黒呪島でダイモーンことアッシュと黒呪島のオルガをかの地から解放して幾日か。
「さて、それじゃあ行ってくるよ」
「ヨシュア……気を付けてね」
「帰ってくるのを待っています、ずっと……」
キナとセレナは何か決意を固めた様に言う。
まいったな、下手な言葉は決意が揺らぎそうだ。
「ま、ドラゴンだって倒せたんだ、こんな異変程度どうにでもなるさ」
事の中心地は領都グラン・ソレン。
ドラゴン退治の帰りはスルーしてカサディスに戻ってきたが、そのお陰で十分な時間は得られた。
「「いってらっしゃい」」
二人に見送られて、俺とマリーは一路グラン・ソレンへと向かう。
道中では凶悪な魔物や領都の傍ではワイバーンに襲撃されたりもしたが、黒呪島での戦いの厳しさがそれらへの対処する力となっていた。
問題なく障害を排除し、領都に入ると、直ぐに目についたのは巨大な孔だ。
文字通り、奈落と呼ぶにふさわしい底の見えなさは本能的な恐怖を誘う。
「これは……もしかしてエヴァーフォールではないでしょうか?
崖際を見てください、それらしい螺旋回廊の痕跡が見えます」
「ん、言われてみると確かに……という事は、以前見たエヴァーフォールの底は、コレの蓋で、その更に上に領都の住宅街が蓋としてのっかっていた?
……まぁアレだ、ポーンギルドに向かおう、あそこに入り口があるし」
そうして俺とマリーが移動しようとしたところで兵士がやってきた。
兵士は俺の前に来るとすぐに用件を口にする。
「覚者殿!良かった無事でしたか。
領王様が覚者殿を及びです、至急向かって戴きたい」
「……わかった、向かうよ」
城に入り、オルダスに軽く挨拶をして領王エドマンの執務室に向かう。
軽くノックし、名を告げるとどこかで聞いたようなそうでない様なしわがれた声が聞こえた。
「……入るがよい」
「失礼します」
中に入ると、エドマンの姿は見当たらなかった。
「ドラゴンに会えたようだな」
「どこに……!?」
突如聞こえた声は背後から、振り向くとそこには剣を振り下ろす皺だらけで白髪の老人の姿があった。
「っ!」
ステップを踏んで回避すると老人はよろめく。
「覚者など、現れなければよかったのだ…!」
「領王エドマン……なるほど、ドラゴンが与えた力を失い、覚者として心臓が無いからこそ老いが緩やかだったってことか、その有り様は心臓が戻った反動か」
俺の言葉に老人、エドマンは必死に剣を持ち上げ振り下ろそうとする。
「貴様に、貴様に何が分かる!
貴様とて奴と契約したのだろう!?」
「俺は倒したぞ、ドラゴンを。
俺は俺の手で心臓を取り戻したぞ、愛する者を捨てて得る力?
不要だそんなもの。
王になる?
何故、態々虚栄を振り翳し苦労と面倒が多い王に等ならなければいけない。
俺は故郷でドラゴンが来る前と同じ生活が出来れば、それでよかった」
エドマンは喚く。
「黙れ、黙れ、黙れ!貴様もどうせドラゴンと契約したのだろう!
あんなモノに人が勝てるものか!
