しかし、後悔はしていない!
加速したいからね!
所で、下手な魔獣より盗賊が群れて襲ってくる方が妙に強いと思うんだ。
グリフィン討伐、最近になって蒼月塔とかいう場所に棲みついているグリフィンが襲撃してくる事件がふえ、それに対処するべく組まれた討伐隊。
その内訳は、カサディスの方面にあった徴募隊の面々がそっくりそのまま来るという話だ。
「……厄介払いじみた感じがするな」
「精鋭、とは間違ってもいえませんね」
装備も見た目は立派そうに見えるが、良く見れば中古品ばかりだ。
これで空を舞う凶暴なグリフィンを倒す?
冗談は止して欲しい。
これじゃキメラの相手だって難しいぞ。
そう思い、一気に倒す為の作戦を考える。
時間をかければかけるほど危険なのは間違いがないだろうから。
そうして俺の作戦通りグリフィンを誘き寄せ、ダメージを与えるのには成功した。
作戦は至って簡単だ、ゴブリンの死骸を餌にグリフィンを誘き寄せる。
こちらに来るまでの間に俺とマリーでメテオフォールやテンペストレイジを詠唱し、ヤツが射程範囲に入ったらぶっ放す。
しかし、倒しきれずにヤツは蒼月塔に逃げ帰ってしまったのだ。
その後、徴募隊の面々は先行して塔に向かい、俺も一度領都に戻り
「た、たすけてくれー!」
「くそ、ウェズリーを!」
「う、うわぁああああああ!!」
そして、蒼月塔。
道中で凶悪なダイアウルフやスノーハーピー、盗賊やゴーレムなどを撃破しつつ辿り着いた場所で、グリフィンと戦いながら塔を上っていた。
既に何名かやられており、今ウェズリーもやられてしまった。
「くそ、閂を早く破壊するんだ!」
ゲオルグが叫びつつ盾を構えながらグリフィンに応戦するが劣勢。
ポーン達も魔法を放ち、剣を振るい、俺も双剣で攻撃を加えるが、焼け石に水と言わんばかりのダメージしかない。
「門が開いたぞ、早く塔の内部へ!」
他の兵士たちが先行して駆け込み、俺がポーン達とともにゲオルグといっしょに滑り込む。
直後、グリフィンの急直下の体当たりが直前まで俺が居た場所の床に当たり、その部分が崩れ落ちる。
「なんつ-威力だ。化け物め……」
「分かって居たが、やはりきついな、覚者よ。やつと戦うにはやはり塔の頂上で雌雄を決するべきかもしれん」
入り組んだ塔ではあるが、入り口はともかく内部にまではモンスターがいないようですんなりと塔の頂上に辿り着くことができた。
「さぁ行くぞ、油断するな!」
「グリフィンだ!」
塔の頂上で待ち受ける形でたたずむグリフィン。
「炎の魔法だ!燃やしてやれ!」
「お前たち、やつの足止めだ!張り付いて飛べなくするのだ!」
ポーンと兵士たちに出された指揮は其々が的確だった。
炎を用いれば翼や体毛が燃え、飛行できなくなるし火傷でアイツも飛べない。
張り付けば普段は掛からない翼への重量故に飛行が困難になるのだ。
先ほど戦った塔の外壁での戦闘でコレができなかったのは、落下死の危険性が高過ぎたが故だ。
俺もゲオルグも張り付いて切りまくっているし、ポーンの一体が弓を連射して顔面が既にハリネズミに見える。
しかし、まだ決定打にいたるほどのダメージではない。
そう思っていると頂上に新たな人物が現れた。
「いよう覚者殿、助けに着たよー!この覚者殿に貰った魔導書で、さ!」
其処にいたのはステファン、その手にはかつて渡したサロモの魔導書を携えている。
「さぁ、やってみようか!」
「いきます!ファイアウォール」
ステファンが魔導書の魔法を放つのとマリーが魔法を放つのは同時だった。
