言いたいことは後書きで言う事にします。
長城砦とドラゴンの件に関して、俺は竜識者の元に向かう前に一度領王に報告した。
流石に領王も困った様子で苦み走った表情を浮かべていた。
俺はその様子を見て以前感じた疑惑に確信を抱いた。
やっぱ、領王エドマン、否竜退治を成した竜王エドマンはドラゴンを倒していないのではないかという疑惑だ。
とは言え、今それに触れても仕方ないしやる事は変わらない。
そう思いながら竜識者の元に向かうべく城を出ると、エリノア妃の侍従のマーベルが俺を待っていた。
彼女は俺の手を引っ張り物陰に連れ込むととある依頼を俺にしてきた。
どうにも領王の疑惑というか怒りというかも酷かったようで、つい先日遂に北方の涸離宮という場所に幽閉されてしまった様だ。
他にも、どうやら二人はエドマンの前の妃達の末路も調べていたようで、その結果も加味して、このままでは殺されかねないという結論が出ていて、秘密裡に故郷に返る手はずを整えている最中だったという。
そこまで聞けば何を頼もうとしてるかはわかる。
離宮に侵入し、エリノアを奪還、二人を護送部隊に引き渡すという事だろう。
俺はそのことの確認を取るとマーベルはそうだと言って、一つの大きな袋を俺に渡した。
「ここの兵が使っている装備一式です。剣と縦はありませんが、十分にごまかせるはずです」
「準備の良い事だ…」
「コレに関してはお嬢様から別件であなたに渡したいという話もあったものなのですが」
どうにも監視が厳しく渡す機会を得れなかったという。
……え、また夜の密会に誘われる所だったの?
…………。
そう言えば、時々城内で見かけた時凄くこっち見てたような?
マジか、アレマジだったの?
「兵士に紛れるには丁度良い。
エリノア様の救助は任せて欲しい」
涸離宮の場所は以前に依頼で向かった北方の温泉の近くで、そこには戻りの礎を設置してあるから行き来するのに時間はかからないだろう。
どうせだから行く前に空き瓶を用意しておくか。
下手な薬草より治癒効果がある温泉水は確保しておけば便利だ。
前世の温泉より分かりやすく効果があるのは多分、魔力のある世界だからだろう。
そう言えば、ヒルフィギアの竜識者の所にも同じように戻りの礎は置いてある。
……先に竜識者の所に寄ってからでも良いか。
そう思い、刹那の飛石を用いて一息に空間を渡りヒルフィギアに辿り着く。
既に何度も使用しているが、前世で使ってみたいものの一つ、転移系の道具がこうして使えるのは最初は感動した。
今ではこれが無いとこの半島の彼方此方を転戦するとか無理だと思う。
竜識者の所に向かうと、彼はこちら見てこう言った。
「覚者よ、時は満ち扉は開かれた。
お前が向かうべきは長城砦から連なる穢れ山の神殿。
その頂にて環の理を語る、竜の膝元なり」
相変わらず下手な王よりも威厳を感じる老人だよ、この人は。
「そこでお前は選ばねばならぬ、お前自身の在り様を。
これを受け取れ、お前の助けになろう」
竜識者はそう言って巻物と竜革のベストを渡してきた。
「……他に何かあるか?」
「竜は俺が親友に渡した絆の指輪を飛び去る時に落としていった。
何故、竜は……」
俺が言うと竜識者はなるほどとうなずく。
「絆は……弱みか。
……覚者よ、最早この先誰の言葉を聞く必要もない。
この我の言葉もだ、自ら選び、進むのだ」
それきり、竜識者は目をつむり話す気は無いという意思を示すと俺は礼を告げて場を後にした。
「選ぶのも、行動するのも結局最後は自分だ。
最初から、そんな事はわかっていたさ」
だからドラゴンを追い求め、倒そうとしている。
ドラゴンが今更ただ破壊と殺戮を齎すとは思っていない。
奴は
だから魔物たちが活性化し、それ自体が俺を含め人々への試練となった。
長城砦ではきっとただ確認しに来たのだろう。
奴が見出した俺という挑戦者の成長具合を。
奴がどんな理由で俺の成長を促しているか、それは不明だ。
だが、キナは取り返す。
そういえば、前世のゲームでもドラゴンに攫われた姫を助けに行くゲームがあったな、そう言えば。
構図的にも当てはまる、俺自身も勇者=覚者とすればなるほど面白いものだ。
あのゲームではドラゴンの後により強大な存在が居た。
此方にもそれに相当するものがいるのだろうか…?