貴様も臨んだのだろう!老いぬ肉体を!栄誉を!権力を!!」
不格好に剣が振り下ろされ、そのたびにエドマンの体が剣に勢いのまま流れていく。
こんなものに当たれるはずもない、と言うか適当に歩くだけでもよけれる。
「老いたのも、苦しんでいるのも、全てお前の選択、お前の意思だ」
エドマンは更に見苦しく叫ぶ。
「ならば、ならばワシのこの有り様は何だ!レノアを失ったワシの今までは!!」
「アンタが選んだ道を俺も選ぶなどと思うのは勘違いも甚だしい。
ただ、選択のツケを払う時が来た、それだけだ」
「だ、黙れ!!」
エドマンが再び剣を振り下ろしてくるので、俺はもはや付き合いきれなくなってきたので振り下ろされる腕を掴んでそのまま一本背負いの勢いで豪奢な赤絨毯に背中から叩きつけた。
「寝てろ!」
「ごはっ!!」
エドマンはもはや死に欠けの老人だけあって床に叩きつけられた際の衝撃に耐え切れず、死ぬことはなかったが、そのまま気絶した。
エリノアも、こんな爺さんに嫁がされたのは本当に災難だったとしか言いようがなかったな。
そして、こんなのが頂点に居れば、そりゃこの半島も大して栄もしないよなという思いが過る、が、周囲の妨害もありそうだなと今さら思う。
俺はその後、悠々と城を抜け出しポーンギルドに向かった。
追っては特になかった。
ポーンギルドに向かうと、宿屋の親父がギルドの建物を借りて宿屋をしてた。
「まぁ、寝る場所は雑魚寝だが飯はきっちり今まで通りにいいものを出すぜ。
宿を占めるとでも思ったか?
まさか、こうもなればやけっぱちだ、絶対に店じまいなんてしねーぞ!」
随分とまあ情熱的なものだ。
手短に挨拶だけすると、俺はギルドの奥へと進み鉄格子を開ける。
「やっぱり、ここと直でつながっていたんだな」
俺がつぶやくと、マリーが、あぁ…と納得したように声をあげる。
「ここは多分世界の接続点の一つです。
我々ポーンの民には多少ですが馴染みのある感覚です」
「世界の接続点?」
「そうですね……結論ありきで語らざるを得ないのですが、世界とは枝葉であり、今まで我々が旅した世界と言う枝に対してこの場所は幹だと思ってもらえれば良いかと。
今、我々は幹を移動して別の枝に移る事も出来る筈です」
その考え方は前世で考えるともう少し別の例があるかな?
ネットワークのハブ、そして多くの世界がクライアントで、そして黒呪島で得た情報、界王とやらを考えればホストに当たる場所もある。
何か間違ってるかもしれんが、根っこが界王のいる場所でここが中継点、世界が末端って考えればいいか。
そんな風に話しながら進んでいると、男とも女ともつかない声が聞こえた。
ズタボロで妙な感覚しかしないエヴァーフォールを下っていくと、一人のポーンが俺とマリーを待っていた。
褐色の肌をした、何となくアラビアン?な感じの美少女。
「ようこそ、覚者様。
もしも貴方が無限のくびきを脱する事を望むのならばお力添えをしましょう。
私はクインス、我がマスターはこのエヴァーフォールから深淵を目指す為に竜の鼓動を集められていました、ですが志半ばで倒れられました。
もし貴方がそれを集めていただけるなら、それを私の元までお持ちください」
その言葉に、少々もったいないなーと思いつつも渡す方が良いと何となくだが感じた。
そもそも、持っていた所でワイバーンやドレイクなどの竜種複数と戦うでもない限り不要な貴重品だ。
「竜の鼓動か、幾つ必要なんだ?」
「そうですね……20個必要です」
「……分かった持ってこよう。少し待っていてくれ」
俺は言うが早いか飛石を使い、ポーンギルド直ぐ傍の戻りの礎まで転移して元宿屋の店長アブラハムから倉庫に預けていた竜の鼓動を必要な数だけ持ってきてもらう。
「この珍妙なオブジェ、良くもまぁこんなに集めたもんだな」
