶちかましてきた。
そんなもんを食らうほどふぬけてねーからバットで俺はガードするが、こいつはヒーロー協会にS級になる際に特注で作らせたどんな怪人相手でも折れない、曲がらない、変形しないバットに自分の拳どころか指がピンポイントでぶつかったつーのに、まったく痛そうなそぶりを見せねぇ。
むしろ、余裕を表して薄ら笑いを浮かべてやがる。
……あぁ、くそっ! 俺はバカか。俺が何であの親子の護衛してたのかすっかり忘れてたわ。
「ヒーロー狩りの……、怪人を名乗る人間……。そうか……、テメェがタンクトップマスターが負けたっていう……」
「そう、俺がそのガロウだ」
かぁー……、よりにもよって面倒くせぇ時に面倒くせぇ奴が出てきやがった。
ゼンコ。兄ちゃん頑張るけど、めっちゃ頑張るけど買い物いけなかったらごめん。この埋め合わせは絶対にするから、せめてエヒメさんに報告するのは今日のことだけにしてくれ。
俺が昨日、お前が見てたアニメの最終回で号泣したこととかは暴露しないでくれ。頼む。
* * *
あー、くそっ! 最悪だ最悪!!
ただでさえ血が足りねーつーのに、こいつは何なんだ!?
俺のスイングをのらりくらり躱して出来た隙に攻撃をぶち込むくせに、なんか手加減でもしてんのか致命傷は与えて来ねぇ。
「その出血量……意識を保つのがギリギリのはず。それと……何か所か骨折もしているな。その状態で倒れないのはヒーローの意地か?」
しかもこうやって合間合間に訳のわかんねーことをなんかぐちゃぐちゃ言って攻撃をやめるし。
こいつ、マジで何がしたいんだよ?
こいつの訳わかんねー言動が気にならねーとは言わねーけど、気にしてる余裕はねぇよ。
お前の後に巨大ムカデが控えてんだ。チンタラ時間かけてる暇はねーんだよ。
すぐにでもぶっ倒れるとでも思ってた俺が、いつまでも倒れない事に「どういう原理だ?」とか言い出すから、「気合いだ気合い」と答えてからついでに言ってやると、ようやく自分からケンカ吹っ掛けておきながらどっか覇気がなかったこいつが、真正面から俺を見た。
……マジでこいつは何だ?
話を聞いた時は自分が一番強いと思ってるただのバカかと思ったし、こんな時に空気読まずケンカ売ってきたからそうだと確信した。
だから俺の中で見逃さないものの中に、カツアゲと並んでこいつが、ヒーロー狩りが加わった。
確信した……はずなのに、どうしてか今のこいつを見るとその確信が揺らぐ。
俺がお前なんか相手にしてないと言えば、こいつの顔は強張った。確かに、ムカついたように目を見開いた。
けど、その見開いた眼は……少しだけ嬉しそうに見えた。
俺が相手にしていないことに対してはムカついてるが、俺がまだあの大ムカデを倒すことを諦めていない事を喜んでいるように見えたのは、俺の気のせいか?
「いつまでその気合いが保つか、ちょっと遊んでやるよ」
そう言ってフェンスから飛び降りて地面のタイルをさらにその下のコンクリごと踏みつぶしてマンホールを跳ね上げたかと思ったら、そのまま俺に全力投擲。
それをバットでまっすぐに打ち返したが、その先にヒーロー狩りは既におらず、俺の背後に回ってシルバーファングみたいな乱打をぶち込んで来た。
うん、気のせいだわ! 俺の目の錯覚だわ間違いなく!!
何が「遊んでやる」だ。何が「死ぬまで続ける気」だ。
遊びじゃねぇんだよ! 全部!!
今日、呼び出された任務はクソみてーな奴等の子守りっていうクソそのものな任務だったけどな! 俺が無視してたらあの寿司屋の時点であのバカ親子は死んでたかもしれねーんだ!!
俺がこうしてお前の遊びに付き合わされている間に、あのムカデが暴れ回って人が死んでるかもしれないんだ!!
俺が! やらねーと! 取り返しのつかない事が起こってたかもしれねーんだよ!!
俺さえいれば簡単に何とかなった事が、取り返しのつかない事として今も起こってるかもしれねーんだよ!!
遊びで取り返しのつかないもんを生み出してるんじゃねーよ! 「死ぬまで」なんていうお気楽な発想で、ケンカ売って時間を取らせんな!!
