一番比率が大きいのは勿論仕事。
もうつかれたよ、ぱとらっしゅ
真夜中の領都の橋の下。
『救済』のメンバー二人と思わしき人間がいるのが見て取れた。
遠くで話しているのでイマイチ内容は理解できないが、街道などでスケルトンが出現するのは大体全部こいつらのせいらしい。
マクシミリアンから依頼されてスケルトンと救済の背後関係を洗ってみようと思っていたが、いきなりドンピシャだ。
「実に、興味深い話をしてるじゃないか」
「な、き、貴様は!?」
救済の片割れ、中年の方が驚愕した様子で、もう片方の青年の方は一も二もなく逃げ出した。
「まぁ、片方だけで十分か。おい貴様、知っていることを全部吐くか、拷問されて吐くか、好きなほうを選ばせてやるぞ」
ポーン達と揃って周囲を囲い込み、武器をちらつかせる。
「こ、こんな事をしてただで済むと…!」
「済むさ、俺達は王の意向を受けて動いている。お前たちのバックが何でアレ、吐かぬのなら……わかるな?」
言葉に合わせ、ガタイの良い、重武装のポーンが実に切れ味のよさそうな長剣をぎらつかせて見せる。
「わ、わかった!全て言う!だから、命だけはお助けを!!」
「良いだろう。あぁ、それと……俺達に関して、余計な告げ口をすればどうなるかも……わかるな?」
今度は魔力が杖先に集められ怪しく輝いている杖が中年の顎先に向けられる。
凶悪なまでに圧縮された魔力がちりちりと中年の顎を刺激する。
「ひ、ひぃいい!!」
「では、言え」
男が口にしたのは以前、俺達が潜入した『救済』のアジトの更に奥がまだ本部として使用されていて、街道に出現するスケルトンやファントムは大体全部『救済』のせい。
更に、『救済』は何やら大きな作戦を起こそうとしているが流石に末端でしか無い自分にはその概要も説明されていない、と言うことだった。
最後に中年は自分の持つ本部の鍵を寄越し、そして逃げて行く。
「所でマスター、あの男の後をつけて住居を探りますか?」
「いや、そこまでやってやるのは面倒だ。放っておいてとっとと『救済』の件、カタをつけよう」
そうして訪れた墓所だが、一度調べつくしただけあって、どこが怪しいかはわかっていた。
怪しい場所は二箇所ある鍵の掛かった頑丈な扉。
破壊した場合、ぼろいこの洞窟がどうなるかもわからない為、乱暴な手段に出ず放っておいたが、ソレが仇となった、と思うべきだろう。
そんなわけで調査を開始し奥へ奥へと進むわけだが当然の如く防衛……の為かは不明だが多数のアンデッドが当たり前のように沸いて出る。
「黒呪島での戦いを思えば、大分楽になった気がしますね」
「まぁ、な!」
ゾンビのみならず、新しい場所を進むとスケルトンメイジが現れたりしたが、そいつらは強敵足りえない。
しかし、面倒はあった。
幹部が居るであろう部屋の仕掛け扉を開くのに、鍵となる宝珠を集める必要があったのだ。
「……実に面倒くさい仕掛けだったな」
墓所のあちらこちらに隠されていた緑色の宝珠を仕掛け扉にセットして、扉が開くのを見てため息をつく。
そして、部屋には一人の男がいた。
「『救済』のメンバーだな?街道にスケルトンを放った容疑で捕縛する。抵抗すれば、とりあえず斬る」
「……ほう、覚者殿はどうやら非常にせっかちな様だな、我々が何を為そうとしているかも理解できていないと見える」
「何?」
目の前の男が、実に何か言いたそうなので構えを解いてみる。
すると男はグダグダと話し始める。
要点を突き詰めれば、このスケルトンの一件は『救済』にとって実験に過ぎないということだ。
そして男が怪しい魔力を解き放ったかと思うと、次の瞬間にはスケルトンが現れる。
「結局は、こうなるか。 一発で終わらる!」
ダガーを構え、魔力を溜める。
スケルトンが群がり、男がにやける。
しかし、スケルトンの刃が届く前にこちらも準備が終わった。
「これぞ奥義、魔斬波……なぁんてな」
