難易度HARDの転生人生   作:とうや

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11:砦を奪還せよ!

 少々ばかりシリアスモドキな気分、を堪能した所でそろそろメルセデスの依頼を果たす時が来たかな、と俺は思った。

本人が同意の上とはいえ、少々以上危険な依頼に付き合わせたのだし、もうそろそろ解散するべきだろう、と言う思いもあった。

なので、そろそろ眩みの砦に行く、とメルセデスに告げると、当人は若干残念そうな顔をしながらもわかった、と了承を告げた。

 

「行くのなら、西の石切り場を通ると時間短縮になるそうだ。とはいえ、そこには魔物が住み着いたらしく駆除をする必要があるらしいが…どうする?」

「……石切り場から行こう。マナミア街道を越えて回り道するのは本気でしんどいし」

「……そうだな、月噛峠を超えるのはかなり面倒だ。私はそれで構わない」

 

という満場一致で石切り場方面から行く事になった。

そうして石切り場に行くと一人の行商人が立ち往生していた。

どうしたのかと話を聞くと中の仕掛けで扉が開かず困っているとか。

そういえば、オーガが出るという噂もあったか?

 

「マスター!このスイッチを複数人で踏めば扉が開きそうです!」

「わかった!」

「マスター、ここは鉱石がいっぱいです!」

「堀り尽くせー!」

『合点承知』

 

なんて事をしながら石切り場内部の探索を続けていると、つい先日に別の場所で倒したばかりのアレがいた。

そう、とんでもなくくっさいオーガだ。

 

「全員!全力戦闘よーい!」

 

言いつつ自分も武器を双短剣を構える。

 

「かかれー!」

 

先ず俺の攻撃、以前と同じくとび蹴りからのジャンプに繋げ、ポーンが剣で滅多切りを行い、マリーがフレイムウォールで焼き払い、ポーンがサンダーウィップで何度もなぎ払い、メルセデスがポーンと一緒に何度も切りつけ、俺がギロチンの如く首を刈り取る。

そんな簡単なお仕事だ。

 

「……俺も、強くなったなぁ」

「マスター、油断は禁物だと思います」

「いや、まぁそうなんだけどね」

 

オーガは1体のみならず3体居たのだが、結果は変わらない。

途中、油断して倒しきれずに反撃を受けたが、それでも生きているので問題なし。

死ななきゃ、安い。

 

 

さて、そうこうしている内にあっという間に石切り場の内部の魔物全てを掃討し、仕掛け扉や鍵やかんぬきも全て解除した。

 

「いくぞ、眩みの砦へ!」

 

っと、思ったけど。

 

「──の前に、荷物を預けに行くか。欲張って詰め込みすぎて正直きつい」

 

そんなこんなで眩みの砦。

辿り着いたのでメルセデスとの依頼もここで終わりか、と思いきや。

 

「これから奪還任務なのだろう?なら、私も協力しよう」

「良いのか?」

「問題ない。私はある程度の自分の行動の自由を許されているからな」

「そうか……メルセデス、もうしばらく力を借りるよ」

 

 

と言う訳で眩みの砦へ駆け足で向かう。

砦への侵入はどうにも足止めを喰らって難儀している状態のようだ。

ちなみに、前庭のような場所に今入るのだが、ここは以前どこぞの教官殿が大暴れしたお陰でキッチリ確保できた場所、ということらしい。

一応、砦の内部へ侵入できる穴……これはゴブリンが砦を占領する際に使用した穴らしいのだが、それが残っていて使用可能だ。

しかし、ここから入った所でゴブリンやホブゴブリンの群れ、

 

「……というか、ここで悩むくらいだったら全員この穴にはいればいいのに」

「ヨシュア、誰もがお前の様に果断に挑める人間というわけではない」

「それは……いや、まぁいいや。とにかく、こっから侵入して門を開ければいいってことか」

「マスター、ある程度の露払いも行った方が宜しいのではないでしょうか?」

「……そこは、適宜考えよう」

 

とりあえず、必要に応じて潰す、ぐらいで考えて穴の中へ身を投じる。

さぁ、潜入ミッションだ!

今度こそ蛇の人っぽく!

辿り着いたのは倉庫だ!

ゴブリン二匹とホブゴブリンが一匹がこの部屋に居る!