「全員、離脱!」
波が引くよりも早く、俺とポーン、ゲオルグと兵士は離脱し、その直後に火炎の嵐舞が巻き起こりグリフィンを燃やす。
「GYAAAAAA!!!」
絶叫を上げるグリフィン。斬り裂かれ、射抜かれ、燃やされ、それでも死なない。
屈する事は出来ぬとばかりに強い怒りの眼差しで俺達を睨む。
「なら、これでとどめだッ!!」
空中に飛び上がり、魔力の篭もった刃を突き立てる。
そして同時に巻き起こる魔力の炎による爆発がグリフィンを内部から破壊し、絶命させた。
グリフィンが断末魔の悲鳴を上げ、絶命した。
兵士の一人がおっかなびっくり剣で突く。
「死、死んでます!」
わっと湧き上がる歓声。
被害は少なくはなかった、しかし凶悪な魔獣を倒すことが出来た喜びは大きい。
ドラゴンほどの敵ではないが、それでも十分に恐ろしい魔獣なのだから。
「ステファン、助かったよ」
「危機に颯爽と駆けつける英雄、そんな風に見えたかい?まぁ、ここに居合わせたのは偶然なんだけどね」
「そうなのか?」
「魔導士サロモの足取りを辿っていたらココが候補に上がってね…調査してたんだよ」
そういうとステファンはくすっと笑い。
「そしたらあんた達がグリフィンとやりあってるじゃないか。こりゃチャンスだってね!どうだい、美味しい所もっていっただろ?」
「あぁ、本当においしいタイミングだった。ありがとう」
「いやぁ、礼はいいって!ははは!」
他の兵士たちにも話しかける。
「グリフィン、強かった。ドラゴンは……もっと強い?だったら楽しみだ」
「ここは私が残ります。もしかしたら生き残ったものがいるかもしれません。覚者様はどうか領都にお戻りを。この成果をお伝えください」
「戦争に犠牲はつきものさ、いちいち感傷にひたっていられるか。そう……死んじまったらそれきりだ。ただ"無"になる、それだけさ」
髭ヅラの兵士、フルフェイスヘルムの兵士、重傷を負った兵士。
其々がそれぞれの思いを抱いていた。
そして最後にゲオルグに話しかける。
「ゲオルグ」
「あんたも生き残ったか…俺も…どうやらまた死に損ねたようだ…無様だ」
ゲオルグは嘗て、戦死した戦友を想い、ふぅと溜息をつく。
「だが、歴戦の戦士が生き残ってくれたことを俺は嬉しく思うよ。一人でも多く強い人間がいれば、それだけ多くを護れる。ソレを忘れないでくれ」
「……あぁ」
その後、周囲をいくらか探索し、珍しい武具やとんでもなく珍しいものを見つけた。
「これ、戻りの礎か?」
「……おそらく間違いはなさそうです。いかがしますか?」
「持っていこう。役立ちそうだ」
「俺と共に帰還するものはここに……。よし戻るぞ、飛石よ!」
俺は言葉と共に懐から取り出した石を宙に放る。
「領都グランソレンへ!」
今回の討伐任務で入手した物を預けたり売り払ったり、果ては贋物を作ってもらいに行ったりして、次にどこに行くかを考えていると、近くで話している声が聞こえた。
なんで『森の魔女』を懲らしめるべく、町人と兵士の何人かが森に向かったらしいと。
「……これは、よろしくないなぁ。マリー、俺達も森に向かうぞ」
「わかりました!」
そうして訪れた森に着く頃には既に日が沈みかけていた。
「ち、薄暗いってのはどうにもな…」
「霧も濃いですが……果たして向かった人々はセレナの処に辿り着けるのでしょうか?」
この森は濃い霧と森特有の雰囲気もあってか容易く人に進行方向を間違えさせる。
俺も一度霧を払う事無く向かおうとしたが凄く苦労したのは記憶に新しい。
