「教えてくれマリー、俺は何度この辺りを往復すりゃいいんだろうか」
「……わかりかねます」
と、言うわけで再び癒しの泉を経由して今度は異教の地下墓所へと向かう。
ここの入り口自体は実のところ、レイナードを山の砦に送った時に見つけていたのだけど……。
「あからさまに怪しいし、特に用事も無かったから時間の無駄だと思ってスルーしてたんだよね」
「しかし、そのスルーした場所が『救済』の隠れ家である可能性を考えれば、行商人と一緒に来た時に足を踏み入れなかったのは正解だろう」
そんな事を言いながら、地下墓所に入るが……。
「うわ……ヒデェ臭い」
「肉の腐った臭いが酷いですね」
「……戦場跡よりも酷いな」
三者三様の言葉だが、要するに地下墓所は凄く臭かった。
ある程度進んで理解したが、くさったしたい……もといゾンビが大量発生している上に、これは後で遭遇するのだけどそれを主食とする体臭が酷過ぎる大型生物オーガが生息しているのだから、さもありなんというものだった。
「あ、この壁の上の方、崩れてるな。なんだか奥に空間がありそうな感じ。ちょっといってくる」
そうして辿り着いたのは微妙に開けた空間で、そこには宝箱が一つあった。
「お、宝箱か。ラッキー♪」
と、思ったのも束の間。
宝箱の中身は鉄槌だった。
武器としては有能だろう。威力も高そうだ。
「けど、俺は使わないしマリーも使わない。ポーン達に渡しても使わないだろうなぁ…」
メルセデス?鉄槌なんて果てしなく似合わないだろう。
結局、鉄槌、アイアンハンマーはポーンに預けて地下墓所の探索を再開する。
途中、火の気が近づくと大爆発するしたい爆弾なゾンビも居たが、アレのお陰で逆に周囲のゾンビが殲滅できたりもした。
……いや、ゾンビって本当に火の気に弱いんだな。
「……いや、ゾンビが居るのなら、スケルトンが居るのも覚悟してたけどさ、メイジスケルトンは予想外だった」
「覚者様、目の前でいきなり避けないでください!!」
「いや、俺盾も持たないし重装備でも無いストライダーだぞ?喰らったら死ねるわ!!」
ポーンから苦情を貰ったが、軽装のストライダーに無茶を言うな。というか肉の盾にしようとするな。
俺はお前たちほど頑丈じゃないんだ!
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら足を進めると洞窟のようなところに出て、そこに作られた木組みの通路を渡っていくとそこにはゾンビと同レベルの悪臭の元が居た。
やつはこちらに気付く当方穂と嬉しそうな鳴き声を上げて襲い掛かってくる。
「オーガです!」
「女性に反応して興奮しているようです!」
「くっ、人もポーンも関係無しか!?」
女性人が危機感を顕に戦闘体勢に入る中、俺とウォリアーのポーンは死角に回り込み、大技の準備に入る。
見るとメルセデスが二人のポーンの前に立ち、必死に盾を構えて防御しており、二人のポーンは魔法を詠唱していた。
「……おい、一気にいくぞ」
「心得ました、覚者様」
先ずは俺がオーガにとび蹴りをかまし、更に蹴った場所を足場に飛び上がる。
次にポーンが全力で大剣を振り下ろす。
丁度それが終わった頃、俺は空中で回転し、高い位置から勢いをつけてギロチンのようにダガーでヤツの頭をカチ割らんと切りかかる。
「ウギョオオオオオ!?」
無論、カチ割るには至らないが致命傷は与えられた。
「燃やし尽くします!フレイム・ウォォオオル!」
「神経を焦がしつくしてやるわ!サンダァアアアレェエエイイイン!」
メルセデスが時間を稼いでくれたお陰であっさりと大技二つが決まり、オーガもコレには堪え切れず、そのまま力尽きる。
「はぁ……ふぅ……もう少し、早く仕掛けてくれ。あと少しで死ぬかと思ったぞ」
「わるい。でもメルセデスが耐えてくれたお陰でここまであっさりと決めれた」
「ふ、ふん。私とてこのぐらいは出来る!さぁ、先を急ぐぞヨシュア!」
その後も順調に進むと何やら人の声が聞こえてきた。
──人の心、すなわち魂の本質は……
どこかで何か説法を解いているような声が聞こえる。
この声は……確か、以前カサディスで聞いた深紅のローブの男の声のような気がする。
が、しかし正直どうでもいい。
仮の入れ物に一次的に宿っている、というのは転生という行為をした俺からすればあっている、と思えるようで全く違う。
俺の前世、日本人でゲームやアニメ好きで大人になっても心に厨二病を秘めていた俺だが、転生するに当たってそういった前世の『俺』というのは『知識』とか『記録』にこそなれども今の『カサディス村のヨシュア』という存在に大きな影響を与え、思考や趣味の傾向などは大きな影響こそ受けども別人なのだ、とはっきりいえる。
魂と肉体は切っても切れない関係にある。
だから、俺は前世の俺の事を思い起こす事はあれど、振り返ること事態は実のところ余り無い。
そして、永遠の快楽……等とほざき始めたが、魂だけになった所でそれは無い。
経験者が言うのだから間違いない。
そして言うにこと欠いて最終的には皆死んで一つになりましょうとか……ありえん。
歩みを進め、声のする場所。
集会場の二階の監視が出来そうな場所に付くと、不意に嫌な予感に襲われる。
「貴方におわかりますかね!?覚者殿!!」
「!?」
バレた!?