「俺はそんなに甘くねぇよ。
俺の気合いでぶん回し続けたスイングを嘲笑ったヒーロー狩りに、バットを構え直して答えてやる。
死ぬまで? ふざけんな。俺はぜってぇに死なねぇよ。
俺がここで死んだら、こいつを倒せてもムカデを倒せずに死んだら、俺は何でゼンコとの約束を後回しにして、楽しみにしてたゼンコを怒らせて悲しませたのかわからなくなる。
怒って悲しんで、それでも我慢してくれたあいつの我慢が無意味になる。
だから死なねぇし、敗けねぇよ。
あいつが我慢しただけ、ゼンコが我慢してくれる良い子だったからこそ世界は救われた。
そう言って俺が自慢するために、ゼンコが自分を誇れるように、その為に俺は勝つまでやめねぇよ。
「……それはそれは、殊勝なこった。
ますますテメーの心が折れる瞬間みたくなっ……」
最後まで言い切る前に、脳天にバットを振り下ろす。
テメーなんぞに俺の心が折れるかバーカ。
折れてたまるもんか。
『失敗の責任なんて、大きい小さい関係なく誰にだって取れない。あとからプラマイゼロにすることや、結果として良い方向にもっていくことが出来ても、失敗した時、何かが傷ついたり損したり、永遠に失われてしまったことは覆らない』
あの人はそう言って、立ち向かったんだ。
足を震わせてながら、終わった後に腰を抜かすほど一杯一杯だったのに、それでもあの人は真っすぐあいつを……アマイマスクを見据えて、一歩も引かずに言ったんだ。
『「死」という一番取り返しのつかない失敗を、「正義」だなんて語らせない!
「今」を「結末」になんかさせない!
結果が大事なら、なおさら「今」を大事にしろ!』
取り返しのつかない事をさせない為に、誰もあれ以上加害者にならないようにする為に、あの人は立ち向かった。
『何かを「悪」と決めつけて排除こそ、責任を、この先に起こりうる最悪から目を背けて、もう大丈夫と自分を騙したいだけだ!
……それはいつか必ず、破綻する。人は自分に嘘はつけても、隠し事は出来ない。
いつか必ず、あなたが犯した「取り返しのつかないこと」は、あなたの全てを奪って潰して壊して焼き尽くして殺し尽くす。
だから、逃げるな。現実から、現在から、悪や正義で二分なんか決してできない、灰色から。
その灰色を、白か黒かを決定づけるのは、私たちが『今』行う、行動次第なんだから』
あの人は……エヒメさんは生き残った宇宙人だけじゃなくて、あのクソムカつくアマイマスクも救おうとしたんだ。
自分が殺されそうになっても、バカにされて何もわかってねぇ言いがかりをつけられても、それでも救うために立ち向かったんだ。
折れなかったんだ。最後まで戦い抜いたんだ。
だからアマイマスクにあの人は勝ったんだ。
だから……俺が折れる訳にはいかねぇんだよボケッッ!!
「必殺……気合い……野蛮トルネード!!」
* * *
シルバーファングの一番弟子っていう話、忘れてた。
まさか野蛮トルネードを全部受け流されるとは……。
けど、俺の腹に張り手だかなんかをブチ込んで俺を吹っ飛ばした事で、やっと隙が出来た。
おい……。まだ終わってねーよ。
言っただろ? 死ぬまでなんてお気楽な考えでじゃねーんだよ。
勝つまで、俺はやめねぇよ!!
「お兄ちゃん!!」
俺をぶっ倒したと思って背を向けて歩き出すヒーロー狩りに、後ろからバットを脳天にぶち込む気だったがいきなり呼びかけれたその声で、俺は振り下ろしたバットを気合い全力で止める。
……何で……ここに?
完全な不意打ちを取ってたのに、それでも迎撃態勢を取ろうとしたヒーロー狩りは俺が寸止めしたことが理解出来ねーのか、ポカンとした顔で固まる。
……やっぱ、こいつなんか変だ。
今なら俺をもう一回、今度こそとどめを刺せただろうにこいつは何もしない。
ただ驚いて頭が真っ白になって動けないなんて可愛らしいもんなら、俺はこんな苦労してねぇよ。
こいつは絶対、訳わかんねぇなりに反射で迎撃くらい出来るはずなのにそれをしない。
おかしい。変だ。……けど、正直その訳のわからなさに俺は今、助けられてる。
「バッドお兄ちゃん」
「……チッ」
何で、ここにいるんだよ?
