結局思い出したのはいいけど、どのみち調査隊が派遣されていると言うことだし俺がメインで無くてもいいはず。
というか、俺が出張り過ぎると他の人の面子潰れるよね?
そう思い、俺は領都やカサディスとあちらこちらに赴き、様々な依頼を請負って教会側の調査完了までの時間をつぶす事にした。
受けた依頼の中で、一番印象的だったのはやはり南の盗賊の親分モールの存在だろう。
自らの意思と覚悟を強く意識し続ける彼との会話は盗賊団の親分故の苛烈さもあるが、同時に上に立つ者としての寛容さも見せ付ける柔軟さを持ち合わせていた。
いや、あれで盗賊じゃなかったら言うこと無しなんだがそこは言いっこなしだな。
他にも、グランシス地方一帯に散らばる契約の証なる物を集める依頼も受けた。
コレが全部が全部、一癖も二癖もある場所にしかなくて集めるのが中々大変な上に、結構頑張ったが13個ほどしか手に入れていない。
むぅ、最近割りと色々うまくいってるなぁと思ったけど、そんな事もなかったか。
「と言う訳で、セレナの依頼は俺にとっても都合が良かったのさ、気分転換って意味で」
「……そう?」
「うん、そうだ。ちなみに、セレナはどこに行きたいんだ?あの依頼の文面だと、今一どこに行きたいのか分からなかったんだが」
俺がそういうと、セレナは少し考えてからふと思いついたようだ。
「……北…に行ってみたい。グランシスの……北には、行った事が……なかったわ」
「北か。北のきれいな場所?うーん、何があるんだろう……まぁ、行って見れば分かるか。あるか、ないかが」
と言うことで、グランシスの北に行くことが決定した。
「けど、北と言ってもどれぐらい北なんだ?風切り砦よりも向こうか?」
「ヒルフィギュアよりも、向こうへ……あの辺りまでは……おばあちゃんと行った事があるわ……。けど、その先は……」
「なら、その先に行ってみるか」
そんな訳で、俺はポーン達と共にセレナを護衛しつつグランシス北方観光旅行に出たわけだが……。
「なんで、キメラが出るかなぁ……」
「マスター、来ます!」
「なら、俺も魔法で決めてやる!」
そう、俺は今|魔法使い(メイジ)なのだ!
炎弾を飛ばしたり、氷柱で敵を貫いたり、雷を落とすファンタジー色の最も強いジョブである魔法使い!
今までは弓矢と短剣だけで十分かなぁと思っていたけど、やっぱりこういうのだって使ってみたいもんだ。
実際使ってみると案外使い勝手が難しいのが良くわかった。
まず、魔法の溜め時間が微妙に長い事と、思ったより射程が短いことだ。
弓と同じ射程を期待してたら思ったより飛ばなくて少しがっかりした。
だが、その半面で相手の弱点となる属性或いは中級以上の魔法となると威力が断然上がるので、その使い勝手も慣れれば苦では無いかもしれない。
いや、囲まれた時とかストライダーのままだったら!とかは思ったけどね。
特に……
「今度はスノーハーピーの群れかよ!?」
「マスター!叫んでいないで打ち落としてください!」
「くそ、ファイアァアアッ!ボォォォルッ!」
やけくそ気味に炎弾を3連射。
そのうち二発が外れ、一発だけが当たるがその一発がでかい。
なんせ一発当たれば大炎上するんだよね、あいつら。
「一気に止めを刺せ!」
「心得ました!」
剣士のポーンが駆け込みなからの突きの一撃を繰り返し、次々にスノーハーピーに止めを刺す。
俺を含め、他のポーン達も中遠距離から次々に攻撃を仕掛け、さしたる痛手を負う前に何とか先頭を終える事に成功した。
思うに、やっぱり空を飛べるって結構なアドバンテージだよね。
しかも、空を自由に飛べて射撃ができると言ったら更に酷い。
……もし、そういう敵に遭遇したら、どうすんべかな。
というか、ドラゴンがまさにそれだよな。
空を自在に飛びまわり、ブレスを吐くことでそれなりの距離を広範囲に焼き払えるわけだし……。
うわぁ、考えたくも無い。
「阻んで焼き払え!フレェイムッ!ウォォォオルッ!」
だから、その不安も対処を考える面倒臭さもスパロボなノリで魔法を放って取り敢えず後回しだ!
脇からこちらに突撃してきたダイアウルフを突き上げるように現れた炎の壁で阻み、吹き飛ばす!
