地上の入り江に戻ると、オルガは少し憂鬱そうな表情をしていた。
「オルガ、今戻ったよ。……何か思い出したか?」
「はい、少しずつですが私自身の事を思い出してきました」
そうしてオルガが語るには自身もまた使命を抱き、その途中で黒呪島に来たのだが、何者かの思念に覆われてこの島に縛り付けられた、と。
助けを求めた自分の言葉は、自分を覆う誰かの命令だと。
そして同時に自分の過去以外にも別の誰かの情景が見えてきたそうだ。
その記憶の中では『私』はある戦士に仕えて苦難を共にしていた、その戦士は非業の最期を遂げ『私』の心は一度砕けた。
そんな中で『あの人』が『私』にもう一度心を与えた。
「私の中に私とは別の存在が居る事が分かります……何とも言えない不安を感じます」
「ふぅむ……なんと言って良いかはわからない、だがもしかすると俺が拾った石碑、其処に記されていて、今あそこの石碑に書かれていた事が鍵になっていたのか?」
石碑に記された内容は覚者達の歩みが記されていた。
バロックは何人もの覚者と遭遇し、彼らが死ぬのを目撃した事があれば、もしくは二度と遭遇する事が無くなったと語っていた。
……あいつ、どんだけ長くここに閉じ込められているのだろうか?
石碑を読み進めていくと、どうにも竜退治を成した覚者の顛末も記されていた。
「わかってはいたが、ドラゴンを始め竜は全て覚者の末路か。
恐らく一番強力なドラゴンはこの『世界の理を司る存在』に敗れた覚者、ドレイクやウィルム、ワイバーンなんかの比較的小型なのはそれ以前にドラゴンに挑み敗れた者たち、だろうか?
それにしても胸糞の悪い……今本土で起きている現象も『世界の理を司る存在』の手引きか?」
そしてドラゴンになってしまうと最早意志の力では抵抗しきれず、残された僅かな意思で覚者を選び、自らの撃破を願うのか…。
俺が倒したドラゴンもまた、被害者だったのかもしれない……村を襲って殺しまわった事は絶対に許さないけどな!
更に読み進めるとドラゴンになった覚者の置き土産、次の覚者が迷った挙句に神殺しを決意したら、最愛を望まずに差し出して闇堕ちしてしまっているのはもはや言葉も出ない。
俺は徹頭徹尾ドラゴンを討つ事、心臓の奪還、カサディスでの暮らししか頭になかったから迷いはなかった、怖くなかったかと言えば当然怖いが、何もできずにすべてを失う方が恐ろしい。
そう思えばこその勇気、或いは蛮勇だったのかもしれないと今では思う。
そして最後に恐らくは迷宮の主が俺に当てた言葉。
覚者、界王(恐らく『世界の理をつかさどる存在』だろう)、そして世界を憎む言葉だ。
覚者の使命も世界も全てがまやかしで無駄な繰り返し、何故そんなものに必死になるのだと訴える。
彼はこの運命を繰り返す世界を憎み破壊する事を宣言していた。
「……まぁ、止めるべきだろうな。
下手しなくても被害は多そうだし」
「とはいえ……これは、一つの真実に辿り着いたものの言葉なのでしょうね」
マリーは不安そうに言う。
「……だろうな、だが判った事もあれば決めた事もある。
この迷宮の主を止める、界王とやらもぶっ飛ばす。
もう、ドラゴンも覚者の運命も繰り返させない、俺で終わらせる。」
「わかりました、不肖の身ではありますが、これまで通り尽力させていただきます」
それから俺達は黒呪島を隅々まで何度も歩き回り、モンスター達を狩り続け力を磨き上げた。
とは言え慢心はできない。
雇ったポーン達への指示が遅れあっという間に刈り取られたり、曲がり角からガルムで突撃されて死にかけたり、ポーンが何故か崖っぷちの宝箱を見ると飛び越え自殺したりと色々と振り替えるべきことは多い。
そしてグランシス半島でモンスター達を倒した時にも感じていたが、黒呪島ではより強く感じるものがある。
斃せば斃すほど、殺した命を食らって自分が人間の枠から外れた何かへと変わっていく実感があった。
だが、それが無ければ未来を切り開けないというのならば、どこまででも
そして、安定して魔物達を楽に殺せるようになった頃に俺はようやく主に挑む覚悟を決めた。
再び最下層の街に辿り着き、ある程度進んだ所で、俺は緊急避難的に飛石で逃げた。
「テンペストレイジの多重詠唱とか、即死級だよこん畜生!!」
この世界には多数の脅威があるが、テンペストレイジはその中でも狭い場所で使われると一番厄介な魔法の一つだ。
メテオフォールはアレでまだ、避け様がある、だが、テンペストレイジはウッカリでかかりで飲み込まれると最早助かる見込みはゼロだ。
雇ったポーンが二人とも飲み込まれて竜巻にお手玉されてたし、巻き込まれれば俺も死ぬ。
だから、あそこで飛石使って逃げたのは当然の判断…!