やめろ、来るな、呼ぶな。こいつの訳の分からない硬直はいつまで続くのかもわからねーんだから、お前は巻き添えに遭う前に逃げろ!!
そんな俺の心の声なんて口に出してたって聞く訳ないよな、お前は!!
「何してんの? その人だれ?」
「妹……?」
ヤバい。気付かれた。ヒーロー名じゃなくて本名だったから気付かれないかもって期待してたが、やっぱ無理だった。
だから俺はなりふり構わず叫ぶ。
「ゼンコ! 来るな!! こいつは……ブッ!!」
「お兄ちゃん!!」
今度は俺が最後まで言う前にぶん殴られて黙らされる。
あぁ、クソっ! ゼンコ! 頼むからマジでさっさと逃げてくれ!!
頼むから……俺にもうこれ以上、お前との約束を破らせないでくれ。
「寸止めの理由は知らねぇが、絶好のチャンスを逃したな」
守るから……。買い物もピアノの発表会も破ったけど、これだけは守るから。守り抜くから。
お前の前で暴力は見せないって約束だけは守るから……。
「もし……さっきのを食らってたら勝負はわからなかった。だがこれでもう完全にお前に勝ち目はねぇ!」
だから、だから早く逃げてくれ!
「次はきっちりトドメを刺させてもら……「ダメ!!」
ゼンコは俺とヒーロー狩りの間に割りこんだ。
俺の盾になって、ヒーロー狩りに向かって啖呵を切る。
「お兄ちゃんは私の前で暴力を見せないって約束したの! だからもう終わり! 終わり!!」
あの日の……アマイマスクに立ち向かったエヒメさんのように……。
……ゼンコ。エヒメさんみたいなおねーさんになりたいって言ってたし、俺もなれって言ったけどな……、そういう所は似なくても良かったんだぜ?
……似ても、文句なんてねぇけどさ。
文句はない。あの人のあの震えながらも、怯えながらも一歩も引かなかったあの姿に、あの生きざまに、肯定してやれないけど、「そんな生き方はやめろ」って言ってしまいたいけど、それでも確かに魅せられて惹かれたのは間違いないから。
けど、……一応ヒーローだったアマイマスクと違ってこいつにはあの人と同じ意地が通用しねぇんだよ!
……そう思った。
なのに、こいつはやっぱり訳わかんねぇ変な奴だった。
間に入ったゼンコごと俺を殴り飛ばしはせず、けれどゼンコの体格じゃ俺を庇いきれないからゼンコを避けて俺に攻撃することだってしようと思えばできたはずなのに、こいつはしなかった。
こいつはさっきの、ゼンコに呼びかけられた俺みたいに全力で振り下ろしかけた拳を空中で止めて、そして目を見開いて固まった。
信じられないものを見るような目で、俺を庇うゼンコをしばらく見下ろし続けて、それからポツリと呟くように、何かが零れ落ちたように言った。
「……………………ひぃちゃん?」
その呟きに、思わず俺は「……はぁ?」と声に出した。
なんか……人の名前……それもこいつには似合わない滅茶苦茶可愛らしい呼称がでてきたんだけど……俺の聞き間違いか?
俺の上げた声でヒーロー狩りは自分の失言に気付いたように舌を打って、「ひぃちゃん」という誰かをなかったことにする。
「何でテメェらの家庭内ルールに合わせなきゃならねぇんだ?」
なかったことにしてゼンコと俺に言う。
そうだ。こいつに俺らの約束なんて、それがどんな思いで交わして守り抜こうとしているかなんて関係ない。
俺はその約束を破らないとお前を守れない。だから、頼むからこいつの気が変わらない内に、お前を「邪魔」と認識してゴミを捨てるように排除しようと思っていない内に、逃げてくれゼンコ。
そんな俺の想いを込めて「危ないぞ」とゼンコにいうが、この強情娘は聞きやしねぇ!!
「ケンカ終わり!!」
そう言い張って、俺の前から引かないゼンコをヒーロー狩りは、ガロウはやけに冷めた目でしばらく見下ろし、無造作に右手を振り上げて……
「……そう言えば俺も番犬マンを狩りに行くところだった。
俺だってバカに割ける程、暇じゃねーよ」
ポリポリと自分のうなじを掻いて、萎えた様子でんなこと言い出した。
あぁ? テメーが吹っ掛けてきたケンカだろうが!!