「一応貴重品なんだ、それにもしかすればこれが今の異変を治めるカギになるかもしれないしな」
そんな言葉を交わして俺は再びエヴァーフォールにて待つポーンのクインスの元に戻った。
クインスは30分もしないで龍の鼓動を袋に詰めて戻った俺に驚いた様子だ。
「……随分とあっさりとこれだけの量を」
「こことは別の場所、黒呪島と言う場所ではこれがそれなりに拾えてね。
さぁ、後はそちらの仕事だ」
俺が言うとクインスは頷く、その様子はどこか嬉しそうだ。
「これで強いリムをこの場に定着できる。
覚者様、竜の鼓動の力を注ぎ、形を得て定着したリムが貴方の進むべき道を示します」
リムというのは俺自身もポーンをスカウトする際に使っているからわかるが転移装置の様なものだ。
クインスは改めて俺に問う。
「おそらく、もう戻れぬ道となるでしょう。
それでも進みますか?」
「……あぁ、進む。
この先に進まなければエヴァーフォールを閉じれないし、ドラゴンから始まったこれまでの旅の終止符も打てない」
「わかりました、始めます……どうか終わらせてください、覚者様の力で」
俺から袋を受け取ったクインスが念じると竜の鼓動が宙に浮き、崖の先に渦巻くように集まり光となる。
「マスター、最後に私からも聞かせてください……よろしいのですね?」
「あぁ、未練云々を語ればたっぷりだが……だが、進むべき理由がある。
今のまま放っておけばいい事なんてありゃしない、俺が背を向ければ、何も変わらない。
だから、俺が『すべての終止符を打つ』それだけだ」
マリーは俺とここまで旅していただけあって俺の決意は分かっているのだろう。
「ついでに言うとマリー、俺からもお前に問うぞ。
俺はセレナのマスターや竜識者と違う、『俺』は一人で良い……言っている意味は分かるな?」
「えぇ、十分に。
私は貴方のポーンではありますが、貴方になり変りたい訳ではありません。
私として貴方に仕え続けたい、それをどうかお許しください」
マリーも俺と同じく覚悟が決まっている様だ。
これ以上言葉を交わすことはせず俺とマリーはほぼ同時に光に向かって飛び込んだ。
その先はポーンをスカウトする時にリムで転移した場所に似ている。
耳障りな音が聞こえたが無視だ。
鬱陶しい人影も見えるがすべて無視だ。
ある程度進むと、石の玉座に座る男が居た。
俺はもう既に不退転の意思でここに来たんだ、今更試されても不愉快なだけだ。
「なるほど此度の覚者よ、貴公の意志の強さを見誤ったことをここに謝罪しよう。
だが、意志の強さだけでは足りない、その実力も見せていただこう」
男は玉座から立ち上がると剣と盾を構える。
「竜を討ち、悪魔をも討ち果たした力を見せてくれ。
この界王サヴァン、貴公を見定めさせて貰う」
「良いぜ、諸々の責任者であるアンタをぶん殴りたくてここに来たんだからな!!」
俺は男に対して敢えて素手を構える。
「……いいだろう、それが貴公の意志であるのならば!」
男が剣を振り下ろすと光の衝撃波が放たれるが、ゲームでいうならパワーウェーブとか魔神剣とかそう言う類の地を走る遠距離攻撃だ。
男の行動は俺が想定していたものよりは緩慢でするりと避け、カウンターで殴り、反撃は腕を掴んで一本背負い。
しかし叩きつけたと思ったところで転移で逃げられ、さらに奴のポーンが追撃の妨害してくる。
「我が主をやらせはしません」
「それはこちらのセリフ!貴方の相手は私だ!!」
こちらの妨害を行おうとするポーンにマリーが魔力弾を叩き付ける。
幾らかの応酬を繰り返し、俺が界王の顔面を殴り飛ばすと再び転移で消え、体勢を立て直して出て来るが既に向こうの戦意は無くなっていた。
「順番は前後するが、改めて私……いや、界王の持つ力を教えよう」
男が手を翳すと、俺と男の間に穴が開き、まるで空の上から、飛行機で見下ろしたように世界が広がっていた。