おし、スニークしてばれないように殲滅し静かにこの砦を占拠してや──

 

「先手を取ります!」

「ヌゥオオオオ!!!」

「サンダーレイン!」

 

 

 

 

 

潜入後、即全力戦闘が開始され、結局力押しのごり押しだった。

 

 

 

 

 

「もうちょっとスマートに物事を済ませたかったな」

「スマート(笑)」

「マリー、お前最近どんどん遠慮が無いな」

「良いマスターに巡り会えたものです」

「……そうかい」

 

なんというか、俺のメインポーンは主を敬う気が余り無いんじゃないだろうか?

まぁそんな事もあったが、気を取り直して外に出る。

 

扉を開けるとそこは、魔物だらけでしたとさ。

 

「いや、わかってたんだけどな……無限沸きな感じのゴブリンばかりだけど、サイクロプスの増援は流石に無いだろう。先にサイクロプスをつぶすぞ!」

「わかりました!」

「ポーン達は雷をサイクロプスにたっぷりとくらわせてやれ!メルセデスは護衛、近づいてくるゴブリンの排除だ!」

 

そして俺は遊撃というか撹乱。

かまいたちの如くすれ違い様に切りつけて敵をかき乱し、ジャンプキックから相手を足場にして大ジャンプしてギロチンの如くきりつける。

 

「10点満点だな」

「「「サンダーレイン!!」」」

 

ゴブリンごとサイクロプスに降り注ぐ無数の雷。

それは控え目に見てもオーバーキルで、案の定サイクロプスはしびれて棍棒を落とし、orzといった具合に手と膝を突いていた。

 

「マスター!!チャンスです!」

「一気に決めるぞ!!」

 

魔力弾が幾つも飛び交い、俺とメルセデスが切り込み畳み込んでいると、離れた位置に居たゴブリンともう一体のサイクロプスが仲間の救援にやってきた。

 

「ぐぉぉおおお!」

 

棍棒の振り下ろしによる一撃。

見方のゴブリンを粉砕しての一撃だが、流石にそれに気付かない、そしてそれに当たるほどとろい俺達ではない。

 

「そのつぶらな目を射抜いてみようか!」

 

即座に弓を構え、直感的に狙いを定めて3本矢を放つと3本中1本が見事にサイクロプスの目玉に当たり、もだえ苦しませる事に成功する。

その隙に仲間たちが最早後処理状態になった近くのサイクロプスとゴブリンの相当を終えており、さぁ次を葬るぞ!という所で背筋から脳天に突き抜ける様なザワつきを感じた。

俺の死角、背中の方向の遠くから大きなものが放たれたのだ。

そして、丁度それを視界に納め、それが何か察知したメルセデスが叫ぶ。

 

「いかん、あれは爆裂弾がくるぞ!避けろ!!」

 

矢というには余りにもデカイそれが俺達ではなく、近くの地面に当たると、強烈な爆発が巻き起こりそれに吹き飛ばされる。

直前で全員が退避行動に移ったお陰で直撃はなかったが、アレは明らかに俺を狙ってた。

 

「うわっぁああああ!?」

 

吹っ飛ばされるだけで、焼けたり、破片で怪我とかは特に無い。

しかし、吹き飛ばされたせいで体制がもろに崩れた。

 

「ビックリさせやがって!相変わらず殺意が高過ぎだっての!!」

 

飛び起きてガライモの絞り汁を一気飲みする。

ちなみに、今更だけど味はサツマイモを煮詰めた感じだ。

そも、ガライモ自体がサツマイモに良く似ているといえる、主に味と見た目。

 

元々大した量ではない一口で飲み干せるそれを一気に飲み干すと、この世界の不思議に則っているのか怪我が少しだけ癒えて、乱れた呼吸も少し落ち着いた。

しかし、落ち着いたのも束の間、別方向から2射目、3射目と続けて爆裂弾が飛んでくる。

それらをあわあわと回避しながら俺はメルセデスと相談する。

 

「先に、バリスタを破壊しなければ狙い打ちだぞ!?」

「なら、先ずは門付近のからだ!そうすりゃ後ろを気にしないで済む!」

 

バリスタが設置してあるのは門に1箇所と砦に2箇所の合計3箇所だ。

そして、門付近は分厚い石壁があるから他の箇所の砲撃を防御もしやすく、また門付近のバリスタの死角にもなるので1度で3度おいしい。

しかし、ハシゴを悠長に上るのはやめておいた。

だって上でゴブリンどもがニヤニヤと待ち構えてるのが身を乗り出してるせいで丸分かりだしね。

 

「そういえば、もと来たところには他の道があったか?」

 

そう呟いて、今回辿ったルートを思い出す。

地下から駆け上がり、扉と、奥に向かうように伸びていた…階段?