次の瞬間、足場を破壊され、広場に転がり落ちる。
「コレが答えなのです!」
深紅のローブの男、エリシオンが叫ぶと同時に『救済』の信者たちの足元に嫌な…魔力の渦が巻き起こり、そこからゾンビが召喚される!
「全てに混沌を!」
「馬鹿な!信者を殺すというのか?!」
「コレこそが答えなのですよ!!」
そこから始まる阿鼻叫喚。
一瞬にして信者はゾンビに食われ一人、また一人とゾンビの仲間入りを果たす。
そのゾンビと信者の地獄の沙汰の中、エリシオンが悠然と去る。
しかし、追おうにも目の前のゾンビが邪魔で負うことができない。
「くそ、殲滅するぞ!」
ゾンビの殲滅自体は、あっさりとすんだ。
しかし、信者は全滅し、エリシオンには逃げられ、その隣に立っていた騎士にも逃げられた。
「捕らえるのには失敗したか…」
「仕方あるまい、状況が状況だ。アレで追いかけるのは不可能だった」
溜息を付きつつ、悔いるとメルセデスが励ますようにそう言ってくれた。
「ありがとう」
そんなやり取りをしていると、壇上にある扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。
「さすが覚者殿って所ですな。とりあえず、こちらに来てくださいな」
「メイソン?」
俺はメイソンの声に従い、若干の警戒を保ちつつ扉を開ける。
「エリシオンは逃しましたが、幹部の一人は捕らえましたぜ」
そういって、メイソンはこの男からキッチリ情報は聞き出したという。
そして、始末はご自由に、とも。
逃がせば厄介な事になるとも言っていた。
確かにそうだろう。
逃がせば面倒くさそうだ。
何より、面倒が増えて俺に近しい人間……キナとか村の皆に何かあっても困るし『救済』の人間など、俺からすれば盗賊、魔物や野生動物と変わらない。
だから俺は、腰の短剣を引き抜き。
「……ま、火遊びが過ぎたな、おまえさん。精々反省して──」
「ま、た、たすけ──!」
「──来世で同じ轍を踏まない様にすると良い」
一閃した。
その跡、メイソンは拍手しつつ笑いながら再び姿を見せる。
「いやいや、すごいね。本当にやっちゃったよ」
「……」
「いやはや、これで頼もしいお仲間が増えたわけだ。また何かあったら連絡しますよ」
「あぁ」
軽い調子で言うメイソン。
俺は無感動にそう返して溜息を付く。
覚者となってから、いや、この世界に転生してからなのだろうか?
前世の影響を色濃く受けているにもかかわらず、殺人の禁忌、というものは特に感じない。
あるいは、なんとなく胸につっかえるようなものがほんの少しの後悔なのだろうか?
まぁ、しかし今更だろう。
ここに至るまでに、俺は既に人間だけならば180人近くの賊を殺しているのだし。
一ヶ月もしないうちにコレだけ殺しているのだ。
前世の、日本でコレを為したらとんでもない殺人鬼って話だ。
今、こんな感傷に浸っているのもあの情け無い命乞いで獣にかける物等無かった筈の良心が少しは動いた、ということだろうか。
或いは、エリシオンの演説で前世の『記録』を刺激されたせいで少しナイーブになったか。
「……どちらでもいいか」
少なくとも、ここで歩みを止める気はさらさら無いのだから。
最近はプレイ中のミスもなく、NGは少ないので妄想NG編をば。
妄想NG…それ、キャラが違い過ぎるから!
「貴方におわかりますかね!?覚者殿!!」
「!?」
バレた!?
次の瞬間、手が強力な磁石に引っ張られるかのように空中に持ち上げられ、謎の光る輪に固定される。
「拘束魔法!?ありえない!!」
「マスター!?…って私達も!?」
全員が拘束魔法で動きを封じられる中、エリシオンが朗々と呪文を詠唱する。
それは破滅をもたらす禁断の魔法。
「闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの 混沌の海にたゆいし 金色なりし闇の王 我ここに 汝に願う 我ここに 汝に誓う 我が前に 立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝の力もて 等しく滅びを与えんことを」
「ちょ!?それ世界が違うぞ!!」
「全てに混沌を!」
「話を聞けよ!!」
「重破斬(ギガスレイブ)!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」
俺のみならず地下墓所そのものが消し飛んだ。