「それが世界、貴公が旅してきた、そして貴公の物となる場所」
「……」
俺が男を見ると男は肩をすくめる。
「わかっている、貴公がそれを望むような性根であるのならばドラゴンと契約し、グランシスの新たな領王となっていただろうよ。
今している事は出来る事のデモンストレーションに過ぎないのだ。
貴公の意志は見させてもらっていた、あの漁村にてドラゴンと対峙した日から、様々な試練を乗り越え、魔に堕ちた覚者を解放し、そしてここに至るまでの道を。
生きようとする意志、護ろうとする意志、選んだ道筋、その全てがあって今、ここに至った。
故にお前は知る必要がある、これが…世界」
男が再び手を掲げると、その手には灰色の液体の様な物の塊が蠢いていた。
それを落とすと、それはやがて人の姿になり、俺の似姿となる。
「覚者がポーンを生み出したように、私はあらゆる生命を生み出せる。
神の業、と言う者もいるが、真実はもっと無慈悲で残酷だ。
ただのルールに過ぎない、何人たりとも抗えぬ世界の仕組みだ」
その言葉は暗に自分もまたその仕組みの中の存在でしかないと言ってるのだろう。
男が再び手を掲げると、俺の似姿は吹き飛ばされ、そして火に飲まれて灰となった。
「命も世界も器に過ぎない、ポーンの民と何も変わらない。
……貴公の意志は生を闘いぬいてその手にあり続けた。
その選択の上で研磨し、精錬された、戦う事で練り上げられた生命そのもの」
その言葉に俺はある存在を思い出す。
「……なるほど、ダイモーンもまた研磨し精錬せよと言っていたがなるほど、そういう事か」
「ポーンの民が覚者に導きを求める様に、世界もまた『生きる意志』を求める。
そして貴公は既にポーンよりももっと大きなものを従わせる事が出来る魂を私に示して見せた」
大袈裟だな、とも思うが今の自分が人間を遥かに超越し、竜も悪魔も死神も単騎で屠れる人外であるという自覚はあった。
「我々は永遠の環の中を巡り続け、生命を練り上げる、世界と共に……やがて精錬に足る魂を持つものが現れるだろう、貴公の様に」
サヴァンはそう言うと俺に近づき、跪く。
「それまで、貴方が世界を治めるのです、貴方のやり方で善き世となる様に」
サヴァンは跪いたまま両掌を胸に当てると、まるで胸に刺さっていた物を抜き出すように自分の胸元から光と共に一本の剣。を抜き出した。
「それは、あの時ドラゴンが残した…」
「神裁ちの剣リディル、ただ一つ神を殺す事にのみ特化した剣」
サヴァンをそれを俺に捧げる様に持つ。
この剣自体は俺も前にドラゴンを倒した時に得ていた。
……なるほど、ドラゴンが持っていた理由も今なら察しが付く。
ドラゴンは、ここに至り、敗れた、界王に最も近ずいた存在故にその内にリディルを持っていた。
「世界を統べる身である我は、この剣以外で滅ぶことが許されない」
俺はリディルを受け取るとサヴァンは俺を新しき世界の王よと、呼ぶ。
「どうか、真剣にて旧き身に開放をお与えください」
「わかった、だが少し話をしよう……界王サヴァン、かつての覚者、かつての英雄よ。
アンタは俺を見てきたと言ったが、俺はアンタを知らない。
故に、最後にアンタを教えて欲しい、アンタが界王になるまでの人として、覚者としてのサヴァンを」
サヴァンは少し迷ったようだったが、俺はリディルを受け取った瞬間から、何となくできると確信していた事をした。
フィンガースナップを鳴らすとそこにはちょっとした小屋が現れる。
命を作れるのなら、小屋の一つや二つは簡単なものだ。
「アンタは散々人に試練を課したんだ、報奨代わり、酒の肴に身の上話を聞かせるのはアリだろう?」
「貴公はまったく…わかりました、お聞かせしましょう」
小屋の中には机と椅子があり、郷土料理と酒が揃っていた。