言葉と共に振り抜かれた刃は光を伴った無数の斬撃となり、全てのスケルトンと男を巻き込んで一瞬で勝負に蹴りをつけた。
「呆気ない。この程度ならそこいらの盗賊の方がよっぽど手練だ」
「お疲れ様でしたマスター、後は領都のマクシミリアン殿に報告し調査をお任せしましょう」
この後、ここにいたスケルトンの殆ど全てが『救済』のメンバーや街道で襲われた一般人のなれの果てであり、救済は更に恐ろしい計画を企てている、という話を聞く事になったが、正直『まだ続くのかよ』というのが俺の正直な感想だった。
報酬を受け取り、今度は城内に入りオルダスへ少々遅いグリフィン討伐報告をする。
「よくやってくれた。これで少しは領都周辺も安全になっただろう」
「まだ、大本命が残っています。アレをどうにかしない限りグランシスに平穏なんてこないでしょうね」
「ドラゴンか、言われずとも判っておるが……」
ちらりと俺を見る。
「言わなくても判っているでしょうが、現状の俺とポーン達の実力ではまだ勝利するには実力が不足しています。故に力を磨いている」
「何時までかかる?」
「さて?少なくともただの漁師がグリフィンを退治できる実力を2ヶ月もしない内に磨き上げた、もう少し頑張れば届く気もしないでもないですが」
よくよく考えれば、俺、ほんの2ヶ月でここまできたんだよなぁ。
……領都の兵士や騎士が本気で力を磨けば、この程度軽い気がするのは気のせいなのだろうか?
あ、いやちょっとまてよ、俺には確か『無制限ラーニング』があるから常人よりは遥に高効率で強くなっているのか?
そう思いながら話は続く。
「そうか……時に『眩みの砦』南西にドレイクが出現しているという話は知っているか?」
「……ドレイク?」
余り聞き覚えの無い敵だ。
でも、イメージ的にはやっぱりドラゴンの親戚みたいなものか?
「ドラゴンの小型種、とでも言うべきなのだろうかな。とはいえ、人よりも遥に大きく強力なのは確かだ。眩みの砦奪還以降、何度か襲撃されている。今の所大きな被害は出さずに済んでいるが、それも時間の問題だろう」
「ふむ、詰まりそのドレイクを討伐せよ、と」
「そう言う事だ。砦の方も防備はアレ以降更に固めるように指示は出ているから早々簡単に破れる事はないが、叶うならば早いほうが良い」
「成る程……」
これは、もしや俺の実力が疑われていると見るべきか?
いや、ドラゴン退治と言うのはそもそもが『伝説を残せる』レベルの偉業だ。
で、あるのならそもそも元は漁師でしかない男がドラゴンには大きく引けを取る魔獣を幾ら倒した所で、というのもあるだろう。
判りやすく示すのならば『小さくともドラゴンである』必要がある、ということだろう。
大きさに関して言えばドラゴンと比べると3~5倍近い差があるらしい。
以前、ドラゴンに負けたときは例えるなら『歩こうとした時に偶々脚がぶつかった』レベルの感覚で吹き飛ばされて死に掛けていた。
ソレを考えると自分の未来に暗澹たる物を感じずに入られないが、それでも『生物』である以上、なんらかの手段で撃破は可能だろう……と、思わなければやってられない。
「やってみせましょう。何れにしろ俺が枕を高くして寝るためにも奴らの殲滅は重要案件です」
「そうか、あぁ、そういえば他にも少し頭の痛い事件があってだな」
そういって語りだすオルダス。
もしやれるんだったら任せるよ、程度の語りだが、目が『絶対に解決して見せろ』と言っている。
そして、詳細を聴いて俺は頭を抱えた。
「は?……はぁっ!?」
何で、領王の財宝が奪われてんだよ!!
警備は何してたんだっつーの!!給料泥棒がっ!
その後、頭を抱えつつも更に話を、他の案件も聞くと俺は全てを投げ出して田舎に帰りたくなった。
ジュリアン卿が守備に付く北の砦で不穏な動き……要するにクーデターの兆しがあると。
そして、メルセデスがその解決の為に志願していると。
待て、いや本当に待ってくれ。
クーデターとか!メルセデスが動くとか、本気で待ってくれ!!