「というか、そもそも最初残留思念しかいなかったのに、何で敵が湧いてるんだよ」
「アウトレンジからの魔弓での狙撃、見事にはまっていますね」
その後、多少時間を費やし、湧いて出たカースドラゴンを撃破して扉をくぐると、ぶつぶつとつぶやく声が聞こえた。
「壊し続け、憎み続け……後には何も残さない」
部屋の奥、瓦礫の玉座の上に佇む捻じれた双角とドラゴンの様な翼を持った巨体の…
奴はばさりと羽ばたくと俺たちの前方に着地した。
だが、ここにきて俺はその巨体、脅威を理解しても恐怖は無かった。
「ここから先に、辿る道はない……」
「元覚者アッシュ、選べず堕ちた魔人か……依頼なんでな、ここでぶったおす!」
ダイモーンはその巨体と強靭な肉体のみならず、その見掛け以上に手数が多かった。
まず牽制と小手調べの氷の礫を放ち、削り、回避を誘発させ距離を取り、適当な距離を得たら巨体をいかした突撃からの肉弾戦。
その他にも上級魔法を隙あらば使用してくる。
詠唱速度はマリーより遥かに早いだろう。
だが此方とて伊達や酔狂でこの地で修行してた訳じゃない。
初見であろうとそれなりに戦うことはできていた。
「体術、魔法……どちらも強烈です!」
ポーン達が警告を発する。
俺は奴を動きをひたすら見極め、そして魔弓を放つ。
「まぁ、俺はひたすら連魔弓撃ってるだけなんだけどね!」
連魔弓を連続で放ち続けると、流石に向こうも虫が出来ないのか此方に狙いを絞ってくる。
「この、覚者様を狙うか!?」
「させない!」
だが、奴は腕の一振りでポーンを薙ぎ払う。
「虚ろに意味を与えようとする愚かさを恥じよ」
ポーンを蔑み、そう言い放つ。
「後には何も、残さない…」
奴の連続攻撃が振るわれる
ダイモーンが距離を一気に詰めて殴りかかってくるがこれを飛び越えて回避し、背中を取る。
奴の背に更に魔弓を放つ。
それを受けて奴は更にヒートアップしたのか派手に体術を駆使して攻めかかってくる。
「倒れて、朽ちて、消えるがいい!」
「猟師っていうのはよ、熱くなっちゃ仕事にならないんだぜ」
「魔法、行きます!」
ダイモーンを竜巻が襲うが、奴は多少の傷を負うも抜け出し、ポーンの一人を叩きのめし、吹き飛ばす。
吹き飛ばされたポーンを魔力を込めた手ですぐに抱き起す。
すると、直ぐにある程度のけがが修復され戦線に復帰した。
「悪いが徹底的にいやらしく攻めさせてもらうぞ」
「往生際の悪いやつめ……」
ダイモーンが憎らし気にそう呟く。
その後の戦いもポーンが何度も倒れるもそのたびに復帰させ、俺自身は逃げ回りながら魔弓を放ち続ける。
一見ルーチンの様に見えるが、その実かなりギリギリだ。
油断すれば一瞬で俺自身が倒れて負ける。
『彼と出会ったのですね』
「覚者様、脳内に
「無視ッ!ってか、聞いてる余裕あるわけないだろう!!」
戦闘中に害やがあーだこうだと言っていたとして、こちらに聞く余裕があるわけないだろう。
『私は彼のポーンでした…遠い遠い昔の事です』
「うぉおおおおお!!!」
戦っている最中、ダイモーンが床に向けて両手を向けると何か良く判らない事が起きて俺とポーン達が吸い込まれそうになる。
『彼は竜と対峙し……』
「全員、走って奴から距離をとれ!