いないで欲しいなぁ…。
そんな事を考えつつ、再び刹那の飛石を使用する。
次に降り立った場所は北壁の温泉地だ。
温泉というか、正しくは癒しの泉というのだが普通に暖かい温泉でもあるのであながち間違いじゃない。
ここで休憩してから俺はすぐ近くにある涸離宮へ兵士に変装して向かった。
「お疲れ様です、この度領都から派遣されてきました!」
「うん、新人か?……人員交代にはまだ早かったはずだが、まぁ良い入れ」
おい、ゆるくないか?
そう思いながら俺は離宮内部を進む。
離宮内は兵士が何人もうろうろと歩き回って警備しているが、それほどやる気は無さそうだ。
俺は堂々と上の階層を目指して歩く。
こういう場合、貴人は大体高い所に幽閉される。
と、いうのも上であればあるほど脱出に手間がかかるからだ。
ちなみに囚人なんかだと逆に地下深い所だろう。
どちらにしても奥まった所ならば脱出しづらいのは言うまでもない。
最悪、兵士を切り捨てて脱出するしかないだろう。
少々気が重いがそれは最早諦めよう。
堂々と歩いて上を目指すと兵士からは特に見とがめられずエリノアが居る貴賓室に辿り着いた。
「っと、入る前に兜は……いや、兵士の服装はもうやめるかどうせ脱出時には役立たん」
鎧はその場で放棄し、元の装備を変えて中に入ると、エリノアは窓辺で佇んでいた。
俺に気付くと喜色満面で俺の元に駆け寄ってきた。
「来てくれたのですね…会いたかった、ずっと!」
潤んだ瞳でエリノアは俺を見つめている。
甘いにおいがする、何か頭がぼうっとする様な滾る様な何かを感じ俺は自然とエリノアに口づけし、エリノアはそれを受け入れた。
そこで俺の理性はあっさりと本能に押し流されてエリノアをベッドに押し倒し、彼女は自然にそれを受け入れた……。
幾らか時間が過ぎ、侵入時は夕闇に染まっていた空も、今では深夜だ。
エリノアも俺も装いを整え脱出準備を整え終わった。
「マーベルからお聞きでしょうか?
私、故郷に帰ろうと思います…。
貴方と別れるのはつらい事ですが、こうなってはここにといられません」
うん、領王からの扱いも俺とのあれこれもドラゴンの事もあるからな、仕方ない。
「わかった、貴方を危険な場所に留め置くつもりは無い、生きていればまた会える日も来る。
……兵士がこちらに向かってくるか、迎え撃つので離れて」
そうして兵士と切り結びながら先を進むが、兵士……悲しいほどに弱いな。
「ヨシュア様、お強いのですね、既にこちらの動きはばれたようですし正面玄関から抜けるのは危険です」
「となると、どう脱出したものか……」
俺を名前で呼ぶエリノアに頷きつつどうするかと少し考えている内にエリノアがカギを一つ取り出して言う。
「こちらに水路があります。
イザという時に脱出するための水路、でしょうね」
そのカギを奥の扉にさして鍵を開けて進んでいくと地下通路、そして水路にぶつかる。
恐らく、この辺りは予めエリノアも自分が脱出するために色々と準備していたのだろう。
蝙蝠を打ち払いながら進み、時にエリノアを抱き抱えて移動すると大きな水路と雑な作りの橋のある場所に出た。
「これは、下手すると壊れそうだな、ここで暴れたら間違いなく壊れるか」
「ヨシュア様?」
「あそこに人影が見えるのが分かりますか?