「よろしいので?メルセデス殿は隣国の領主の息女であると聞いています」
「良い訳が無い。だが、動かせる人材もなく、ジュリアン卿も砦に向かったまま連絡が取れん。メルセデス殿に関しても本来であれば出て貰うのは非常によろしくないが、隣国の領主であるからこちらとしても命令するわけにも行かないのだ」
「……なるほど。では、こちらが彼女が動く時に『彼女に必要な分だけ援護』をしましょう」
「そうか、すまないが頼むぞ」
オルダスもソレを聞いて安心したように表情を和らげるが、こちらの頭と胃は一気に痛くなった。
「何はともあれ、情報収集とメルセデスへの聞き込みか」
財宝を盗んだ賊の候補については直ぐにわかった。
何を隠そう天才魔導師『サロモ』である。
元は領都に領王直属の魔法研究所を構え、そこで所長として働いていたそうなのだが成果を上げる反面、高すぎる野心が今のままの立場である事を嫌い出奔。
研究資料の大半を持って、所員の殆どを抹殺しどこぞへと消えうせた、と言う過去があるらしい。
……思い返せば、かなり強い魔導書を作るような奴だ。
どれだけ厄介なのかは考えたくもない。
そういえば、なんか刺客っぽいのが居ると言う話もあったか。
どうして、こうも小悪党ばかり跋扈するのかッ!
そう思いつつ俺はメルセデスのところへ向かう。
メルセデスは城門前に居て、俺を待ってたようだ。
「おぉ、ヨシュアか。十日ぶりか?」
「それぐらいか?で、今回の件、話は聞いたよ……聞くまでもないけど、本気なんだよな?」
「あぁ、本気だ。……一応、私のほうでもアレから少しは動いてみたのだ。お前の負担を多少の情報収集で減らせれるのならばそれに越した事はないからな」
「ありがとう」
礼を言うとメルセデスが照れくさそうにコホンと咳払いし、話を戻す。
「でだ……北の砦、というかジュリアン卿に関しての件だが、黒だ。しかも『救済』の影までちらついている」
「また『救済』かよ。街道のスケルトンの件は聞いているか?」
「あぁ『救済』の手の者の仕業だと言う話だったか。話には聞いていたが……相変わらず胸糞の悪くなる奴らだ」
「以前も信者を皆殺しにしてゾンビかさせてたし不思議は無い……けど、何にしてもまともじゃない。早めにつぶさんと俺が安眠できん」
刺客とかもでてるっぽいし、というとメルセデスは苦笑する。
「いやはや『覚者殿』というのは本当に人気者なのだな」
「人気者になりたいなら、好きなだけ活躍させてあげるけど?」
俺が言うとメルセデスは少し困った表情をする。
「いや、お前ほどに活躍する気はない。だが、それでも周囲への示しもある」
「なるほど、派遣されてきたとは言え、具体的な手柄を示す必要がある、か」
「そこまで言わなくとも、『グランシスの為に力を尽くしている』という姿勢が必要だ」
「少し弱気だな?」
「ジュリアン卿との実力差はわかっている……。だが、それでもやらねばならん」
「助けは?」
「……見守っていてくれ。例え力及ばずとも、私と言う女が最後まで騎士として戦い抜く姿を見守って欲しい」
俺は、目を閉じ覚悟を決める。
何があろうと見届けようと言う覚悟を。
「分かった。ただし俺が見届けると言うのだか少し待ってもらう必要がある」
「うん?」
「いや、ちょっとした盗賊退治。後ドレイク討伐かな?」
軽く散歩してくる、と言うような気軽さで言ってみると、メルセデスは一瞬呆れ、次の瞬間烈火の如きツッコミを入れる。
「……明らかに、それは死にに行くレベルの難易度ではないか、主にドレイク討伐は!」
「いや、そうなんだけどね。ほれ、お前さんが姿勢を示さなきゃいけない様に、俺も『ドラゴンを本当に倒せるかもしれない』という事を示す必要があるんだよ」
そういうと互いに苦笑しか浮かばなくなる。
「では、しばらく待つとしよう。しかし、そんなに長く待つ事は出来ない。いいな?」
「勿論だ。俺も長く時間をかけるつもりは無い」
「はは、流石は覚者様だ。ではお前が戻り次第出向くつもりでいよう」
その言葉を背に、俺は領都を出て一路石切り場へ、そしてそこから森に住まうドレイクの所へ足を伸ばす。
え?石切り場に居たはずのサロモはどうしたって?