「チャージショットだ!」
いや、正式名称は違うんだけどね、溜めて打つんだからコレで良いかと思った。
大体5発分の魔力弾を溜めて一斉に放つのだけど、これ、普通に放つよりも威力があるんだよな。
惜しむらくは、コレもまた溜め時間が長いからタイミング計るのに苦労するんだよね。
そういやこの世界では魔法の詠唱=チャージ時間って感じでぶっちゃけ詠唱は気分の問題なんだよね。
どこぞで聞いた噂によると領王は魔法の詠唱時間を短縮できる魔法の指輪を持っているとか?
是非とも欲しい。
殺してでも奪い取る、とか選んでみたいぐらいに。
いや、これはちょっと殺伐とし過ぎか?
村を出てから動物や魔物どころか、人間まで当たり前のように殺してる生活になっちまったから、その影響だろうか?
「ふぅ」
「……ヨシュア、疲れてる?」
「少しばかり、ね。とそういえば大分北上したな。あそこに塔も見えるけど……なんだか兵士が何人も居て物々しい上に近づけそうに無いから…こっちの方に言ってみようと思うけど、セレナ、構わないか?」
「……うん。それと、無理……しないで」
「この程度だったら大した無理じゃない。ソレよりも、セレナは怪我とかしてないか?」
「……大丈夫。 おばあちゃんと一緒に居た時は、もっと大変だった」
それは……。
「おばあさん、なんというか、凄い強い人だった?」
「……とても。空から良く隕石を落としたり、嵐を起こして全てなぎ払ったり」
おうっふ。
あ、でもおかげで同時に少し納得した。
セレナが領都まで出てくるのに動物や盗賊、魔物相手に無事だったのもおばあさんの教えがあったから上手い回避法とか戦い方を知ってたんじゃないだろうか?
或いは盗賊に関しては南の砦を拠点とするモールの手下が殆どの筈だ。
セレナに、というか『森の魔女』や関係者に対して手を出すなとか言い含めている可能性は十分あるな。
なんせセレナの言ってる隕石落しってメテオフォールだろ?
アレを使えるだけで周辺一帯の雑魚とか大型の敵だって十分殲滅出来るし、嵐を起こすっていうのはヴォルテクスレイジか?
それだったら単体攻撃というか局所集中攻撃としてかなり凶悪だ。
コレをもし連発すれば、殆どの敵を殲滅可能じゃなかろうか?
まぁ、連発するほどスタミナも持たないし、詠唱時間がクソ長いので連発はそもそも無理だろうけども。
もしもソレが可能になったら……グランシスのあちこちが焼け野原か?
そんな事を考えながらセレナと並び立ち、雑談をしながら歩き続ける。
セレナはどうにもすごいおばあちゃんっこで、しかも長い事森に篭もっていたせいでどうにも喋り方を若干忘れ、返事をするのに少し時間が掛かったりするが……まぁ、個性だと思えば少し可愛くも見える。
そも、悪い子では無いしな。
割と素直な良い子だ。
俺に妹とかいたらきっと、こういう感じなんだろうな、とか思わせるくらいには。
「っと、これは……癒しの泉か!」
「キレイ……」
喋っているうちについたのは、癒しの泉。
俺的には温泉だ。
時間帯的にも既に夜になっており、源泉とも言える不思議に光る意思の存在もあってか神秘的な雰囲気をかもし出していた。
「お湯が、湧き出てる?」
「あぁ、服を着たまま入っても結構気持ちいいんだけど……」
「マスター、幾ら覚者といえど病気に対して耐性があるわけではありませんよ?無論、私達もですが。服が濡れたまま、この北部で動き回るのはご勘弁願いたく思います」
「だってさ。一応、この辺りはもう安全は確保できてるしどうする、入っていくか?」
俺がセレナにそう提案すると、セレナは少しだけ考えてから。
「……うん」
「そうか、じゃあ俺は──」
「あなたも、一緒に……」
「え、マジで?」
セレナが入るのなら、周囲の警戒でもしておくか、とか考えていたのだが、どうやら一緒に入る事になるっぽい。
俺の返答を特に聞かずセレナはあっという間にすっぽんぽん。
まぁようするに全裸になり、寒さもあってかいそいそと温泉に浸かる。
「……まぁ、いいか。お前たちも、入るんだったら装備脱いでから入れよー?」
俺は手っ取り早く衣装を脱いでセレナの少し近くに座り、温泉に浸かる。
「ふぅ、結構気持ちいいな。セレナはどうだ?」
「……きもちいい」
温泉に当てられ赤らみつつも、湯の気持ちよさに少し緩んだセレナの顔は非常に満足げだ。
「おばあちゃんが居なくなってから、誰かと、一緒に居る事はなかった」
「誰か、人が着たりとかはなかったのか?」
「……」
セレナは無言で首を振る。
人に対して恐怖感を抱いている風もあるが、ソレだったらキナや俺に対してももっと恐怖感を抱くだろう。
詰まり、ソレが全てではないのだろう。
「カサディスに来る事を考えたりは?」
「おばあちゃん、一人だと、かわいそうだったから」
「セレナは優しいんだな」
ぽんぽんとセレナの頭をなでる。
セレナは嫌がるでもなく、少し気持ち良さそうにしてるから、満更でもないのかな?