思わずそう言ってせっかく納まりかけたケンカを続ける所だったが、ゼンコに止められたのとあいつはマジでもうこれ以上俺と戦う気がなくなったのか、「命拾いしたな、金属バット」とか捨て台詞を吐きながらも去って行く。
ムカつくしやっぱり訳わかんねー奴だったけど……、正直助かった。
つーか、ゼンコ。マジで何でお前がここにいんだよ?
「電話でネズミ寿司だって言ってたから、近くまで来てみたの。そしたら怪獣が出てきたから……」
「あっ!?」
ゼンコに軽く説教しつつ訳を訊いてみたら、また俺は肝心なことを忘れてた。
「しゃべってる場合じゃねぇ……! あの親子がヤベェ状況なんだった! 急がねぇと……」
やべぇ、ムカデとムカデに狙われてる親子を忘れてた!!
ゼンコには悪いが、先に帰ってるように言って俺はムカデの元に向かう。
が……
「やめよーよぉ! 死んじゃうよぉ! 買い物行こうよぉ!! ……もう!
わからずやっ!!」
ゴン!
……ゼンコは俺のズボンにしがみついて止めてたが、俺に引く気がないと判断した瞬間、俺から金属バットをもぎ取ってそれで俺の頭を殴りやがった。
……ゼンコ。お前、エヒメさんみたいなおねーさんになるんじゃなかったのかよ?
マジであの人見習って、もっとおしとやかになってくれよ……。
そんなことを思いながら、バットじゃなくてゼンコの平手でもぶっ倒れたであろう程限界だった俺は、その場に崩れ落ちて意識を手離した。
「……おねーさんが言ってた通りにしちゃったけど、さすがにやりすぎたかなぁ?」
幸か不幸か、ゼンコの呟きは気絶した俺には聞こえなかった。
* * *
後悔したくないからしなかった。
あのクソ親子の護衛だって知った時点で、無視して帰ることも考えたけどしなかった。
ゼンコとの約束を後回しにしたことも後悔するが、それ以上に俺は俺が無視したことで、誰かが死ぬこと、取り返しのつかない事が起これば後悔することをわかっていたから。
絶好のチャンスだったのに、ヒーロー狩りの脳天にバットをぶち込むのをやめたのだって、後悔しない。
ゼンコの前で暴力はもちろん……相手が何であれ後ろから不意打ちなんてところ、見せるわけにはいかねぇ。
綺麗事だけじゃやってられないのはわかってる。
綺麗事だけじゃ救えない。取り返しのつかない事は増えて大きくなる。
けれど……それでもヒーローの仕事は綺麗事を実践して実現することだから。
これはあの人の言葉ではなく新入りだった鬼サイボーグの言葉だが、あの人も……エヒメさんもそうだと信じて疑っていなかったから。
俺もそう思ったから。
だからせめて……ゼンコの前だけでは、ヒーロー協会をクビになっても、自分でやめても、ゼンコのヒーローであることだけはやめたくないから。
だから俺は、貫き通した。
そのことを誇りに思っても、後悔なんて絶対にしない。
……けれど、一つだけ今日の出来事で俺がしたことに後悔がある。
『……………………ひぃちゃん?』
俺を庇う、俺の盾になってあの人のように立ち向かったゼンコを見て誰かの名前を、似合わねぇやたらと可愛らしい呼称で呼んだあいつ。
……あいつに、訊けばよかった。戦う前に、「何でヒーロー狩りなんてしてるんだ?」って。
そうすれば、今も喉に引っかかるように気持ち悪いモヤモヤした疑問が……あいつのまるで手加減しているような言動も、ゼンコに免じて退いたような行動も少しは説明ついたかもしれない。
……あいつの目に映ったゼンコが、一瞬エヒメさんに見えた訳がわかったかもしれない。
金属バットVSガロウは原作通りの展開なので書かなくてもいいかなとも思いましたが……、ゼンコちゃんの行動がうちのガロウにとって最大のトラウマスイッチかつ聖域だった為、これは書かないといけないという使命感に駆られました。
しかしマジで行動や展開に変化のつけようがなかった為、心境の変化をどうつけるか苦労しました。