こっちに襲い掛かってきたけど軽く捻って(しつこく昇炎斬り)やったら偉そうに捨て台詞吐いて逃げ出したな。
「ははは、やるじゃないか。だが付き合うのはここまでだ!」
そういってフレイムウォールを放って壁を作って逃げ出した。
逃げ足速かったなぁ……戦ってる時の二倍近かったんじゃないか?
いや、何時もの現実逃避はやめよう。
「くっそ、雄叫び一発でポーン全滅ってどういう手品だ!?」
納得いかない!!
しかし、俺まで倒れなくてすんだのは行幸だ。
俺が生きている限り、ポーンを魔力を込めた手で触れることで復活させる事が出来る。
と言うわけでドレイクの攻撃をかいくぐりながらダッシュでポーンへ駆け寄り、触れる。
確かに復活したのがわかる感触を得た後、ポーンと散り散りに回避行動をとりながら別のポーンを復活させると言う行動を繰り返す。
「奴の弱点は……あそこか!」
思った以上に、いや、想像通りに強かった為に焦って空転している脳味噌をなんとか正常に回転させようとしつつ相手を見れば、なんとなく弱点が分かった。
前世知識万歳だな。
「奴の弱点は胸の光ってるところ!心臓だ!!あそこだけ防御が薄いぞ!!」
「わかりました!」
「射抜きます!」
「魔法で一気にいきます!」
全員で改めて戦意を高め、ドレイクに向けて武器を構えなおす。
「質より量でいかせて貰おうか。射抜け、連魔弾!」
先ず最初に俺が連魔弾で射抜く。
いてつく氷の魔力の弾幕で射抜いた所で、胸の装甲染みた鱗が剥がれ落ちる。
更に、低空を飛翔中だったのだが今の一撃で思いのほかのダメージに堪えきれずそのまま落下する。
「いま!フロストスパイクいきます!!」
巨大な氷の錐がドレイクの翼を、胴体を貫ぬかんと激突し、胴体は強烈な打撃を受け、翼は胴体ほど頑強でなかったからか、はたまた今までのダメージにもう耐え切れないところまで来ていたからか完全にぼろぼろだ。
「ブレスが来るぞ!」
「そのまえに、その口を射抜きます!ハァッ!!」
俺が警告し、即座にポーンが気を込めた強烈な一撃でドレイクの喉を射抜いた。
「隙を見せたな!その心の臓を刺し抉ってやるぞ!!」
ポーンが長剣を勢いよく心臓に刺し、グリグリとデタラメに、力任せに抉りまくる。
「ぐ、ぐあああああああ!!こ、ここで滅びると言うのか……奈落の門の先……神の…座に…」
時折、何か言っていたと思われるドレイクが、ここでとても気になる事を口にしやがった。
「……奈落の門の先の神の座?」
「しかし奈落というのは……もしやエヴァーフォールの事でしょうか?しかし、それらしき門は見た覚えがありませんでしたが……」
マリーと二人揃って首をかしげる。
しかし、俺は早々に考える事をやめる。
「まぁ、何だって構わない。エヴァーフォールの底に居るような奴なんてどう考えても真っ当じゃない。どうせまた、敵だろう、敵」
「かもしれませんね。深く考えずにおきましょう。縁があればどうせ戦いそうですし」
「だな」
それじゃあ、とばかりに一路領都へ向かうが既にメルセデスは北の…風切り砦へ既にクーデターが勃発してしまったのだ。
首魁は無銘騎士(ジュリアン)と砦の兵士たち。
敢えて言うが、メルセデスに勝ち目はないだろう。
メルセデスも凡百と比べれば十分に強い。
だが努力する凡才(メルセデス)が努力を厭わぬ天才(ジュリアン)に勝てるだろうか?