とはいえなるほど、おばあちゃんの墓を守っていたのか。
そして、何よりも思い出を守り続けたかったんだろう、多分。
「あなたが家に来るようになってから、なんだかおばあちゃんと居た頃みたいな、そんな気分になるの」
「そりゃあ光栄だな。……おっ!みんな空を見てみろよ!何かすげぇぞ!」
「流れ星…?」
「いや、こりゃあ流星雨だな!」
夜空にはまるで雨のように流れ続ける流星雨。
前世で見たのはたしか、獅子座流星群とか言うの位だな。
アレも凄く感動した気がしたが、これはもっとすごい!
標高の高さもあり、前世の……地球よりも遥かに澄んでいる大気のお陰なのか、星々と流星の煌めきは生涯忘れることができない位の感動を俺に与えてくれた。
「はは、なんか凄いものを拝めたもんだ!これはもう、生きているうちに何度も拝めそうに無いな」
「すごい……キレイ」
それから暫く俺達は静かに流星雨を眺め、ソレが終わるといろいろと話をする。
そのうち、意外にもセレナはキノコノコというキノコが好きらしいと言うことがわかった。
なんだか可愛らしいのだとか、後おいしいとも。
それと、今度秘蔵のハーブ酒をご馳走してくれると約束してくれた。
凄く楽しみだ!
あ、そうそう、この依頼が終わった後に水神の神殿にいって教会の調査隊への協力依頼はあっさり終わったよ。
調査隊の殆どが魔物にやられたのと石板がやたら重いという記憶しかない。
つか、調査隊……なんで人数組んで挑んでるのに負けてるかなぁ……。
「その辺どう思う、マリー」
「無為無策で突撃したのではないでしょうか?そうでもなければそこそこ人数が居る状態で負けるような敵でも無いと思いました」
俺はこの時、そうだよなぁ、と頷いたが後々にソレを撤回する事になる。
既に俺が段々と一般人レベルの強さから逸般人とでもいえるレベルに成長しつつあったと言うことを思い知る事になったから。
と言う訳で今日のメインはセレナでした!
メルセデスやキナも好きですが、セレナはもっと大好きです!(ハーブ酒狙いと言う意味で
水神の神殿なのですが、ストーリー的にあんまり重要でも無いので超サクッと行かせて貰いました。
基本的に、ここは苦労するところでもありませんし、ぶっちゃけスルーしてもメインストーリー上の問題も無いので、本当にさっくりと。
しかしおかしいな。
セレナ書いた後に気づいたんだが、キナの扱いもっと良くしておきたかったけど何であんなにヒロインしてないヒロインなのだろうか?
メルセデス=同行時はキチンと戦える雑魚可愛い頑張り屋さん。
セレナ=何となく守ってあげたくなる森のハーブ酒屋さん。
キナ=幼馴染で主人公の為に頑張るけど、これと言って直接何か役に(ry
あぁ、なるほど、愛が足りなかったか。
愛じゃあ仕方ない。
今日のNG 覚者でも怖いものはいっぱいある
「マスター頑張ってください!」
「……いや、無理だろう?!ちょ、これ尋常じゃないレベルで怖いんだがッ!足がす、竦むッッ!」
俺は今切り立った崖に立っていた。
背中は崖で、僅かな足場をたよりに進む。
何でこんな事になったかって?
ポーンギルドで掲示板に乗っていた依頼に『異空より零れしもの』という何十個にもわたる依頼があるんだが、それの一つが切り立った崖、しかも真横は滝で直ぐしたは滝つぼというまさにデッドラインを綱渡りするかのような場所を通らなければ取れない場所に、契りのメダルというこの依頼で回収しなければいけないブツがあったからだ。
「ひぃ、ひぃい!」
最早俺、涙目だ。
俺、高い所が、苦手なんだよぅ!
なので足が竦む。気が遠くなる。
でも、進まなければ。
せめて、アレを取れば刹那の飛石でこの場から逃げれる!
しかし、運命は非常だ。
「あ」
竦んだ足が、足場を、踏み外した。
「あぁああああああああ!」
滝つぼに真っ逆さまに落ち、水に飲まれた直後、ゴシャという音が頭に響く。
意識が一気に黒に染まった。
なんて、無様なんだ。