呑まれたら死ぬぞ!!」
立て続けに技を放つが、ダメージは与えれている様だが、怯ませられない。
『彼を魔物の姿に変えた……』
「うわぁあああああ!?か、覚者様あああああ!!」
ポーンの一人が何かに吸い込まれ、そして消えた。
同時にダイモーンも流石に息切れしたのか、動きが止まっている。
『結果、私が贄に捧げられたのです……』
「総攻撃!張り付いて一気に仕留めろ!!」
マリーの魔法が、俺とポーンのナイフが鋭くダイモーンを穿つが倒しきれない。
『彼を……救ってください』
「ぶるぁああああ!!」
ダイモーンが高熱を放ち、その根熱気で以て俺達を弾き飛ばす。
地面に転がる俺をダイモーンが素早く拾い上げ、ギリギリと握りつぶそうとする。
しかし、握り潰すのは困難と思ったのか全力で地面に叩きつけられた。
「ぐぁ!?」
「マスター! っく、こっちにくるか!?」
痛みと叩きつけられた衝撃で朦朧とする俺をマリーがフォローしようとしたが、ダイモーンが狙いを切り替え襲い掛かり蹴り飛ばされてしまう。
「きゃあああ!」
俺はその隙に王の気付け薬と言う名の魔法薬を飲み干して傷を治療する。
一瞬で重傷の肉体が治療されるのは気味の悪いものであるが、便利だ。
奴もこちらに気付き今度は魔法を続けざまにはなってくる。
氷、雷、氷柱、追尾魔弾。
それらをなんとか避ようとしてが、幾らか避けきれなかったものもあり、地味に削れている。
だが、今更その程度で止まる様ならドラゴンを斃せるはずがない。
そして、一歩踏み出せるからこそ、俺は覚者としてドラゴンを斃せたのだ。
復帰したマリーと無事だったポーンが魔法と矢を放ち続ける。
目に見えて弱って見えるダイモーン、しかし、その目はまだ死んでいない。
ならば逆転の芽を摘むべく畳みかけるしかない。
「コイツで、お終いだ!」
かまいたちの如く、すれ違いざまに切り刻み、そして最後に胸元にとびかかり、とどめの一撃を見舞った。
ダイモーンは全身から血を吹き出しながら仰向けに崩れ落ちるとその躯から光を放ちながら一人の青年の姿が現れる。
恐らくは、元覚者のアッシュ。
『礼を言う、鼓動を取り戻した同胞、覚者よ…。
為すよりも難きは、達し、終わらせる事。
無限の縛りはお前が定め、御する事だ……ようやくあの人の元へ逝ける』
彼はそう言うとグレーテ、オルガの名前を呟き消滅した。
それと同時に部屋の奥のはダリ側にある鉄格子の仕掛けが開き、先に進める様になる。
「……勝った、か?」
「その様ですね……しかし、何か、気になります」
マリーが言うように何かが気になるが、それ以上に疲労感が凄く、とりあえずこの場から離れる事にした。
そこから続く螺旋階段を上り、月当たりの部屋の仕掛け扉から外に出るとそこにはアッシュとオルガと思わしき人物たちの例、そしてその足元には俺をこの島に連れてきた方のオルガが居た。
恐らくあの半透明のオルガは憑依していた方のオルガなのだろう。
二人の会話を結果的に立ち聞くことになったが、アッシュの思いは良く分かった。
自らの実力への自信、誰かを愛し、そして守る力が自分にはあると。
親であり、姉であった覚者グレースとその従者オルガに守られてばかりの子供ではないと証明したかったのだ。
その思いは俺にも覚えがある。
今世において俺と、そして幼馴染のキナは早くに両親を失った。
故に俺は大人にならなければと焦った、独り立ちを急ごうとして当時は余計な迷惑をかけたのは今でも記憶に残っている。
アッシュも同じ様にそうしようとして、しかし竜と対峙して結果的に全てを捨てる道を選んでしまった。
詫びたかった、それが彼の本心だった。
オルガはそんな彼を慰め、そして共逝こうと言って消滅した。
「う……」
覚者の方のオルガが気が付いた様だ。
オルガは起き上がると正しく寝起きの様な感じで辺りに視線を向け、そして俺を見た。