「声が聴こえる」
「覚者様、あそこを!」
森の広場にあるセレナの家に、何人もの人が群がり叫んでいた。
「出てこい薄汚い魔女!」
「縛り首だ!」
「ドラゴンの仲間め!」
この言葉を聴いたとき、俺は何を勝手なことを、と言う思いが腹の中を渦巻き、ぶち殺してやろうか、なんて考えてしまうが深呼吸をして表面上でも落ち着く事にする。
今の所、セレナに何の害も加えられていないのを確認し足を踏み出そうとしたところ、セレナの家の直ぐ傍にある岩の塊が怪しい光を放って動き出す。
ゴーレムか。
そして、その後ろにいたセレナがさり気無く逃げ出そうとしているのが見えた。
「な、なんだ?!」
「岩が動いたぞ!?」
「魔女の仕業か!」
「逃げろ!!」
人々は口々に勝手な事を言って逃げ出す。
ゴーレムは彼らを敵と定め追いかけようとしている。
「いくぞ」
「守るのですか?」
「……少なくとも、ここで彼らが死ねばセレナは本当に魔女にされちまう。そんなの、許せるかよっ」
ゴーレムを倒す方法は至ってシンプル。
「ヤツを動かしているのはメダルの部分に蓄えられている魔力!ならばメダルを全て破壊すればいい!」
ゴーレムの動きに気をつけつつ、背後から飛び掛り、先ず背中のメダルを破壊。
「強烈なのを行きます!」
ポーンの一人が爆裂弾の矢を放つと、前面のメダルが破壊される。
「次は、私だぁ!」
この痛撃に倒れこんだゴーレムに対し更に一人が一閃、突きを放つ。
「お前が、壊れるまで、ぶったたくのをやめるかよ!!」
最期に頭部のメダルは再び俺。
雄叫びを上げつつメダルを叩き続ける。
「ふんがぁああ!!!」
パリィンという高い音ともにメダルが割れ、ゴーレムを基点に嵐が巻き起こり吹き飛ばされる。
「うぉわぁああ?!」
吹き飛ばされて地面に転がった俺が改めてゴーレムの居たところをみると、ゴーレムは砂のようになって風に舞って消えていっていた。
「……どんな魔法を使えばこうなるのやら」
「分かりませんが、コレができる魔導士級の魔法使い、敵に回したいとは思えませんね」
「とりあえず、先に進むぞ!」
そうして進むこと数分。
ついにセレナに追いついたが……何か妙な雰囲気を持つ老婆と一緒にいた。
「セレナ?」
「あの……わたし、ごめんなさい」
「うん?」
俺が少し首をかしげると、セレナはうつむいて言う。
「わたしのせいで、あなたを騒ぎに…巻き込んでしまった」
「そんなこと─」
「わたし、何となく、知ってました。わたしが、本当はポーンなんだろうって」
一言一言、噛み締める様に言う。
「齢を取らないし、死なないし…。ひとりじゃ、どうしたら良いか判らない。おばあちゃんが、私に少し心を分けてくれました…けど…わたし、その心をどうやって使うのか分かっていなかった」
そう言って俺を見てまっすぐな瞳で告げる。
「あなたに会うまで…!」
セレナが言い終わった後、老婆が俺に声をかけた。
「あなたは覚者ですね?もうお分かりかと思いますが、私も、かつてはそうでした」
そうして老婆はソフィアは告げる。
ポーンは人と『命』のあり方が近く、段々とマスターで在る覚者に姿も、在り方も、魂も似ていくということを。
彼女はソレを『魂の転移』と呼んでいたこと。
そして最期にセレナを頼みたいと告げてきた。
他にも色々といっていたが、ヒトの話を聞いたり理解するのが苦手な俺からすれば要点は二つ。
ポーンはやがて人に至り、セレナは人間になった。
そういうことだろ?