「食事か、思えば界王となって以来何時からしていなかったか……」
「サヴァン、ヒトが生きるのに必要なのはうまい食事と話せる誰かだ。
アンタは解放を願っちゃいたが、その中でため込んだものがあるのは直ぐにわかったぜ。
だからすべて吐き出せ、俺とマリー、それにアンタのポーンが付き合ってやるからよ」
「感謝する」
サヴァンは何時振りとも知れぬ「普通」に歓喜の涙を流した。
「さぁ、全員席に着いた着いた。
コップは持ったな?乾杯!!」
「「「乾杯!」」」
そうして食事と酒で腹を満たし、喉を潤せば彼の口から冒険譚が紡がれる。
突如現れるドラゴン、ドラゴンを止めようとするも全てが焼き払われ、生き残った自分、旅立ち、従者との出会い、多くの人々と出会い、無数の試練をポーンや仲間とともに乗り越え、ついにドラゴンの元に辿り着く。
しかしその過程で更に失われていく仲間達との別れはを涙ながらに語り、そしてついにエヴァーフォールに辿り着き、先代界王を解放し、自らが界王となった事を語る。
それらを語り終える頃にはサヴァンは未練をすべて吐き出せたかのようなスッキリとした表情であった。
「さて、サヴァン立場が入れ替わったかのような感じだが問わせてくれ。
「あぁ、優しき後輩ヨシュアよ。
サヴァンが跪き、両手を大きく広げて待ち望む。
「わかった……貴方の事は忘れない、さようならだサヴァン!!!」
ズン、とリディルはサヴァンの胸を何の抵抗も無い様に貫いた。
「これで終われる、この無情なる円環、その内から……貴公の未来に幸あらんことを……」
サヴァンはそれだけ言うと光の粒子となって消えて逝き、最後にはその胸を貫いたリディルだけが残された。
「マスター……複雑ですね」
「あぁそうだな。だが彼にとって俺達との出会いは救いだった、そう思う」
サヴァンは糞が付くほど真面目で優しい男だった。
だからこそ、界王となりドラゴンが覚者を生み出し、覚者が
何故変えられなかったかと言えば非常にシンプルで変えた場合の世界の行く末に責任が持てなかったのだ。
そしてせめて少しでも覚者達に逃げ道を与えようとした痕跡は幾つもある。
しかし役目故に覚者達と戦い、討ち果たす事は世界の存続と言う使命感以上にその精神を摩耗させた。
故に願っていたのだろう『この世界の楔となった者たちの解放』を。
「さて、それじゃあ少し世界に手を加えよう」
「どの様にするのですか?」
マリーは床に空いた穴から覗ける『世界』を見下ろす。
「先ずはエヴァーフォールを塞ぐ、安易にここに来られても困るしな」
「それは……来れる人、いるのでしょうか?」
俺はさぁなぁ、と言いつつさらに手を加える。
「次に竜へと転生した者たちの魂を回収、人に生まれ変わらせる……あぁ、赤ん坊からやり直せって事だな」
「そういう事も出来るのですか?」
「界王って凄いよなぁ」
魂の回収と転生は少し手間だったが、割と直ぐに終わった。
「次が今回の目玉だ、各地に黒呪島の様な財宝を入手するチャンスのある、精錬の場、迷宮を設ける。
これは難易度振り分けして最終的には最大難易度を攻略できればここに辿り着けるようにする」
「はぁ、しかしその、黒呪島の様な迷宮って……」
黒呪島の様な、という事はつまり。
「何度でも挑めるって訳だ、序に挑戦しない場合は周期ごとに中の魔物があふれ出す様にする」
「それ、本当に黒呪島レベルの迷宮の魔物があふれ出したら未曽有の危機なんじゃ?」
「そこは加減するさ、一定レベル以下の迷宮のみにするとか、な。
後、挑まなくなる可能性も考えて難易度が高くなるほどに財宝も豪華になる物とする」
ぶっちゃけ、世界の仕組みは弄ろうと思えば好きなだけ弄れるようだ。
コスパが云々と言うのも、あまり気にしなくてもよさそうだ、そもそもあってないものと言える。
次元連結システムと言って伝わるだろうか?
