試行錯誤しながらゴッドイーターとしての任務をロミオと共にこなし、時にジュリウスも加わる。
ジュリウスが常に一緒ではないのはひとえに俺達とジュリウスの実力差からだ。
「あー、いてて……バレットは予め試射場で試してから持ってくればよかった」
「気を付けてくれよ、ヨシアキ~……とはいえ、大したことなくて良かったよ」
こういったミスもあるが、順当にGEとして腕は伸びて言っている自覚があった。
「でも、どうやったら『血の力』って目覚めるんだろうな?」
「うーん、そうだラケル先生に訊いてみようぜ!」
俺がふとした疑問をロミオに投げかけると、ラケルと言う名前が出て来る。
確か、ブラッドを設立した研究者だったか。
そういう人間ならば何かヒントになる話を聞けるかもしれない。
「なら、アポイントを取って早速行ってみようか。
何だかんだで挨拶の機会が無かったし丁度いい」
「え、まだ先生に会ってなかったのか?」
「あぁ、ラケル先生とはジュリウス越しの訓練指示や任務通達でなんだかんだと機会が無くてな」
俺はそう言ってエントランスの端末にアクセスし、メーラーを起動。
要件を書いてメールを送信する。
「キッチリしてんだなぁ」
「一応、ここに来る前は偵察班のリーダーしてたんだぜ?
支部の上の方の人間とのやり取りも何だかんだであったからな」
メールを送って少しするとラケル博士からの返信が届く。
時間は確保できるので執務室で待ってくれているそうだ。
俺は廊下で出会ったジュリウスも誘ってラケル博士の元に向かった。
「ようこそヨシアキ、お互い忙しかったせいで中々会えなかったけど漸く会えましたね」
「いえ、貴重な時間を割いて頂きありがとうございます、ラケル博士」
ラケル博士に感じたのは何処か儚い雰囲気を感じつつも何か背筋にゾクッとしたモノを感じさせ、同時に母が子を思いやる様な慈しみすら感じるという酷く複雑なものだった。
自分で何を言っているかわからないが、俺自身は矛盾したものを彼女に感じていた。
「緊張、しているのかしら?
貴方は、ロミオも、ブラッドの大事な家族となったのです。
緊張する必要はありませんよ」
優しく、労わる様に浸み込んでくる言葉は俺の緊張を解きほぐすかのようだ。
「……ありがとうございます、ラケル博士」
「礼を言われる事でもありません。
貴方の技術、ブラッドの一員として家族となるみんなに伝えてください。
そしてその技術はやがてブラッドから各地のゴッドイーター達にも伝播していくでしょう」
ラケルはにっこりとほほ笑んでそういう。
「多くの戦友の為になる、遣り甲斐がありますね。
っと、そうだ折角なんで幾つか質問しても良いですか?」
「えぇ、構いませんよ」
ジュリウスからもそこそこ話は聞いているが、やはり一番詳しい人から話を聞くのは大事だ。
「先ずは『血の力』ですね、これに関してはジュリウスからも聞いたのですが改めてラケル博士からも聞きたいです」
「そうですね『血の力』を説明する前に、一つお聞きしますが『感応種』と呼ばれるアラガミはご存知ですか?」
『感応種』とは最近になって現れた新種の荒神だ。
その最大の特徴は『神器が使えなくなる』或いは『GEの弱体化』とも言える特殊能力を持つ事だ。
「えぇ、その認識であっています。
ブラッドの持つ『血の力』とは言ってしまえばGEの中に生まれた『感応種』としての力です。
そしてそれは今の所P66偏食因子の適合者のみ発現する力です。
これを持つ事によってアラガミからの偏食場パルスによる弱体化を防ぎ、自身もまた『血の力』によって味方の強化、荒神の弱体化などの効果を発揮します。
この力を以てブラッドが旧世代GE達を導く存在となって言ってくれることを私は信じています」
「なるほど『感応種』と遭遇したGEは隠れるか逃げるかしてやり過ごすしかなかった状況が、明確に変わりますね」
とはいえ、最大の問題は……。
「最大の問題は『血の力』は『意思の力』の具体的発現です、なのでどうしても目覚めは本人次第としか言えません。
ずっと使えないかもしれませんし、或いは何かきっかけがあれば直ぐにでも使えてしまうかもしれない。
ですが、貴方もロミオも資質はあり、後は目覚めるだけです。
それにそうでなくとも貴方達は選ばれた人間なのです、その実力に私は…ワタシタチは期待していますよ」
儚げでおっとりとして見えるのに、どこか要所要所でゾクりとする。
「そういうメンタル面も絡むのは難しい話ですね……とは言え承知しました」
「俺も!『血の力』にばっちり目覚めて期待に応えてみせるよ!」
次に俺は人員に関して質問した。
「現在、隊長のジュリウス、その下に俺とロミオがいますが今後の人員補充の予定はありますか?」
「えぇ、流石に『ブラッド隊』として本格稼働する為にはあと数人人材を補充する予定です。
そうですね、いい機会ですから先にお知らせしておきましょう」
ラケルはそう言うと車椅子を反転させ、コンソールを操作して4枚のウィンドウを表示した。
男子が二人に女子が二人。
「男子の方はヨシアキさんと同じ極東からスカウトした元一般人の神威ヒロ、別の支部で既にGEとして活躍していたギルバート・マクレイン。
女子は二人ともロミオと同じくマグノリア・コンパスで育った香月ナナとシエル・アランソン」
「へぇー、一気に増えるんですね……ってあれ?