話してる途中でポーンの紋章……手の平の傷跡みたいなのが消えるってのはビックリしたけど。
「まぁ、そういう認識でいいでしょう」
「小難しい事は必要ない。俺、あんまり細かい所を考えるのは得意じゃないからな」
「……(彼にセレナを託して、本当に大丈夫なのでしょうか)」
「安心してくれ、セレナは俺にとって妹みたいな大事な友人だ。俺ん所で、カサディスで預かるよ。あそこは話の分かるイイヤツが多い。それにセレナは優秀な薬師だ、俺はモチロンみんなありがたがるさ。だから安心してくれ」
「……わかりました。どうかお願いいたします」
「言われるまでもない」
老婆はその言葉を聴くと、安心した、といった感じ
「さてと、セレナ話は聞いていたな」
「はい、ありがとうございます。安心できる場所が、欲しかった。それは。あなたのお陰で、得ることが出来ます」
ポッと赤い顔をして告げるセレナ。
はっはっは、愛いヤツだ!
「カサディスの村長達には俺からも話は通しておくよ。みんな気のイイヤツだ、事情を知ればよくしてくれる。俺も暇を見て会いに行く、安心してくれ」
「はい」
こうして、セレナはカサディスで暮らす事になった。
家は俺がドラゴン退治の旅を続ける限り俺の家があきっぱなしなので、其処を使う事になった。
「しかし、ヨシュアよ。あのお嬢ちゃん、本当にポーンなのかい?」
「元ポーンらしい。ポーンも長くこっちにいると何時か人になる、と言う事らしい。細かい所は知らないけど、別に問題ないだろ?セレナは素直ないい子だし、薬師としての腕前も良い。村長も気に入るよ」
「まぁ、ここ最近は色々と物騒だ。腕の良い薬師は大歓迎だ。お前の推薦だからな、これ以上疑っても仕方ない」
「うん?」
「お前を信頼しているって事だよ」
「そりゃ何よりで」
そうしてセレナを歓迎するちょっとした宴会がイネスの酒場で開かれ、みんながセレナを囲んで思い思いに騒ぎ出す。
セレナは戸惑ったような感じに、だけど向けられる言葉には頑張って一言一言キッチリと口にして返す。
そういった仕草に男衆は可愛いからということは元より、女衆もセレナの人柄を理解していく。
「さて、俺は酒も回っちまったし酔い覚ましに少し散歩してくるよ」
「おう、道端で寝るんじゃないぞ、覚者様よ」
「おいおい、俺はパルミロじゃないんだぜ?」
ハハハと笑い声があちらこちらでする。
俺はその喧騒を背に桟橋に向かって歩く。
夜の海風は涼やかで酒の熱を覚ますのには丁度良かった。
「うん?あれは…誰だ?」
桟橋に一人の女の姿を見つけた。
金髪の背中の中ごろまで髪を伸ばした見覚えのない女だ。
この出会いこそが、黒き呪われた島での冒険の始まり。
覚者である俺に求められた、もう一つの冒険の始まり。
「あなたは、あなたの意思でその使命を受け入れたのですか?」
と言う訳で次回はダークアリズン編。
本編とアリズンを行ったり来たりする事になると思います。
それでは、今日のNG!
「さぁ、蒼月の塔に行くぞ!」
「マスター、蒼月の塔ではなく蒼月塔です。『の』はいりません」
そんなツッコミを食らいつつ歩くパストナ岩窟。
この辺りはグランシス北部の盗賊の根城であるというのは領都では有名な話だ。
強いモンスターが跋扈するこの地では、それに抗える強い盗賊がいるのだ、マジでシャレにならない。
「そういえば、徴募隊の面々が先行している筈ですが彼らはどうしたのでしょうか?」
「…気にしたら駄目だ。では、一気に行くぞ!」
「大声を上げたな!?間抜けが、死ねー!」
ズドン。
鋭い矢の一撃が俺の額に突き刺さり、俺は死んだ。
Retake
「ちくしょう!次はやられはせん!やられはせんぞー!!先制の魔法だ、くらえサンダーフォォォォル!」
「前に出たな?!甘いわぁ!」
「耐えただとぅ!?」
前に出て魔法を使った直後、大剣で胴体を串刺しにされて死んだ。
神は言っている、もう少し粘って見せろやと
※このNGは作者のプレイングミスで構成されています