無限に存在する並行世界から微粒子レベルのエネルギーを集めるだけで無限と等しいエネルギーに至るのだ。
「ま、迷宮モノに様変わりしてもらおうか。
この形でも十分に界王に至れる者たちは出てこれるだろう。
一応、馬鹿が大馬鹿やらした時の為のセーフティだけは用意する必要があるけど」
うん、例えば既に概念存在となってるダイモーンとかね。
大元のアッシュ自体は解放したけど、ダイモーンと言う概念は黒呪島と共に世界にこびりついているので、それを利用する形だ。
そもそも、アレに勝てるなら界王になれる(体験談
「まぁ、後は飽きるまで暫く世界を眺めよう」
「はい、お付き合いいたします」
ある日を境に世界は変わった。
相変わらず魔物も魔獣もいる世界だが、グランシス半島の領都グラン・ソレンからエヴァーフォールが閉ざされた日を境に世界中に様々な種類の迷宮が現れる様になった。
そこは強力な霊薬、ともすれば若返りや不老、或いは不死に手が届く妙薬さえも得られ、魔法の武具すらも手に入ると言われる。
時代はドラゴンの脅威に怯える時代から、迷宮でのゴールドラッシュの時代へと変遷した。
そして人々は様々な思惑の元に迷宮に挑み、その生命を研磨し、精錬し、財宝を得るか、あるいはその命を散らせていった。
そんな時代の変遷の最中、領都グラン・ソレンではエヴァーフォールの痕跡はぽっかりと開いたクレーターのような物となって残った。
街は結局元の形にはならなかったが、領王の妃であったエリノアが故郷から多大な支援を得て領都に戻り、その統治をおこなっていた。
「かくして覚者ヨシュアは領王エドマンの命により己の命を懸けてエヴァーフォールへ消え、そしてエヴァーフォールは閉ざされこのグランシス半島に平穏が戻ってきた!!
彼は自らと引き換えに我らを救ったのだ!
称えよう、我らの英雄を!称えよう苦渋の決断を行い、天に旅立った領王エドマンを!
そして祝おう、領王エドマンが遺児の誕生を!」
エリノアが戻ってきた時、彼女は妊娠していた。
その腹の子がエドマンの子であると多くが思っているが、果たしてその真実を知る者は本人のみだ。
グランシス半島はこの後、エリノアの故郷の属国的な立場ではあるがそれでも自治を貫き、そして優秀な次代にバトンを託したという。
「戦士様、貴方が遺し、護ったものは私とこの子が守りましょう」
ところ変わって海辺の漁村カサディス。
ドラゴンの襲撃からの復興もある程度進み、また海辺の魔物ヒュージブルもいずこかへ去って再び大々的に漁が始まろうとしていた。
カサディスは村長アダロがそろそろ引退しようかとぼやき、その後継者はキナであるとされている。
「キナさん、お腹の子の調子はいかがですか?」
「元気よ、たまにお腹を蹴ってくるのがわかるわ」
キナは大きくなったお腹を抱えながら村長の後継者と数少ない癒しの使い手として活躍していた。
妹分と言っても良いセレナはヨシュアの住んでいた家で今も暮らしている。
「セレナも、薬師としてのお仕事は大変でしょう?」
「その、お酒、ハーブ酒づくりの依頼が一番多いのは何ででしょうか…」
セレナは森の魔女と呼ばれていたりもしたが、薬師として重宝されていたのだが、いつの間にかそこにカサディスのハーブ酒職人、酒づくりの名人として有名になっていた。
「キナ殿、ご在宅か?」
「あ、メルセデスさん!いますよ!」
女騎士メルセデス、彼女はエヴァーフォールが閉ざされた後に己が身一つで再びグランシス半島に赴き、何時の間にかカサディスを拠点にすると村の自警団を組織し、今ではその顔役として村には欠かせない存在になっていた。