俺が思い出しかけた所で、先に思い出したマリーがその事を言って先行する。

 

そして、俺がバリスタの場所に辿り着く頃には、爆音が戦場を支配していた。

もっと具体的にいうと、魔法により作られた炎の壁がそこかしこに迸り、その炎に炙られた火薬樽が大爆発。

あっという間にゴブリンが一掃されていた。

そして炎をバックに悠然と立つ3人のポーンの影。

もし、ここに悪役とかがいて、そいつがやったのなら三段笑いとかしそうだなぁ、と思わず呆けてしまった俺は、悪くない。

 

その後の攻略は割りと簡単だった、というかある意味作業だ。

敵バリスタの放つ爆裂弾をより装填速度の速い通常弾で打ち落とし、逆に相手のバリスタ二つを破壊する。

そして、破壊した所で爆裂弾に換えてサイクロプス及びゴブリンを一掃するという、本当に簡単な作業だ。

 

「いや、飛来する爆裂弾を通常弾で打ち落とすとか、殆ど神業だと思うのだが」

「え?でもそれぐらい飛ぶ鳥を落とすのより簡単じゃん?飛来するコースは常に一定だし」

 

俺、その辺りのシューティング的な勘は前世の記録から引っ張り上げた射撃の感性だ。

例え相手が動物であろうと、何となく、次の動きが見えるような気がして、予測位置に放てば、矢が刺さる。

勿論、相手が早過ぎたりトリッキーな動きだったり、そもそもこっちが動いてるとろくに当たる物でもない。

勿論、運任せに数をこなせば当たることもあるが、それは別だろう。

 

そんなこんなで門を開く頃には何時の間にかゴブリンがうじゃうじゃと巣穴に繋がっていると思われる穴から沸いて出てきていた。

しかし、そんな湧き出たゴブリンなど物ともしない勢いで兵士たちが突撃を仕掛ける。

 

「焦らずに行け!」

「GO!GO!GO!」

「ゴブリンは焼き払えー!」

「汚物は消毒だー!」

「部下の仇だ、真っ二つにしてやる!」

 

なんだか、その中に何人か見覚えのある人影や、この世界にいるのは間違っている気のするモヒカンの姿があったが、まぁどうでも良い。

その勢いでどかどか進んで、逃げようとしたゴブリンが砦の門を開門するように訴えたかと思ったら、実は相手の増援だったりして結局増援と一緒に突撃してきたが……いや、今更ただのゴブリンやホブゴブリンが群れた所で相当よそ見して油断し無い限り負けないよ、俺は。

 

そして砦を攻略していくと少し呆れた光景が。

 

「……いや、びっくりしてしまうのは良いけど、それで足踏み外して頭から落ちて死ぬなよサイクロプス」

 

そう、サイクロプスが足を踏み外して墜ちて死んだのだ。

以前もそういえばエヴァーフォールで出てきたオーガが同じ様な自滅をしてたなぁと思い出す。

案外、魔物の自滅は多いのだろうか?

 

そんな事を思いつつも辿り着いたのは司令室。

本来であれば指揮官に当たる騎士なり貴族なりが居る所だが、ここにいたのはホブゴブリンが一匹だ。

しかし、他のゴブリンどもと何かが違う、そう感じさせる風格を持っていた。

 

「さて、お前を倒せばここの制圧は完了だ。覚悟はいいな?」

「無駄ナコトヲ!俺ヲ倒シテモ、全テ滅ビル!」

「何?」

「ドラゴンガ全テ滅ボス!」

 

ホブゴブリンの言葉に、俺は思わず笑い出してしまう。

あぁ、本当、笑いが止まらない。

 

「ナニガオカシイ!」

「いや、簡単なことだよ。滅ぼされる前にドラゴンを滅ぼせば良い。単純な事だと思った、それだけだ。さて、これ以上の問答も面倒くさい。サクッと死ね……いくぞ!」

 