そう無銘騎士ことジュリアンは俺がパッと見ただけで分かるほど努力ができる上に天才っぽい空気を身に纏った漢なのだ。
「なんてこった!」
「急ぎましょう」
そうして駆けつけた風切り砦だが、既に戦闘は始まっていた。
「反乱を起こした兵士たちは我々で対処します。マスターはメルセデス様のところへ!」
「わかった、任せたぞお前たち!」
そういって砦の奥へと駆け抜ける。
そして、一つの崩れた部屋の中で剣戟が聞こえた。
その部屋ではメルセデスがなんとかジュリアンの攻撃を防ぎながら、折を見て反撃を試みている姿が見て取れた。
「貴殿の父君が本気であったのであれば、貴殿の様なお飾りの騎士ではなく、兄君と精強なる兵士たちを着けてこの地に増援を送っただろうよ!」
「黙れ!例え、ソレが事実であったとして……ドラゴン襲来はこの国のみならず隣国全ての脅威だ!民を守るのが騎士の、貴族の、王族の務めなのだぞ!」
「しかし、領王エドマンがドラゴンを征伐してしまえば、この地の勢力は否応増すと言うもの。それでは何の益もなく、それに何よりエドマンに勝ち目は丸でない。ならば、早々に滅び我らの益となるのが最も効率的というものだ」
「騎士が、効率を語り、無辜の民が苦しむのを良しとするか!」
メルセデスが怒りと共に愛用の銀剣を一閃する。
しかし、その一撃はジュリアンを切り裂く事は叶わず剣で受け止められる、が僅かに余裕が無さそうにも見える。
「ほう、力強く、少しはマシな剣閃だ。良い気迫を持つようになったようだな……そこの覚者殿の影響か?」
「ヨシュアか……遅かったな」
「……で、どうする?二人揃って向かってきても私は一向に構わんが?」
「俺は見届け人だ。友が、騎士が誇りを賭けて戦うと言うのなら、俺にできるのはその戦いを見届けるだけだ」
「……意外だな。覚者殿はもっと『青い』と思っていた」
「時に人は、どれだけ強大な相手であろうと、己の全てを賭けて絶望的な戦いであろうと屈せずに立ち向かい、愛する者たちを守る為、勇み戦う者を人は…勇者と呼ぶ」
「何?」
「存亡を賭けた戦いの隙をつき己の利ばかりを追求するその欲深さ、恥を知れ!人、それを外道と呼ぶ!」
「すまない、ヨシュア。しかし見ていてくれ……私は、私の誇りを賭けて戦う様を!」
「……どれだけ抗おうと力の差は歴然としている。ならばこれ以上無様を晒させる前に終わらせてやろう」
そうして再び剣を交わす二人。
しかし、やはりというかジュリアンが強いのは言うまでも無い事実だった。
仕切りなおした始めこそ、メルセデスも善戦していたが、次第に追い詰められ防戦一方になり、最後はなんとか反撃しようと突きを入れようとして、横薙ぎの一撃で吹き飛ばされて終わりだ。
「勝負は付いた。貴殿の任務は失敗、風切り砦は無銘騎士に占拠され、貴殿は敗北を喫した」
「……殺せ!」
余りにも圧倒的な実力差。
メルセデスはこの期に及んで手加減された事に悔しさでなきそうになりながらそう言う。
「……このまま生かしてとりでの兵たちの慰みに使うのも一興だろう」
「貴様、何処まで……!」
「だが、この失敗を理由にこのまま祖国まで逃げ帰るも良かろう、逃げ帰るには十分な理由であろう?貴殿の見せた意地、死なせるには少々惜しい」
「っ!!」
メルセデスに背を向け、ジュリアンは言う。
「覚者殿、貴殿も領王エドマンに忠義を果たすのも良かろうだが……」
「ジュリアン卿。俺は領王に忠義を誓った覚えはない。俺が誓ったのは村の平和の為に『ドラゴンは必ず倒す』その意思のみだ。その権力争いだのなんだのは俺には興味ない」
「ふん、精々頑張るがよかろう。もっとも、ドラゴンを貴殿が倒せるとは思わないが」
「ならば、必ず見せ付けてやろう……ただ一人の人間の意地と執念が見せる奇跡と言うやつを」