女子二人は見覚えないなぁ……ラケル先生、この2人って俺とは別コースだった二人ですか?」
ロミオが児童養護施設で育ったのは聞いていたが、同じ施設からジュリウスも含めて4人?
身内で固めるのがやりやすいからか?
いや、偏食因子の事もあるし偶然か?
「えぇナナはちょっと事情が特殊だったので特殊な保護コース、シエルは元々GEの適性があったのでそちらの軍事専門養成コースの出身です」
ちなみに、シエルはともかくナナはGEとして育てられた訳でも無いのでそっちは素人と変わらないそうだ。
「なるほど、となると隊長のジュリウス、ギルバート、シエルはそれぞれ新兵同然のヒロやナナの補佐に付くことが多そうですね。
勿論、俺達も世話になるでしょうが」
「へぇ……ま、新しく来る4人に負けないように俺達、頑張ろうぜ!」
ロミオはやる気を更に充実させたようだ。
ここまで黙ってみていたジュリウスもロミオのモチベーションの高さに満足しているのか笑みを浮かべている。
「なら、今度訓練代わりに丁度いい任務を見繕わなければな。
まだまだ立ち回りは改善できる個所がある」
「うわ、ジュリウスもすっげぇやる気だな」
ジュリウスはクールに見えて中身は非常に仲間思いな青年だ。
だからこそ、仲間の為になる事ならば全力で取り組もうとしてくれる。
「ラケル博士、今日はお時間を取っていただき、ありがとうございました」
「いいえ、構わないわ、次もみんなで来るのを待っていますよ」
数日後、俺とロミオはフライア周辺の荒神討伐任務に繰り出しそして戻ってくるとブラッドの制服を着た見慣れない少年が居た。
その近くには随分と挑発的な格好の少女もいた……いやGEだと普通…か…?
「よう、そこのお二人さん。
もしかしてブラッド隊員候補生の神威ヒロと香月ナナってのはキミ達か?」
「あ、はい。神威ヒロです」
「私は香月ナナです!えっとー貴方達はブラッドのヒトですか?」
どうやら当たっていたようだ。
「俺、ロミオ・レオーニ!こっちは八咫ヨシアキ、俺達はブラッドの一員さ!」
「八咫ヨシアキだ、よろしくな二人とも」
話を聞くに二人はどうやら基礎訓練を受け終えたばかりの様だ。
「へぇ、って事は二人は私たちの先輩なんですね!」
「先輩…いいな、それ。よし、聞きたいことがあれば何でも聞いてくれ!」
ロミオが威勢よくそう言うと二人は揃ってブラッドの最大特徴『血の力』について質問してくる。
まぁさもありなんだな、と思ってロミオの様子を見ると、あまりいい返事が思い浮かばないようだ。
「『血の力』は現状ブラッド隊隊長のジュリウスのみが扱える一種の特殊能力だ。
P66偏食因子に適合した俺達はもれなく発現する可能性はあるんだが、どういう能力が目覚めるかは目覚めてみなければわからない。
覚醒方法もまだ確実な手段は無くて個人の意志力頼りだ。
他に特徴があるとすれば『血の力』は味方に力を与えたり、補助したり、敵を弱らせたりする能力が発現する可能性があるらしい。
また目覚めれば他にも必殺技染みた物も使えるようになるそうだが、そちらはジュリウスが実演してくれる時を待つと良い。
ちなみに残念ながら俺とロミオはまだ『血の力』に目覚めてないんで実演不可能だ、ジュリウスに実演してもらった時に何か見えた気もするんだが取っ掛かりが足りん」
そこまで言うと俺とロミオは揃って肩を落とした。
が、すぐに気を取り直す。
「ま、何はともあれ何かあったら気軽に相談してくれ」
「ほへぇ、えっと、それじゃあ……お近づきの印におでんパン!」
ナナが持っていた袋から焼きそばパンならぬおでんパンを取り出した。
おでんパンそのものは良いんだが、串刺さりっぱなしかよ。
「先輩たちもおでんパン食べて元気いれてがんばろ?」
「あぁ、サンキュー!」
「はい、ヨシアキ先輩もヒロも!」
渡されたおでんパンをまずはじっくりと見る。
そしてさて齧り付こうかと言う所でナナが先行して「いっただきま~す」とパクバクバキ、ゴリ、ムシャと一気に食べてしまった。
マジか。
ヒロとロミオの様子はどうかと思ってみると目が合う。
(((流石に串ごと食うのはないわ)))
兎にも角にもこうして俺とロミオには後輩が出来たのだった。
今日のNG
(まぁ串は食わないでも良いか)
ヨシアキは堂々とそれが当然であるように串を外そうとするが、ナナはそれを見て「えっ?」と凄い表情で見ている。
そしてその直後からえも言えぬ表情で食わないのかと目で訴えてる……気がする。
「──っ!!」
俺はその視線に負け、縦で食べようと思ってたそれを横にして、かみ砕く勢いで食べ始めた。
出来る限り細かく噛み砕き、パンとおでんの具で包んで飲み干そうとしたが。
「!!!???!」
普通に一部のどに刺さった、胃の方にも堅い感触があり、普通に痛い。
だが、堪える。
「う、うまかった。ありがとう」
この後、医務室の世話になったが、何やってんだコイツと言う目で見られたのは言うまでもなかった。
なお、同じように食ったはずのヒロは俺よりも頑丈だったのか食い方が良かったのか医務室の世話にならずに済んだようだった。