雰囲気が兵士の物ではありません、恐らく賊、或いは刺客の傭兵か」
いうとエリノアが少し怯んだ様子になった。
「大丈夫、先手を取って斃します。少しお待ちを」
俺はそう言うと魔力を集中し、自分の前に魔力の塊を作り出す。
「ふっ、せいっ!!」
それを剣で連打すると魔力の塊から魔力弾が放たれ、人影に襲い掛かる。
しばらく続けると人影は全て倒れ、先行して周囲を警戒し、敵がいないのを確認するとエリノアを呼び寄せた。
「すごいんですねヨシュアさまは、見た事も無い魔法です」
「ミスティックナイトの技の一つで、こういう風に先手が取れる場面や護衛する時には役立つんだ」
そうして少し進んでいくと魔術師が待機していたが、これを不意打ちで叩きのめして、先に進もうとすると争う音が聞こえた。
大きな鉄塊で叩き潰す音と、魔法で薙ぎ払う音が幾つも。
何が起きているのかとこっそり様子を見ると、ポーン達が賊を相手に無双している姿がそこにあった。
「あの、この先は大丈夫でしょうか?」
「エリノア様、大丈夫だ俺の仲間だったよ。
どうやら向こうからも別で出口側から侵入して助けに来てくれた様だ」
話している内にマリーたちと合流した。
「マスター、この先の盗賊は粗方片づけました」
「幾らか逃げた者もいますが、態々戻ってくることも無いでしょう」
「マーベル殿とエリノア様の故郷からの護衛が出口でお待ちです、向かいましょう」
ポーン達は口々にそう言うと俺達は水路を抜けて外に出た。
途中の水路で賊の死体が投げ捨てられていたのは恐らくこいつらなりの配慮だろう。
外に出るとすでに夜は明けており、荷物満載のリュックを背負った侍従のマーベルと護衛らしき二人の男がいた。
マーベルはエリノアを見つけると嬉しそうに駆け寄ってエリノアを呼ぶ。
「お嬢様!」
「マーベル!」
二人は抱き合い、マーベルはエリノアを抱え上げてぐるぐる回る……いや、思ったより力あるね、アンタ。
しかし、その後ろの男たちは……。
俺の視線に気づいたエリノアが言う。
「ご安心ください、国元からの迎えです」
いや、俺が不安に思ったのはそこじゃない……キメラとかサイクロプス、そうでなくてもダイアウルフやハーピーとかこの辺群れて来るけど、その二人だけで大丈夫なのだろうか?
剣と盾しかないし、弓持か魔法使いが居ないと苦しくないか?
マーベルは俺に向けるエリノアの思いに気付いてか否かエリノアの手を引き早く帰ろうと促す。
「もうこの国は嫌ですよ」
ドラゴンと領王のことをぐちって最後にこんな国ドラゴンに滅ぼされろという。
お前、もうちょい周り見てモノ言ってくれ……エリノアがメッチャ困った顔してるぞ。
それに気づいたマーベルは非常に気まずそうな表情をした。
護衛の者たちが急がせようとしたので、俺から手早く声を掛ける。
「エリノア様、貴方の無事とこの先の人生の幸福があらんことを。
ドラゴンに関しては放っておけばこの国のみならず全てを滅ぼして回るでしょう。
そうならないように努力しますが、どうかこの地の不幸を他人事と思わぬようお気を付けを」
「……はい、貴方と会えたことは好みの幸運でした、貴方の旅に実りがあります事を…これをお受け取りください」
そう言って、美しい宝石を手渡された。
エリノアとはそうして分かれた。
別れ際の嫣然とした笑みと下腹部にそえられた手が何か意味ありげに見えたのは気のせいかなー?
「随分と気の疲れる依頼でしたね」
「彼女たちの旅の無事を祈りましょう」
マリーは疲労交じりに、ポーン達はあいつら大丈夫か?という不安交じりで彼らを見送った。
実際、この後すぐにキメラに襲撃されたので俺達の不安も間違っていないと思う。
今日のNG
「そもそも、エリノア様相手に二股がNGなのでは?」
「い、いうな!仕方なかった(強制イベント)だったんだ!!」
「浮気男は何時もそういうらしいですね、キナ様がお辛い時期に何をなさっているのか」
「うっ!?」
──汝は(ハーレム出来る)器に非ず…。 byドレイク