そうなったのもヨシュアとの出会いと約束、故郷の政治的な思惑への苛立ちからの出奔、約束は守れなかった事の侘びとして、ヨシュアの忘れ形見をせめて守ろうという意思からだ。
それと言うのも解り易い理由があった。
「森が迷宮化はどうでした?」
「アレは何と言うか色々酷いぞ、獣とゴブリン程度しかいないが奥に行けば石野ゴーレムに金属のゴーレムが徘徊している上に、とどめは小型の竜だ。
流石に今回は偵察に留めたが、何時かはどうにかした方が良いだろうな。
それと村の周辺の獣も普通の狼やゴブリンだ、何時ぞやの頃の様な火吹き狼や凶暴過ぎるゴブリンは影も形も見えないな」
森の迷宮化に周辺の治安だ。
元来グランシス半島の治安はグラン・ソレンの領王がその責任において行うものだが、現時点において量との機能が回復しておらず、また兵も先日の強すぎる魔物の跋扈していた時期の影響で多くの物が命を失い、不足している。
そんな折にやってきたメルセデスはカサディスからすれば救世主に見えた。
彼女は故郷に戻ってから再びこの地に足を踏み入れる時までに研鑽を重ねかつてよりも実力が向上し、また騎士として、貴族として上に立つものであるが故に自警団を組織して以降の活躍は目覚ましいものがあった。
「ゴーレムを相手取るのであれば、私やキナさんの力は必須となるでしょう」
「とはいえ、私も見ての通り今はお腹がこれだし、暫くは動けないわ」
「まぁ、当面は何とかして見せるさ」
その後、彼女たちはワイワイと賑やかに雑談へとシフトしていく。
「マスター、どうやら皆さん逞しく生きていらっしゃるようですね」
「あぁ、安心したよ」
俺は玉座でもある石の椅子にすわり、マリーは俺の膝の上に乗っかりしなだれかかっている。
「世界は安定した、後は放っておいても大丈夫だろう……ふぅ、安心したらなんだか気が抜けたな」
「では眠りましょう、そして目を覚ませばまた見守りましょう、彼らの行く末を」
張りつめていたものが緩んだのかどうにも眠い。
「おやすみなさい、マスター」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
メインクエストクリアー
竜を退治し、この世界の楔となった魂(ヨシュア)が解放されました。
おめでとうございます。
特殊武器:神裁ちの剣リディルを取得しました。
リディルは『神』を討つ事が出来ますが、それ以外に対し攻撃能力を持ちません。
転生後も所持し続ける事が出来ます。
追加特典:従者マリーを取得しました。
マリーが貴方の転生に同行します。
彼女は貴方の魂の行く末まで付き従うでしょう。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
前回の投稿から間があいてしまい申し訳ありません。
どういう結末にするかな、と悩んだ所で今回のカタチにしました。
かなり駆け足気味に駆け抜けたエヴァーフォール→界王戦ですがぶっちゃけエヴァーフォールは実際のプレイでもほぼほぼスキップです。
ダイモーン戦(ガチャ)でかなり頑張り過ぎたせいで力尽きました。
サヴァンとのやり取りは原作であっさり死んでしまっていたので、なら少し変化球着けても良いんじゃね?と思って今回の形に。
ヨシュアとマリーはヨシュアの孫が死ぬ頃まで見届けた後で二人揃ってこの世を去りました。
ヨシュアの子供や孫の周辺では不思議な事が時々起きたりしたかもしれませんが、それはご愛敬。
キナもセレナもエリノアもその辺り何となく見守ってくれてんだなと気づいてる感じです。
次回からはゴッドイーター2編に進みます。
1はどうしたかって?
持ってないのでやれません。