多少、実力がありそうなホブゴブリンだが、所詮はホブゴブリンに過ぎなかった。

そも、1対5の状況ではどう頑張ってもひっくり返す事は出来ない。

俺とメルセデスが撹乱に徹して、マリーを始めとしたポーン達が全員で魔法を浴びせかければ、豆腐を崩すのと同じ位にやつはあっけなく吹き飛んだ。

 

そして、先程と同じ様にドラゴンが全てを滅ぼすとまるで『救済』のエリシオンと同じ様なことを言って司令室の窓から飛び降りて逃げ去る。

 

「負け惜しみ、と思いたいですが……マスターはどう思いますか?」

「どちらでも。どの道、俺はドラゴンを倒して奪われたものを取り戻す、それだけだよ」

 

砦を奪還し、帰路に着こうとした所でメルセデスがふと立ち止まる。

 

「どうした?」

「いや、やはりお前は、覚者は凄いのだな、と今回お前に無理を言って同行した事で改めて感じたよ」

 

メルセデスは、どこか諦観を感じさせる声で言う。

 

「……」

「私は、未熟だ。ご立派に着飾り、兵の先頭に立って戦っていて嫌でもそれが分かる。どうしたら良い…?どうしたら、私はお前のように強くなれるのだ?私はどれだけ頑張っても実力は付かず、兵からは無能騎士とまで言われている……無様だろう?」

 

メルセデスの独白を聞き、俺はふと思い出した言葉で返す。

 

「何かに向かって、強い意志と強い思いを胸に一歩踏み出す。俺は、前にカサディスにドラゴンが襲撃してきた時、家族同然の村の皆を守りたくて、兵士が落とした剣を持ってドラゴンに挑んだ。今思えば、凄く無謀なことだ」

「恐怖は……なかったのか?」

「怖かったよ、当然だ。だけど、自分が死ぬのも、村の誰かが死ぬのも嫌だった。だから戦うしかないって思った。そして、今じゃ気付けばドラゴンが村どころか世界を滅ぼすなんていってる奴らが居る。怖いけどさ、俺、ドラゴンと戦って一つだけ確信したことがあるんだよ」

「何を?」

「ドラゴンは怖い。けど、絶対に勝てない相手じゃない、そういう確信」

「しかし、生半可な攻撃は通じないと聞くぞ?」

「あぁ、だけど、俺は最後の最後にヤツに一矢報いる事に成功したんだよ。ヤツの手に剣を突き立てる事ができた。ほんの僅かに刺さっただけだ。だけど、ほんの僅かでも意味があるのなら、もっと強くなって挑めばどうなる?」

「しかし、それにだって限界がある!」

 

メルセデスが堪らずそういう。

 

「そうだな、だけどだからって俺はまだ限界じゃない。俺はまだ一歩踏み出せる。力で駄目なら技術を磨く、技術が駄目なら、心を鍛える。俺だけで駄目なら、マリーを始めとしたポーンたちが居る。それに応援してくれる人たちも居る。俺の無事を願ってくれるヤツも居る。なら、そう簡単に負けないし、負けられないだろう?諦めるなんて論外だ。無理だろうと何だろうと意地でも一歩踏み出す。これは俺が覚者だからじゃない。俺が人間で、あんな理不尽に負けたくないから意地を通す、それだけの話なんだ」

 

俺は、確かに転生者で他の人間より強くなりやすいし物覚えも良い、そういうボーナスを得ている。

だけど、心そのものは普通の人間だ。

転生したからといってそこまで手を加えられたわけじゃない。

 

「諦めたら其処で終わりだ。だけど、生きているのなら、諦め無い限りきっとどうにかできる。俺は何時だってそう思っているよ」

「強いんだな…」

「強いんじゃない。これは俺の意地だよ。泣きたくても辛くても、意地張って格好付けたいんだ。男だからな」

「そうか」

「あぁ、そうとも」

「なら、私も友であるお前に恥じる事無く王族としての意地がある!騎士としての意地もある!お前に負けるわけには行かないな」

 

メルセデスが決意を新たに宣言すると、一同そろって目を剥いた。

 

 

 

「「「「え、王族だったの!?」」」」

 

 

 




メルセデスが王族って、中々びっくりですよねー。
本来ならばもっと後に分かることですが、かなりはやめてみました。

ちなみに、ここまで頑張ってるメルセデスさんですが、ヒロインではありません。
うん、多分、きっと、メイビー。
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