「大丈夫か?」
「はい……まどろんでいたような感じでした。
でも、はっきりと私の体を使っていた魂とあなたの会話は効いていました。
彼女の名もまた、オルガで私と同じ名を持つのです。
この偶然が私と彼女を引き合わせたのでしょうか?」
「縁とはどこでどう繋がるかわからないし、案外そうかもしれん」
彼女は、少しふらふらとしながらも口を開く。
「私の体を通じてより強い力。
私の覚者としての意思の強さは、貴方と比べるべくもない曖昧な物のようです」
彼女はそう言うと一区切りして俺を改めて見つめる。
「この世界であなたと出会ったことの意味を、ここで考えてみようと思います」
オルガはそう言うといつもの立て札の前に移動した。
ふぅっと一息ついたところで話しかけてきたのはバロックだ。
「よう、どうやらここの主を倒したようだな」
「あぁ、随分と手強かったが何とか、な」
だが…と、バロックは難しい顔をしている。
「ここが崩れてなくなる事も無ければ、陰気な気配も未だ続いている。
場所については現実世界の何処かに固定されたのかもしれんが……だが、まだ何かあるかもしれんな」
そのバロックの言葉は正鵠を射ていた。
立札には何時の間にか挑戦状の様な依頼書が掲載され、内部のモンスターの配置が強化されたりとかなり酷い状態となっていたのだ。
俺はその後再び最下層で戦う事になるのだが、其処まで語るのはもはや蛇足だろう。
今日のNG
・ダイモーン1週目かつ1回目 よしゅあくんLv70
「堅い上に体術の一撃で9割HP削れるんですけど!!」
「だ、ダメージ通りません!!」
「ふぁーwwwww」
実力差に絶望して光に呑まれて敗北
・ダイモーン1週目かつ2回目 ヨシュア君Lv120
「お守りブーストでギリギリ勝利!それでも体術で6割減るんで紙一重過ぎた」
「本編ではお守り使ってるシーンって描写良く判らないから入れられませんけどね!」
トドメは張り付いての百裂、なお、実際の所ポーンは全員光に呑まれました。
オルガのセリフ?
本編描写の通り、必死過ぎて何言ってるか聞こえなかったんで他所の人の動画見て確認しました。
・覚醒ダイモーン(2週目)の1回目 ヨシュア君Lv140
「ちょwwwまたダメージミリも通らないwww」
「草はやさないでくださいマスターwww」
最早笑うしかできないのでデス討伐できたら挑むという方針に切り替え。
・デスさん
石碑見ればわかるのだが、デスもまた黒呪島に訪れた覚者の一人。
紆余曲折あって、何故かデスに変貌して一撃必殺系の超堅いFOEしています。
「デスを倒すならリムの篝火と跳弾魔従でぼこぼこにするのがそれなりに早く削れるんだよなぁ」
「一番早いのは普通の弓で爆裂しまくるっていうこのゲームの鉄板攻略もありますけどね!」
筆者は弓や爆弾…もとい爆裂矢連打は流石にちょっと外道だと思ってます。
タイムアタックモードならありかもと思いますが。
・覚醒ダイモーン(Lv3黒呪装備ガチャチケ)そのX回目 ヨシュア君Lv∞
『戯れで真理どころか人類悪に至るか、俗物め!!』
「がちゃー!ガチャを回すんじゃー!!」
「
「Lv3黒呪装備おとせー!!」
ヨシュアは薬でスタミナ消費を無効化し、お守りデバフを積んでダイモーンに張り付いて剣を振るっている!
ダイモーンに痛恨の連撃!あっという間に切り刻まれてしまった!!
「マスター遂に人類悪になられてしまった……もともと装備を収集するコレクターっぽい所もあったので、この結末はもはや予期された物でしたが」
「ですが、覚者様に付き添って上から下までリム集めながらのマラソンは正直しんどいですね」
実際、1周するのに2~3時間かかるので結構しんどいです。
時々事故って死ぬけど直ぐに竜の心臓で蘇って悪魔にとっての悪夢となる模様。