ジュリアンはそれを聞くと笑いながら去っていった。
「……ぐぅ、惨めに見えるだろうな」
メルセデスは俯き、涙を流しながら悔しそうに言葉をつむぐ。
「私は、自分が変事に対して力不足だと……わかっていたさ!けれど、私は、私は……!」
落ち込みきっているメルセデスに思わず口が開く。
「生きているのに、もう全てを諦めるのか、メルセデス!」
「っ!」
バッとこちらを見るメルセデス。
「俺もかつて、ドラゴンと見え、敗れた。知っているな?」
「……」
「俺はあの時、敵を知り、そして己を知った。そして生きている。だからこそ、今必死になって力を磨いている。全てを失わないためにだ」
「強いな……」
「強くない、弱いからこそ必死になるんだ。呆気なく親しい人達が殺される、あの無力感を知るからこそ必死なんだ。失いたくないから、必死なんだ。俺はまだ生きている。協力してくれるポーン達も居る、俺を信じてくれるみんなが居る。だから俺は戦うんだ」
「そうか……友を愛し、誰かの為に身を挺して戦える、そんな友愛と絆の力を持つ、そんなお前だからこそ……覚者いや、英雄になるのだろうな」
「メルセデス、まだ諦めの心はあるか?」
「いや、これ以上……お前の、大事な友であるお前の前で無様を晒す真似をしたくない……。ありがとう。私は己の無力を知ったよ。だが、全てを諦める訳じゃない」
メルセデスはそう言って自分の愛用の銀剣を俺に差し出す。
「受け取ってくれ。私は一度祖国に戻り、もう一度、今度こそこの国の民の為に兵を出してもらえるよう願い出るつもりだ。今度こそ、お前の助けになる為に……これは、その誓いだ」
「良いのか?剣は、騎士の魂と言っても過言じゃないだろう?」
「だからこそだ。我が魂を覚者ヨシュア殿にお預けする。直ぐに強くなれる訳ではないが……少しでも役に立てるようになって、必ず戻る」
「あぁ、信じてる。お前が戻ってくるのを」
「ありがとう……それまで、どうか、無事で……」
そうして俺達は別れた。
次に会うのが何時になるかは分からないが、だが、メルセデスはきっと約束を守ってくれるだろう。
そう思い、砦を出て、歩いている時にマリーが俺に尋ねる。
「彼女の言葉に従いました。しかし、本当に正しかったのでしょうか?」
「正しい、間違っている、そういう問題じゃない。アレはメルセデスの己の信念をかけた戦いだった。その全てを理解できるとは言わない。だけど、もし俺が手を出してジュリアン卿を討ったらおれはメルセデスに死ぬまで恨まれたんじゃないかと思うよ」
そして、言葉に出さないまま『領王が怪しいから気を引いてくれる奴が増えるのはありがたい』ともこっそり思った。
「とはいえ、俺が活躍すればするほど……」
「気を引いてもらう意味がなくなる、と言う感じですか?」
「いや、自然に俺の考えている事を読むなよ」
さて、後はサクっとサロモをぶったおしてお宝を取り戻すか。
段々とヒロインぢからを上げていくメルセデス
だが、ヒロインのつもりは無い!
絆の指輪渡してないしね←取り忘れてただけ
そういえば、よく乗っけてるNG集ですが、一応本編とリンクしてます。
強いて言うなら本編で省いた部分が乗ってたりする事もあります。
今日のNG
森を湖畔沿いに進みドレイクを探す。
「流石に、この辺りはゴブリン種の敵が多いな」
「予め倒しておかないと、奇襲や挟み撃ちで乱戦になり危険かもしれません。殲滅しましょう」
「そうだな。二人とも聞いていたな?一気にやるぞ!」
そうしてゴブリンをあらかた倒し終えたとき、何処からともなくバッサバッサと言う音が聞こえた。
「どこからだ?」
「マスター!上から来ます!」
「なっ、あ、あぁあああーーー!?」
ごびゅちゃ。
「マスター!!」
「汝は器にあらず……」